ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

2021年1月1日号 1面〜5面

大隈議長、世界を語る

 新年に際し、「労働新聞」編集部は、大隈鉄二・党中央委員会議長にインタビューを行った。大隈議長は、コロナ危機が加速させた「社会革命の時代」についてなど、大局を中心に縦横に語った。紙面の都合で一部を割愛したが、以下、編集部の責任で掲載する。(聞き手・大嶋和広「労働新聞」編集長)


大嶋 明けましておめでとうございます。 大隈議長 おめでとうございます。
 それが、礼儀正しいわが編集長に言うのもなんですが、公私とも「新年おめでたい」気分ではないんだな。いや、失礼、失礼!
 私の党的任務というか役割からすると、例年この時期(年末・年始)は大変なんですよ。朝から晩まで、ろくにメシも食わずに、ですね。パソコンなど情報機器の前に座って、ダボス会議や関連記事、その他、「資本主義の危機」を叫んでいる投資家、企業家、学者や識者のいわゆる「ステークホルダー資本主義論」を読まされ、世界銀行、国連、国際通貨基金(IMF)、政府統計をアクセスやエクセルで分析する毎日なんだね。編集長にはかなわんが。
 いちばん頭にくるのは「ステークホルダー論」の関連で、投資家や企業家が心にもないウソをつくこと。「日本でも幸せやウェルビーイングの重要性が叫ばれています。京セラを創業し、日本航空などの経営にも携わった稲盛和夫氏は、『全社員の物心両面の幸福』を経営理念としてきました。近年でも、トヨタ自動車の豊田章男社長が『トヨタの使命は幸せを量産すること』、積水ハウスの仲井嘉浩社長が『〈わが家〉を世界一幸せな場所にする』と表明するなど、従業員や顧客の幸せを口にする経営者が増えています」(「幸せ中心社会への転換(1)『ウェルビーイング』の重要性」、「日経新聞」二〇二〇年十月二十九日)との論を展開する御用商人、いや、御用学者ども。
 これは私事ですが、振り返るとあの事故は誕生日の二日前だったんですよ。生涯で死に損なった事故の二回目ですかね。実は、会議のため東京に向かった新幹線のなかで、うんざりするような「ステークホルダー論」の記事を読まされ、前夜も眠らずメシも食わずで、疲れてもいたんでしょうね。
 東京駅からトイレに直行したが、荷物が多すぎ、急ぎすぎてひっくり返って頭や顔をコンクリートにぶつけた。顔から血が噴き出し、たまたま来た人に助けてもらい、やがて駅関連のクリニックで大騒ぎに。とんだ誕生祝い、天罰かな。二つの会議で四日間を経て、九州に帰って脳の検査をして、今のところ「異常なし」です。丹下左膳のようだった顔も、癒えてだいぶ見やすくなった(笑)。
 一気に本題を外れ、スッキリしました。さあ、何でも聞いてください。

大嶋 (笑)実は、昨年は大隈議長への数年ぶりのインタビューでしたが、七〜八年前までは例年のようにお願いしていました。
 昨年、そして現在も続く大きな変化としては、何といっても新型コロナウイルスの感染拡大です。これが「歴史を加速させた」「危機を深化させた」など、言い方はさまざまですが、世界に大きな影響を与え、それが現在も続いていることは間違いないところです。
 まさに「激動」ですが、どのように見ておられますか。

コロナ禍と歴史の「加速化」について

大隈議長 私はインタビューを毎年のようにやっているでしょう。だけど、一年が過ぎるのは早いですよね、あっという間でね。
 昨年インタビューをやったとき、実際は一昨年の暮れですが、当時はコロナ禍が起きるとは夢にも思わなかった。
 ただ、下部構造でいうと、一七、一八年頃から経済が落ち込んでいた。その大きなきっかけは、中国です。中国経済の上がり・下がりが、世界の経済成長や株価に大きく響くようになっていた。
 もう一つ、技術革新の急速な進展です。
 私は何年か前に「限界費用ゼロ社会」を取り上げて話しました。その頃から、さらにスピードが速まり、人工知能(AI)の進化などが加速しました。新春講演会は、それを前提にして話したんです。
 だけど、実はその時にも、もうコロナ問題は始まっていたんですね。始まっていたがまださほど表面化していない、というようなことで、コロナがこれほどの問題になってくるということは、インタビューの時には予想もしなかった。だから、一七年以降の世界の現状などを話しているんです。
 だから、今回話すにしても、コロナだけでなく、非常に歴史のスピードが速まっているということでいうと、何が起こるか分からない。今話しても、年が開けて、読者に新聞が届くころには、別の予想もしないことが起きている可能性は否定できない。そのぐらい、世界の動きが速いですね。
 そういうわけで、いろいろと考えることが多いですね。それを前提にして話さにゃならんでしょうが…。

