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2023年5月25日号 1面

時代錯誤、対米追随の
中国敵視は戦争への道

「島々を戦場にするな」の声、
全国に広げよう

 沖縄は5月15日、1972年の「本土復帰」から51年を迎えた。
 いまなお広大な米軍基地が県民生活を脅かし、沖縄経済の発展を阻害し続けている。改めて言うまでもないが、沖縄の在日米軍専用施設は1万8483ヘクタール(21年3月現在)で全国の70・3%が集中している。普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題では県と県民の反対を押し切って工事が強行されている。96年の返還合意からすでに27年間が経過しているが普天間返還の道筋は見えない。新基地建設は県と県民の反対を押し切って工事が続けられているが、膨大な予算が投入され、本体着工から丸6年以上たったこんにちも一部の埋め立ては終わったものの、海底の軟弱地盤問題などで、県の埋め立て承認をめぐる法廷闘争が続けられるなど、「完成」の見通しすら立っていない。
 米軍基地をめぐる問題は普天間だけでなく、環境破壊や後を絶たない米兵よる事件・事故の多発など、何ひとつ基地「負担」の軽減にはなっていない。沖縄県民が「負担」しなければならない理由は何もない。

軍備増強・拡大急ピッチ
 政府は近年、中国の海洋進出や「台湾問題」などを口実に、自衛隊基地の新設や増強を急ピッチで進めている。基地強化は沖縄だけでなく奄美諸島や九州各地など西日本一帯で広く進められている。
 岸田政権は、日米間の合意のもと、昨年12月の「国家安全保障戦略」をはじめとする安保「3文書」を改定してこれまでの「専守防衛」から大転換して、長距離ミサイルなど敵基地攻撃能力の保持など軍備増強を進めている。防衛費も対国民総生産(GDP)比2%への大幅引き上げを、国民からの収奪で賄う計画である。
 宮古島や石垣島など先島諸島に自衛隊駐屯地が新設され、ミサイルの配備や弾薬庫の建設が進み、「再び戦場になる」という危機感が県民・地域住民の間で高まっている。これは先島だけでなく、奄美諸島や馬毛島など九州各地でもそうである。当初、自衛隊の配備を受け入れた地元自治体でも「こんなはずではなかった」という声が上がるのは当然である。
 さらに、日米間をはじめ多国間の軍事訓練も、台湾有事を想定して、年々頻繁に行われるようになり、島しょ奪還のための上陸訓練や市街戦の訓練も行われるようになっている。
 歴代政権は、これまでも口を開けば「基地負担の軽減」を沖縄県民にうそぶいてきたが、本当に「ウソ」だった。

ますます強まる中国敵視
 岸田政権は、7カ国首脳会議(G7)の議長国として、5月19日からの首脳会議(広島サミット)を成功させ、政権浮揚と日本外交の成果をアピールしようと、年初から狂奔してきた。蔵相会合をはじめさまざまな分野の担当相会合も各地で開いて、意思一致をはかってきた。さらにG7とは立場を異にする20カ国・地域(G20)議長国のインドや東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国のインドネシアをはじめとするグローバルサウスと呼ばれる諸国も招待し、G7側への取り込みを画策してきた。その中心的な課題は、ウクライナに侵攻を続けるロシアへの非難と制裁強化、さらにそれと強引に結びつけて中国への敵視と対抗を強めることだった。
 20日発表された「首脳宣言」でもロシアへの制裁強化、中国への対抗が強く打ち出された。宣言の「地域情勢」では、かなりの部分が対中国に割かれ、米欧日だけで勝手に決めた「法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋」なる秩序を押し付けるものだった。
 日米だけでなく、近年、独仏をはじめ欧州連合(EU)諸国やEUから離脱した英国も、成長するアジアへの関与を強めようと、「インド太平洋」戦略を策定して、政治的・経済的な関与だけでなく、軍艦を派遣したりわが国との共同訓練を行ったりするなど軍事的関与も強めている。
 G7サミットは、少数グループによる新たな緊張激化の開始を宣言した。
 中国は即座に「首脳宣言に断固反対する」という態度を表明したが、当然のことである。

時代錯誤の岸田政権
 岸田政権は、G7サミットの「成功」を得意げに最大限にアピールして、政権浮揚に利用したいのだろう。だが、これは全くの時代錯誤である。すでに世界の流れは、G7で何か決めたからといってそれで動くわけではない。経済的な影響力も、G7のGDPも世界の4割にまでに落ち込んでおり、世界の経済動向は中国を含めたそれ以外の諸国に左右されるようになってきている。政治的には、ロシア制裁に加わらない国が世界の大半であり、孤立しているのはG7の方である。「制裁の抜け穴」をふさぐと息巻いても、制裁に加わっていない諸国には関係ないし、迷惑な話である。
 岸田首相がG7サミットに没頭している間にも、沖縄では岸田政権の戦争準備に反対する県民の新たな闘いが開始されている。
 沖縄県議会は3月30日、「沖縄を再び戦場にしないよう求める」として、政府に「日中両国において確認された諸原則を遵守(じゅんしゅ)し外交努力」を求めるという意見書を採択し、政府に申し入れた。
 沖縄では、「再び戦場になる」という危機感から、日中間で戦争を引き起こさせないための闘いが新たに始まった。沖縄県も県独自の外交活動を強めている。この5月だけでも沖縄各地で大小の集会や取り組みが数十回も開かれて「島々を戦場にするな」の声が上がっている。だが、本土のマスコミも含めてこうした動きを国民に知らせず「黙殺」し、G7が世界の中心に座っているかのように印象付けようとしているが、時代錯誤で「井の中のかわず」そのものである。
 今こそ時代錯誤の岸田政権と闘う広範な国民運動をつくり上げるため、沖縄県民の闘いと連帯する声を全国で上げよう。(C)

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