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2022年12月15日号 1面

中国敵視を強めた
岸田政権の一年


日中関係打開打開する
広範な国民運動を

 今年は1972年の日中国交正常化から50年となり、正常化以来最悪と言われている日中関係を打開する機会となる年であった。
 だが、岸田政権は現状打開のための積極的な策は打たず、11月になってようやく対面の日中首脳会談が3年ぶりに開かれた。日本側が働きかけたといわれているが、わずか45分間という短い時間だった。それでも現状打開に向けて一歩進んだとは言えるが、岸田政権の今年の動きは、日中関係を打開するより日中間の対立を激化させる動きが際立った一年だった。
 5月の日米首脳会談で岸田首相は、台湾問題で日本が最前線に立つことを米側に約束、6月には北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、NATOの中国への関与を呼びかけた。対アジア外交でも中国への対抗を打ち出すなど米国の中国抑止政策にひたすら追随する外交姿勢だった。また台湾有事を口実にした軍事大国化。軍備増強の動きを強め、南西諸島などへの自衛隊配備拡大など中国を敵視政策を進めた。さらに今月末の「国家安全保障戦略」など安保3文書の改定で、いっそう中国への対抗を強めようとしている。
 岸田政権のこうした対中国政策と呼応して、国内政治では中国への干渉と挑発が繰り返されている。

人権問題口実に内政干渉
 参議院本会議で 月5日、「新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議」が自公与党や立民、維新、国民、共産などの賛成多数で採択された。決議では中国の名指しは避けたが「国際社会が納得するような形で説明責任を果たすよう、強く求める」とした。また、チベット、南モンゴル(内モンゴル自治区)、香港も挙げ、人権問題について「国際社会に対する脅威」とも指摘した。共産党議員は本会議に先立つ議運で「中国政府による深刻な人権侵害に対する非難を明確にすべきだ」と発言するなど中国への敵意をむき出しにした。採決に加わらなかったれいわ新選組も声明では、中国の人権状況非難や「白紙運動」を支持するなど他の野党と五十歩百歩であった。
 また同日、「日本ウイグル国会議員連盟」「南モンゴルを支援する議員連盟」「日本チベット国会議員連盟」「人権外交を超党派で考える議員連盟」の4つの議員連盟が母体となって「中国による人権侵害を究明し行動する議員連盟」という新たな議員連盟を発足させた。議連には、自民党の高市経済安保相や古屋元国家公安委員長らのほか、立憲民主の松原元拉致問題担当相や維新の馬場代表、国民民主の玉木代表らがメンバーとなっている。設立趣意書で中国の行動を「常軌を逸した人権侵害」と表現して、重大な人権侵害に制裁を科す日本版「マグニツキー法」の制定も視野に活動するなど中国への干渉と敵意がむき出しである。
 衆議院でも2月の本会議で同様の新疆ウイグル等人権決議を超党派で議決するなど中国への内政干渉が繰り返し行われており、議会内での中国脅威論は与野党問わず広がっている。

萩生田自民政調会長が訪台
 自民党の萩生田政調会長は10日、台湾を訪問し、蔡英文総統と会談した。会談では「台湾海峡の平和と安定」に向けて連携を強化することを確認した。また経済面でのさらなる協力について、半導体分野や台湾の環太平洋経済連携協定(TPP)加入など貿易問題についても話し合い、萩生田氏は台湾のTPP加入を支持すると伝えた。
 萩生田氏は11日には、日台関係に関するフォーラムで基調講演し、中国に対して「力による一方的な現状変更の試みは決して容認できない」「軍事的な緊張を高めるような行動は差し控えるべきだ」と批判し、「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事だ」と強調した。日本も抑止力強化の観点から反撃能力を保有、増強すると説明した。「国内総生産(GDP)比2%への防衛力抜本強化も可能な限り前倒しで実現を目指す」とも語った。
 このフォーラムは72年の日中国交正常化に伴う日台断交後の交流50年を記念して開かれた。萩生田氏は「日本と台湾の友情をさらに高みへと押し上げたい」と関係強化に意欲を表明した。
 今年8月にペロシ米下院議長が訪台し、米中間の緊張が一挙に高まったが、その後も米議会議員の訪台や米上院での「台湾政策法」可決など米中間では台湾をめぐって対立が激化している。日本も日華議員懇談会の議員が10月、訪台するなど米側と呼応して中国を挑発する動きが強まっている。今回の自民党三役の訪台は03年の麻生政調会長(当時)以来19年ぶり。与党幹部の訪台は中国に対抗を強める政治的アピールでもあり、こうした日中間の緊張をあおるような行動は容認できない。

日中関係打開への動きも
 政府間の交流が冷え込み、一部の勢力による中国への悪質な干渉と挑発が強まる中でも、民間レベルで日中間の課題を議論し、日中関係を発展させようという努力も続けられている。
 日中間の課題を議論する「第18回東京ー北京フォーラム」(言論NPO、中国国際伝播集団主催)が開催され8日、共同声明「平和協力宣言」を発表した。ロシアのウクライナ侵攻や、米中対立下で高まる台湾海峡の緊張を念頭に、紛争の平和的解決と、世界の分断傾向を助長させないことで基本的に合意したと表明した。
 声明では、(1)ウクライナ危機の平和的解決につながる努力を支持、(2)両国に地域の緊張を高める行動の自制を要求、(3)両国は日中間の政治文書の合意について国民の理解を得られるよう努力、(4)両国が世界経済のブロック化回避、(5)両国が11月の日中首脳会談を政府間交流の正常化につなげるーーなどとした。また、新時代にふさわしい日中関係の構築や地域の平和に向けて「政府だけでなく民間も含めたあらゆるレベルの対話を強化」するよう提言した。米中で激化する経済関係についても「経済のすべてを安全保障で考えるべきではなく協力を前提に話し合いを始めるべきだ」とも呼びかけた。主催者らは「日中間で違いは違いと認めて共通の利益を追求していくことが大事だ」と述べ民間レベルでの日中関係打開の重要性を強調した。
 また、経団連は11月28日、日中両国の企業家らが参加する会合を中国国際経済交流センターとオンライン会合を開いた。会合では世界経済の回復に向けアジア太平洋地域のサプライチェーン(供給網)を安定させることが重要との考えを確認した。日中両国も参加する東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)の適切な履行を通じて協力を深めることでも一致した。こうした動きは注目すべきで、中国への対抗策や分断策がわが国の経済界にとっても死活的な問題であり、日中関係の発展を切実に求めていることが浮き彫りになっている。
 岸田政権が米国への追随をやめ自主的な国の生き方へ舵(かじ)を切ると幻想を抱くことはできない。
 しかし、米中関係、日中関係が険しくなればなるほど、逆に行き詰まっている日中関係の打開を切望する動きも広がり、広範な世論を形成する条件はある。
 来年は「日中平和友好条約」締結から45周年となる。日本が隣国と争わず、アジア諸国と平和と繁栄のうちに生きていく道を進むよう、飛躍の年としなければならない。(H)


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