大嶋 そうですね。今年の新春講演会も予定されていますし、ご苦労をおかけすると思いますが(笑)。

大隈議長 さて、読者の皆さんもそう思っておられると思う。新聞の論説あるいはテレビを見ていても、時代が移り変わっている、スピードが速くなっているというのはみんな実感しているんですね。
 だからというわけではないですが、最近、どこかの会社が若い人たちにアンケートをとって「ひと昔」「昔」を「どのぐらい前を指すのか」と尋ねたらしい。すると、「二、三年」と答える人が多いですよね。だけど、私のように長く暮らしていると少し違う。私の若いころは「十年ひと昔」と言ったわけです。
 余計な話かもしれませんが、ふと「十年ひと昔」というのはいつ頃からなのか、と考えたわけです。私の若い頃は、親と話しても、仲間と話しても、「十年ひと昔」が普通になっていました。
 そこで、グーグルで検索したり、いろいろして、たどり着いたのが「平家物語」なんです。そこで言われているのは、「昔」は三十三年で、「今」は十二を引いて二十一年ということです。その後の歴史で、どこかの時点で「十年ひと昔」といわれるようになり、私などが聞かされてきたのだなと思うんですよ。

大嶋 「三十三年」というのは、おそらく仏教から来ているんでしょうね。「三十三回忌」とかいいますから。

大隈議長 私が革命運動を始めた頃に読んだ本で、レーニンだったか、歴史が激動する時期には普通の時期と比べて何十倍もの速度で進むと言った。別の言い方をすると、「ひと昔」を十年とかの単位で呼んでいたのが、激動の時代には非常に短くなる、というようなことを読んだことがあるんです。
 現在の激動のなかで、新聞がその「スピード」にどのように触れているが、記事を調べてみました。新聞記事でも、よく「コロナが歴史を早めた」と書いています。  私たち指導部の会議でも議論しましたが、歴史の前途を短期、中期、長期に分けると、今の激動が長期的にどこに行きつくのかというと、われわれにとっては「社会革命の時代」です。企業家たちでさえ「資本主義は行き詰まった」と言っています。
大隈議長  しかし、中期的な見通しでは、何が起こるか、予想してもほとんど分からない状況です。しかし政党としては、具体的な材料で議論できる範囲で、この先数カ年の見通しを立てなければなりません。「どうなるか分からん」というのでは、政党の役割は果たせないですから。そういう意味で、以後は「中抜き」で。
 長期的、すう勢としてこの世界がどうなるかという点では、企業家たちも慌てて「資本主義はもたない」というような言い方をしています。「ステークホルダー資本主義」だとか、さまざまな意見があります。
 われわれにとっては、この行く先は明確に、生産様式が変わっていくという意味です、それを押さえた上でも、中期的見通しはなかなか立てにくい。コロナ禍についても、われわれは、インタビューや新春講演会でも予測できませんでした。
 ただ、この先の数カ年に何が起きるだろうか、材料を揃えて検討しなければなりません。今は確かに「コロナ時代」ですけれども、ワクチンや治療薬の開発があるにしても、労働者の生活の諸条件がどうなるのかということは、具体的です。それがないと、政党の役割は果たせないですから。
 そんなことを議論した四、五日後、「日経」に「DX(デジタルトランスフォーメーション)は社長のためにある」という記事が出ているんです(九月十九日)。その中で、「不確実性が増す今後は三年、五年先を予想することが困難になり、計画を作ること自体が意味を失う可能性がある。代わりに重要になるのは十〜二十年程度の長期ビジョンや企業としてのパーパス(存在意義)を見いだし、それを半年、一年ごとに細分化して実行に移すやり方だろう」と述べています。
 ここでの「長期ビジョン」というのは、会社の「理念」とかいうようなことです。
 しかし、われわれにとっての「長期」は非常にリアルなんです。つまり、生産様式が問われるような時代です。商品やソフトをつくっているのは、全部、雇用されてる人たちです。利益の計算も、投資家たちが儲(もう)かっていることを計算することも、全部、雇われた人たちがやっているわけです。
 資本家や投資家たちが騒いで、「このままでは世界は保たない」と言いながら、では以後どうすれば、企業や社会の秩序を維持できるのかというようなことでは、かれらは計画がつくれない。
 しかし、われわれには簡単です。すべてをやっているのは雇われた人たちですから、資本家や投資家をスポッと外して、かれらなしでもより豊かな社会を築くことができるということですよね。

