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2022年1月25日号 1面〜2面

労働党中央委員会講演・旗開き

新議長、党の前進訴え

 日本労働党中央委員会主催の二〇二二年新春講演会・旗開きが、一月九日開かれた。新春講演は、新たに党中央委員会議長に選出された秋山秀男同志と総政治部責任者の大嶋和広同志が行なった。党旗開きでは、各界の来賓のあいさつに続き、地方議員と予定候補者、現場で闘う同志たちが発言し、激動する情勢のもとで革命党の建設と闘いの前進を誓い合った。秋山議長と大嶋同志の新春講演の要旨を編集部の責任において掲載する。
秋山秀男議長の講演(要旨)

■世界的な転換期、われわれはいかに闘うか
 私どもの新春講演会、旗開きにご参加いただきましてまことにありがとうございます。昨年、大隈議長が亡くなった以降も、皆で団結して議論したり、闘ってきて、労働党は隊伍を崩さずにやってこれたと思っています。全党の同志、友人、支持者の皆さんの力のよるものと感謝します。
 私は、現在がどんな時代なのか、そういうもとで労働党がどう闘っていくのかという大局的な話をさせていただきます。
 私が訴えたいことは、一つは、いま資本主義が非常に深刻な危機にあって、世界史的な転換点を迎えているという時代認識です。もう一つは、世界の支配層の中の識者や経営者たちも、資本主義がもつのかどうかという危機意識を非常にもっています。その点について、かれらの振りまく「サスティナブル資本主義」などは、ひと言で言えばごまかしであると言いたい。三点目に、それでは労働者階級やわれわれはどうするのかということで、結局、資本主義が来るところまで来たということで、資本主義的生産様式に代わる新たな生産様式を打ち立てるための闘いを準備していかなければならないということです。最後は、世界史的な転換期に際して、労働者階級、人民とともに勝利を目指して闘う決意を述べたいと思います。

■商業新聞の社説は新年に際して何を主張しているか
 正月の商業新聞の社説を読みまして、各紙とも共通しているのは「資本主義は危機だ」というのが共通していますね。このままいくと資本主義はもたないと。昨年よりはちょっと違っています。かれら自身も相当慌てふためいているということです。例えば、「日経新聞」は、格差問題が深刻で、資本主義を作り直さなきゃいけないという主張、「読売新聞」は行き過ぎた金融資本主義の是正、「毎日新聞」は資本主義の見直しを、というようなことです。じゃあどうするのかということにはほとんど触れられていません。言いたいのは、こんにちそういう新聞でも、資本主義の危機が取り上げられて大きな問題になっているということをぜひ知っておいていただきたいと思います。

■支配層の「ステークホルダー資本主義への転換」の主張
 次に、世界の支配層は危機の打開策として、「ステークホルダー資本主義」への転換を訴えている。これまでの「株主資本主義」が行き詰ったと。「ステークホルダー資本主義」に転換しなければ資本主義はもたないということを世界の支配層の中の意識分子は主張しています。例えば二〇一五年に国連が「SDGs」という持続可能な開発目標という合意に達しましたね。それから米国の大手企業経営者団体が、「株主資本主義」から「ステークホルダー資本主義」への転換を唱える声明を行って、企業経営者から署名を集めてるわけね。その経営者の中にはこんにちの支配的な企業、GAFAだとか、そういうところも署名してます。これが二〇一九年八月なんですね。二〇二〇年には世界経済フォーラム(WEF)が、「ステークホルダー資本主義」を提唱してるんですね。そういうことで、日本より少し前から欧米では危機感を深めた経営者らがそういう提唱をしているということで、日本は一周遅れということでしょうか。
 要するに「ステークホルダー資本主義」でかれらが心配しているのは、格差拡大や環境問題ということなんです。特に格差拡大をこのまま放置すれば資本主義はもたなくなるぞという危機意識ですね。しかし実際は、この数年間で企業収益の分配を見ますと、株主への配当が非常に伸びている。特に二〇〇〇年代に入ってから急伸して、こんにちも止まっていません。それが実態です。それから、一九七〇年代からこの半世紀で、上場企業の株式時価総額は約八十倍超、金額にすると百兆ドルになっているということ。ところが従業員給与は、九〇年代末からずっと下がってるわけです。そういうことで私は、支配層の一部が「株主資本主義」からの脱却を唱えようとも、一部の人たち、例えばビル・ゲイツなんかはもっと税金かければいいみたいなことを言ってますよね。そういうことはありますが、基本的には、資本主義の構造は変わっていないということです。
 なんでかれらが、こういう説を唱えているのか。それはですね、このままいくと世界中の働く人たちが不満を高めて、怒って暴動を起こしかねないと。すでにもう一部では暴動が起こってきている。そういうことを心配している。
 米国のあるアンケート調査によると、「社会主義がいいかどうか」というアンケートをやったら、約半分ぐらいが「社会主義がいい」っていうことなんです。社会主義と言ってもどういう社会主義か私は分かりませんが、いずれにしろ「いまの資本主義はダメ、社会主義はいい」というのが若者の中に出てきているというのが、いまの世相を表していると思います。

