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2023年2月5日号 1面

歴史的転換期に対米追随
脱却できず亡国の道
突き進む岸田政権

日米軍事一体化と
防衛力強化反対

 第211回国会が1月23日開会され、岸田首相は施政方針演説を行った。
 岸田首相は、演説の冒頭から「歴史の転換点」を強調し「防衛力の抜本的強化」をぶち上げた。
 昨年の施政方針演説や所信表明演説ではいずれも内政問題を最優先課題としたが、今回は大上段から防衛政策に踏み込んだ。
 演説では、「明治維新」と敗戦に続き「われわれは再び歴史の分岐点に立って」いるという時代認識を述べ、その根拠として、「ロシアによるウクライナ侵略」で「国連安保理が機能不全を露呈」、さらに「この機に乗じて、ロシアとの連携を強める国、エネルギーなどで実利を追う国、核ミサイル開発を進める主体など、国際平和秩序の弱体化があらわ」になったこと、さらに気候変動や感染症対策などの地球環境、サプライチェーン(供給網)、エネルギー・食料危機、投資不足やグローバリゼーションの変質・変容などを挙げ、「これまでの常識を捨て去り」「新たな時代にふさわしい、社会、経済、国際秩序を創り上げていく」とした。
 そのために、強力な外交の裏付けとして防衛力の抜本的な強化が必要だと述べている。昨年末閣議決定された新たな「国家安全保障戦略」の具体化、「5年間で43兆円の防衛予算の確保」、また2027年度以降も「裏付けとなる毎年度4兆円の新たな安定財源」が必要として、1兆円程度を増税で賄うという方針を示した。
 ひと言でいえば施政方針演説の核心は「日本の安全保障政策の大転換」という「決断」である。

日米、日欧で対中包囲強化
 岸田首相は「安保3文書」を手土産に1月13日、日米首脳会談を行い共同声明を発表した。中国を「増大する挑戦」と決めつけて戦争準備体制へと踏み込んだ。首脳会談前には日米外務・防衛閣僚会議(2プラス2)が行われ、米国との「統合抑止力」による「一体化」が協議され、日米の軍事一体化をさらに進めることが合意された。
 岸田首相は日米首脳会談に先立って欧州の7カ国首脳会議(G7)各国を歴訪し、首脳会談を行い、日仏、日英、日伊、日独間でロシアへの対抗や中国の動きを意識した安全保障分野の連携を強化していくことを確認した。
 岸田政権は、米国に追随し、日米の軍事一体化を基軸としてG7各国とも安保・防衛協力体制を強化しながら対中国の最前線に立とうとしている。

正面から争えぬ野党
 こうした「安全保障政策の大転換」を、岸田首相は「1年を超える時間をかけて議論した」「慎重な議論と検討を積み重ね、その上に決断した」と演説では述べたが、大半は政府・与党内の見えないところで行われ、まともな議論にならなかった。それに至る過程も内容も国民に説明もなく、「決断」を先行して、米国と約束したのである。米国と約束した後で、国会で「議論」とはまさに対米追随政治そのものである。
 こうした状況を許した野党の側にも問題はある。
 立憲民主党の泉代表は、代表質問で当然防衛費の大幅増を批判した。これは当然だが、「敵基地攻撃能力」をめぐる議論では、国際法違反の先制攻撃になりうることや密接な関係にある他国への攻撃で日本の存立が脅かされる「存立危機事態」での攻撃には反対などを表明したが、自衛隊が長射程のミサイルを保有する必要性には一定の理解を示すなど、いわば相手の土俵の上での議論に乗せられているのである。
 敵が大上段に構えるなら野党の側も、防衛力の抜本強化を打ち出した背景にある「歴史の転換点」という時代認識や国際情勢について、岸田首相が言うように「この国会の場において、国民の前で正々堂々議論をする」のが求められる態度ではないのか。
 立憲など主な野党の日米同盟を基軸とする外交政策では、政府・支配層が進める日米一体化のもとでの中国対抗策動や「台湾有事」を口実とした戦争準備態勢強化とは闘えないのは明らかである。

増大する国民各層の不満
 施政方針演説では、このほかに岸田政権が掲げてきた「新しい資本主義」「子ども・子育て政策」「包摂的な経済社会づくり」「災害対応・復興支援」「新型コロナ」「外交・安全保障」「憲法改正」「政治の信頼」などについて方針が示されたたが、いずれもこの間の政策の焼き直しで、対米追随の外交・安全保障政策を除き、特筆すべきものはない。
 経済再生どころか国民生活はむしろ悪化し、アベノミクス以来の日銀による金融緩和頼みの経済・財政政策はほぼ行き詰まっている。過去数年の巨額の補正予算や予備費の計上などで、政府の借金も積み上がり、財政の硬直化は進み、政策的な余地はますます狭まっている。
 岸田政権が国会前に打ち上げた「異次元の少子化対策」は目前の地方選挙対策のための打ち上げ花火にすぎず、防衛費増額問題から目をそらさせるための術策である。
 米国の経済的な対中デカップリング(切り離し)に追随すれば、中国との結びつきと依存を拡大してきた日本経済も岐路に立たされる。「歴史の転換点」というなら、米国を頂点とした第2次大戦後の世界秩序の大きな転換が進んでいるのが世界の現状であり、「リアリズム外交」というなら、対米従属政治が限界に達し、わが国の経済界もふくめて歴史的転換点に立たされているのが日本のリアルな現実である。
 岸田政権の下で、この一年、国民生活はますます悪化している。歴史的な円安も加わって、消費者物価は四十数年ぶりの上昇である。賃金も追いつかず、高齢者の年金も目減りで、生活費の切り詰めを余儀なくされている。
 政府や経団連も「賃上げ」を口にして労働者の不満をそらそうとしているが、中小企業をふくめて多くの労働者の不満が高まっていくのは確実である。
 「台湾有事」を口実に進められる軍備拡大、戦争準備で沖縄や九州各地は直接戦争の危機にさらされ、沖縄県民は「捨て石にされる」と危機感を強めている。政府の軍備拡大に反対する闘いを粘り強く堅持している沖縄県民の闘いに連帯する声を全国で上げることは軍事大国化に反対する闘いとして重要である。
 また、私たち自身の生活を守るためにも、国民生活を脅かす軍備拡大と軍拡のための増税に反対する声を全国で上げていく行動を広げなければならない。(H)


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