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2023年4月15日号 1面

統一地方選挙後半戦

住民のくらしと
命を守り平和を築く

 統一地方選挙前半戦が終わり、4月23日投票の後半戦と5つの国政補欠選挙が闘われている。
 前半戦の結果についての詳細は省くが、9つの道府県の知事選挙の投票率は、保守分裂となった奈良や徳島など4つの知事選で前回を上回ったが、残り5つの選挙では前回を下回り、北海道と鳥取が過去最低となった。与野党が全面対決したのは北海道だけで、後は維新対非維新、保守分裂、与野党の相乗りという構図で、有権者にとって選択の幅は狭かった。大阪府知事と市長のダブル選挙を維新が制したほか、奈良県知事選挙でも維新の公認候補が当選した。
 道府県議会議員選挙では、自民党は、41の道府県議会で合計1153議席と、改選前から86議席減らした。
 公明党は、169議席で、目標の170議席全員当選を果たせなかった。
 立憲民主党は、185議席で、改選前の200議席に届かなかった。国民民主党は3議席減らして31議席だった。
 共産党は、改選前から24議席減らして75議席となった。新潟、福井、静岡、福岡、熊本の5県で議席を失った。
 日本維新の会(大阪維新の会)は、18の道府県で124議席を獲得し、選挙前の59議席から倍以上に増やした。このうち大阪府議会では、9議席増の55議席を獲得して、過半数を維持したほか、大阪市議会で初めて過半数を獲得した。兵庫でも21議席と選挙前の4議席から大きく伸ばした。新たに神奈川で6議席を獲得したほか、北海道や福岡などでも初めて議席を獲得した。
 社民党は6議席から3議席に減らした。
 前半戦について言えることは、低投票率に見られるように与野党が正面から地方政治を争っていないということである。立憲民主党など主な野党が積極的に候補者を擁立せず、無難な選挙に終始したことが低調の要因のひとつと言える。その中で積極的に候補者を擁立した維新が自民党離れの受け皿になった。
 開会中の国会では低支持率とはいえ岸田政権に主導権を握られたままだ。国会での野党の体たらくが地方選挙にも影響している。

悪化した地域住民の生活
 この4年間も地域住民と地方自治体をめぐる環境は激変した。3年に及ぶコロナ禍に、アベノミクスが追い打ちをかけ、格差と貧困の増大はさらに深刻となった。ウクライナ戦争前からの諸物価高騰で住民の生活はいちだんと苦しく、地域の農林水産業、商工業の経営は危機的となっている。
 こんにち全国の自治体を覆う地域衰退と少子化問題の根源は、歴代自民党政権による、財界中心の対米従属政治にある。市場開放で農林水産業が壊滅的打撃を受け、大店法などの規制緩和で中小零細の商工業、地場産業が成り立たなくなった。大企業は海外で稼ぐが、労働者は生活できる賃金を得られず、国内需要がますます減少した。将来にわたって安定した収入を得られない青年は、結婚することすらままならない。一部の大都市への人口集中は新たな貧困と劣悪な都市環境をもたらしている。
 今回の選挙は、対米従属政治のもとで変貌・衰退してきた地域社会を、住民の力によって地域住民のくらしと命を守る自治体政治に変えていくための重要な闘いである。