■日本経団連による「サスティナブル資本主義」の提唱
 日本では、日本経団連の十倉雅和会長が、去年の十一月の討論会や今年の新年のあいさつなどで唱えているのは、「サスティナブル資本主義」ですね。持続可能な資本主義ということで、世界の支配層が唱えていることと基本的には内容は同じです。少し紹介しますと、こんにちの危機の原因について何て言っているかといいますと、世界的に行き過ぎた資本主義、市場原理主義の潮流によってもたらされた弊害は大きく二つあると一つは格差の拡大、固定化、再生産。いま一つは、生態系の崩壊や気候変動問題、新型コロナのような感染症問題といったものですと、こういう問題を引き起こしたこれまでの資本主義を変えなきゃいけないと言ってるわけです。
 じゃあどうやって変えるのかということですが、こう言ってますね、「われわれはこれまでの資本主義の路線を見直す時期に来ている」と。社会性、人の営み、生きる意味などを包含した資本主義市場経済、すなわち、ソーシャル・ポイント・オブ・ビュー、社会的視点を取り入れた資本主義の確立が求められていると言っています。それ以上詳しいことはよく分かりませんが、雰囲気は察することができると思います。しかし、こうした市場原理主義だとか行き過ぎた金融資本主義を「サスティナブル資本主義」に変えることで、こんにちの危機が解決できるのかというと、私はこんにちの危機は資本主義そのものの行き詰りだと思いますので、違うんじゃないかと思います。
 それから、誰がその「サスティナブル資本主義」をやるのかということですが、この人たちは経営者の団体、日本の財界のトップの人ですね。「サスティナブル資本主義」なんて本気に思っているのか。経済人の中には、そんなのは本気になってないよと言っている方もいるようです。ですから、私は、これは欺まんだというふうに思います。
 結局、かれらが根本的に恐れているのは、資本主義が続かなくなることですね。
 それで、こんにち資本主義が深刻な危機にあることはもう大体共通している。それをどうやって打開するのかという点で大きな違いがあるわけです。

■世界は未曽有の危機にあり、資本主義がもたないことが明らかになりつつある
 資本主義が深刻な危機に陥っているということについて、何点か触れてみたい。
・富の偏在と格差の拡大は資本主義の歴史的な限界を示している
 一つは、富の偏在と貧富の格差の拡大ですね。コロナ禍のもとでも大企業はボロ儲けですよね。例えばアップルの株の時価総額、昨年末に三兆ドルですよ。初めて一社で三兆ドルを超した。三兆ドルというと、日本の名目国内総生産がだいたい五百兆円から五百五十兆円ぐらいですね。三兆ドルというと、一ドル百円だとして三百兆円になりますよね。すごく儲けている。逆に、いまも飢餓線上に暮らしている人が世界でどのくらいいるんでしょうか。世界銀行などよると十億人以上いると。また米国では、富裕層上位一%が、米国の国富の半分を占めている。こんにちの世界の猛烈な格差や富の偏在、そういういことが、「サスティナブル資本主義」などと生易しいことで、本当に解決できるのかと、私は言いたいんですよ。なぜか。この格差を生み出したのは、何ですか。確かに金融資本主義や新自由主義とかいうことも、それは加速させていると思いますが、基本的には資本主義そのもの、資本主義の生産の社会的な拡大と資本家的所有の矛盾、そこに根差していると思うんですね。つまり「サスティナブル資本主義」になっても格差は少しは変わるかも知れないが、基本的には変わらないと私は思います。そういう格差の問題が一つですね。