大嶋 それが社会主義ということですね。

大隈議長 もう一つ、「株高が迫る『復旧より復興』」(「日経」十一月十九日)という記事では、ワクチン開発などを材料に株価が上がったりしているなか、「改革して復興を目指す企業と、復旧に甘んじる企業。待望のワクチンが見えてくるとともに、マネーによる選別の号砲が鳴ったように見える」と述べています。また、「『ワクチンさえできれば経済は復旧する』と胸をなで下ろすのは間違っている」というのは、おもしろい考えですね。「人と人の接触を阻むコロナは『二十年の変化が二年で進む』といわれるほどのデジタル革命を企業に迫った」とも言っています。
 「限界費用ゼロ社会」(ジェレミー・リフキン)が書かれた当時は、ロボット化が中心でした。この二、三年ではAIなどの研究が進み、デジタル化の変化はさらに速かったんです。コロナ禍がなかったら二十年かかったであろう変化が、あっという間にそういう時代に移行する、広がる、あるいは皆が取り入れざるを得ない、ということです。
 また、「米国の『失われた二十年』 分断、トランプ政権前から」(「日経」十一月二十三日)という記事でも、この問題が出されています。「中国が飛躍する足がかりになったのが〇一年の世界貿易機関(WTO)加盟だ」とし、「二十年足らずで米国の覇権に挑む経済・軍事大国に成長した」「『中国を世界貿易システムに統合すれば、いずれ国内の民主化も進む』という当時の期待は楽観にすぎた」と述べています。
 いずれにしても、コロナ禍が起こったことは、中国の前進を非常に速めたというか、他国との比較でいうと、中国が相対的に歴史の流れの中で躍り出た。もはや、中国の動向によって世界経済の成長が上がり下がりするような局面が、コロナ禍によってより浮き彫りになっています。
 世界のパワーバランス、大国間の力関係の変化の速度が、コロナによって非常に早まったというようなことです。
 いずれにしたって、コロナ禍は激動を早めているんです。「十年ひと昔」とは、そんなことなのでしょう。

大嶋 他に、読んでおくべき記事はありますか?

大隈議長 英「フィナンシャル・タイムス」チーフ・エコノミクス・コメンテーターのマーティン・ウルフ氏による「混迷の時代、コロナで加速」(「日経」十二月十六日)です。
 冒頭に「新型コロナウイルスの感染拡大は世界を未来へ加速させる役割を果たしている」といい、以降の「二五年以降も影響を及ぼす強力な要因」を五つ挙げています。
 これもやはり、コロナ禍以前の条件下で移り変わっていたことを前提にして、コロナによってそれが一気に加速され、「コロナ後」の状況にも影響がある、世界に痕跡を残し続ける、ということに触れています。
 歴史はいつもそうなんですね。ある時代に、それ以前の状況から変化が起こる。それが終息しても、その局面は後の歴史に痕跡を残す。その事件が起こったことが、次の局面を制約しているとか、そういう意味です。以前の歴史の痕跡が必ず残っていて、それは何かの拍子で出てくる。穏やかな顔をしている人でも、苦労をして、それを克服したとしても、その痕跡がない人とは何か違うんですね。
 ものの見方、観点として、興味深いですね。
 とにかく、以前はコロナ危機を予測できなかったし、コロナ禍はまだ「燃え盛っている」局面です。他面を見ると、ワクチンが現実的になってもいます。それらを織り込むわけですよね。
 そういうわけで、数日後に読者の皆さんに読んでいただく頃、何かがすっかり変わっているということは、私の頭からは離れません。そういう時代なんですね。

「自分たちで研究する」こと

大嶋 昨年は旧ソ連の経済学者であるエウゲニー・ヴァルガの著作「資本主義経済学の諸問題」の最初の論文「マルクス主義と資本主義の基本的経済法則の諸問題」を紹介しながら、マルクス主義の哲学、認識論に触れて頂きました。今回もその続きというか、何か認識論的な深まりで、読者に喜んでもらえれば、と思いまして。

