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2021年10月15日号 2面・解説

悪政引き継ぐ
岸田首相の所信表明演説

「新資本主義」は国民欺く方便

 菅政権に代わって十月四日成立した岸田政権は、成立直後の十九日に解散、総選挙に打って出た。
 菅前首相の突然の退陣で急きょ成立した岸田政権は、基本的には安倍・菅前政権が進めてきた内外政策を継続するものである。
 しかし、内閣支持率が低迷し、国民の政治不信が高まった中で、当面する総選挙での議席確保のためには、看板の架け替えだけは足りず、「岸田カラー」ともいうべき政策で目先を変えて「新味」を打ち出し、支持率を回復する必要にも迫られている。
 岸田首相は八日、臨時国会で所信表明演説を行なった。岸田政権の政権運営の基本となるものだが、総選挙向けのアピールのようでもあり、政策の具体的な肉付けは後回しとなっている。それでも、岸田政権と闘う上で、政権が何をやろうとしていることは窺い知ることはできる。
 所信表明演説で、岸田首相が取り組むとした政策内容は、「第一の政策 コロナ対応」「第二の政策 新しい資本主義の実現」「第三の政策 国民を守り抜く、外交・安全保障」の三点である。
 第一の政策であるコロナ対応では、ワクチン接種や検査の拡大、事業者への支援などは当然だが、コロナ対策としての課題を「これまでの対応を徹底的に分析し、何が危機管理のボトルネックだったのかを検証します。そして、司令塔機能の強化や人流抑制、医療資源確保のための法改正、国産ワクチンや治療薬の開発など、危機管理を抜本的に強化します」と「危機管理」としている。
 だが、コロナ禍で明らかになったのは、この間の「構造改革」で進められた保健所の削減など保健・衛生・医療体制の縮小・削減の実態で、それでは国民の命も健康も守れないということである。これからも再発が予想される感染症流行に備えるため体制の拡充こそが求められるのではないか。岸田首相は、「危機管理」ができなかったのでコロナ感染が広がったと言っているが、体制が崩れていたのである。
 第二の政策で「新しい資本主義の実現」と言う。これがいわば岸田カラーということだろうが、財界でさえ昨年の日本経団連の「。新成長戦略」で「新自由主義からの転換」を言わざるを得ないほどに、世界の資本主義は行き詰まっている。だが、「新しい資本主義」などと言って「分配と成長の循環」といっても、どこがこれまで資本主義と違うのか全く不明である、目先を変えて国民を欺くための方便にすぎない。しかも、「分配」で賃上げするというが、企業減税をして賃上げを促すということに過ぎず、賃上げにつながる保証はなく、企業の懐を潤すだけである。
 岸田政権が「成長戦略」として上げている課題は、ほぼアベノミクスで謳われた政策の継続で、いずれもわが国の立ち遅れが明らかになっている課題ばかりである。アベノミクスは成功せず、日銀の金融緩和頼みで、政府の借金は膨大に積み上がった。財界などが要求する「財政健全化」との板挟みで「新しい資本主義」どころではなくなるはずである。
 第三の政策の「国民を守り抜く、外交・安全保障」だが、これは言わずもがな、中国敵視に踏み込んだ菅政権の方向をいっそう深化させようというものである。「外交・安全保障政策の基軸は、日米同盟です。私が先頭に立って、インド太平洋地域、そして、世界の平和と繁栄の礎である日米同盟を更なる高みへと引き上げていきます」と意気込んでいる。
 一方、「中国とは、安定的な関係を築いていく」とはしているが、明確な方針は示していない。最大の貿易相手国で、多くの進出企業が中国で経済活動をしている。岸田政権が進めようとする時代錯誤の政策は、いずれ転換を迫られることになろう。
 岸田首相は、所信表明の冒頭部分で、「国民の切実な声があふれている」とノートを振りかざしたが、本当に切実な実態に向き合っているのか、大企業にばかり向き合っているのではないか。    (H)


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