・地球環境、コロナパンデミック
 二点目は、地球環境危機ですね。昨年の十一月、COP26という世界的な会議がありましたね。だけど、グレタさんも、もっと真面目にやれっていうふうに、怒ってますね。大したことは決まらなかったわけです。だからいま米欧では世界戦争よりも気候変動危機の方が怖いんじゃないかというふうなことを、どなたかが「日経新聞」に書いてましたね。非常に深刻な状態だということです。だけど、いまの資本主義のもとでこの問題を解決できるのか大いに疑問です。資本主義というのは最大限利潤の獲得を追求するわけですね。長い歴史の中でそのことが自然の生態系を壊してきているということなので、簡単じゃないと思います。

・「第四次産業革命」は資本主義を死滅へと加速化させる
 三点目は、技術革新の問題です。技術革新のしわ寄せは、働く者たちや中小企業などの皆さんに押し付けられている。例えば、ある日突然、民間大企業の正社員もリストラされるというふうになるわけですよ。GAFAのような大企業が技術や資本を独占して、新興企業や中小企業の発展を阻止してるんですね。国際通貨基金(IMF)が昨年三月の報告書でも「過大な支配力が中期的に成長を妨げ、イノベーションを抑圧する」と警告している。そういうことで、資本主義自身が、非常に歪んできているということを示していると思います。
 一方、中国は、下からの個人的な起業が非常に盛んのようです。また中国共産党も、最近はIT大手企業などに対する規制を強めているのはご存知だと思います。こうしたことが、中国の活気ある技術革新、イノベーションを支えてるんじゃないかというふうに思っていて、資本主義国と中国との違いを私は感じております。
 いずれにしろ、技術革新が資本主義の危機を加速化させ、寿命を縮め、死期を早めていると判断してもいいと思います。
 それから、技術革新をめぐる競争というのはいま凄く激しいですね。特に半導体を握るものが世界を制すると、大げさじゃなくてそのようです。世界最大の半導体メーカーは台湾のTSMC(台湾積体電路製造)という企業ですね。これを誰が取るかと、大問題になっているわけですよ。だから、台湾は戦略的要衝なんだけど、半導体企業がそこにあることもひとつの要因になっているわけですね。ヨーロッパなどの軍艦がアジアまで来ているというのも、かれらが狙っているのはそういうことですね。米国はこのTSMCを脅かしてアリゾナへの誘致に成功してます。TSMCは、中国のファーウェイに対して米国が制裁を加えた時でも、取り引きをやってるんですね。最終的には取り引きを止めさせて、ファーウェイを困らせるということを米国はやっているわけですが、とにかく半導体をめぐる競争が激しいということです。技術革新が資本主義の健全な発展を促すなんてことじゃなくなっていると私は思います。