大隈議長 党内での学習もそうなんですが、講義をする側のほうが、参加して勉強する同志たちよりウンと勉強になるんです。第一、「一夜漬け」でも「朝漬け」でも、教壇で恥をかけない。編集長も経験あるでしょ。
 実はヴァルガの著作、読んでいるほうでしょうが、スターリンの死(一九五三年)から十年が経っての、いわゆる「スターリン論文」批判ですが、ヴァルガも六四年に亡くなっていますので、ヴァルガの著書「資本主義経済の諸問題」は、最後の遺言のような著書です。その一番目の論文です。
 昨年のインタビューに応じながら、印象に残ったというか、以降も気になって、問題の間口を広げたり深めたりで、それが二つあるんです。
 一つは、生産様式が問われるような社会革命に時代についての生産力と生産関係の矛盾の具体的な発展、桎梏(しっこく)、照応等々で、ヴァルガが「共産党宣言」に触れているところです。
 「自由民と奴隷、貴族と平民、領主と農奴、同職組合の親方と職人、要するに、抑圧するものと抑圧されるものとは、常に対立して、ときには隠れた、ときには公然たる闘争を絶え間なく行ってきた。そして、この闘争は、いつでも社会全体の革命的改造に終わるか、あるいは、あい闘う階級の共倒れに終わった。」
 「共産党宣言」はすぐ後に、「けれども、現代、すなわちブルジョアジーの時代は、階級対立を単純にしたという特徴をもっている。全社会対する二大陣営に、直接に相対立する二大階級に、すなわちブルジョアジーとプロレタリアートとに、ますます分裂していく。」とあるが、ヴァルガはこれ以降の引用はしていません。
 さて、現在が生産様式が問われるような社会革命の時代であることは、不安に襲われている人を含めて多数派ではないでしょうか。「社会革命の時代」といわないで「社会変革の時代」いえば全員賛成だろうね。「左」右のポピュリズムの先鋭化にも反映しているのか……。
 第一次世界大戦の最中とはいえ、マルクス主義者が労働者階級を指導し権力を奪取、プロレタリア独裁の権力を維持して第二次大戦でもスターリンの指導下で戦勝国の一角を占め、米国を頂点とする帝国主義の植民地支配を一定終わらせ、中国、朝鮮、ベトナム、ラオス、キューバでは共産党が指導する民族・民主革命政権の樹立等々、またインドネシア、チリでの敗北等々。二次大戦後、両体制間矛盾とか冷戦時代といわれたが、社会主義陣営は内部崩壊しました。言葉の上での「社会主義国」はあるものの、中国はもちろん経済はみな市場経済です。
 繰り返しましょう。一八四八年の「共産党宣言」通りの革命は、一九一七年のレーニンが指導したロシア革命のみで、三〇年代のドイツでは高揚はあったもののヒトラーに敗れ、第二次大戦後の先進国では議会主義の党に堕落、社民化しました。中国独特の社会主義路線は「壮大な実験」ではあるでしょうが、その前途は平坦ではないですね。われわれの考察では、内政・外政、結局のところ、内政次第でしょう。
 最近の報道(「中国、ネット企業念頭に独占排除 経済の最重要会議金融参入、監督を強化 不動産市場は安定探る」「日経」十二月十九日)、アリババ傘下のアント・グループの件は、予想されていたとはいえ、私は肯定的に受け取っています。後で、また触れます。
 最初の問題の結論です。
 現在の世界は「生産様式が問われる社会革命に時代」であること、これからの数カ年が転換期で、諸国の内部では格差拡大で社会的混乱が避けがたく迫ってくるでしょう。諸国間も地政学的な争奪戦を繰り広げることになる。その場合、三〇年代とのさまざまな類似点は参考になります(「資本主義の世界史」(ミシェル・ボー)参照)。そうした類似点があったにしても、相違点もありますが。
 労働者階級は資本家なしに必要な食料、必要な生活物資や移動手段、情報機器を得、動かし、宇宙にも出かけられます。すべてを製造できるわけです。
 マルクス主義の文献は今でも、時代を切り開く正しい認識の手がかりを得る宝庫なのです。

大嶋 もう一つは何でしょうか。

大隈議長 もう一つ、ヴァルガは、マルクスが「資本論」で引用した文章を取り上げています。
 マルクスは単なる学者ではなく、偉大な革命家だと思うことが「資本論」に書いてあって、資本家のことを書いているんですね。
 「一〇%(の利潤)が確実ならば、どこにでも資本を使うことができる。二〇%が確実ならば、資本は活発になる。五〇%ならば、積極的になり冒険的になる。一〇〇%では、人間の決めた一切の法律を踏みにじる。三〇〇%ならば、どんな犯罪でも、断頭台の危険をかけてでも、資本は避けようとはしない」(マルクス=エンゲルス全集、第二三巻第二分冊、第七篇「資本の蓄積過程」)とね。
 私はこれが気になって、「資本論」のどこに書いてあるか探して、大変だったんですが。「資本論」では、「資本は騒乱と闘争とを避けるものであり、臆病な性質のものである。これは非常に真実に近いが、しかし完全な真理ではない。自然が空虚を恐れるように、資本は、利潤のないことを、または利潤があまりにも小さいことを、恐れる。相当な利潤があれば資本は勇敢になる」と。これに先の文章が続き、さらに「争乱と闘争とが利潤をもたらすならば、資本はその両方を激励するであろう。その証拠は、密貿易と奴隷貿易である」(同前)とあります。
 もともとは労働運動について書かれた「労働組合とストライキ」という記事なんです。
 もちろんヴァルガは原文を読んだんでしょう。大月書店版「マル=エン全集」の翻訳は、ヴァルガの著作のものよりも丁寧で、皆に分かりやすいところがあります。  この二点です。

大嶋 英国の「クォータリー・レビュー」という政治誌(現在は廃刊)から引用された文章のようです。
 すみません、続けてください。

大隈議長 さっき申し上げましたが、資本家たちが「ステークホルダー」などと持ち上げるのを見ると、感情的にムカムカするんです。
 さて、先ほど触れましたが「資本主義の世界史」に、三〇年代のことを細かく分析したところがあり、とても気になることがあったんです。
 三〇年代と今の危機の進行具合で、きわめて類似があることの一つに、こういうところがあるんです。ここではドイツやフランス、英国の分析をやって、確かに労働者は増えているんだけれども、技術の進歩などで、ふつうの労働者と少し異なる技術部門の労働者が増えている。かれらには、中間層と似たような状況があると指摘しています。それを克明に書いていて、ドイツでヒトラーの国家社会主義を支持した人びと大部分はこの層で、言うところの労働者階級ではないと言っています。ふつうの労働者よりも賃金が高い層ですね。
 今の日本の労働者に、共通するところがあるんです。技術関係とか、デジタル分野で高給をとっている、そういう層がいるんですね。危機が深まり、敵側でさえ「持続性がない」と騒いでいるなか、労働運動が「落ち着いて」、騒ぎが起きない理由の一つがこれなんですね。
 これはとても勉強になって、研究しないといけないと。そんなことを思っているところです。
 もう一度整理すると、われわれには「社会革命の時代」と映るが、この危機は必ずしも簡単ではない。ソ連が内部崩壊してマルクス主義が信用をなくし、中国の現状は「実験」にすぎないということなんですね。これが一つ。
 もう一つは、マルクスは革命家であったし、われわれには三〇年代のことなど勉強しなければならないことがたくさんあるということを申し上げておきたいんです。「ヴァルガに学ぶ」のではなく、自分たちで研究し、解決すべきだと思っています。

