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2022年7月15日号 1面

自主的動きを強める新興国
ー流れに逆行する岸田内閣

対米従属外交からの脱却を

 岸田首相は、6月末の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に日本の首相として初めて参加した。首相は「欧州とインド太平洋の安全保障は切り離せない」として、中国の海洋進出を念頭に「力による一方的な現状変更の試みに反対する」として、日本とNATOの協力指針である「日NATO国別パートナーシップ協力計画」を抜本改訂することを表明した。
 NATOは今回採択した新たな「戦略概念」で、初めて中国について言及し、中国への対抗を明記した。岸田首相は、この「戦略概念」に中国を明記させ、「インド太平洋」へのNATOの関与拡大を引き出す役割を演じた。
 さらにNATO首脳会議に合わせて韓国、豪州、ニュージーランドとも首脳会議を開き4カ国(AP4)が主導しインド太平洋諸国とNATOとの協力を強化することも確認した。
 米国は、中国と対抗するため日米豪印クアッド(QUAD)や英米豪のオーカス(AUKUS)、インド太平洋経済枠組み(IPEF)など次々に多国間の枠組みを構築しているが、岸田政権はこの米国の先兵となって走り回っている。

新興諸国の自主的動き
 ウクライナ戦争で、第2次大戦後の米国主導の世界秩序は明らかに転換した。米国の没落は決定的となり、世界の各国間の力関係は大きく変化しているが、米国は覇権維持のためにいたるところで悪あがきを続けている。
 7月8、9日、インドネシアで主要20カ国(G20)の外相会合が開かれたが、新興諸国が米欧側に与(くみ)しない、自国の国益重視の外交姿勢が目立った。
 議長国のインドネシアは、ロシアの参加に難色を示すG7を押し切ってロシアを招待した。
 ブラジル外相はロシア外相と個別に会談し「対ロ制裁が世界の食料・エネルギーや途上国に及ぼす影響へ懸念」を表明した。農業大国のブラジルは輸入肥料の2割をロシアに頼っている。
 またアルゼンチン外相は、中国外相と会談し、ブラジル、中、ロ、印、南アの5カ国による「BRICS」への加盟を「支持する」約束を取り付けた。
 インド外相も、中ロの外相と相次いで会談し、ロシア外相との会談では「印ロ間のすべてのレベルでの接触の拡大」に向けて取り組むことを再確認した。米欧がロシア産原油の禁輸を打ち出す中でも、インドはロシア産原油の輸入をこの間も拡大している。しかも輸入代金の決済を人民元で行っている。
 ブリンケン米国務長官は9日の記者会見で、「G7だけでなく多くの国々がウクライナに侵攻したロシアを非難し、ロシアは孤立していた」と強調したが、実際には、新興国はロシアや中国と積極的に個別会談を行い、経済などでの関係強化をアピールした。米国はG7など同盟国を足がかりに新興諸国の取り込みを図っているが、新興諸国は自主的傾向を強めており、容易ではない。

BRICSが拡大へ
 米国が中国やロシアへの対抗をいちだんと強め、世界に分断を持ち込む動きに対して、中国をはじめBRICS諸国も新たな動きを始めている。
 6月23日、BRICSの第回首脳会議が、中国の習近平国家主席の主宰でオンラインで開かれた。習主席は、「一部の国は利己的な安全保障を求めて軍事同盟を拡大し、他国に陣営の対立を強要し、他国の権利と利益を無視し、一方的に他国を制裁し、他国のイノベーションと発展を妨害し、自らの覇権を維持しようとしている」と米国による制裁を批判した。
 24日には、BRICS5カ国に加えてアルジェリア、アルゼンチン、エジプト、インドネシア、イラン、カザフスタン、セネガル、ウズベキスタン、カンボジア、エチオピア、フィジー、マレーシア、タイの13カ国が参加してBRICS拡大会議が開かれた。習主席は「閉鎖された小さなグループではなく、それ以外の多くの新興国や途上国が協力し合い、共同自立を実現する新たな協力プラットフォームを構築する」と述べ、BRICSの加盟国拡大を呼び掛けた。
 BRICSの5カ国の中には意見の相違もあり、また中国とインドは国境問題によるにらみ合いも続けている。だが06年の創設以降、中国は急速に力をつけすでに購買力平価国内総生産(GDP)ではすでに米国を追い抜いている。インドも非同盟の姿勢を貫きながら米欧と渡り合っている。BRICS5カ国と拡大会議参加13カ国の人口は世界の総人口の半分以上である。一方、G7と対ロ制裁参加国の人口は世界の15%程度に過ぎない。世界経済に占めるG7とBRICS5カ国の購買力平価GDP構成比(2021年)もG7の30・81%に対してBRICS5カ国は31・64%とほぼ互角である。中国は「一帯一路」で各国との経済的結びつきを強めている。
 拡大会議を受けて早速アルゼンチンとイランがBRICSへの加盟申請を行った。インドは拡大に慎重姿勢を見せているが、意見の違いを互いに認め合いながらBRICSの結束を維持してきた歴史から見れば、以降も加盟国の拡大は続くだろう。

新興国の台頭は世界の流れ
 米国主導の世界秩序が転換する中で、BRICSに限らず、新興諸国の台頭と発言力の増大は世界の流れの主流となった。こんにちの世界は米国の意のままになる世界ではない。
 だが、わが国歴代保守政権は日米同盟を基軸とする外交、防衛政策にしがみついてきた。岸田政権も冒頭述べたように、日米同盟体制を基軸としながら、その範囲をNATOにまで拡大して対中国包囲網づくりに奔走している。野党も似たり寄ったりで、明確な対抗軸を示していない。NATO首脳会議閉会直後には、わが国企業も出資するガス田「サハリン2」について、ロシアが日本を排除する大統領令に署名した。わが国のロシア制裁参加とロシア敵視強化が理由であることは明らかである。エネルギーさえまともに確保できないで国民生活が守れるのか。岸田政権の進める外交・安保政策は、世界の流れに逆行するものであり、わが国の国益とも合致せず、大多数の新興諸国の利益とも合致しない。
 参院選が終わり、岸田政権は、政策遂行を本格化させる。外交・安全保障政策では、9月には日中国交正常化周年を迎え、対中国政策でどういう態度をとるのか注目される。現在のような中国敵視の政策は転換させなければならない。また、年内には「国家安全保障戦略」を含む安保防衛関係3文書の改定を予定している。防衛費の対GDP比2%への増額を政府・自民党は強引に進めようとしており、中国やアジア諸国の警戒心を高めている。
 対米追随ではわが国の国益は守れない。財界の中にも中国との関係改善と深化を求める声は強い。ましてアジアの平和を求める国民各層の声は大きい。対米追随からの脱却こそ「決断と実行」が求められている。
 岸田政権の軍備増強策にに反対し、対中国政策の転換を求め、アジアの平和と新興諸国と共に生きるための国民運動を強めよう。(Y)


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