ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

2022年7月25日号 1面・社説

参議院選挙の結果について

連携強め岸田政権と闘おう

過去4番目の低投票率
 第26回参議院議員選挙が7月10日投開票された。
 結果は議席数では自公与党が過半数を占めるという大方の予想通りの結果に終わった。
 選挙後も内外情勢はいちだんと波乱含みである。安倍元首相亡き後の政権与党内の動きも不透明である。したがって以降の闘うべき課題や闘い方などについては別の機会に譲ることとし、主に選挙結果について述べる。
 非改選の議席も含めると自公与党は、定数248議席中146議席となった。立憲民主党は39議席、国民民主党は10議席、共産党11議席と大きく後退した。日本維新の会は21議席となった。
 選挙結果について、議席の増減だけを取り上げ、「自民党の大勝」「自公与党の勝利」だけが大きく宣伝され、維新なども含めた「改憲勢力」が3分の2を維持したなどとマスコミを動員した世論づくりが行われている。支配層は政権とその政治の正当性を国民に印象付けようとしている。
 投票日直前の8日、安倍元首相が銃撃されて死亡した。マスコミは「民主主義の危機」と大騒ぎして、野党も「暴力から民主主義を守れ」と同調した。しかし、投票率は、前回よりやや増えても52・0%と過去4番目の低さだった。有権者の半数しか投票所に足を運ばなかった。
 日本経済新聞の世論調査によると物価高騰などで国民の不満は次第に高まり、自民党への支持率は下がり続けていたが、銃撃事件を受け一転、上昇した。
 今回の参議院選ではこういう特殊な事情も作用した。これも自民党の議席増につながった。議会選挙の仕組みから見れば多数を獲得した政党が政権を担うとしても、国民の政治意識が正確に反映しているわけではないし、その政治の正当性も問われなければならない。

自民党の「大勝」は本当か
 自民党は63議席を獲得したが、公明党は1議席減の13議席だった。自公与党で改選議席125議席の過半数以上を獲得した。
 自民党は議席では単独で改選議席の過半数を獲得して「大勝した」が、得票率や他党との関係で見ればば、単純に「大勝」ではない。
 比例代表の自民党の得票数は約1825万7千票で、投票率が上がったこともあり前回より約54万5千票増えた。だが政党間の得票シェアである相対得票率では34・43%であり、前回より1ポイント下げた。
 九州、中四国の一部、近畿、北陸、首都圏・関東などで相対得票率を下げ、比例代表は1議席減となった。また全有権者に占める絶対得票率では17・33%に過ぎず、有権者の全体から見れば、わずかな得票で議席の過半数以上を獲得しているというのが「大勝」の実態である。自民党が圧倒的な支持を獲得したわけではない。
 さらに、悪政の片棒を担いできた公明党は、比例得票数は約618万1千票と前回より約35万4千票も減らし、相対得票率も11・66%と前回より1・4ポイント近く減らした。実に43都府県で得票率を減らした。議席も比例で1議席減らした。絶対得票率でも5・87%と、これも前回より0・3ポイント下げた。前々回(2016年)まではほぼ750万票以上を獲得してきたが、前回100万票以上減らし、今回も激減である。公明党は大きく後退し、「自公与党の勝利」というのも事実とは合わない。
 自民党が議席を伸ばしたのはいわゆる「1人区」の地方である。自民党は32の「1人区」の28選挙区で勝利し、野党は4選挙区でしか勝てなかった。16年は11勝21敗、19年は10勝22敗と「善戦」してきた野党の候補者一本化が、今回は11選挙区でしか進まなかった。自民党は前回の22選挙区から6議席伸ばし、これが自民党の議席増につながった。しかし勝利した28県のうち12県では前回より得票を減らしており、野党の票が分散したから勝てたとも言える。候補者を一本化できなかった野党の戦術上の敗北である。

