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2022年9月25日号 1〜2面

日中国交正常化50周年、
自主外交で原点に立ち戻れ

「不再戦」「一つの中国」堅持
し、平和・繁栄の東アジアへ

 わが国と中国が国交を正常化して、9月29日で50周年の節目を迎える。この50年間、日中両国の関係は経済関係を中心にめざましく拡大、発展し、地域の平和・安定と両国の繁栄を促してきた。この原点は1972年の「日中共同声明」である。
 だが近年は台頭する中国への抑止政策を強める米国と、追随する自公政権が中国敵視政策にいっそう踏み込んで地域の緊張を高めている。とりわけ「台湾有事」を口実にした軍備増強、日米軍事一体化が進められている。
 いまこそ「日中不再戦」の原点に立ち戻って、対米追随から脱却して自主の外交で揺るぎない日中関係の確立をめざすための広範な国民運動を強めなければならない。両国が手を携えれば、戦争を避け、東アジアの平和と繁栄を実現できる。

「日中共同声明」が原点
 近代の日中関係は、日清戦争後の下関条約(1895年)による台湾の植民地化をはじめ1931年の柳条湖事件・満州事変、37年の盧溝橋事件・日中戦争など中国侵略の歴史だった。第2次大戦後の二十数年間も、米国従属の中国敵視のもとで、わが国と中国の間に国交がない異常な状態が続いた。だが、72年のニクソン訪中など、ベトナム戦争の泥沼に陥っていた米国の対中戦略が変化した。わが国内でも国交正常化を求める先人たちの努力が続けられてきた。こうした中で、対米従属下とはいえわが国の自主的な判断で、米国に先んじて国交正常化に踏み切った。
 国交正常化に際し、田中首相と周恩来総理との間で署名された共同声明では、「日中間の過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」として、「両国間の平和友好関係を強固にし、発展させる」ことが合意された。また中国側はかねて「中華人民共和国政府が中国を代表する唯一の合法政府である。台湾は中国の不可分の領土である。日華平和条約は不法無効であり廃棄されるべきである」という「復交三原則」を提起していた。日本はこれを受け入れて正常化交渉となった。共同声明で「日本側は、中華人民共和国政府が提起した『復交三原則』を十分理解する立場に立って国交正常化の実現をはかるという見解を再確認する」と記された。これが重要な出発点となった。以来、日中間では、この共同声明を含む4つの基本文書を基本にして外交関係が進められ、政治、経済、文化など各方面で日中間の交流は拡大されてきた。
 この間、さまざまな曲折はあった。政治面では、歴史教科書問題や靖国参拝、尖閣諸島問題での右翼勢力の挑発行動など政治面での摩擦もたびたび起こった。だが、両国間の経済関係は、中国経済の急成長もあって急拡大した。サプライチェーン(供給網)も含めた相互の結びつきは複雑かつ強固になっている。2022年では約1万3千社、製造業では5千社以上が中国に進出して企業活動を行っている。また、中国は最大の貿易相手国であり、中国抜きにわが国経済も企業も立ちいかない。日中間だけでなく、世界の140カ国以上で中国が最大の貿易相手国となるなど、重要な投資先でもあり、企業にとっては対中関係は死活にかかわる問題である。
 この50年間の全体として良好な日中関係は両国関係だけでなく、アジアの平和、安定、繁栄にも一定の役割を果たしてきた。以降も日中関係を維持・発展させていくことはわが国とアジアの平和と繁栄にとって不可欠のものである。

