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2021年8月25日号 1面

感染症対策失敗の責任をとれ
菅内閣は即刻退陣せよ

「政治休戦」反対

 菅政権が昨年九月に発足して以来、自民党は与野党が対決した主要な選挙で連敗している。七月の東京都議選の当選者は過去二番目に少なかった。そして首相の膝元である横浜市長選挙で「弟分」が惨敗した。
 もはや、菅内閣の命脈は尽きかけている。最大の要因は、科学的な評価と迅速で効果的な対策を欠いた新型コロナ感染対策に尽きる。そして多くの国民の反対を押し切って開催した東京五輪が、感染拡大を加速させたことである。菅首相は、自らの総裁選と総選挙対策のために五輪強行を企んだが、見事に失敗した。
 東京五輪を前後して新型コロナの感染拡大は急ピッチとなった。八月二十日現在、「デルタ株」を中心に全国の感染者数は累計で約百二十八万三千人、亡くなった人は約一万五千六百人を超える。入院・療養者数も、約二十万人にのぼっているが、圧倒的に多くの人は入院もできず「自宅療養」と称する「放置」状態に置かれている。放置されたまま死亡する人が相次いでいる。これは「人災」どころか政府の無策が招いた「未必の故意による殺人」ともいうべきものである。国民の命を守るべき保健・医療体制が崩壊している。
 菅内閣は即刻退陣すべきである。

後手後手の感染対策
 菅政権のこの間の感染対策を振り返ってみる。
 第五波ともいわれる今回の拡大で、東京都への四回目の緊急事態宣言が出されたのが七月十二日(沖縄県は宣言継続)で、当時の一日の感染者数は全国で約千五百人だった。同時に埼玉、神奈川、大阪は「まん延防止等重点措置」は続行されたが、北海道、愛知、京都、兵庫、福岡は防止措置を解除した。
 菅首相は記者会見(八日)で、「ワクチン接種の効果が明らかになり、病床の状況などに改善が見られるような場合は前倒しで解除することも判断する」と呆れるほど楽観的な見通しを述べた。
 東京五輪の開幕が迫って、各方面から「中止」の声が上がっている状況だったにもかかわらず、五輪開催で政権浮揚を企んでいた菅首相は「先手先手で予防的措置を講ずることとした」と述べた。
 菅政権は五輪開催へ突き進んだが、これが引き金になって感染拡大のペースはさらに上がった。五輪期間中の二十九日には感染者数は一万人を突破した。東京への緊急事態宣言から約二週間で感染者数は六倍に膨らんだ。
 三十日には、緊急事態宣言を埼玉、千葉、神奈川、大阪に拡大し、八月二日から二十二日までの期限を月末まで延長し、いったん解除した「まん延防止措置」も北海道、石川、京都、兵庫、福岡に対して再度実施するはめになった。
 菅首相は、「社会経済活動の制限の緩和に向けて、八月末までの間、今回の宣言が最後となるような覚悟で政府挙げて全力で対策を講じていく」と話したが、全力を挙げたのは感染対策ではなく五輪開催だった。
 ついに、八月三日には、病床の状況も改善せず、それまでの入院措置を重症者以外「原則自宅療養」に転換した。これは内外の強い批判を浴びて方針転換を余儀なくされたが、医療体制は実質的に崩壊状態となり、入院を希望してもたらい回しとなり、自宅療養(放置)を余儀なくされる人がはうなぎ上りに増えた。救急搬送さえできない状況も出てきて、保健所の機能もパンク状態となった。
 感染はさらに拡大し、東京五輪が閉幕した八日にはまん延防止措置が福島、茨城、栃木、群馬、静岡、愛知、滋賀、熊本の八県に拡大された。
 感染者数は十三日には二万人を突破、七月末からわずか二週間で感染者数は二倍になった。
 さらに八月十九日には感染者数が二万五千人を超え、連日、過去最多の二万五千人を超える日が続いている。  菅政権は二十日、緊急事態宣言に茨城、栃木、群馬、静岡、京都、兵庫、福岡の七府県を追加し、「まん延防止措置」を宮城、富山、山梨、岐阜、三重、岡山、広島、香川、愛媛、鹿児島の十県で実施すること、期限を九月十二日までとした。
 こうした中でも東京パラリンピック(八月二十四日〜九月五日)を強行しようとしている。無暴というほかない。
 結局、何の戦略性もなく、感染者が増えた自治体から「何とかしてくれ」という声が上がって初めて「宣言」や「措置」が後追い的に出されてきただけである。人流抑制策といっても、大型商業施設への入場整理要請や混雑した場所への外出半減の呼びかけなどにとどまり、効果は乏しい。しかも、宣言や重点措置が繰り返された都市部を中心に、国民は呼びかけに呼応しなくなっている。
 菅政権の感染対策が、いかに「先手」ではなく後手後手になっているか、この経過だけを見ても明らかである。

ワクチンは万能ではない
 菅政権の唯一の対策ともいえるワクチン接種は、医療関係者、高齢者を中心に一定程度進んだが、職域や大学での接種はワクチン供給が間に合わない状況が続いている。また若年層への接種も進んでいない。最近の感染拡大傾向が若年層や子どもへと急速に拡大し、子どもの感染はこの四週間で六倍になった。これも手遅れといえる。さらに夏休みが終わり学校が再開されれば、家庭感染から学校内感染へと拡大する可能性が高い。だが、学校対策は事実上それぞれの自治体任せとなっており、あまりにも無責任である。
 また、ワクチン接種で先行した訪米でも、感染力が強い「デルタ株」で再び感染が広がっており、ワクチン接種が万能ではないことが明らかになっている。さらに、中南米で拡大している「ラムダ株」も五輪を通じて国内に入ったことが確認されている。

政府の責任で対策強化せよ
 ワクチン供給と接種をさらに大規模に早めること。
 直ちに「原則自宅療養」の方針を撤回し、必要な医療をすべての患者に提供することへ方針転換すべきである。その上で、政府の責任で、宿泊療養施設や、臨時の医療施設を、大規模に増設・確保すること。コロナ診療にあたる医療機関への財政支援、すべての医療従事者に対する待遇の抜本的改善をはかること。
 「積極的疫学検査」の縮小を止めること。政府の責任で、大規模検査とりわけ感染拡大が顕著になっている事業所・学校・保育園等に対する大規模検査を実行すること。行政検査を抜本的に拡充すること。
 パラリンピックを即刻中止し、国民の命を守る対策に人的資源や財政を集中すること。
 政府の責任で、直ちに実行すべきであるが、政府は「検討する」とお茶を濁すばかりである。

菅内閣退陣の声上げよう
 各社の世論調査でも、菅内閣の支持率は軒並み発足以来最低となっている。五輪をあてにしたが、支持率は好転しなかった。さらに、各種選挙の結果は冒頭紹介した通りである。多くの国民が菅内閣にノーを突きつけている。
 菅内閣は窮地に陥っている。打倒するチャンスである。
 だが、野党は立憲民主党の枝野党首や一部の自治体首長らが「政治休戦」を口にするなど無責任な発言を繰り返している。見てきたようにこの政権ではコロナ感染を抑え込み、国民の命を守る政策を実行することは全く不可能なことは明らかで、「政治休戦」どころではないはずである。野党のこうした態度は厳しく批判されなければならない。
 広範な国民と共に「菅内閣は責任をとって退陣せよ」と声をあげよう。(H)


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