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2022年6月25日号 1面

岸田の「骨太方針」、
アベノミクスの焼き直し

自公政権と正面から
対決する闘いを

 第26回参議院議員選挙が6月22日に公示され、7月10日の投票に向けて選挙戦に入った。
 ロシアのウクライナ侵攻開始から4カ月、戦争の長期化で世界的経済の危機的状況はいっそう進んでいる。すでにコロナ禍による世界的な供給網(サプライチェーン)の混乱でエネルギー・資源、食料などが高騰していたが、ロシアへの経済制裁強化は、諸物価高騰に拍車をかけている。
 物価高騰への国民の怒りは各国政治を揺さぶり、フランスでは下院選挙で与党が過半数割れするなど激震が走っている。米国は中国の台頭を抑え込むためあの手この手で包囲網をつくり、軍事的な緊張も高めているが、足元はふらついている。ガソリン高騰などでバイデン民主党は秋の中間選挙での苦戦は必至と見られている。国民生活を揺さぶるインフレ対策で、米連邦準備理事会(FRB)は当初の想定以上の利上げを決めたが、これがさらに新興諸国をはじめ世界的な景気後退リスクとなっている。
 わが国も、数十年ぶりの「円安」の進行で、それまでの物価高も相まって各種の輸入物価が急騰、国民生活に大きな影響が出ている。これには単に日米の金利差だけでなく、低成長が続く日本経済の先行き、先進国最悪の財政赤字など日本経済が抱える問題が絡み合っている。
 物価高騰は低賃金にあえぐ多くの労働者や年金生活者、困窮者の生活を直撃している。コロナ禍で営業を自粛させられてきた自営業者も打開を求めている。
 米国の中国対抗政策に追随しながらアジアでの覇権獲得を夢想する支配層の一部が進める軍事大国化の道を許さないことは第1の課題だが、目前の物価高騰など生活危機をどう打開するのか、これらが今回の参院選で真剣に争われるべきである。

骨太の方針に大軍拡明記
 岸田政権、自公与党は今回の参院選を制して、長期政権を狙っている。
 参院選に先立つ6月7日、岸田政権は臨時閣議で、政権初となる、今年の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を決定した。参院選向けということもあろうが、参院選が終われば、岸田政権はこの「骨太の方針」の具体化に取りかかることになる。
 今回の「骨太の方針」についてひと言でいえば、岸田首相が、昨年の自民党総裁選や政権発足時に掲げた政策とはまったく別のものである。
 この中で、焦点の1つとなっていた防衛費については、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が国内総生産(GDP)比2%以上を目標としていることを示し、防衛力を「5年以内」に抜本的に強化するとした。そして「日米首脳会談で台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促した」と本文の注釈に記し、初めて「骨太の方針」で「台湾」に言及した。昨年の菅・バイデン会談で踏み込んだ「台湾」問題を「骨太の方針」に書き込むことで、経済財政運営の基本の1つに軍備増強、防衛費拡大を据えた。そのうえで来年度度予算の防衛費は、年末までに改定する「国家安全保障戦略」などの議論を経て、必要な措置を講ずるとした。
 「骨太の方針」の原案には「5年以内」という文言はなかったが、これは政府が自民党の意向を踏まえて修正したものである。背景には、安倍元首相らの存在がある。総理大臣経験者が政府の原案に注文をつけるのは異例なことで、岸田政権が安倍らの言いなりになっている姿が浮かび上がった。

アベノミクスを継続
 岸田首相が昨年の自民党総裁選や政権発足時に看板政策として掲げた「新しい資本主義」については、あれこれと聞こえの良い政策や理念が並べられたが、具体的にどう実現するのかほとんど見えてこない。
 さらに岸田首相が当初は売り物にした「分配重視」も消え失せ、「貯蓄から投資」へのシフトを進め、年末に「資産所得倍増プラン」を策定するとした。そして「大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を一体的に進める経済財政運営の枠組みを堅持」すると宣言した。これでは、「新しい資本主義」どころか、アベノミクスの「三本の矢」そのものであり、この間、資産家の懐を潤わせ、格差を拡大させてきた悪政の継続である。安倍・菅と続いた日銀の金融緩和頼みの経済財政運営で、経済は成長せず、政府の借金は膨らみ、技術革新など成長戦略でも世界に大きく後れをとっているのが今のわが国の姿であるのに、まだこれを続けようというのである。岸田首相自身もこれまでの「新自由主義的」資本主義ではなく「新しい資本主義」と言っていたのに、このざまである。
 また、政策遂行の基盤である財政運営について、「財政健全化の『旗』を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む」としたが、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を2025年に達成するとしたこれまでの目標は明示されなかった。
 一方で、「経済あっての財政」としたうえで、「状況に応じ必要な検証を行っていく」と明記し、安倍ら自民党内の積極財政派に配慮して、経済状況によっては目標を見直すことにも含みを持たせた。さらに、来年度の予算編成について、歳出改革の内容を盛り込んだ昨年の骨太方針に基づいて「経済・財政一体改革を着実に推進する」とする一方「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」という表現も盛り込み、さらなる歳出拡大の可能性にも触れた。
 先進国で最悪の国の財政で、あれこれきれいごとを言っても、財政運営の幅は限られている。大企業や資本家、資産家から取り上げることが出来ない(大企業はこの期間も過去最高の経常利益を上げているのに)自民党政治のもとでは、財政を「健全化」するには超インフレか、社会保障などの大幅削減や大増税など国民からの「収奪」強化以外にない。
 商業新聞でさえ、財界の意を受けて「財政運営の先行きが見えない」(読売新聞、6月8日「社説」)、「成長も財政も骨太さを欠く岸田プラン」(日本経済新聞、同「社説」)などと手厳しい評価である。

自公政権と正面から闘おう
 一方、岸田政権に代わって新しい国の生き方や経済財政運営の道筋を示すべき主な野党各党も、基本では自公政権と変わらぬ日米基軸路線にしがみつき「必要とあらば軍拡やむなし」という姿勢である。
 野党は日米同盟強化の亡国の道ではなく、中国やインドをはじめアジア諸国などと共存し、ともに豊かになる国の生き方を対置すべきである。
 国民生活の危機突破についての野党の主張も小手先の給付拡大などである。大企業や大資産家への課税強化などを大胆に打ち出し、経済財政運営の基本を抜本的に転換するような政策を対置して、物価高騰に苦しむ大多数の国民に方向を指し自公与党と争うべきである。
 アベノミクスの焼き直しに過ぎない岸田政権の「骨太の方針」を打ち破り、国民生活優先の経済政策を打ち立てるため労働運動を基礎に、広範な世論をつくり上げよう。(H)


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