経済学者の見解と「社会革命の時代」

大隈議長 かつてケインズは、「先進諸国の生活水準は百年後には一九三〇年当時の四〜八倍程度になっているはずで、一日に三時間も働けば生活に必要なものを得ることができるようになるだろう」(「われわれの孫たちの経済的可能性」、一九三〇年)と予想していました。
 実際は、労働者はいっそう過酷な労働を強いられていますよね。まさに「恥をかいた」というべきでしょうか。

大嶋 それは何とも…。「大先生」のケインズ「にしては」というか「だから」というか、まさに「夢物語」ですね。

大隈議長 「資本主義の世界史」によれば、ポール・サミュエルソンも恥をかいた。
 サミュエルソンは、今の経済学の基礎を、資本主義の定義とかの相当の部分を考えた人です。クルーグマン(米プリンストン大学教授)は、サミュエルソンをえらく褒(ほ)めています。
 サミュエルソンは一九七一年、「ポスト・ケインズ時代は、大恐慌を避けるために不可欠な購買力を創出することを可能ならしめる通貨と租税の政策を整備した」「今日のわれわれの知識によれば、われわれはどのような経済不況を避けるかを明らかにすることができるのだ」と述べたそうです。
 そうサミュエルソンが豪語した直後に、ニクソン大統領が「金ドル交換停止」を発表したのです。新たな危機がやってきたわけです。これまた、恥をかいた。
 ボーは、「何人かの頑固なマルクス主義経済学者が、景気後退の度に資本主義の不可避の全般的危機の到来を告げていたのに対し、大半の経済学者は居心地のいい楽観的状況に身を置いた」と指摘しています。マルクス主義者が「正しかった」わけですね。
 危機がここまで来て、資本家は「ステークホルダー資本主義」などといっています。関係者一同、皆のことを考慮して皆が利益になるように、などというのは夢のような話ですね。そう宣伝していますが、当の企業家は、技術革新で「労働者の半分が不要になる」と思っているわけです。
 労働者と「頭が黒い」資本家、それから小所有者に分けると、世界の人口の大部分は労働者です。大雑把にいうと、その半分が職をなくすと、公然と言われてるわけでしょう。かれらが食えなくなれば、社会的危機ですね。
 昔、奴隷社会が崩壊した時と同じようなことになりかねないわけで、人間はさほど賢くなっていないことでもありますね。
 こういう時期には、一定の戦略的見通しのある政党がなければ、どうにもならないですね。われわれにも力が必要です。
 危機が迫るなか、「ステークホルダー資本主義」のように、法を犯さない「真っ当な」資本主義などというものが、あり得るのか。
 「フィナンシャル・タイムズ」のウルフ氏は、「企業が競争的な環境で活動すること」「外部性がないこと」「契約が完全であること」という条件下でなら「経営者が株主価値の最大化だけに専念して社会に効率的に貢献できる」と述べている某教授の見解を紹介しつつ、「これらの条件が成り立つわけがない」と否定しています。彼にとってさえ、そんな資本主義はあり得ないということでしょう。
 企業は政治家にロビー活動をやって、犯罪などいろいろなことをやっていて、ウルフ氏はそれが「右派ポピュリズムの台頭を促す要因」とまで言っています。
 ウルフ氏のこの見解は、生産様式としての企業は必要なのかといってるのと同じなんです。彼は資本主義を告発している。ただわれわれから見れば、ウルフ氏だけでなく、企業家たちは自らの延命のためにそう言っているにすぎません。
 人工知能(AI)が発展し、量子コンピュータが開発されている現在でも、「次の社会」ということでは、企業家たちは設定できないわけです。ダボス会議でいろいろ議論されたところで、我々とは本質的に意見が異なります。
 ただ、生産様式の変革期であるのに、資本家には展望がなく、被支配階級にも今のところ力がない。下手をすると、「共産党宣言」で述べられているように「共倒れ」です。
 現実の社会的危機によって、被支配階級が生きていけなくなって騒ぐ、そういう時期は避けがたいんです。支配階級は社会的危機、暴動が起こることを恐れています。そういう時期が目前に迫っているということです。
 先進的労働者がそういう時代をつくるために闘わなければ、街頭に放り出されるわけですよ。命がけで革命運動に参加するかしないか、それは皆さんが決めることだけれども。しかし、そうでなくても、メシが食えなくなるわけです。そういう時代が目前にきているわけですよ。