・国際的な地政学的危機の激化、米中対立の激化とその見通し
 最後ですが、こうした世界的な経済危機、そのうえで技術をめぐる争奪戦の激化、資源、市場をめぐる競争の激化の中で、国際政治も対立が非常に激化していることはご存知の通りです。典型的なのが米中対立です。結局、米中対立の根っこにあるのは、要するに米国の衰退です。米国が衰退して、逆に中国が台頭してきて、米国がどうやって覇権を維持するかということが、米中対立の根っこにある。貿易制裁から始まって、いろんな中国の矛盾を突いたりして中国の弱体化を図ろうとしているわけですね。しかし、貿易ひとつ見ても、中国は世界で最大の貿易国です。誰でも言いますが、中国抜きに世界経済は成り立たなくなったと。逆に中国も世界経済の発展を必要としていると言われています。いずれにしろ中国が世界経済に占める位置が非常に巨大なんですね。そういうことで、米国がそういう中国を恐れて、米国がまだ総合国力では少し上回ってる、そういった時期に、中国の弱体化を図ろうとしているんだと思うんです。だけど一国ではできないから、英国や日本やインドと組んで包囲網を敷いて圧迫を加えたり、あるいは軍事的にはオーストラリアと英国と米国で包囲網をつくったりしている。
 ついこの前、日米間の2プラス2という会議がありました。米国はひとりでは闘えませんから日本を利用して、中国に対処しようとしてるんじゃないかと。日本の支配層は、支配層なりの思惑があって、道を探ってるんだと思うんです。いずれにしろ、米中対立が非常に大きな問題になって、これが今後の世界情勢に大きな影響を与えると思うんです。
 中国はお隣の国ですね。習近平さんが言うように中国も日本も引っ越せないんですよ。だから、お隣の国同士で仲良くやっていく道を探るべだと思うんです。少なくとも話し合って、平和と共存、共栄、戦略的な互恵ということに、日本の首相は政治生命をかけてでもやるべきじゃないかと、私は思うんです。それをやらなければ、労働者や国民の力でいずれ倒されるでしょうし、倒さなければいけないと思います。
 いくつか挙げましたが、根本にあるのは、資本主義が行き詰った、その中でのあれこれの争いだというふうに思うんです。行き詰ったが故の争いと。貧困の問題も、格差の問題も、米中対立もそういうことです。このまま行けば、非常に危機的な事態になるんじゃないかと。米中対立一つとってみても、私は両国の支配者が戦争をやる意志はないと思います。だけど、偶発的な対立や軍事的な対立へとなっていく危険性はいっぱいありますよ。
 結局、はさっき言いましたように、これらの危機は、資本主義が来るとこまで来ていることの産物だということです。

