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2022年10月25日号 1面

国民生活の危機
かえりみない総合経済対策

犠牲押しつけ軍拡
進める岸田政権打倒

 物価上昇が止まらず、国民生活の多方面にズシリとのしかかってきている。
 リーマン・ショック以降の大規模な金融緩和による景気刺激策とカネ余りがもたらすインフレやウクライナ戦争などさまざまな要因が相互に作用して、物価全体を押し上げている。

生活を直撃する物価高騰
 物価上昇は昨年から続いているが、とりわけ今年に入ってからの物価上昇のペースが上がっている。
 国内の消費者物価は4月以降、前年同月比で2%超の上昇が続いている。
 総務省が発表した9月の全国消費者物価指数(2020年=100)は生鮮食品を除く総合で102・9となった。資源高や円安の影響でエネルギーや食料といった生活必需品の値上がりが目立っており、賃金が伸びない中で家計の負担は増している。物価上昇率が3%台となるのは、消費増税の影響を除くと1991年8月以来、約31年ぶりで、物価上昇は13カ月連続となった。食品や電気代など生活に欠かせないモノやサービスなどの「基礎的支出」の上昇率は4・5%で、ぜいたく品を示す「選択的支出」の1・9%に比べて高い状況が続いている。円安の影響で原材料を輸入に頼る品目の上昇が目立っている。生鮮食品を除く食料品は4・6%上昇し、81年8月以来、約41年ぶりとなった。
 都市ガス代は25・5%、電気代は21・5%と大幅に上がった。さらに東京ガスなど大手ガス4社は、12月の家庭向けガス料金の値上げを発表した。東京ガスの標準料金は前年同月比約35%高くなり、過去最高値圏になる。冬の需要期となるため家計の負担がいちだんと増える。
 家電などの家庭用耐久財は11・3%上昇し、75年3月(12・8%)以来、47年半ぶりの上昇率となった。
 旅行に出かける人が増えた影響で宿泊料も6・6%値上がりした。
 食料品の値上げが相次ぐほか、これまで物価全体の押し下げ要因だった携帯電話料金の割安プランの影響もなくなって物価上昇率は、年内に3%半ばに達すると見られている。
 飲食料品メーカーが相次ぎ実施した商品の値上げで 月の物価も押し上げられている。
 店頭価格を基に算出する物価指数は18日時点で前年の同時期より4・5%上がり、91年7月以来、約31年ぶりの高い伸び率になった。9割の商品が上昇している。食品の値上がりは低所得者層の負担感が強く、総務省の家計調査で見ても、低所得者層ほど消費を抑える傾向が鮮明となっている。
 また帝国データバンクが発表した調査によると、上場外食主要100社のうち約6割の56社が値上げをしたか、年内に値上げを計画しているとのこと。1〜4月までの15社から半年で約4倍に急増した。値上げ金額が判明している41社のメニュー価格は平均50円の上昇、平均価格も600円を超えた。
 食料品や水光熱費などの高騰に苦しむ状況が日を追って深刻化している。

対策は国民からの収奪強化
 政府の対策は余りにも遅々としている。
 岸田政権の喫緊の最重要課題が急激な物価高対策であることは間違いない。「前例のない思い切った対策を検討する」と岸田首相はたびたび口にするが、庶民の生活にはまったく響かない。
 そればかりでなく、対策の多くが大企業への救済策や国民大多数からの収奪の強化につながるものと言わねばならない。
 岸田首相は、今国会の所信表明演説でも、経済の立て直しを「最優先課題」として、10月中に「総合経済対策」をまとめるとした。その概要は、(1)物価高騰対策・賃上げ、(2)円安を生かした経済構造の強化、(3)「新しい資本主義」の加速(4)国民の安全・安心の確保ーーの4本柱で構成するものとなっている。
 政府・自公与党は、総合経済対策に国費20兆円超を支出する方向で調整に入った。そして対策の裏付けとなる22年度第2次補正予算案を臨時国会に提出することとなっている。
 その目玉は、エネルギー価格の高騰対策である。またガソリン価格を抑制する補助制度も、来年1月以降も延長する。妊娠した女性への経済的支援や、脱炭素、デジタル関連への投資促進策も盛り込む。
 だがその財源の大半は、赤字国債の発行で賄うこととなっており、政府の借金はさらに膨らむ。将来的には国民の負担増となる。
 支持率低迷にあえぐ岸田政権が、目前の物価対策として打ち出したのが家庭の電気料金への支援策とガス料金への支援策である。電気料金の負担支援策は来年1月にも始める方針である。ガス料金についても電気料金とバランスが合うような形が検討されている。
 だがこの電気料金の支援策は、電力小売会社に支援金を配って1キロワット時あたりの単価を抑制する手法が軸になっており、家庭の電気料金支援に名を借りた電力会社への支援策である。これはガソリン価格抑制を名目にした石油元売り会社への補助金とまったく同じで、国民生活を支えるのではなく大企業の懐を潤すだけである。
 消費者物価の高騰は、当面は消費税の税収増を政府にもたらしている。物価が上がれば当然消費税収も増える。これは実質的に国民大多数への増税と同じである。しかも消費税は低所得者ほど重くのしかかる。 一方で実質賃金は下がり続けている。年金も下がり続け、2000年に月額平均17万6000円だったのが、19年には14万4000円にまで下がった。それなのに後期高齢者の5人に1人は、医療費負担が10月から倍になった。
 過去2年間に、物価高対策としてドイツでは消費税に相当する付加価値税を19%から16%に、英国は20%から5%に引き下げている。こうした国民の日々の生活に直接響く政策こそ求められている。
 与党内や野党の一部からも消費税の「臨時減税」の声が上がっているが、岸田首相は、国会の答弁で「消費税の減税は考えていない」と開き直っている。岸田政権は消費税の減税はやる気はまったくない。
 「前例のない思い切った対策」とは口先ばかりで「前例のないことはやらない」ということである。

大軍拡やめ国民生活支援を
 岸田政権は、国民生活の苦難をかえりみず、米国の先棒を担いで中国への抑止政策を強めている。
 安倍・菅政権を引き継いで「台湾有事」や「尖閣問題」を口実に、南西諸島の基地強化や敵基地攻撃能力など軍備増強を急いでいる。衰退する米国はわが国をはじめ同盟国の力なしには台頭する中国を抑え込むことはできず、わが国への要求はいちだんと強まっている。岸田政権は防衛費の大幅な増額を約束し、自民党は防衛費増額のための増税を検討している。
 国民生活を犠牲にしてどうやって国が守れるのか。岸田政権は、米国防衛のための大軍拡をやめ、目の前で進んでいる国民生活の危機を突破するために真剣な努力をすべきである。それをしない岸田政権の支持率は下がるばかりである。
 国民生活を守れない岸田政権に対して多くの国民が怒っている。政権にその怒りをぶつけよう。(C)


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