野党の選挙結果について
 野党は立憲民主党が5議席減の17議席、国民民主党も2議席減の5議席、共産党も2議席減の4議席と後退した。社民党は1議席を守った。他方、昨年の総選挙でも躍進した日本維新の会は6議席増の12議席を獲得した。れいわ新選組も新たに3議席を獲得した。その他NHK党、参政党という「新興勢力」も1議席を獲得、無所属は5議席だった。
 野党第1党の立民は、比例得票約677万票と、前回より約114万6千票減らし、相対得票率も15・81%と前回より3ポイント以上減らした。九州や東北の一部を除いて全国 都府県で得票を減らした。
 国民も比例得票約315万9千票で前回より約32万1千票減らし、相対得票率5・96%と前回より1ポイント減らし、34都府県で得票数を減らした。
 共産党は、比例得票約361万8千票で、前回より85万5千票も減らした。16年の約600万票から見れば半分に落ち込んだ。相対得票率も6・82%と2・13ポイントも減らした。得票も47都道府県すべてで減らした。特に牙城の一つだった京都で得票率5・52ポイント減と全国で一番減らした。
 この党はこの間、「野党共闘」を叫び、立民などの野党との連携に熱心だったが、これまでの「野党共闘」は縮小、「確かな野党」にも戻れず、いよいよジレンマに陥った。
 社民党は、比例得票約125万8千票、相対得票率2・37%と、前回より得票数を21万2千票増、相対得票率も若干伸ばして、踏みとどまって「政党要件」を維持した。
 昨秋の総選挙で躍進した維新だが、主要野党の後退と対照的に、北海道を除く46都府県で得票数も得票率も伸ばした。比例得票は約784万5千票と、前回より293万8千票増やし、相対得票率も14・8%と5ポイント増やし、公明党、立民を抜いて第2党となった。5ポイント以上増えたのは24都府県で、九州や中四国、関東・首都圏、東北などでも増えた。近畿では京都、奈良などでも大きく伸びた。
 れいわは、比例得票約231万9千票と前回より約3万8千票増えたが、相対得票率では4・37%と前回より0・18%減らし、伸び悩んだ。
 野党第1党の立民や共産党が大きく後退、国民も後退したのに対して、維新が、悪化する国民生活の不満を背景に「既得権の打破」などと主張し一部で自民党の票なども奪って、各地で比例得票を伸ばした。だが近畿を除き、選挙区での議席獲得までには至っていない。
 地方区では、与党や主要な野党から離れた票は維新や他の少数野党に分散、参政党やN党など右派勢力も既存政治への不満を一定程度吸収して議席を獲得し、野党の状況は多党化・流動化の様相を呈している。
 また連合産別9候補のうち8人(立民5、国民3)が当選したが、9候補の総得票は前回比約18万票減の152万票だった。約700万人といわれる組合員の2割しか投票していない。
 この間、政府・自民党は系統的に連合・芳野指導部に秋波を送り、また連合もこれに応じてきた。こうした連合指導部への組合員の不満の声が聞こえてくる。政府・与党にすり寄る連合指導部に対する現場組合員の不信感の表れと言わねばならない。
 また沖縄でのオール沖縄の伊波洋一氏の勝利は、9月の沖縄県知事選挙の前哨戦として重要な勝利であり、全国政治上も貴重な成果である。この成果を打ち固め、県知事選での玉城デニー知事の勝利へ向けて全国で連帯する闘いを強めよう。