■資本主義的生産様式を根本から変える以外に出口はない
 それでは労働党はどうしようと考えているのかということですが。
 一つは、資本主義的な生産様式、これを別のものへ作り変えていくと。その前に、資本主義が発生した時に、十五世紀ごろ発生しましたね。資本主義が発生した時、エンクロージャー・ムーブメントという運動がありましたね。土地所有者、大地主たちが、それまで農業で働いていた農奴、農民を追い出して、羊を育てる牧場みたいなものを作ることでやったわけです。当時の文筆家トマス・モアが、「羊が人間を食っている」という一行を書いているわけですよ。けだし名言ですね。そういうことで農奴が、その土地から追い出されて、浮浪人になったり、賃金労働者になったわけです。大地主階級が、農奴の持っている鋤、鍬、土地などの生産手段を奪い取って、何も持たない存在、つまり労働者を作ったわけですよ、だから資本主義は、生まれた時から頭のてっぺんからつま先まで、血と汚物にまみれて生まれてきたということなんですね。
 GAFAだって同じようなものですよ。要するに知的財産だとか公共的な財産を囲って、そこで賃料を取ると、いうことで、形態は違うけども資本主義の強欲というその本質は変わらないというふうに思うんです。こういう資本主義、生産手段を持った資本家が、利潤の最大化を追求するために、労働者をこき使って何でもやる、そういうことですよね。そういうことで資本主義が、産業革命以来でも二百五十年も経ちますが、その寿命が尽きたというふうに思います。ですから、生産手段を持った資本家、つまり私的所有を基礎とする資本主義的な生産関係を打ち破って、社会的所有に基礎を置く新しい生産関係、生産様式を作っていくという、これは、極めて目的意識的で、戦略的な闘いですが、そういう時期に入った。それ以外に出口はないと、私は思います。そのためには、どうしたって、それに抵抗する人がいるから、自然にはそういうふうにならないわけですよ。生産手段を持っている連中、利益をいっぱい持っている連中は、それを守ろうとするでしょう。その人たちに吐き出させなきゃならいわけですよ。それはやっぱり権力が必要ですね。だからその権力というのはやっぱり労働者や多くの人びとが集まって、最終的には労働者階級が指導権をとって、権力を樹立し、その権力を使って、新しい生産様式を作っていくというような闘いがその次には始まるんだと思います。いずれにしろ、そういう長い射程をもった闘いですが、歴史の要請に応えようとすれば、そういうことが迫られていると私は思います。
 最後に一つだけ、共産党の志位委員長が女性の学者と元日の「赤旗」で対談している、それから四日の旗開きでは演説をぶってます。かれが言っているのは、要するに新自由主義が悪いと言っているだけなんです。支配層と同じですね。だからどうするかと言えば、「優しくて強い経済を作ろう」と提唱しているんです。「優しくて強い経済」って、中身は分かりません。私が感じたのは、資本主義を根本から大変革していくという気迫をまったく感じませんでした。一種の修正資本主義といいますかね。資本主義の枠内でのことですね。もう一つ言っているのは、日本の外交・安全保障政策、米中対立についてです。かれは米中覇権争い、軍事対軍事の悪循環に厳しく反対すると言っています。要するに軍事が悪いんだということであって、非常に狭いですね。こんな狭い考え方では支配層には勝てません。こういう考え方は、帝国主義が中国に対して独裁だとか覇権主義だとか言って攻撃しているわけですけど、それに加担することになりますよね。事実、前の党大会で、中国は大国主義、覇権主義であると綱領を変えたわけですね。そういうことなんで、こういう共産党のような連中とは、考え方の面でも闘わなきゃいけないと私は思います。

■「社会革命」の時代を領導できるような労働者階級の「前衛」政党を建設する
 わが党は、社会革命を領導できるような党をつくりたいのですが、幸いにして労働党の綱領は、民族的な課題を優先して権力を取ると言っているわけですね。ですから、労働者階級が農民や中小企業経営者や青年・学生などの皆さんといっしょになって、具体的には独立・自主の日本をつくるために、そういう旗を掲げて、支配層を割って、支配層の一部も引きつけて、大きな政治、大きな闘いをやって、権力へ接近するということでがんばりたいと思います。そういう道を抜きにして、社会革命へとは、すぐには行けません。
 労働党は、この時代を、世界史的な転換期、時代を切り開くような、労働者階級の革命政党として役割を果たしていきたい。闘いの中で鍛えられ、若い人たちと一緒になって闘い、若い人たちが党に結集し、党の幹部として育っていく、労働党の指導部を若返らせていくということを目指して、皆さんと共に闘っていきたいと思っています。私の考えが皆さんに伝わったかどうか、深く信頼して、これで私の話を終わります。ありがとうございました。
大嶋和広同志の講演(要旨)

 皆さんおめでとうございます。
 秋山議長から遠大で壮大な話、世界は歴史的転換期、社会革命の時代だというわが党の時代認識について話がありました。私は、もう少し目前と言いますか、今年、労働党は何をするのかということについて訴えさせて頂きたいと思います。

