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2023年2月25日号 1面

23春闘/自らの力と
闘いで要求を勝ち取ろう

労働運動は国民的
闘いの先頭に立て

 内外ともに激動する情勢の下、今年の春闘がスタートした。
 こんにちの情勢は、以前にも増して労働運動の存在意義を鋭く問うような鋭くかつ深刻な問題を提起している。
 ウクライナ戦争の長期化やコロナ感染拡大などによる世界的な供給網(サプライチェーン)の混乱、食糧・資源・エネルギーの高騰、米国や欧州のインフレ抑制のための高金利政策による景気減速、新興諸国で再燃しつつある債務危機、また、気候変動によって世界各地で多発する自然災害など世界は大激動である。
 さらに、米国は対中抑止政策を強化し、世界的な分断を進め、緊張をあおっている。わが国は米国に追随し、日米同盟を基軸としながら対中抑止に加担し、アジアでの覇権を夢想して、軍事大国化の道に踏み込んでいる。
 わが国は、岸田首相が今年の施政方針演説で「歴史の分岐点に立っている」と述べたように、激動する内外情勢の下どのように生きていくのか、大きな転換点を迎えている。
 昨年の安保3文書の改定で、わが国の安全保障政策を大転換し、「敵基地攻撃能力」保有など、米国とともに中国や朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)やロシアなどとの軍事的対決を可能にする道、戦争準備に公然と踏み出した。米国があおる「台湾有事」となれば沖縄・南西諸島や九州が直接戦場になる可能性もあり、労働者にとどまらすべての国民生活は一変する動きである。
 したがって、目前の春闘では、日々苦しくなっている生活の中で、労働者の家計と生活を守るために闘い、大幅な賃上げをはじめ諸要求を勝ち取ることは第一の課題であるが、わが国を戦争に巻き込ませないために広範な国民運動の中心として労働運動が果たすべき役割はさらに重要になっている。

日々悪化する国民生活
 世界を見渡せば、記録的なインフレが進む米欧諸国ではインフレ率を上回る大幅な賃上げを要求する労働者のストライキが頻発し、各国に拡大している。
 イギリスでは鉄道や学校、医療など空前の規模でストライキが繰り返され政権を揺さぶっている。フランスでも政府が進める年金制度改悪に反対する労働者の闘いが大規模なストライキや大衆行動となって広がっている。米国でも新たに労組を結成する動きが起きたりしている。生活を守るためにストライキを含む直接行動に訴えるのは当然のことである。
 そういう中で、日本の労働者の賃金水準(2021年)は、経済協力開発機構(OECD)38カ国の中では平均以下の24位で、先進7カ国(G7)の中でも最下位という惨憺(さんたん)たる状況となっている。
 低賃金・非正規労働者も増え続け、労働者のなかでも賃金格差が大きく広がっている。賃金が物価上昇に追いつかず、実質賃金は長年低下し続けてきた。
 世界的なインフレの進行はわが国にも及び、一昨年来の物価上昇の流れは国民生活を日々脅かすものになってきている。総務省が発表した1月の東京都区部の物価は、生鮮食品を除く総合指数が4・3%上昇し、第2次石油ショックの1981年以来、41年ぶりの伸び率となった。円安や資源高によりエネルギーは26・0%、生鮮を除く食料が7・4%の伸びである。生活実感からすれば実際はもっと高い伸びである。以降も電気料金をはじめ諸物価の値上げは相次ぐ予定で、生活を守り、維持していくための大幅な賃上げ要求は当然である。

要求実現に全力を
 連合は今春闘で、ベアで3%程度、定昇分を含め計5%程度の賃上げを目指すとしている。1991年以来の高い要求水準だが、実現するのは容易ではない。
 すでに電機や自動車など主要労働組合が経営側に要求書を提出、3月 日の一斉回答へ向けて交渉が始まっている。電機大手は 年ぶりの高水準で昨年の2倍強の7000円のベースアップを要求、自動車大手各労組も1万円を超える要求を掲げている。他の業界でも経営側からの賃上げ表明も目立つが、物価上昇分を上回る水準に達するかどうか、また大手だけでなく全産業、中小も含めた賃上げが実現できるかは一つの焦点である。さらに未組織や非正規労働者の賃金底上げにつなげられるかはもっと難題である。

政労使とも同じ土俵か
 今春闘に際して経営側は、「経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」でも賃上げについて「前向きに検討することが望まれる」として会員企業に求めている。そのためには、生産性の向上、伸びる産業への円滑な労働力の移動とそれを後押しする「ジョブ型雇用」、「年収の壁」などの制度面の改善などが必要としている。
 連合の芳野会長は「リーマン・ショックなどの経済的ショックが起きると、経営側は短期利益の追求や株主重視の姿勢を強め、人件費や設備投資を抑える。対する組合側も雇用の維持が第一となり、賃上げに強気で臨めなかった。コロナ禍と物価高で国民の多くが苦しんでいる中での今回の春闘を分岐点に、労使双方が力を合わせる方向に変わっていくべきだ」として「特に重要となるのは、従業員数の多い中小企業の賃上げ。仕入れ価格や人件費の高騰分を商品やサービスの価格に反映し、さらなる賃上げにつなげていくことが求められる。中小企業の取引相手に対し、価格転嫁を認める公正な取引の推進を訴えていきたい。各組合は賃上げと同時に、非正規の正社員への転換についても積極的に要望する必要がある」などと述べ、今年の春闘を転換点としたいとしている。  岸田首相は、所信表明で、政権が掲げる「新しい資本主義」の課題の一つとして「構造的な賃上げ」を挙げている。そのために、足元での物価上昇を超える賃上げ、中小企業における賃上げ実現に向けた生産性向上、下請け取引の適正化や価格転嫁の促進、フリーランスの取引適正化対策の強化、非正規雇用の正規化、企業の生産性向上のためのリスキリング(学び直し)による能力向上支援、日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動という「三位一体の労働市場改革」などが必要だと述べている。
 こうしてみると、経営側も組合側も政府もほぼ同じ認識である。労使で「賃上げムード」が宣伝され、期待も高まっているが、企業や経営側はあくまで慎重であるし、政府は掛け声だけで済む。結局、要求を実現できるか否かは労働者の闘い方にかかっている。労働者自身の賃上げは欧米のようにストライキなどを含む「自らの力と闘いで勝ち取るもの」で、経営側や政府からお膳立てしてもらうものではなかろう。

労働運動は連携を広げよう
 経済情勢の激変で、悪化しているのは労働者の生活だけではない。農家は肥料・飼料、資材などの高騰で多くが経営困難に直面している。とりわけ酪農など畜産農家の状況は深刻である。零細事業者、自営業者も急激な物価高騰にあえいでいる。
 かつて「国民春闘」を標榜(ひょうぼう)する闘いがあった。そのすべてが良かったわけではなく限界もあったが、少なくとも労働組合が国民各層と連携を広げようという闘いは、広い意味で政治変革を展望できる闘いとして振り返ってみてもよい。さらに大きな転換点にあるわが国で、米国から真の独立を勝ち取り、勤労者、国民のための政治を実現するため、国民運動の中核として労働運動が果たすべき役割は大きい。
 連合の春闘スローガンにある「くらしをまもり、未来をつくる」ためには労働運動が世界を語り、国の生き方をもっと語ることが求められる。    (H)


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