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2023年2月15日号 1面

日米軍事一体化で
亡国の道突き進む岸田政権

増税と戦争反対の
運動高めよう

 岸田政権は昨年末、「国家安全保障戦略」をはじめ「安保3文書」の改定を閣議決定した。岸田首相は3文書改定を手土産に1月、バイデン米大統領との首脳会談を行い、中国を「増大する挑戦」などと位置付け、日米のさらなる軍事一体化を進め中国に対抗する戦争体制づくりに踏み込んだ。生活苦にあえぐ国民への増税による防衛費の増額の方針も表明した。
 今回の安保3文書の改定は、わが国が戦後曲がりなりにも維持してきた「専守防衛」という安全保障政策の基本を大転換するものにもかかわらず、国民に説明もなく、国会に諮ることもなく、閣議決定によって決められたきわめて一方的なものである。これは集団的自衛権などに踏み込んできた安倍元首相らと変わらぬ強権的な手法である。
 衰退する米国は、台頭する中国を抑え込むために、「台湾有事」などの口実でわが国を中国対抗の最前線に立たせ、軍事的緊張をあおっている。
 わが国の一部でも「米国が弱まった今、独自の軍備拡張が必要」という考えも公然と唱えられているし、多国籍企業の独占的利潤の追求という狙いもあるが、大勢はあくまでも日米基軸で対米追随の枠内の話である。
 ウクライナ戦争にみられるように世界の流れが大きく転換するなかで、わが国が独立・自主の道に進めるのか真に問われている。岸田政権が進める軍備拡大、戦争準備に対して国民的な反撃を開始しよう。

急速に進む戦争準備態勢
 戦争準備態勢は安保3文書の改定などを待つまでもなくこれまで既成事実が積み重ねられてきた。
 「台湾有事」で中国と対抗することを想定して、沖縄など南西諸島、さらに九州本土での自衛隊の部隊配備や改編、基地建設など戦時体制の強化が急ピッチで進んでいる。「専守防衛」のための自衛力強化を通り越して「敵基地攻撃」「反撃能力」「継戦能力の強化」などへの大転換のための体制づくりである。
 また日米の共同訓練や多国間の共同訓練も実戦を想定した訓練となってきている。昨年11月には沖縄・先島から奄美大島などにかけて日米の大規模共同訓練「キーン・ソード23」が行われた。奄美大島では、ウクライナ戦争でも使われている米軍の高機動ロケット砲「ハイマース」などを使った離島防衛訓練、徳之島では日米が一体となった離島奪還訓練が行われた。徳之島では、南西諸島としては初めてオスプレイが参加、16式機動戦闘車(MCV)も配置された。台湾に最も近い与那国島にもMCVが初めて配備され米軍との共同訓練が行われた。

基地強化や部隊配備進む
 ざっと見ても九州・沖縄への主な基地強化や部隊配備の強化などは以下のようである。
・与那国島 2016年に陸上自衛隊の沿岸監視部隊が配備されたが、本年度末までに電子戦部隊に加えてミサイル部隊を配備
・石垣島 地対艦・地対空ミサイルの運用部隊と、武力攻撃への初動対応を担う警備部隊の駐屯地、弾薬庫、訓練場など設置
・宮古島 すでに陸上自衛隊駐屯地とミサイル部隊を配備
・沖縄本島 陸上自衛隊第15旅団を師団に格上げし、部隊を増強。ミサイル部隊配備。辺野古新基地建設強行
・奄美大島 南西地域の兵站・機動展開拠点として巨大な(石垣、宮古の数倍)陸上自衛隊奄美駐屯地、瀬戸内分屯地を開設。ミサイル部隊配備
・馬毛島(鹿児島県西之表市) 米軍艦載機訓練の移転と自衛隊基地整備計画の着工
・海上自衛隊鹿屋基地(鹿児島県鹿屋市) 米軍無人偵察機の配備
・航空自衛隊新田原基地(宮崎県新富町)最新鋭ステルス戦闘機F35Bの配備
・陸上自衛隊水陸機動団(長崎県佐世保市) 日本版「海兵隊」発足
・佐賀空港 陸上自衛隊オスプレイ配備計画
・陸上自衛隊西部方面総監部(熊本市) 地下司令部化計画
・航空自衛隊築城基地(福岡県築上町) 米軍訓練受け入れのための滑走路延長など基地拡張
 これらが「専守防衛」のためではなく米国と一体となって中国との戦争を進めるための準備であるのは明らかである。
 こうした動きに対して与那国島などでは、当初は自衛隊配備に地元も賛成の世論が多数だったが、次々に強化される施設やミサイル部隊配備、さらに米軍との共同訓練にまで戦争体制が拡大する中で「こんなはずではなかった」などの世論が高まりつつある。辺野古新基地建設に反対する沖縄県民の闘いは粘り強く続いている。各地の基地強化、日米共同訓練などに反対する運動も続いている。軍備拡張に反対する闘いは喫緊の課題である。  安保3文書の改定で、岸田政権は、文字通り「敵基地攻撃」の拠点として九州本土や沖縄での自衛隊基地強化、部隊配備に拍車をかけようとしている。

活発化する軍事挑発
 昨年8月のペロシ米下院議長(当時)の訪台は、中国に対する悪質な内政干渉であり、台湾をめぐる米中間の緊張を一挙に高めた。先の米中間選挙の結果、米議会下院では共和党が多数となり、今年1月、新しい議長に対中強硬派のマッカーシー氏が就いた。米下院では、「米国と中国共産党の戦略的競争に関する特別委員会」の設置が共和、民主両党の賛成多数で可決された。委員会では経済面での中国依存の見直しや米国内のサプライチェーン(供給網)の強化や知的財産の保護などを大統領に迫ろうとしている。次期大統領選挙へ向けて共和、民主の対立は激化する。またマッカーシー下院議長は、台湾訪問を公言しており、昨年のペロシ訪台に続いて米中間で緊張が高まることは必至である。
 米国の中国に対する干渉と挑発は南西諸島での緊張をさらに激化させる。岸田政権は住民や自治体を巻き込んだ戦争体制に突き進もうとしており、防衛費増額のためとして国民生活にさらに犠牲を負わせる増税も準備されている。
 米国の尻馬に乗った戦争準備などまったく無謀で、国を亡ぼす道である。アジアの平和と共生、互恵の道を進むべきである。わが党は、国民犠牲の増税と戦争の道に反対する大きな国民世論と運動の発展のため先頭に立って闘う。 (H)


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