大嶋 一部では、もう来ていますね。

大隈議長 そういうことです。そして、技術を持った奴が、労働者の何千倍という給料をもらうわけです。「ステークホルダー」何とかという意見のなかにも、労働者に対する職業訓練の話が出てきます。そうやって「高給取りをめざせ」「そうすれば生き残れる」とね。
 しかし、皆が職業訓練をやって技術を身につければ、その労働者の間の競争が激化する。企業家から見ると、「あなたを雇わずに、こっちを雇うよ」ということです。職業訓練で助かるかのような意見は、まやかしです。
大隈議長 もはや労働者は、社会変革の道を歩かなくても苦しくなるわけです。その道に生涯をかけて、われわれの後の世代、可愛い子供たちのために闘う必要があるわけです。
 われわれは先進的労働者の胸をたたいて、「皆さんがその道を歩くことに期待する」と呼びかけようと思います。後で、もう少し触れたいのですが。

国内情勢について

大嶋 国内情勢に移りたいと思います。七年八カ月の安倍政権が「投げ出し」、菅政権が成立しました。政権の性格など、どう見ておられますか。

大隈議長 コロナ危機になり、またデジタル関係の技術革新などが出てくると、いろいろ考えざるを得ませんね。
 安倍前政権と中国の習近平政権は、だいたい同じ時期に成立しています。中国が登場してきたにしても、われわれは「日本は三番目」だと思っていた。ところが、デジタル分野のいくつかの指標を調べてみたら、どうしてどうして、日本はもう後進国なんですね。
 そう思って、世界銀行やIMFの資料なども調べてみると、安倍前政権下で、いかに日本の影響力が低下してきたかが分かります。安倍は全世界を飛び回って、いかにも影響力があるように見せたけれども、実力から見ると、下部構造から見るとそうではない。

大嶋 「地球儀俯瞰(ふかん)外交」といっていたものですね。

大隈議長 「日経」はここ数年、安倍政権に対しての評価が厳しくなった。
 安倍は「選挙上手」でもあったから、選挙前になると目新しい計画を立てる。トランプ米政権によって世界が混乱させられているなか、安倍はトランプ大統領と「親しい」ということもあり、何か「期待」めいたものがあったことも事実です。
 ところが「日経」は、「長期政権になったが、振り返って見ると何にもやらなかった政府」と書いていた。「何にもしない」だけでなく、実際はデジタル化の流れに完全に立ち遅れている。
 だから、安倍が辞めたら「良かった」と思うかもしれないけれども、次の菅政権は、安倍前政権にできなかったことをみなやらないといけない。
 割と自民党への支持率が高いとされる若者たちに対して、「携帯電話料金を下げる」とか、実践的でいいことをやっているように見えます。
 ですが私は、菅はさらにひどい政権だ、と思うんです。
 そう思った理由は、ちょうど小泉政権の時、竹中平蔵氏が郵便局をつぶすために米国から戻ってきた。これと似たような意味で、アトキンソン(小西美術工藝社社長)が出て来た。米国は日本の政権の助けがなければ、アジア外交はやれない。中国が目の前にあるからね。

大嶋 アトキンソン氏は、投資銀行ゴールドマン・サックスの役員まで務めた人物ですね。

大隈議長 そういう重要な位置にあった人物ですから、金融とかを知り尽くしている。そういう人物が、日本に派遣されているわけです。
 彼の持論は、日本の中小零細企業、三、四人程度を雇った飲食店とか、製造業などの小さい企業、これらを「つぶすべきだ」ということなんです。そうならないと、「日本の企業はやっていけない」とね。
 しかし、自民党はすでに農村での支持がなくなってきていますから、都市の中小零細企業が支持基盤になっているわけですよね。公明党を頼りにしつつですが。
 そういう小規模企業には労働組合もない。選挙のたびに、経営者が「うちは先生にお世話になっているから、頼むわよ」と言って肩をたたくと、そこで働いている労働者は、家に帰るとその話をする。選挙基盤でもあるんですね。
 だから自民党は、大企業のための政治を続けながら、「つぶすための政策」はできなかった。しかし、アトキンソンはそれを熱心に勧めている。
 現在の政府によるコロナ対策でも、法律上の建前では救済策が揃っているんです。だけど、零細経営主の多くはどちらかというとコンピュータなどは苦手で、帳簿をつけてない人もいる。

大嶋 そうすると、支援を受けられないですね。

大隈議長 だから、法律では建前上ではみなあるんです。しかし実際には、五万以上の企業がすでに休廃業・解散に追い込まれているわけです。これは自民党が意識的につぶしたのではなく、事実上、放ったらかしたか、間に合わなかった。菅政権になってからは、「意識的につぶす」わけでしょう。
 菅首相は総裁選のさ中に「日本の銀行は多すぎる」と言った。これも似たようなことで、中小都市や小さな町、そういうところの地方銀行や信金・信組、これを「つぶす」といって、さまざまな政策で具体化しつつあります。
 私の身近なところでいうと、福岡県久留米市は県内では商業都市という位置づけです。ブリヂストンなどの大企業もある。そんなところでも、みずほ銀行の支店が閉店になり、利用者は福岡市まで行かなければならない。小さな店は、日にちにはやっていけないですよ。
 菅政権の巧みなところは、「大変な時代だから」と金融緩和をして、事業会社を子会社としてつくり、いろいろな事業も始めてよろしいという規制緩和も進めています。それは許可制でも届け出制でもなく、「勝手にやって下さい」というんです。実際には、地域金融機関がそうできないことは知っているんです。
 銀行をつぶすことを考えたことを、こういう形で「対策を打っている」と見せることで、後は、「生き残れるようにがんばってください」というわけです。

