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2023年7月15日号 1面

もうガマンならない生活破壊

国の進路問い、生活守る闘い広げよう

 岸田政権による国民生活破壊が止まらない。相次ぐ食品などの値上げが国民生活を襲っている。
 7月の値上げは政府による輸入小麦価格の引き上げを受けてパンや小麦粉を中心に前年の1・5倍、3566品目となる。わかっているだけでも年内の値上げの累計は2万9000品目を超える見通しで、半数以上はすでに複数回値上げされている。値上げのピークが10月くらいに来るとも言われている。
 総務省が発表した6月の東京都区部の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合が前年同月比3・2%上昇し、総合の伸び率は9カ月連続で3%を超えた。上昇は22カ月連続となる。食料品に限れば実際の物価上昇率は総合指数の2〜3倍程度と見られ、国民の多くが日々の買い物で切り詰めを余儀なくされている。電気・ガス料金、ガソリン代の激変緩和措置がなくなる秋以降はさらに負担がのしかかる。諸物価だけでなく、医療費や社会保障費の負担も増えている。
 昨年10月から後期高齢者の医療費窓口負担が1割から2割へ引き上げられた。後期高齢者の医療保険料の上限も引き上げられる。4月から介護保険料の第2号保険料(40歳〜64歳)も引き上げられ、過去最高水準となった。

一段とのしかかる生活苦
 厚労省の「毎月勤労統計調査」でも、5月の実質賃金は前年同月比マイナス1・2%と、14カ月連続でマイナスとなった。
 連合は、今春闘での平均賃上げ率が3・58%で、約30年ぶりの水準となったとしているが、8割以上を占める大多数の未組織労働者に賃上げは波及せず、労働者全体の賃金は物価上昇にはまったく追いつかないのが実際である。
 物価高騰に対応するとして今年度は3年ぶりに年金支給額が引き上げられたが、引き上げ率は物価上昇率には追いつかず、実質的に年金は目減りしている。
 こうしたことから、生活保護受給世帯も増加している。厚生労働省によると今年4月の生活保護申請件数は全国で1万9633件で、去年4月に比べて1875件、率で10・6%増え、4カ月連続で前年同月を上回った。全国の生活保護受給世帯は164万3887世帯となっている。
 所得格差が広がって低所得者が増え続け、さらに生活保護水準も低いことで、日本の相対的貧困率は ・7%とOECD(経済協力開発機構)加盟国を中心とした カ国の中で7番目の貧困率の高さである。主要7カ国(G7)の中では最悪、先進国で最も貧困率が高い国となっている。
 さらに日本の子どもの貧困率も、OECD加盟国の中で最悪の水準である。子どもの貧困率は、1980年代の10%台から上昇傾向にあり、2019年では13・5%と7人に1人の子どもが貧困状態にある。こうした世帯で育つ子どもが、医療や食事、学習、進学などの面で極めて不利な状況に置かれ、将来も貧困から抜け出せない傾向があることが明らかになっている。

中小企業倒産も急増
 東京商工リサーチが発表した23年上半期の企業倒産件数は、前年同期比32%増の4042件となった。2年連続で増加し、上半期として5年ぶりの高水準である。新型コロナ対策として企業の資金繰りを支援した融資の返済が本格化し、今後も倒産件数の増加が見込まれている。
 負債額1000万円以上の倒産で、産業別では、1998年上半期以来、25年ぶりに10業種すべてで増加している。最も件数が多かったのは、飲食業などの「サービス業他」が36%増。歴史的な資材高によって「建設業」も36%増、円安による物価高でコスト負担が増えている「製造業」が37%増となった。「ゼロゼロ融資」と呼ばれる実質無利子・無担保融資を受けた企業の倒産は322件で前年同期から1・8倍に増えている。返済が本格化する時期は7月から来年4月となり、今後も高水準の倒産件数が続くとみられる。政府は中小企業の「生産性」向上や労働市場「改革」などを名目に、中小企業のさらなる「淘汰(とうた)」を進める政策だ。
 中小企業者と同じような立場にある農業者も酪農や畜産をはじめ、急激な飼料、肥料、資材の高騰に直面し、経営破綻、離農が相次いでいる。