徹底した生活・経営支援を
 今回の選挙で問われているのは、何といっても自治体が住民の命と生活と経営を守ることである。
 コロナ禍は、公的衛生・医療の大幅削減による惨禍を浮き彫りにした。公的医療への支援拡充が急務である。政府が進める病床削減計画を撤回させ、救急医療、地域医療体制を確保するため、自治体に必要な措置をとらせるべきである。
 急速に進む物価高騰で、非正規雇用者、ひとり親世帯、女性など低賃金で生活困難を抱える人びとが増えている。今春、大企業を中心に二十数年ぶりに賃上げが実現したが、中小企業では6割にとどまっており、多くの労働者は取り残されたままである。この4月にも食料品を中心に5000品目以上が値上げされた。以降も値上げ計画は目白押しで、わずかな賃上げでは追いつかない実際がある。
 また年金暮らしの高齢者も、医療費や介護保険料の増額などで、生活費を切り詰めざるをえなくなっている。こうした人々が誰ひとり取り残されることのないよう徹底した生活支援をすべきである。
 政府の社会保障切り捨てや負担増に反対して、自治体独自の支援措置を拡充すべきである。就学援助や学校給食費の無償化など子育て支援を拡充・徹底すべきである。
 肥飼料・燃料価格高騰、需要減退などで、酪農など畜産農家をはじめ農林業者は塗炭の苦しみのなかにあり、まさに廃業の危機に直面している。地域の中小零細企業も、コロナ禍での借り入れ返済、原材料の高騰で経営が厳しく、倒産件数は増加している。自治体としての直接支援を急ぐべきである。
 地域での雇用の確保のためにも、農林水産業をはじめ、地域にある産業、資源を生かす政策を発展させるべきである。
 気候変動危機のなかで化石燃料依存から脱却するために、岸田政権が進める安易で危険な原発再稼働ではなく、自治体レベルでの小水力、地熱、バイオなど新たな再生可能エネルギーへの政策転換の取り組みが急務である。

自治体を平和守るとりでに
 岸田政権は、「安保3文書」の改定などで対中国の日米軍事同盟を強化し、軍事大国化の道を急いでいる。九州・沖縄、南西諸島では自衛隊駐屯地の新増設、ミサイル配備や弾薬庫建設など基地機能が格段に強化されている。中国を念頭に日米をはじめ多国間の軍事演習が本格化し、全国の自治体が管理する港湾、空港などの使用も拡大している。敵基地攻撃能力保有や専守防衛からの転換を表明した「安保3文書」閣議決定の撤回を求めるとともに、戦争準備に協力しない自治体としての姿勢を示すことが急務となっている。
 そういう中で、沖縄県議会は3月30日、外交と対話による平和構築を求める意見書を賛成多数で可決した。「安保3文書」における防衛力強化方針に対し、都道府県議会が懸念を示した意見書の可決は初めてとなる。
 意見書では抑止力の強化が地域の緊張を高めるなどとし「南西地域へのミサイル配備など軍事力による抑止ではなく、外交と対話による平和の構築に積極的な役割を果たす」ことを政府に求めている。また、中国を念頭に防衛力強化が進められているとした上で、日中両国の経済的つながりの深さを指摘、両国で確認されてきた諸原則の順守と友好関係発展による問題解決も政府に求めている。こうした「二度と戦場にはしない」という沖縄県民の闘いと連帯する動きを全国の自治体・議会で広めよう。
 全国の自治体は、中国と密接な経済関係をもち、47都道府県全部、379の自治体が友好姉妹都市を結んでいる。中国敵視の政策ではなく、中国との友好、共生をめざすことが地域経済発展のためにも必須である。政府の誤った外交政策に対して、日中関係を発展させる自治体独自の取り組みも重要である。

岸田政権に厳しい審判を
 喫緊の課題は、岸田政権が踏み込んだ戦争準備に反対し、平和を求めることである。
 歴史的転換期のなか、わが国が生きる道は、対米従属政治から脱却し、平和の環境のもとで貿易・国際関係を維持・発展させるとともに、食料・資源・エネルギーの自給率を高め国内産業を発展させることである。地方経済の再建、子育て環境の整備、安定した働く場をつくり、豊かな国民生活を保障する。そのためには、一握りの財界中心の政権から国民大多数の政権へ、政治の根本的な転換が不可欠である。
 わが党は、党籍のある候補者の当選をめざすとともに、地方選挙後半戦でも、この方向で連携できる首長、議員候補者を支持して闘う。岸田政権と地域に巣くう「敵」に対し、地域住民ととも奮闘する候補者に期待する。岸田政権に厳しい審判を下そう。(H)


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