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2022年9月15日号 2面

日朝平壌宣言20周年

宣言に立ち返り、国交正常化に向け
即時無条件の制裁解除を

 9月17日、日本と朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の首脳が初会談し、日朝平壌宣言に署名して20周年を迎える。
 宣言は、両国間の国交正常化交渉に向けて一定の積極的な面を持つ内容だったが、わが国歴代政権は宣言の合意を誠実に履行することを放棄した。それどころか、拉致やミサイル、核開発などを口実に敵視・排外主義をあおり、米国とともに朝鮮圧殺政策を取り続けた。繰り返し経済制裁を発動・強化し、朝鮮総聯への弾圧や朝鮮学校に対する不等な差別施策を行った。同時に、共産党など野党も米国とわが国支配層と同じ立場から朝鮮を批判、「平和」を唱えつつも朝鮮に武装解除・屈服を迫った。
 宣言20周年を迎えるにあたり、「朝鮮半島の危機」なるものの根源には米帝国主義による武力を含む朝鮮恫喝(どうかつ)とわが国の対米追随政策があることを再確認する必要がある。そして岸田政権は、全ての制裁を即時無条件に解除し、これまでの外交的非礼を謝罪し、国交正常化に向け交渉を開始すべきだ。

日本側から宣言を反故
 小泉首相(当時)は2002年9月17日、歴代首相としては初めて朝鮮を訪れ、金正日総書記(当時)と首脳会談を行い、「日朝平壌宣言」に署名、中断していた国交正常化交渉を再開することで合意した。
 宣言では、日本が過去の植民地支配について「痛切な反省と心からのおわび」を表明、この清算・補償について、国交正常化後に経済協力方式で協議することを確認した。また拉致問題について、朝鮮はその事実を認め、安否情報を伝えたうえ、公式に謝罪した。
 朝鮮人労働者の強制連行など日本が朝鮮半島を植民地支配したことへの謝罪と補償が(日韓基本条約と同様に)免罪されうる問題は残しつつも、国交正常化交渉の再開は平和と友好を望む両国国民の多くにとって喜ぶべきことで、宣言にある合意事項は両国政府と両国民によって誠実に履行されなければならなかった。
 しかし、対米従属に縛られた小泉政権は、朝鮮から帰国後すぐに米国にクギを刺されると、一定の「自主性」さえ捨て去った。また安倍官房副長官(当時)らが拉致についてことさらに騒いだ結果としての国内世論の反発の強さにも大慌てして、小泉首相は「拉致や核の問題で進展がないのに国交正常化交渉を前進させることはない」などと手のひらを返し、宣言を事実上反故(ほご)にした。宣言にある合意は日本側の裏切りで過去のものとされた。
 拉致問題は、小泉首相と金総書記との会談で基本的には決着したはずだった。朝鮮側は、拉致を国家犯罪として認め、最高責任者がいわば謝罪し、それが文書化された。5人が帰国した後は朝鮮側の調査を待つべきだった。宣言に沿って両国が行動すれば、再調査などによって違う展開もあったかもしれない。しかし、安倍に代表されるような右翼排外主義者らがこの問題を政治利用し騒ぎ立てた結果、問題は完全に暗礁に乗り上げた。骨を折って調査しても攻撃に利用されるだけなのであれば、朝鮮側が再び調査を行おうと考えるとは思えない。拉致問題は当時から1ミリも前進していない。日本側は自らこの問題の解決にふたをした。拉致被害者の家族は右翼排外主義者に徹底的に利用され捨てられたも同然だ。
 日本側から宣言を反故にした……この事実を明確に認めない限り、仮に日朝間の交渉が開始されたとしても、国交正常化に向けて前進はしないだろう。

共産党なども敵視に加担
 その後、小泉政権は06年7月には朝鮮によるミサイル発射実験をつかまえて朝鮮の「脅威」をあおり、万景峰号の入港禁止や送金禁止など現在まで続く制裁を発動した。同年の10月に行われた朝鮮初の核実験の際には、小泉政権を引き継いだ安倍政権が陸・海・空での監視や船舶臨検など事実上の封鎖を開始、それまでの経済制裁もさらに徹底強化するなど、他国と比べても突出した朝鮮圧殺に踏み込んだ。「朝鮮の脅威」を口実に日米合同軍事演習やミサイル配備などを推し進め、集団的自衛権の行使を可能とする安保法制化などにも使用した。
 また、差別・排外主義をあおり朝鮮総聯などへの弾圧を強めた。自治体による総聯施設への課税など国際的にみて非礼な蛮行も横行した。朝鮮学校への補助金打ち切りなどの人権無視も公然と行われた。朝鮮学校生徒への嫌がらせも続発した。政権交代後の民主党政権下でも、朝鮮への制裁は依然として続くどころか、高校無償化の対象から朝鮮学校を除外した。朝鮮幼稚園の幼保無償化でも同様の差別的扱いが行われた。
 朝鮮の日本人埋葬地への墓参や14年5月にはストックホルム合意に至るなど、この間も国交交渉の開始に向けた動きはあったが、そのつど日本政府は制裁強化などで合意を一方的に破棄した。
 こうした政府の朝鮮攻撃に野党も歩調を合わせた。共産党はその筆頭で、かれらは「平和、対話を」などと言いつつも、朝鮮の核やミサイル開発を批判、武装解除を迫った。 年以上も米国と対峙(たいじ)し、韓国やわが国の米軍基地に配備された核を含む圧倒的な武力で恫喝され続けている構図に目を背け、日米安保体制の下で朝鮮圧殺に加担し続けてきたわが国の立場も忘れ、支配層の土俵に乗って「朝鮮半島の平和」宣伝を競い、結果として米帝国主義に加担するという犯罪的な役割を担い続けている。
 「朝鮮半島の危機」なるものがあるとすれば、それは米帝国主義の側がつくり出しているものであり、この地域の平和の真の敵は米国である。労働者階級はそれを見抜き、わが国支配層や共産党などの間違った見解と闘い、朝鮮との即時無条件の国交正常化と、独立・自主でアジアと共生する国の進路を求めて闘うことが求められる。

外交的非礼の謝罪を
 岸田政権は朝鮮に対し「無条件対話」を求めている。これは19年に安倍政権がとった姿勢を踏襲したものだ。当時、米朝や南北対話が進んだことに安倍政権は焦り、それまで「必要なのは対話ではなく圧力」「対話のための対話は意味がない」などと息巻いていた姿勢を一転させた。この申し出を朝鮮側は「面の皮が熊の足の裏のように厚い」と一蹴した。不義理を繰り返し、制裁など圧力をかけ続けた挙げ句、「無条件」などと日本側が譲歩しているかのように言うのだから、朝鮮側の憤りは無理もない。
 朝鮮との関係正常化なしに東アジアの平和を築くことはできない。岸田政権が行うべきは、全ての制裁を即時無条件に解除し、この 年の外交的非礼を謝罪することだ。その上で国交正常化に向けて交渉を開始する必要がある。(S)


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