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2022年10月15日号 2面

日中国交正常化50年の
歴史を無視

「1つの中国」否定する共産党

 日中国交正常化50年の節目にあたって、日本共産党は談話や声明などは出さず、9月29日付の「赤旗」に二つの記事を掲載した。その内容は中国を「覇権主義」と強調し、米国の中国敵視政策とそれに追随する岸田政権を側面から支え、日中国交正常化の原点を踏みにじる犯罪的なものであった。

正常化以来の歴史を無視
 「赤旗」に掲載されたのは「中国と向き合う大切な二つの原則――平和的対話と包摂的国際関係」と題した志位委員長へのインタビューと「日中国交回復50周年 東アジアの平和のために 両国関係の原則『国連憲章に基づく紛争の平和解決』」という解説記事である。
 志位は、インタビューの冒頭で「日本共産党は、いまの中国の行動について、その覇権主義、人権侵害について厳しい批判を表明してきました。この立場に変わりはありません。そのうえで、中国とどう日本が向き合い、友好関係を築いていくかについて、私たちが大切だと考えている原則が二つ」と述べて、「第一は、軍事対軍事の対抗の悪循環に陥ってはならない、あらゆる問題を平和的な話し合いによって解決することに徹するーーこれを大原則に据えるべきということです。そのさい、話し合いをすすめていく基準となるのは国連憲章と国際法です。この国際的ルールに基づいて冷静な外交的な話し合いであらゆる問題を解決するーーこの立場に徹することが大事です」と「軍事対軍事」を日中間の問題の第一の問題としている。
 第二に、中国を排除、包囲するのではなく、ASEAN(東南アジア諸国連合)が取り組んでいるASEANインド太平洋構想(AOIP)や、日米や中国、ロシアも入っている東アジアサミット(EAS)の枠組みの中に包摂することが大事だと述べている。
 志位は、日中国交正常化の原点である「日中共同声明」や日中間で確認した4つの基本文書などについてはひと言も触れず、国連憲章と国際法が日中関係の基準であると述べている。日中関係は順風満帆とは言えない時期もあったが、そのたびに日中間で真剣な話し合いを行い解決してきた。志位の主張はそういう歴史を無視した暴論である。
 しかも、日中関係を単なる軍事、平和の問題だけに矮小(わいしょう)化している。国交正常化以来、経済関係を中心にめざましく拡大、発展したこと、中国が最大の貿易相手国であり、わが国経済にとって死活的な存在であることも無視している。揺るぎない日中関係なしにわが国はやっていけないのが実際である。  ASEANを引き合いに出しているが、そのASEAN各国も中国との経済的結びつきが大きく、日中関係が安定して初めて地域の平和と安定につながるのであり、志位の主張は逆さまである。

米国支え台湾独立を後押し
 さらに悪質なのは解説記事である。
 この記事も冒頭から「両国が外交関係の樹立を確認した日中共同声明は、平和5原則と国連憲章の原則を両国関係の準則とすることで合意し、これは、1978年の日中平和友好条約、1998年の日中共同宣言、2008年の日中共同声明で繰り返し確認されてきました。いま、米中対立がさまざまな分野で強まるなか、中国の力にもとづく威圧的行動や、日米同盟の強化など軍事による対抗の動きなど、日中共同声明の精神とは相いれない事態が深刻化しています」と述べている。これも「中国の力による威圧的行動や」などと中国の行動を最初に書き、中国が震源地であるかのように描いている。米国の覇権維持のための対中抑止、敵視政策の強化こそが米中対立激化の根源であることを軽く扱い、実際は米国を免罪している。しかもトランプ前政権から対中戦略が変わったと述べているが、実際はオバマ政権時代から対中戦略は大きく変わったのであり、これも事実とは違う。
 そしてバイデン政権は、対中抑止のため台湾の独立をそそのかし、武器輸出、軍事訓練など、中国への内政干渉をいちだんと強めている。「有事」の際の米軍の介入さえ口にしている。
 赤旗記事は「今年8月に米国のペロシ下院議長が台湾を訪問し、中国が近海の軍事演習で対抗したことが、国際的に大きな懸念を呼びました。問題の解決のためには、台湾住民の自由に表明された民意を尊重した平和的話し合いが不可欠です」と述べている。「台湾住民の自由に表明された民意を尊重」とは、中国に内政干渉し、米国が台湾独立をそそのかしていることを後押しする極めて悪質な主張である。
 しかもその記事で「日中共同声明」の内容を紹介しているが、その3項にうたっている「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」という共同声明の核心的な部分は意図的に隠されている。わが国政府も公式には「台湾が中国の一部である」という見解は維持している。共産党は岸田政権よりも先走って米国のたいこ持ちの役割を果たしているのである。
 日中関係が最悪の状況にある中、いま求められているのは、国連憲章や国際法を金科玉条のように持ち出すのではなく、またASEANの努力頼みではなく、日中間の関係修復のための首脳会談を実現することなど緊急かつ真剣な政府の努力ではないか。そのために事態の打開を求める経済界や保守層も含めた国民各層の声を大きくしていくことこそが重要ではないか。
 共産党の主張は、米国と岸田政権の中国敵視政策に迎合し、両国関係を打開するための道筋は示せないまったく無責任なものである。(Y)


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