歴史に逆行する日米同盟
 世界は歴史的転換期に差し掛かっている。
 衰退する米国とその同盟国の世界的な発言力が相対的に弱まり、中国やインドなど新たな大国や多くのアジア、アフリカ、中南米など新興諸国の中に帝国主義の意のままにならない、自主的な新しい動きが始まっている。ウクライナ戦争を契機にそうした動きはますます強まっている。米国中心につくられた世界秩序は大きな転換期を迎えている。
 そういう世界の中で、米国にとって、日増しに台頭する中国を抑え込み、覇権を維持することが最大の戦略的課題となった。米国は、オバマ政権の後半から中国を「事実上の仮想敵国」化し、対抗・抑止政策を強めてきた。
 わが国支配層も、これに追随し、中国と対抗してアジアでの政治・軍事大国化を進めるチャンスとばかり、対中国政策の転換に踏み込んでいる。安倍政権下で集団的自衛権、安保法制など米国と一体となって中国や朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)へ対抗するための法整備や軍備増強が進められた。
 米国はウクライナ戦争でロシアの弱体化を図り、アジアでは「台湾」や香港、ウイグルなどの人権問題を口実に中国への干渉と抑止を強めようとしている。
 昨年4月の日米首脳会談で、わが国はそれまでの「一つの中国」を事実上投げ捨て、共同声明に「台湾」問題を明記、米国と共に中国敵視の道に踏み込んだ。日中関係の基本であった「4つの基本文書」は事実上ホゴにされた。
 米国は米日豪印のクアッドや米英豪のAUKUSをはじめIPEF(インド太平洋経済枠組み)などで中国包囲網づくりに奔走してきた。バイデン政権はトランプ前政権以上に「民主主義対専制主義」などを掲げて、中国包囲政策を強めている。岸田政権は今年5月の日米首脳会談でも、日米同盟を「自由で開かれたインド太平洋」の礎としてかつてなく強化することを確認し、防衛費の相当な増額、日米の安保戦略の整合、経済版2プラス2による日米経済の一体化など、対中国の「最前線」に立つことを宣言した。台湾有事の際の米軍の介入を肯定したバイデン「失言」も容認した。この「失言」に自民党の右派やマスコミは色めき立って「台湾有事」の世論をあおった。
 さらに岸田首相は、米国の先棒を担いで、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議にまで出かけて、中国への対抗を呼び掛けるなど、アジアでの緊張激化をあおっている。
 今年の防衛白書には、初めて「台湾の統一」問題に言及し、台湾情勢の安定が「日本の安全保障にとって重要」と明記した。岸田首相は、8月の内閣改造後の会見でも「防衛力の強化」を第1の課題とし、防衛費の大幅増額を表明した。先日の日米防衛相会談では、台湾有事を念頭に長射程のミサイル配備や迎撃技術などについて戦略を擦り合わせ、米国がいう「統合抑止力」を基盤に中国への対抗を高めることを合意した。米国で策定中の国家防衛戦略(NDS)と擦り合わせたわが国の「防衛計画大綱」など防衛3文書の改定作業も行われている。
 日米の同盟強化、軍事一体化と合わせて、英豪だけでなく独仏など欧州諸国も部隊をアジアに派遣するなど、中国への対抗、抑止の動きを強めている。
 8月のペロシ下院議長の訪台は、台湾問題での緊張を一気に高めた。その後も米上院議員の訪台など中国の内政への乱暴な干渉が続いている。もはや米国は、これまでの「曖昧戦略」を投げ捨て、「台湾独立」に事実上カジを切っている。米上院外交委員会は9月14日、台湾の防衛力強化を支援する「台湾政策法」を超党派の賛成多数で可決した。バイデン政権は年内の成立をめざしている。米中間の高官協議や首脳電話会談などもやられ偶発的な衝突回避の道も探られているが、台湾問題をめぐる中国との緊張はますます高まって、偶発的な衝突の可能性さえある
 政権内部や保守の一部には、米国に追随して「台湾有事は日本の有事」と危機感をあおり、岸田政権はこれを容認しているが、いったん事が起これば沖縄・南西諸島が巻き込まれるのは必至で、これは亡国の道である。
 世界の流れは、米国中心の秩序が終わり、新興諸国も含めた新たな世界に向かっている。米日の中国敵視の策動は世界の流れと歴史に逆行するまさに時代錯誤の愚行である。

アジアの平和のためにも
 わが国マスコミも「中国脅威論」を盛んに宣伝し、中国に対抗するための軍備増強をあおり立てている。  残念ながら主要な野党も労働組合の多くも、日米基軸を基本路線としており、米国や自公政権の中国敵視に同調するありさまで、岸田政権の「中国脅威論」に対抗できていない。
 ウクライナ戦争は、核大国同士(米ロ)の戦争の可能性を現実のものとした。多くの国民が「台湾有事」でわが国が戦争に巻き込まれることを危惧している。まさに「戦争と平和」が問われている。
 アジアの平和と安定のための努力に水を差し、緊張をあおっている張本人は没落する米国であり、追随する一部の国々である。米戦略はアジア人同士を戦わせ、覇権を維持するため漁夫の利を占めることである。この戦略に追随してわが国が生きていく道はない。米国の先兵となった中国や朝鮮との戦争準備に反対しなければならない。

友好・協力関係堅持を
 日中国交正常化から50年、次の50年を考えるとき、わが国が中国をはじめアジア諸国と平和と安定のうちに生きていく道を真剣に探るべきである。
 50周年を記念して経済界や友好団体を中心に記念行事などが行われ、両国の友好を確認し合う機会も持たれている。逆流が強まる中で極めて意義あることで、わが党はこうした努力を断固として支持する。
 経済界や心ある政治家の中にも対立が激化する現状を憂い、関係の発展を望む声は多い。早期の首脳会談などハイレベルの対話と意思疎通を行えと、打開を求めている声も多い。
 政府は公式には「一つの中国」を否定していないし台湾独立も認めていない。
 だが、衰退する米国と台頭する中国という力関係の変化が米国の対中政策を対抗・抑止強化へと変化させた。これがわが国に対中政策の転換を迫っている。国内ではこれに呼応する勢力が声高に「中国脅威」「台湾有事」を叫んでいる。
 だから岸田政権はある種のジレンマに陥って、現状打開の道を描けずに動揺しているようでもある
 岸田首相は、昨年10月の習近平主席との電話会談で国交正常化50周年での関係改善の意欲を表明した。だが、1年たってもいまだに首脳会談の目算さえ立たっていないようだ。
 当時の田中首相が「自主的」決断を下し、日中国交正常化に踏み切ったように、「自主的」決断が岸田政権に求められている。早期の首脳会談を実現すべきである。正念場ともいえる時期に差し掛かっている。
 米国に追随してわが国と隣国との平和と繁栄が得られるというのは幻想である。米国追随から脱却して、独立・自主の政権を樹立する以外にない。
 中国との友好・協力関係を、最も重要な外交政策のひとつとして堅持しなければならない。それがアジアで平和と安定、繁栄を永続させていく道である。  各界の人びととの共同行動をさらに強め、国民世論と国民運動の発展のためにわが党は全力をあげる決意である。


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