■アジアの平和、共生の国の進路、それを実現できる政治、政権の実現のために闘う
 私は、課題として訴えたいのは、アジアの平和・共生の国の進路、それを実現できる政治・政権の実現のため闘うということです。具体的には、皆さんご存じのように、今年は日中の国交正常化と沖縄の施政権返還の両方の五十周年に当たるわけです。これは戦後史の転換点であったと私たちは認識していますけど、以降五十年経って東アジアやわが国を取り巻く情勢は大きく変化したと思います。
 最近のことから申し上げますと、昨年は何と言ってもアフガニスタンから米軍が撤退に追い込まれたというのは非常に大きなことで、それに典型的に表されているように、米帝国主義の衰退が誰の目にも分かるようになったことだと思います。
 その下で米国は中国に対しさまざまな圧力・圧迫をかけてきている。振り返ると、一九九〇年代半ばぐらいから、米国の戦略として、特にオバマ政権の下でアジア・ピボット戦略ということで出されました。それからトランプ政権になってから、二〇一八年十月にペンス副大統領が、これは二年続けてペンス演説があって、中国敵視を公然と打ち出しました。並行してトランプ政権は、通商問題を中心に、さまざまな関税などで中国に対する圧力を強めた。
 バイデン政権はどうか。トランプ政権は通商問題が主要だったのが、最近になってウイグル等々の人権問題や半導体などをめぐる経済、科学技術の問題も含めて、きわめて全面的かつ露骨な攻勢を強めるようになってきています。しかも日本やオーストラリアなど、QUADとかAUKUSなど、同盟国を引き込んでの策動を強化している。
 そしてわが国の政権、現在の岸田政権も対中包囲網に積極的に加わるという道を選択しています。具体的には「敵基地攻撃能力」ということです。つい数日前、日米の2プラス2がありまして、ここでも露骨にこの問題が掲げられました。「日米の戦略の完全な融合」、そういう表現で、米国と同じ立場で中国に対峙していくと表明したわけで、中国が反発するのも当然です。
 改めて言うまでもありませんが、防衛費を国内総生産(GDP)の二%にするという話も出ていますし、それから経済安保ですね、その策動も強まって公安調査庁のホームページの中にもそういうコーナーが出来たり、国家安全保障戦略などの三つの安全保障関連の文書の改定を前倒しするということなどを盛んにやっている。
 基本的に、岸田政権を頭目、代表とするわが国の支配層の主流派の目指しているところは、結局、中国に対抗して、アジアの大国として再び登場したいということだと思います。これは単に米国の言うことを聞くというよりも、最近の、特に安倍政権以降の特徴としては、日本の支配層の極めて露骨な願望というか、戦略の問題として浮上してきたと私たちは見ています。
 これがもたらすものは、アジアにおける戦争の危機です。すでに「台湾有事」が露骨に語られていますし、政権投をげ出した安倍とかが、経済問題から安全保障など何から何まで口出して、そういう危機を煽って中国敵視をやってるわけです。非常にけしからんです。
 しかし日本経済は、すでに中国なしでは生きられないことははっきりしている。私たちが身に着けたり、持っている物も中国製が多くありますし、スーパーに行けば野菜とかもそうですよね。調べてみると、中国に進出している日本企業の数は三万三千社ぐらい。これは米国に進出している日本企業の三倍で、それほど経済関係が強まっている。輸出や輸入でも最大の貿易相手国になっている。
 そういうことを知っている日本の経済人なんかは、表立っては政府に逆らえないとしても、相当の危機感を持っているわけです。それは財界の文書なんかを読みますと、行間からにじみ出ているというか、あふれ出ている。例えば、経団連の十倉会長なんかは「日中両国の連携を競争と協調のもとで進めていかなければならんのだ」と言っている。また、経済同友会に加盟している企業人へのアンケートで、米中の対立の中で日本はどうしたらいいのかという質問に、三分の一以上の人が「日本独自のスタンスを取るべきだ」と回答している。中には「米国と距離を置くべきだ」と言う企業経営者もいた。つまり、それぐらいの世論がある。新疆ウイグル地区の綿を使っているといって米国から輸入停止されているユニクロ(ファースト・リテイリング)の柳井会長が「米国の手法というものは企業に踏み絵を迫るものだ。その手に乗ってはいかん」と最近の「日経新聞」で発言していた。こういう経済人の不満の中に今の政府が進める中国敵視のやり方というのは必ずしも支持を得ていない、私たちの側からすると、これと闘う広範な戦線をつくる条件が非常に広がっていると思います。
 ところが問題は、野党の皆さんではないかと率直に申し上げたい。昨年の衆議院選挙でも、政府が進めている中国に対する敵視に対して、残念ながら、真正面から反対した政党はなかった。対抗軸を立てて日本をどういう方向に持っていくのかということがないわけですよ。  われわれからすればとんでもないことですが、安倍政権にはありましたよね、「強い日本を取り戻す」。中身はないけど大きな方向はあるわけですよ。野党の皆さんにはそういうのがない。世界は激変期ですから、これから世界や社会はどうなるんだろうと皆思っているわけですから、それに対して、わが国をこういう方に向けて行きますよという舵取りを示せなくては、政党としていかがなものかと思います。
 特に問題なのは日本共産党です。最近でいうと北京冬季五輪の外交ボイコット、これを政党として真っ先に主張したわけです。岸田政権は弱腰だと言いたいのでしょうか。岸田政権は外交ボイコットという言葉を使わずに、うまく逃げたような形で、やってることは米国といっしょなんですが、にもかかわらず、野党がそういうことでどうするのか。
 私たちは日中国交正常化五十周年を期して、改めて中国敵視外交を転換せよということを要求したいと思います。日本と中国は再び戦争をしてはならない。こういう世論と運動を作って、それができない政府・政権を打ち倒せと呼びかけたいと思います。特に台湾問題に関しては、安倍なんかが典型ですが、米国と歩調を合わせて、実際上は二つの中国、台湾を独立した国家であるかのような扱いをどんどん進めている。これは一九七二年に日本と中国が結んだ日中共同声明の精神に真向から反するものですから、その時に約束した一つの中国という原則に立ち返ってやるべきだと思います。
 そのためには、与野党を問わず政治家、財界人や官僚、知識人、それから労働組合にも働きかけて広範な戦線を作っていかなければならないと思っています。併せて、政党として難しいのであれば、個人のような形でも、自民党の中にも先ほどの財界の人のような不満を持っている人がいると私たちは確信していますので、そういう人びとが国会の中で一定の勢力を占めるように呼びかけたいですし、そういう人たちの連携を側面から支援できることはやりたいと思っています。
 私たち労働党としては、「労働新聞」などでの世論喚起を強めていきたいと思っています。集会などの大衆行動にも取り組んでいきたい。今日お見えの角田先生を先頭としてがんばっておられる自主・平和・民主のための広範な国民連合の取り組みについて、これを断固支持して共に闘っていきたい。
 もう一つ言わねばならないことは、朝鮮半島の南北両国ですね、これとの関係もきわめて不正常というか、朝鮮とは国交もないわけですから、即時無条件の国交樹立がかねてからの私たちの主張です。韓国との関係もきわめて不正常ですね、これも早急に改善すべき。これとからめて歴史認識問題、特に最近では若者の中での歴史認識教育がますますひどい状況です。この問題も取り組んでいきたい。
 それから二つの五十年といった沖縄ですね。最近沖縄で、これはコロナで典型的ですが、米軍基地ですよ。沖縄県民からすれば、施政権の返還と言いましたけど、実際のところ沖縄全体が返ってきているなんてことはない。七二年の「返還」にも関わらず。県土の重要な部分が引き続き米軍に占領されているわけですから、これと闘う沖縄県民、とりわけ辺野古の新基地建設に反対するオール沖縄の闘い。それから米軍犯罪や騒音等に反対するこうした闘いを断固支持して全国で世論と闘いを盛り上げていきたい。

