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2023年3月15日号 1面

新たな局面を迎えた米中関係

独立・自主の進路闘いとろう

 米国の対中抑止政策がエスカレートする中、中国も米国への対抗を強めている。米中関係は新たな局面に入りつつある。米中の複雑な闘争は続き、わが国の生き方が真剣に問われる情勢となっている。
 ロシアのウクライナ侵攻から1年となる2月、安全保障についての国際会議であるミュンヘン安全保障会議を前に、米国は突然、中国から飛来したという観測気球を戦闘機で撃墜し、中国が世界の安全保障上の「脅威」であるかのように印象付けようと騒ぎ立てた。ブリンケン米国務長官は、昨年11月の米中首脳会談で合意した中国訪問を中止した。わが国のマスコミも米国に同調して連日騒ぎ立てた。
 2月18日、ミュンヘンでのブリンケン国務長官と中国外交トップの王毅中央外事委員会弁公室主任との会談で、ブリンケン氏は「中国はロシアに殺傷能力のあるもの(=武器)の提供を検討している」と発言し、「提供すれば、普通ではない制裁が待っている」と王毅氏に警告したと表明した。中国が武器を供与するという根拠はまったくなく、これは通常の外相会談というより米国の中国に対する「脅し」であった。当然、中国側は強く否定し、抗議した。

「対話」をぶち壊した米国
 米国がそれまでの中国に対する「関与」政策から「抑止」政策への転換を表明したのは、オバマ大統領の2011年のオーストラリア議会での「アジア太平洋リバランス」の発表だった。1972年のニクソン訪中以来、40年ぶりに米中関係は再び対立の時代に入った。
 対中抑止政策は年々拡大し、トランプ政権下では、主に貿易・通商などに焦点が当てられた。また、18年10月、ペンス副大統領は演説で、貿易・経済だけでなく安全保障分野でも「断固として立ち向かう」と述べた。事実上の宣戦布告とも言えるものだった。だが、「米国第一」のトランプ政権は、主要7カ国(G7)など西側の同盟国は置き去りにした。
 バイデン政権は、G7の同盟再構築を足がかりにした中国包囲網拡大を急いだ。日米豪印のクアッドに加え、21年9月には米英豪の安全保障協定(AUKUS)を結び、22年5月には「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)を発足させた。8月にはペロシ米下院議長が訪台し、軍事的緊張を一気に高めた。
 昨年10月の中国共産党大会を前後し、バイデン政権は初の国家安全保障戦略を発表、中国への対抗を最優先とした。経済では半導体関連製品の輸出規制を強化、先端半導体分野で中国を徹底的に締め出す方針を打ち出した。12月には中国ハイテク企業36社・団体への追加輸出を禁止し、今年1月には日本とオランダに半導体製造装置の対中輸出規制を合意させた。
 米国の意図は、今回の気球撃墜問題でミュンヘンでの外相会談をぶち壊してたように、なりふり構わず中国の脅威を世界にアピールし、中国への抑止を強めることである。
 米国はますます前のめりになって中国抑止に突き進み、米中の対立は修復不可能なほどに拡大している。

米国への対抗に転じた中国
 一方、中国は2月21日、米国主導の国際秩序に対抗する「グローバル安全保障イニシアチブ」(GSI)の内容を発表した。3期目を迎えた習近平指導部が、対外安全保障と関連した具体的な行動に乗り出したと言える。GSIは昨年4月、中国海南省で開かれたボアオ・アジア・フォーラムで、習氏が示した国際安全保障に関する中国の構想を具体化し体系化したものである。
 それには6つの原則と20の具体的な協力方針が含まれている。6つの原則は、各国の主権と領土の完全性の尊重、主権平等と内政不干渉などを国際関係の根本とし、国連憲章の遵守(じゅんしゅ)、冷戦思考と一方主義・覇権主義の排除などといった内容となっている。
 20の主要方針では、東南アジア、中東、アフリカ、中南米などで現地の国家同士が締結した既存の安全保障関連合意の枠組みを守り、世界が直面している食糧やエネルギー安保、気候変動、防疫、宇宙安保、対テロなどの問題に協力しなければならないというもので、これは中国が国際安全保障に関してこれまで主張してきた内容が繰り返されている。
 これに先立つ20日、中国外交部は「米国の覇権・覇道・覇凌(はりょう)とその害」という報告を発表した。気球問題からロシアのウクライナ侵攻に至るまで、さまざまな点で米中対立が悪化していること、そして政治、軍事、経済、テクノロジー、文化の分野で世界に対する米国の振る舞いについて中国政府がどのように考えているかを示し、覇権的な行動をやめるよう求めた。
 さらに24日には、12項目の「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」を発表し、ウクライナ和平へ向けての中国の立場を示した。これは、先に発表されたGSIイニシアチブの最初の具体化と言えるものである。
 昨年の中国共産党20回大会で習近平体制は3期目に入った。さらに今月の全国人民代表大会(全人代)で中国政府の機構改革を含む新体制を発足させた。
 この時期に、これら3つ文書が発表された経緯や内容を見ると、中国が米国に対抗していく態度を明確にしたということで、米中関係は新たな局面に入りつつあると言える。

国の進路が問われている
 中国への抑止を仕掛けたのは米国である。その抑止政策は拡大し、米国の中国に対する態度はいちだんと強硬になっている。これは、米国の余裕のなさの表れでもある。米国内は来年の大統領選挙へ向けて民主、共和の党派闘争が激化し、対中政策をめぐる競争も激化している。
 米国は、中国包囲のために、ロシア制裁に同調しないいわゆるグローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国の取り込みに必死になっている。だが、帝国主義・植民地主義による抑圧・支配の歴史を持つ新興国・途上国を取り込むのは容易ではなかろう。
 これらの諸国の多くは中国が最大の貿易相手国となるなど、経済的結びつきも強い。この点でも米中の攻防は激化するだろう。
 米中の複雑な闘争がどのくらい続くかは今のところはわからない。だが、米中関係が「緩和」より「激化」の方向へ向かえば、偶発的な衝突の可能性はますます高まる。
 米国は「台湾有事」を口実に中国への軍事的挑発を繰り返している。
 衰退する米国はもはや単独で中国に対抗する力はなく、わが国の力を必要としている。その中で岸田政権は米国の先棒を担いで、日米同盟を深化させ、中国への対抗を強めている。そうすることでアジアでの権益を拡大し、覇権を握ることを夢想している。これはわが国を破滅に導く極めて危険な道である。
 岸田政権は、昨年12月の安保3文書の改定で「専守防衛」政策を大転換し、「敵基地攻撃」を含む軍備増強をさらに進めている。すべて中国を主な敵国と想定したものである。
 「台湾有事」でもし軍事衝突が起これば南西諸島をはじめ沖縄・九州が巻き込まれるのは必至であり、偶発的な軍事衝突から戦争に拡大する可能性に沖縄県民をはじめ多くの住民が危機感を募らせている。また日本にとっても最大の貿易相手国である中国と事を構えることに経済界も含めて危惧が広がっている。
 与野党の心ある政治家の中にもそうした危機感はあろう。
 米国に追随せず、アジアで平和・共生のうちに生きていける独立・自主の国の生き方を正面から提起し、岸田政権の亡国・戦争準備の道と闘う連携をつくり上げるためにわが党は全力をあげる。(H)


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