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2023年3月5日号 1面

第2次世界大戦後の
世界秩序は大きな転換点

米国の悪あがきに
追随せず国の独立を

 ロシアがウクライナに侵攻して1年、第2次世界大戦後かつてなかった欧州諸国を直接・間接に巻き込んだ戦争が長期化している。米国を先頭に北大西洋条約機構(NATO)諸国によるウクライナへの武器供与の拡大などで危機はいちだんと深まっている。戦闘や爆撃による犠牲者だけでなくウクライナから800万人以上が依然として周辺国に避難したままである。
 ウクライナ戦争の影響は当事国や周辺国だけでなく、コロナ危機の影響に加えてロシアへの制裁で、穀物、資源・エネルギーなどをさらに高騰させ、世界的なサプライチェーン(供給網)の分断などで、世界経済に深刻な影響を及ぼしている。
 だが、ロシアへの一方的な制裁に加わっているのは米国など先進7カ国(G7)やNATO加盟国、その他の一部の国を含めて50カ国程度に過ぎず、大国である中国やインドをはじめ世界の大半の国々は制裁に反対か、批判的あるいはさめた態度である。ロシアを国際的な決済網である国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除したが、むしろドル依存からの脱却を目指した人民元など他の通貨による石油・エネルギー代金決済の動きが広がっているのも事実である。また、英・仏・独など欧州諸国はエネルギー価格高騰をはじめ物価高騰で国民生活に大きな打撃となって跳ね返り、賃上げを要求する労働者の大規模なストライキが繰り返され、各国内の政治を不安定化し激しく揺さぶっている。こうしてみると、1年たってみて制裁がロシアへの打撃であることは間違いないが、戦争終結につながるほどの効果が上がっているとは言えない状況である。
 米国を頂点としたG7の政治的・経済的影響力の低下を背景に、第2次大戦後の世界秩序、国際関係が大きく転換していることがますます明らかになった。

国連決議の構図変らず
 2月23日、国連特別総会はウクライナ侵攻から1年に合わせ、ロシア軍の撤退、ウクライナの永続的な平和の実現などを求める決議を賛成多数で採択した。決議には141カ国が賛成したが、約50カ国が反対や棄権に回って、昨年春の侵攻直後の特別総会で決議した時とその構図は変わらなかった。しかも、今回の決議ではウクライナが求めた「特別法廷の設置」には言及せず、戦争犯罪の「調査と訴追の必要性」との文言にとどめたことで、辛うじてグローバルサウス(南半球を中心とする新興国・途上国)の支持を集めたに過ぎない。
 国連総会はウクライナ侵攻を巡って、これまで6回の決議を採択したが、ロシアに損害賠償を求めた昨年11月の決議ではアフリカ諸国の賛成が半減するなど、途上国は懲罰的な性質の強い決議には及び腰である。米欧の途上国からの支持確保は容易でない状況であり、今回の総会でも国際関係が大きく変わっていることがあらためて示された。

中国への対抗強める米国
 歴史的な大転換が進む中、衰退する米国は世界的な覇権にしがみつくために、台頭著しい中国への対抗と抑止をこの期間も一段と強めてきた。バイデン政権はG7の同盟関係強化を足がかりにして、米英豪(AUKUS)や米日豪印(クアッド)、経済ではインド太平洋経済枠組み(IPEF)など対中包囲網の構築を急いできた。アジアでは台湾問題を口実に中国への内政干渉を強め、「台湾有事」を口実にした軍事的緊張を作り出している。
 米国は、ウクライナ情勢を巡っても、中国とロシアを孤立化させようと執拗に世論をあおり立てている。
 2月初めには気球撃墜問題で「中国の脅威」と騒ぎ立て、ブリンケン国務長官は予定していた訪中を中止した。さらにミュンヘン安全保障会議の際の米中会談でブリンケン氏は「中国がロシアに武器を提供しようとしている。武器の提供をすれば、普通ではない制裁が待っている」などと発言、中国側は強く否定し「戦場に武器を送り続けているのはどの国だ。そんな国に、他国に対して四の五の言う資格はない」と抗議した。当然である。
 24日には、米政府はロシアへの追加制裁で中国企業へも制裁措置をとることを発表するなど、ここにきて中国への対抗を一段と強めている。
 一方、中国は同じ25日、11項目の「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」を発表した。その主な内容は、「各国の主権の尊重」「冷戦思考の放棄」「停戦」「和平交渉の開始」「人道的危機の解消」「民間人や捕虜の保護」「原子力発電所の安全確保」「食糧の外国への輸送の保障」「一方的制裁の停止」などといったもので、ウクライナ和平へ向けての中国の立場を示したものである。米国や同盟国が戦争を長引かせ「和平」へ向けて動かない中で、重要な動きであり、支持できるものである。
 米国は、来年の大統領選挙を控え、民主、共和の党派闘争も激化するという国内事情にも縛られている。米国の対中対抗のため同盟国であるわが国への圧力もますます強まるだろう。

戦争準備ひた走る岸田政権
 岸田政権は、米国に追随して中国への対抗を一段と強めている。今年のG7議長国として矢継ぎ早にオンラインの首脳会談や林外相が主宰する外相会合などで、中国を念頭においてG7の結束と対抗策の強化を矢継ぎ早に打ち出している。
 また、昨年の安保3文書の改定で日米同盟のさらなる強化と軍事一体化へ踏み込み、防衛力の抜本的強化、軍事大国化を一挙に進めようとしている。中国やロシア、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への敵視政策はいっそう露骨になって「敵基地攻撃能力」の保有で、米国から巡航ミサイル「トマホーク」を400発購入することなども決めたようである。九州や沖縄・南西諸島などへの自衛隊配備と基地強化、日米を中心に多国間の共同軍事訓練、有事を想定した民間空港や港湾の使用など戦争準備が着々と進んでいる。
 軍事と併せて経済安保でも米国に追随し、中国経済とのデカップリング(分離)にも踏み込んでいる。
 こうした動きに経済界や保守層の一部にさえ危惧の声が上がっている。日中が事を構えることになれば日本経済への打撃は計り知れない。岸田政権の前のめりともいえる最近の動きは、まさに亡国への道である。
 立憲民主党など野党は総じて、安保・防衛政策で岸田政権と闘わず、むしろウクライナ問題などで応援団ともいう姿勢である。共産党も「軍事対軍事」が悪いと言うだけ、ロシア非難の大合唱に加わり、さらに中国批判をあおる世論操作にも同調するばかりである。
 だが、世界は米欧が「笛吹けど踊らず」である。バイデンが「民主主義対専制主義」などと旗を振って中ロを標的にして世界の分断を図ったが、世界の多極化の流れは止められない。米国に追随してわが国の生きる道はない。軍事大国化のための増税と戦争準備に反対して広範な世論を作り上げる条件は広がっている。増税と戦争に反対してわが党と共に闘おう。(C)


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