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2023年7月5日号 1面

アジアで孤立する道
まっしぐらの岸田政権

時代錯誤の
対米追随外交転換せよ

 通常国会が閉会したが、岸田政権が狙っていた「解散・総選挙」は先延ばしされた。岸田政権がもくろんでいた広島サミットの「成功」は自画自賛するほどの効果はなく、マイナンバーカードの誤登録問題の広がりなどで支持率は急落、連立政権内のごたごたも重なり、解散戦略の見直しを迫られている。
 安倍元首相は内政では大した成果が上げられず、アベノミクスは失敗し、大きなツケを残したが、「地球儀俯瞰(ふかん)外交」や「国難」などと叫び、精いっぱい爪先立ちした外交で政権への支持を稼いだ。
 岸田首相も安倍に倣って当面は「外交」で稼ぐ以外に支持率アップの手はない。「異次元の少子化対策」なとと言っても「異次元」の財政状態では、増税と社会保障費削減以外に財源確保の手がないからである。防衛費の増額についていも同じである。

NATO事務所開設を策動
 岸田首相は7月11日からリトアニアで開催される北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席する。首脳会議では東京にNATOの事務所を開設する案も議題となる見込みである。
 ロシアのウクライナ侵攻なども契機となって、岸田政権はNATOとの様ざまな結びつき、交流を深めている。東京事務所開設には米国が対中国包囲網に欧州を引き込もうという狙いがあり、米国が岸田政権を後押ししている。
 東京にNATOの「前線基地」ができれば日本などと安全保障の議論や具体的連携が深められることになる。だが同時にアジア太平洋地域の地政学的分断は深まることになる。中国外務省はすでに事務所開設に反対する声明を出している。ロシアもこの構想を支持していない。東南アジア諸国連合(ASEAN)はまだ見解を表明していないが、加盟国の中には地域の不安定化につながるとの懸念が広がっている。
 ASEANは地域の平和と繁栄のため、米中の軍事的対立を含め、地域の不安定化を望んではいない。これまでもNATOはアジア太平洋地域に関与してこなかったし、米国以外はこの地域での「抑止力」になるほどの力はない。
 欧州連合(EU)諸国の中でも、フランスのマクロン大統領は、NATOの地域外への関与拡大に反対を表明しており、ドイツも対中経済政策上、中国への抑止強化には及び腰である。EU内部の足並みもそろっていないが、日本がことさらにNATOの東京事務所開設を強く進めれば、ASEANをはじめアジア諸国と日本との関係を悪化させることにつながることは必至だ。
 岸田首相は欧州訪問の後に中東のサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールを訪問し、「資源外交に加え、複雑化する国際情勢の中で貢献を強化する」としている。だが言うまでもなく、サウジとイランの国交正常化を仲介し、その後の中東の地域情勢の変化をつくりだすなど存在感を高めているのは中国である。中東での米国の居場所がますます狭まる中で、対米追随の岸田首相の中東歴訪がどの程度の成果につながるのか、きわめて危ういものである。
 岸田首相が進めようとする外交は、地域の不安定化と政治的分断を深め、アジアで孤立する時代錯誤の外交である。

対中国外交でも立ち遅れ
 日中平和友好条約が締結されてから8月12日で45年目を迎える。
 昨年は日中国交正常化50周年だったが、この間もわが国岸田政権は米国の対中包囲網の先頭に立ち、中国敵視政策をいちだんと強めている。昨年末の「国家安全保障戦略」をはじめとする「安保3文書」の改定は戦後の安保防衛政策を大転換して、中国を「最大の戦略的な挑戦」として脅威をあおり続けている。敵基地攻撃能力や、日米をはじめ多国間の共同訓練も頻繁に行われ、中国や朝鮮に対する軍事挑発を繰り返している。沖縄・南西諸島、奄美、九州本土でも「台湾有事」を口実にした自衛隊基地の新設、増強をはじめ、ミサイル部隊や弾薬庫の配備など戦争準備を急ピッチで進めている。
 マスコミも連日、中国の脅威をあおりたて、内政干渉の世論作りに躍起になっている。こうした流れに大半の野党は、岸田政権の中国非難に同調する体たらくである。
 こうした中で国民民主党の前原元外相ら野党の議員団が2日、台湾を訪問し、3日に蔡英文総統と会談し、台湾への協力姿勢を示した。議員団には立憲民主、日本維新、国民民主3党の有志12人が参加した。前原は記者会見で「台湾海峡の平和と安定は国際社会全体にとって大切だ」と強調、「野党も台湾を大切にしている。政権交代をなし遂げたときにはいい関係を発展させたい」と語っている。維新の馬場代表も8月上旬に訪台する予定で、与野党が台湾詣でを競うような状況である。
 だが、この間も米欧の主要な経済人や政治家は中国を相次いで訪問し、経済的結びつきを拡大する動きを強めている。わが国だけがそうした流れに取り残されている。
 先日ブリンケン米国務長官が訪米し、更にイエレン財務長官も訪中する予定だが、米国に追随して、ようやくわが国の政治家の一部に同調する動きが出ているようだ。悪いことではないが、わが国の表立った自主的な動きはほとんど見られない。きわめて情けない状況と言わねばならない。

沖縄の新たな動きに連帯を
 日本の対中外交が停滞する中、先に沖縄で開かれた「沖縄を平和のハブとする東アジア対話交流」シンポジウムは、玉城沖縄県知事、鳩山元首相をはじめ、保革を超えた政治家、日中の有識者、経済人、若者らが、平和を構築するために抑止力強化ではなく外交努力を求めることと併せ、沖縄がハブとなって東アジア諸国・地域との対話と交流を深めることの重要性を訴え、大きな反響を呼んだ。特に参加した若者たちの発言が沖縄の新たな運動の立ち上がりを印象付けた。
 岸田政権の時代錯誤の中国敵視、マスコミ、与野党あげての中国非難が横行する中、沖縄のこうした動きは注目すべきである。沖縄県は「地域外交室」を新たに設置し、玉城知事も訪中して沖縄をアジアの平和のハブとして発展させる取り組みを強めている。こうした動きを沖縄県民だけに担わせるのではなく、全国で沖縄県民の闘いと連携・連帯する国民運動として、対米追随から脱却し国の完全な独立を求める闘いとして発展させなければならない。全国でその条件も広がっている。多くの人がそういう道を求めている。中国をはじめASEANなどアジア太平洋の諸国と経済的にも共に繁栄する道こそわが国がともに生きていける道である。(H)

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