大嶋 まさに「自助」の考え方に基づく政策ですね。

大隈議長 そういうことですね。本当に巧みというか、ひどいやり方です。
 一方、外国資本が日本市場に参入するときの規制については保留している。つまりは、外資の参入はさらに「認める」ということです。
 日本の国内情勢も、「世界の中での日本」という形にならざるを得ない。
 まず、中国の存在があります。
 米国は中国を抑え込むために、基軸通貨ドルを使って締め上げる可能性があります。大雑把にはそうですが、しかし中国の習近平政権は、バイデン新政権が動き出す前から、ある種の攻勢をかけているんです。その一つが「デジタル人民元」の動きで、これを二一年には導入するという。
 その狙いもあって、アリババやテンセント(騰訊控股)の子会社に罰金を課したりして統制しています。中国の中でデジタル企業がどんどん育ち、若者が成金になっていくのを制限し始めたわけですね。消費者の利益に反するなどの理由で、規制するわけです。
 もう一つ、米国が中国を包囲しようとすれば、いちばん重要な役割は日本が担うわけです。したがって国内情勢を考える場合、国内と国外を両にらみして、内政と併せて外交もあるわけです。外交というのは、国内の矛盾の延長線上、内政の延長ですから。
 国民全体、あるいは労働者の生存諸条件という点からは、内政が大事です。企業が外国で儲(もう)かったりしても、国内では「なんぼのもの」ということです。
 それを予測する上で、前提がいくつかあると思います。
 一つは、コロナで数万の企業がつぶれた、政府がつぶした。
 もう一つ、国内矛盾を緩和したり、国内情勢について有利な状況をつくるための条件を、外の世界で獲得するということです。
 経済で「供給」と「消費」に分けると、供給側では、製造業が商品をつくったりする。外国に輸出して消費されても、日本の製造業としては供給の側です。日本国内で働いて製造するわけで、国内で給料になって、国内での消費に関係してくるわけです。
 日本の輸出でも、中国に輸出している。だから「中国次第」という面があるんです。
 金融面でも、日本の資金で中国に設備をつくると。現地法人も、中国は合弁でない形を認めています。日本企業が中国市場で人を雇えば、中国の利益になり、日本の投資家の利益にもなるんです。日本の労働者にとってはどうだろうか。日本国内がさらに空洞化するなら別ですが、進出企業に日本から部品を送るということなら、国内経済にも役立ちます。
 内政を考える場合、中国と敵対していては日本は成り立たないと思うんです。
 日本の利益、あるいは国内の労働者や中小企業などの生存条件などを全体として重視してやっていくという点から見ると、菅政権はよい政権とはいえないですね。米国といっしょになっていくという路線は、この厳しい状況のなかで日本の情勢を好転させることにはならないでしょう。
 中国経済をテントに例えると、コロナ禍を抑え込んで成長し、テントの上部がぐーっと持ち上がっている状態です。テントの間口は広がって、そこにドイツなどもみな入り込もうとしている。
 自動車産業でも、トヨタなどは中国を含む国際市場と国内市場で、いわゆる「二股をかけて」います。米国のテスラも、中国への大規模投資を決めています。
 中国は、電気自動車(EV)と併せて、十分成熟しているハイブリッド技術も進めようとしています。温暖化問題への対応としてだけでなく、中国内部の企業に対する刺激にもなると見込んでいるのでしょう。何年後には、中国の国内自動車メーカーが、テスラなどの競争相手として中国の企業が登場することは間違いない。
 ですが、菅政権がアジアでやっていることは、その中国と対立する路線なんです。たとえば菅首相は、政権成立後すぐにベトナムとインドネシアを訪問し、包囲網をつくろうとしています。中国側も、自民党幹事長が「親中派」とされる二階さんだとしても、気を許してはいないと思います。
 このように見ると、米国といっしょに歩む菅政権の路線は、日本経済にとって少しよい環境をつくるために自主外交を発展させる上での制約要因になっていくと思います。しかも国会では、そういう本質的な議論が必ずしもされていません。
 その点、ドイツは自主外交をやっています。バイデン新政権が「同盟国重視」になったとしても、さらに弱ったところで「復帰」してくるわけで、米国の影響力は衰えています。
 菅政権が内政上十分な政策を行えるとは思えません。
 ただしばらくは、安倍前政権が何もやらなかった改革政治が中心になってくるでしょう。
 しかし、IMFが指摘しているように、コロナ禍でさらに膨らんだ国家債務を解決できる見通しもありません。効果のあるワクチンが出ればコロナ危機は一服するでしょうが、それだけで経済が前進できるわけではないんです。菅政権の予算の組み方を見ても分かるけど、金融政策への依存は続いていて、その上での財政支出です。
 世界的に見て、日本の労働者の賃金は依然として低いままです。アルバイトの時給は少しは上がっているようですが、労働者全体が受け取る賃金総額は、ヨーロッパと比べても良くないです。そこが良くならない限り、消費は上がらない。つまり、経済を押し上げる力は出ないですよ。
 日銀は「物価目標二%程度」を維持するといいますが、ますますデフレに向かう可能性が高いですね。金融緩和を続けていますので、どこかでインフレに反転して、という議論もよくやられています。
 だから、国内情勢はいっそう厳しくなると言っていいのではないかと思います。