何が争われ、何が争われなかったか
 今回の参院選は、「ウクライナ戦争」という戦後の米国中心の世界覇権秩序の終焉(しゅうえん)が顕在化する国際政治の大転換の下で行われた。
 衰退する米国は、台頭する中国への戦略的対抗を中心に、7カ国首脳会議(G7)や北大西洋条約機構(NATO)、日米豪印(QUAD)、米英豪(AUKUS)などさまざまな連携で巻き返しを図っている。ウクライナ戦争の激化・長期化は、米欧とロシアだけでなく、世界各地で偶発的な戦争の危機を高めている。
 わが国岸田政権は米国の先兵として対中包囲の最前線に立つことを先の日米首脳会談で宣誓した。岸田首相は、参院選公示直前の「アジア安全保障会議」で防衛費増額などの「岸田ビジョン」をぶち上げた。
 さらに参院選の最中にもかかわらずスペインで開かれたNATO首脳会議にまで出向き、中国・アジアへのNATOの関与拡大を引き出した。野党はこれを問題にできなかった。
 北東アジアにおける「戦争か平和か」が鋭く問われている。「台湾有事」をあおって軍事大国化を公然と掲げ軍備増強に走る岸田政権の外交・安保政策こそ真っ向から争われるべき問題であった。またわが国も加わっているロシアへの制裁は、資源、エネルギー、食料の高騰など国民生活の危機に拍車をかけている。わが国は「ただちに停戦」を呼びかけるべきである。
 そして、対中関係では、米国につき従った敵視政策をやめ、日中の首脳同士が胸襟を開いて真剣に話し合うことを提起すべきであった。
 マスコミも中国敵視をあおった。
 だが野党の外交・安全保障政策は、歴代自民党政権と変わらぬ日米基軸路線であった。「強固な日米同盟は日米安保体制の信頼を高め、抑止力を強めることにつながることから、わが国自身の防衛体制を強化するとともに、健全な日米同盟の一層の強化を進める」(立民)とか「自衛のための打撃力(反撃力)を整備するため、必要な防衛費を増やす」(国民)などと岸田政権と軍事大国化を競い合うようなものであった。維新などは「核共有」も公約、自民党以上に軍事大国化を叫んだ。
 国民生活の課題では、コロナ感染の長期化も重なった世界経済の行詰まりの中で、インフレの進行、格差の拡大やエネルギーや食料のひっ迫、諸物価の高騰など深刻化する国民生活の危機をどう打開するのかが問われた。今年の累計値上げ品目は8000を超えている。
 例えば小麦は21年度下期に19%も引き上げられ、今年4月にも17・3%引き上げられた。岸田政権は「ウクライナ戦争」を理由としているが、燃料費などの値上げは昨年秋からである。最近の円安も輸入物価を引き上げている。アベノミクスの失政である。
 各党とも物価問題を参院選政策の前面に押し出した。
 岸田政権は4月に総額13兆円の原油価格・物価高騰等総合緊急対策を決め、参院選対策とした。
 立民や国民などの野党も「消費税減税、中小企業への助成」「異次元緩和の見直し」(立民)、「現金給付、減収補償、消費税減税、社会保険料減免」(国民)などの公約を掲げたが、大企業の内部留保は問題視されないなど、小手先の議論ばかりで有権者から見て決定的な違いはなかった。
 岸田自公政権に対し、根本的な「対抗軸」を打ち出せぬ野党の現状が露呈した。

大胆に連携し、岸田政権を追い詰めよう
 岸田首相は、向こう3年間は予定される国政選挙がないもとで、長期政権の維持を狙っている。
 だが、激動する情勢のもとで、安定した政権運営が保証されているわけではなく、内外ともに難問山積である。
 まず日米関係が重くのしかかる。
 「新しい資本主義」を掲げて登場した岸田政権だが、いちだんと悪化している財政事情が足かせとなろう。
 安倍元首相亡き後、国の進路や経済政策をめぐって自民党内の矛盾や派閥間の意見の相違・抗争も激しくなろう。
 当面、保守派対策や世論の統合を狙って安倍の葬儀を「国葬」として行うが、国民各層からも異論続出である。選挙直後「改憲発議を急ぐ」と言ったが、いわゆる「改憲勢力」4党の意見の隔たりは大きく、発議そのものさえ容易ではない。エネルギー確保も難題である。
 わが党は「議会の道」を信じていない。院外の労働運動を中心とした広範な国民運動こそが政治変革の基礎である。議会内の闘いは、国民運動と結びついてこそ政府を動かせる。
 多くの心ある人たちが方向を求めている。大胆に連携し、闘いを呼びかけ、岸田政権を追い詰めよう。  この国の政治変革を願う人びとは「自民圧勝」に圧倒されることなく、率直な議論と総括を行い、次の闘いに臨もうではないか。
 アジアの平和構築のため外交政策の確立、大企業の利益優先の経済・財政政策から国民大多数の生活を優先する経済・財政政策を要求する壮大な国民運動を作り上げよう。
 わが党はその先頭に立つ。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2022