■国民生活、営業・営農・経営危機の打開のために闘う
 二番目の課題として国民生活、営業・営農・経営危機の打開のために闘うことを呼びかけたい。
 ご存知のように、アベノミクスの下で非常に格差が開いた。そこにコロナが追い打ちをかけた。特にいわゆるエッセンシャルワーカー、それから女性ですね。それから学生の皆さんも、昨年ぐらいから少し戻ってきたようですが、アルバイトができない。それから大学が皆オンラインで、友だちもできないという状況。年間でコロナによる倒産が二千五百件、これは一定の資本金以上ですから、実際はもっと多い。廃業を加えればもっと多いです。今生きている多くの企業でも、さまざまなコロナ関連の補助金などで何とか食いつないでいる。雇用調整助成金の特例措置も、延長されるかもしれませんが、三月に切れるとか。あとコロナ関連の特別融資の返済、これは九月だと思いますが。それがそのまま実行されたらもっと悲惨なことになる。私たちはこういった国民生活が極めて危機的な状況の中で困っている皆さんの要求を掲げて国・政府、自治体に迫っていくという活動も強化していきたい。
 さらに、昨年の秋口から円安倒産というのが増えている。この問題も注視していきたい。
 それだけでなく、自治体等における社会保険料の負担が増えているような問題にも注目して、国・政府、自治体に迫っていくという活動をしたい。それから既に子ども食堂のような形で全国各地で行われてますね、こういった取り組みを私たちは支持し、もし近所であれば、ご参集の皆さんも駆けつけて、可能な協力をして頂きたい。
 三番目は憲法改悪策動などの政治反動、情報統制、国民管理強化に反対する課題です。

