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2022年2月5日号 1面

中国敵視の「人権決議」糾弾

 わが国の対中国外交は瀬戸際に立たされている。
 一九七二年の日中国交正常化以来、五十年にわたって両国の平和的環境と友好関係が築かれてきた。
 だが、二月一日の衆議院本会議で採択された「新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議」は、五十年にわたる先人たちの努力、全国で日中間の経済、文化、人事交流などの発展のために尽力している人びとの顔に泥を塗るきわめて悪質な決議である。決議には、自民党、公明党、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、そして、日本共産党が賛成した。れいわ新選組は、決議に「非難すべき国の名前すら入っていない」などとして採決で「反対」した。中国非難という点ではまさに「挙国一致」で、正気の沙汰ではない。
 北京冬季五輪の開幕直前にあえて決議をあげたのは中国に対する強い意思表示ということであろう。
 さらに参議院でも冬季五輪後、三月四日のパラリンピック開幕前に同様の決議をあげようとしている。

悪意に満ちた「人権決議」
 決議では、「新疆ウイグル、チベット、南モンゴル、香港等における、信教の自由への侵害や、強制収監をはじめとする深刻な人権状況への懸念」を示し、「深刻な人権状況に象徴される力による現状の変更を国際社会に対する脅威と認識するとともに、深刻な人権状況について、国際社会が納得するような形で説明責任を果たすよう、強く求める」と、中国の国名はなくとも、中国に「説明責任」を求めていることは明白である。姑息なやり方である。
 また、わが国政府に対して「深刻な人権状況の全容を把握するため、事実関係に関する情報収集を行うべき」「国際社会と連携して深刻な人権状況を監視し、救済するための包括的な施策を実施すべき」と中国への内政干渉を敵視政策を強めることを強調している。
 さらに、新疆ウイグル、チベットなどと表記され、あえて「自治区」という表現を削り、さらに内モンゴル自治区は「南モンゴル」と表記されるなど、これらの地域が中国の一部であると認めていないかのようであり、中国を乱暴に分断しようという意図は明らかである。決議は、昨年の通常国会、臨時国会の二度にわたって見送られてきたが、「南モンゴルを支援する議員連盟」の会長である自民党内右派の高市政調会長らが執拗(しつよう)に推進してきた。決議は自民党と立憲民主党の二名の議員が共同提案、公明党を含む与党内には、「中国を過度に刺激する」との懸念もあったといわれるが、与野党が一致して決議をあげ、さらなる中国敵視に踏み込んだ責任は厳しく問われなければならない。

米国に同調して軍拡
 昨年四月の日米共同声明で「台湾」問題を明記して中国敵視を強める道に踏み込んだわが国政府は、沖縄・奄美など南西諸島へのミサイル配備、基地建設など軍備増強に血道をあげている。自衛隊基地への米軍機配備など、日米一体化も急速に進んでいる。年内には「国家安全保障戦略」の改定などいっそうの軍備増強計画に乗り出す。
 安倍前首相らは「台湾有事」は「日本の有事」などと中国との武力衝突の意図を隠していない。岸田首相も、再三「敵基地攻撃論」を演説などでも触れて、中国や朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への先制攻撃さえ検討課題としている。
 際限のない軍拡はわが国と国民を戦争と滅亡へ導く道である。衰退する米国の尻馬に乗って中国と敵対してはわが国の未来はない。
 だが野党の多くは中国敵視政策で同調し、支配層が進める戦争と亡国の道に対決できるはずがない。商業新聞の論調も中国の脅威をあおり立て、労働組合の指導部の中にも中国敵視は当然という風潮が広がっている。指導部すべてとは言わないまでも、由々しき事態と言わなければならない。

犯罪的役割果たす共産党
 しかも今回の決議に賛成した日本共産党は、昨年来「中国に人権抑圧の是正と五輪憲章の遵守を求めよ」とか「五輪開会・閉会式への政府代表の不参加は当然」などと中国に対する敵意をむき出しにしてきた。今回の決議についても、自らは賛成に回りながらも、決議が「中国政府による深刻な人権侵害に対する非難決議とすることを明確にすべきだ」と言い立て、「日本政府が、中国政府に対して、国際法に基づく冷静な外交批判によって、人権侵害の是正を働きかけることを求める」と政府を督促するなど、高市ら自民党右派を上回る極めて犯罪的な態度をとっている。米帝国主義と同じ歩調で中国への敵視と対抗政策をあおる共産党指導部は断固糾弾されるべきである。

他国に口出す資格なし
 今回の決議に対して、中国外務省はコメントを発表し「日本の決議は中国の内政に乱暴に干渉している。その性質は極めて劣悪だ」「日本自身が、人権問題において悪行が多く、他国の人権状況に口出しする資格は全くない」と批判し、「中日本側に厳正に抗議した。中国は、さらなる措置を取る権利を留保する」と強調した。当然である。

中国敵視政策を転換せよ
 日中国交正常化から五十年となる。この五十年間に日中関係は飛躍的に拡大した。世界経済の中で中国が占める位置や役割は急速に拡大し、わが国経済も中国なしにやっていけない構造になっている。供給網(サプライチェーン)は複雑にかつ膨大になっており、三万社以上の企業が中小企業も含めて中国国内での経済活動や貿易などに携わっている。わが国地方経済も中国との結びつきは強まっている。安倍らがこの間の成長戦略の柱としてきたインバウンドも中国や韓国の訪日客をあてにしてきた。人的交流や文化交流など日中関係は多方面にわたる。歴史的にもさまざまな経過があったがゆえに、平和のうちにアジアの隣国として手を携えて行く以外に中国との付き合い方はない。
 内閣府の外交意識調査でも、「今後の日本と中国との関係の発展は、両国や、アジア及び太平洋地域にとって重要だと思いますか」という問いに約八割近くが「重要だ」と答えている。保守政治家の中にも現在の日中関係を憂う心ある政治家はいるし、経済界の中にはそれはさらに強い。多くの日中友好人士は現状の打開を求めている。
 岸田政権に中国敵視政策の転換を求める広範な国民世論と運動を強めよう。 (Y)


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