大嶋 菅政権は「コロナ対策と経済再生の両立」と言っていますが。

大隈議長 この二股をかけるのが無理だということは、最初から分かっています。建前上、どの政府もこの二つは言っているんです。だけど、どれがこの時期の主要な課題かということを定めないと、生きた政治はできないですよ。
 その点で、日本は「経済どころではない」という事態にまで来ているんですよ。現在の感染拡大を「第何波」というかはよく分かりませんが、それを止められるかどうかが、国内情勢の、非常に短期間な意味では課題でしょう。
 いずれにしても、今年か来年にはワクチンを打つことになり「罹(かか)っても死なない」という安心感が広がって経済が動くことになるのでしょう。その場合でも、日本が世界一、財政赤字を抱えた状態なんです。この点は、非常に容易でないと思いますね。
 中国は米国との関係で、日本をひきつけておきたい。だが、日本がどの程度応じられるかは、日本経済の運営上は制約要因になると思うんです。いっそうの自主外交がなければ不可能ですね。
 安倍政権が崩壊する前、菅官房長官(当時)が訪米したでしょう。内容はまだ謎ですが、私は当時「何かあるな」と思った。政権のナンバー2、首相の「女房役」が訪米したわけですから。

大嶋 官房長官は通常、外遊などはしないですからね。

大隈議長 それを呼んだということは、安倍がその頃から「きつい」ということも分かっていて、「いざという時にはこの人に」と、米国に話していたに違いないですね。米国もそれを了解したので「投げ出し」になったと思いますね。
 そういう政権ですから、中国が経済成長を進めるなか、日本がその「うま味」をご馳走になれるのか。ヨーロッパもそれを狙っているし、どこも狙っているでしょうから競争ですよ。米国の中国包囲に加担しながら、「中国のうま味を」ということは難しく、制約要因になるわけですよね。
 しかも、政権支持率も下がっています。下手をすると、解散・総選挙に打って出る機会を失う可能性があります。そうなると、後任を誰にやらせるか、これも難しいですね。
 経験不足や小粒の政治家ばかりですが、経過からいって、石破元幹事長にはやらせられないでしょう。麻生副総理は狙っているでしょうが、支配層にも「次」と目する人物は定まっていないと思いますよ。誰がなっても難しいということでしょうかね。
 中国の恩恵に預かるような政策を採れない限り、あるいは採ろうとしない限り、日本の経済は、むしろ財政などの重荷が目立つようなことになるということでしょう。

党の課題について

大嶋 最後になりますが、今年の労働党の闘いについてお話し下さい。

大隈議長 まだコロナが燃え盛っているわけで、「これ次第」という面もあります。それを前提にしてですが……。
 お話ししたように、企業家が「資本主義はこれまで通りにはやっていけない」と騒ぎ、しかもかれらが解決策を見つけていない状況です。ケインズが「(百年後には)一日に三時間も働けば……」と予想したと述べましたが、現在の技術水準にさらなる技術革新などを含んだ生存の条件を考えると、すでに、労働者は「資本家なしにメシが食える」状態です。
 ところが、資本家は技術革新をテコに「労働者を半分に減らす」と言っている。まさに、極限に見えるようなところまで来ているわけです。
 活動を広げられる時期に来たら、「労働者は資本家なしに生きていける」ということを先進的労働者に訴えていきたい。単純明快なことのようですが、条件から見て真実だし、この道を歩んでこそ、全世界の人びとは豊かに暮らせる。労働者階級はその道を歩むべきです。
 わが党は、先進的労働者の多数にこの見解を広げ、他の階級、特に中間階級にも広く呼びかけたい。
 そのためには思想政治建設が第一で、党内では中央、都道府県指導部、党を支えている同志たちにこのことを理解していただく、その力をいちばん大切にしたい。
 二番目に、党内の確信を前提に、労働組合の内部や仲間に話す、「労働新聞」で宣伝する、情勢を訴える集会を開くなどの方法で、大衆の中に入っていきたい。政党としての第一の仕事は、そうでなければなりません。
 労働党はこの危機が始まって以降、他党と異なる独自の見解を打ち立ててきました。労働党だけがそう言ってきて、現実もそのように進んできて、自らの見解にいっそうの確信を持っているところです。

大嶋 長時間、ありがとうございました。今年も団結してがんばりましょう。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2021