危機深まる世界経済
 リーマン・ショック以降の世界金融危機を各国は中央銀行の金融量的緩和や政府の財政出動で延命を図ってきたが、富裕層と貧困層の格差の拡大、労働者人民への多大な犠牲の押し付けなどで危機はますます深まっていた。そして、こんにちの世界的なインフレ急進の要因は、世界資本主義の危機が深まる中でコロナパンデミックやウクライナ戦争の勃発で、資源・エネルギーや食糧価格の高騰、サプライチェーンの分断、米中対決の激化など世界経済に打撃を与えたこと、こうした一連の事態が国際的なインフレと新たな金融危機、スタグフレーションをもたらしている。世界資本主義は一連の危機から抜け出せず、ますます末期症状を呈している。

大企業優遇政策の転換を
 わが国岸田政権の政策は、金融の異次元の量的緩和、円安による輸出大企業や多国籍企業の利益を優先するアベノミクスを引き継ぐものである。口先では今でも「新しい資本主義」を唱えているが、「再分配」はいつの間にか富裕層や投資家のための「投資」へと姿を変え、持てる者と持たざる者への富の移転政策であるアベノミクスに先祖返りした。しかし、これらはすでに馬脚を現し、破綻したものである。
 わが国は、資源・エネルギー、食料を他国に依存し、輸出市場も国際情勢に大きく左右される位置におかれている。これまで優位にあった半導体をはじめ各種製造業や技術革新でも世界に後れをとっている姿も浮き彫りになっている。国内総生産(GDP)もほとんど伸びず、「失われた30年」となっている。国家財政は先進国でも最悪の赤字が拡大する一方で、日銀による国債買い入れで辛うじて支えられている状況である。他の先進国がインフレ対策のため相次いで利上げに踏み切っているが、日銀は利上げさえ容易でない状況である。内外の金利差の拡大はさらなる「円安」を呼び、物価上昇の要因となっている。
 岸田政権は内外ともに行き詰まった危機を国民犠牲で乗り切ろうとしている。「異次元の少子化対策」にしても防衛費のGDP比2%への増額にしても、増税や社会保障費の削減が前提となっている。景気低迷の中でも増え続けてきた500兆円を超える大企業の内部留保などには手をつけようとはしない。この間は消費税率が引き上げられる一方、アベノミクスで法人税率も引き下げられてきた。22年度一般会計決算では物価高騰による消費税収増などで「決算剰余金」が2兆6294億円で、政府は国債償還に充てた残り半分の約1・3兆円を国民生活の負担軽減ではなく防衛財源に充てるという。断じて許されない。大企業優遇の税制、財政政策を大転換させる以外にない。

日米基軸政治の転換を
 岸田政権の国民生活そっちのけの政治に対して、「どうやってメシを食っていくのか」、国民生活のさまざまな課題を巡って、生活防衛のため、給食費値下げなど身近な要求を取り上げ、コロナ第9波が拡大する中、感染症対策や地域医療体制の拡充などを求めて闘い、岸田政権を追い詰める闘いの輪を広げよう。
 こうした闘いと結びつけて、国の生き方を根本的に問い直そう。
 米国の衰退がますます進むこんにち、戦後のわが国の日米関係を基軸としてきた外交、内政、経済のあり方の根本的な転換が求められている。米国と共に対中国包囲の先頭に立って緊張を激化する道を歩むのか、自らの力に依拠して、中国をはじめアジア諸国の一員として共に生きていく道を進むのか、どんな国づくりをするのかが鋭く問われている。生活防衛の闘いと国の生き方を問う闘いの根は同じ、岸田政権との闘いを強めよう。    (H)

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