■労働運動について若干
 四番目に労働運動について少し述べたいんですが、労働組合の皆さんとお話しますと、とにかく参議院選挙だとおっしゃる方が多い。参議院選挙をやるなとか、そういうことではなくて、全体の力関係を変えるために何が必要かという角度で、特に労働組合の皆さんは大衆行動をぜひ強めて頂きたい。そうしてこそ選挙にも役立つはずだと思っている。
 労働組合が活性化するためには、一つは日中関係のような、日本の国の大きな方向、国の進路の課題について労働組合も発言するべきだ。そうしてこそ社会的な存在感が示せますし、支配層内部のさまざまな矛盾、先ほども財界の例を挙げましたけど、そういう矛盾を利用して、労働組合にとって有利な力関係に変えていくことは可能だ思います。また併せて、他の階級、例えば農民や中小商工業者、こういった人たちの要求を労働組合が支持して闘うことはとても重要だと思います。こういったことを行ってこそ、組織率の低下とか言われている労働組合がもう一度活性化して労働運動の再生につなげていくことは可能になるはずだと確信しています。
 また、数多くの弾圧に抗して闘いっている関西生コン支部の闘いを、改めて断固として支持することを表明させて頂きます。

■社会革命の時代、党の前進を
 最後に、「社会革命の時代」、そういう時代ですから、やはり志を大きく持って、闘いたいと思います。先ほど言った三つの課題をやる時も、大志というか大望といった観点を外さず持っておきたい。
 もう一つは、政治の変革には、人民大衆、そういう人びとにこそ世の中を変える力があるということを、当たり前のことですが、肝に銘じてがんばりたい。特に日々そういう普通の人たちとの接点でがんばっておられるご参集の現場の党員同志の皆さんの力に頼って前進していきたいと改めて表明します。
 それと、青年学生。特に、秋山議長がグレタさんの話をしましたが、日本でもさまざまな動きがあって、平和の課題だけじゃなくて環境問題、最近はジェンダーの問題などでもさまざまな運動が出てきています。私たちは、上から目線で教えてやるということではなくて、青年学生の皆さんの要求それ自身が発展できるようにお手伝いしたいし、連携もしていきたい。ぜひこの党に青年学生を多く迎え入れたい。今年はその第一歩にしたい。
 それから地方議員、先ほど国民生活の課題で申し上げた通り、さまざまな要求があるわけです。そういった要求を掲げて政府や自治体に迫れるような地方議員の皆さんの活動を促したいですし、わが党に所属している議員同志の皆さんにも積極的な役割を果たして頂きたい。
 最後に、こういった激動の情勢を生き抜いていくためには、当たり前のことですが、この党を大きくする活動を、、今までも努力してきたわけですが、今年改めて強めていきたい。ご参集の皆さん、同志の皆さんと連携して戦線をつくり、運動をつくり、そして党をつくるということでがんばっていきたい。


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