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2020年10月25日号 1面

菅政権
亡国・反動・国民犠牲

国民運動で打ち倒そう

 菅新政権が発足してから、一カ月余が経過した。
 新政権はすぐさま、財界の意を受けた内外政治を推し進めている。
 内外政策の全体像は、十月二十六日に予定される臨時国会と所信表明演説を待たなければならないが、政権の性格はすでに見えてきた。

国民犠牲の改革政治
 内政・改革問題では、自民党総裁選当時から掲げていた「デジタル庁」創設については関係閣僚会議が開かれ、年内に基本方針をまとめる方向で検討が始まった。関連法案は、年頭からの通常国会に提出される予定である。
 デジタル庁創設の狙いは、コロナ禍において暴露されたわが国のデジタル分野での立ち遅れを巻き返すということだけではない。各省庁にある関連組織を一元化することで、強力な「司令塔機能」を持たせ、統治機構の改革の突破口にしようとしているのである。
 日本学術会議の会員問題でも、世論の批判を受けて議論をすり替え、学術会議の改革を行財政改革の「第一弾」にしようとしている。世論・言論の統制、学術会議が批判している軍事目的の研究をさらに推進する目的もある。
 社会保障制度では、年収二百四十万円以上の七十五歳以上の医療費窓口負担を、一割から二割に引き上げる案が検討されている(年収三百八十三万円以上は現行三割負担のまま)。実行されれば、二百万人近い高齢者の医療費負担が増加する。
 また、十月からは生活保護の「生活扶助」が減額された。
 酒税の一部、たばこ税も引き上げられた。
 二〇二一年六月に策定する予定の「成長戦略」では、中小企業の大規模な淘汰や、ホワイトカラーエグゼンプションなど労働法制の改悪、中国を除くサプライチェーン(供給網)の構築などに踏み込もうとしている。
 安倍前政権は、社会保障費の伸びを年間五千億円程度に抑えるべく、生活保護制度の改悪や医療費窓口負担増などを進めた。未来投資会議では、働き方改革などの労働者犠牲策も推進した。
 菅首相はこれを引き継ぎ、強化して、「自助・共助・公助」を繰り返し、国民犠牲の政治を強力に推し進めようとしている。

中国包囲の外交政策
 外交・安全保障問題では、安倍前政権を引継ぎ、中国への対抗をますますあらわにさせている。
 菅首相の公式な「外交デビュー」となった日米豪印外相会談では、「自由で開かれたインド太平洋」構想に向けた「協力」と、南シナ海やサイバー問題で協議が行われた。ポンペオ米国務長官が「融和策は正解にならない」と明言したように、中心は中国への対抗、包囲網の強化である。岸外相は四カ国防衛相会談の開催に意欲を示し、さまざまな分野での中国包囲網づくりが強化されている。
 続く菅首相のベトナムとインドネシア訪問では、コロナ対策での支援策を打ち出すなどで両国の歓心を買うことに腐心、中国包囲網づくりを画策した。菅首相は「法の支配や開放性とは逆行する動き」などと、事実上、南シナ海問題で中国を非難した。
 インドネシアには五百億円の支援のほか、外務・防衛担当者会合(2+2)を行うことでも合意した。
 ベトナムとは、日本からの武器輸出を可能とする協定について実質合意した。武器輸出は安倍前政権下で、国内軍需産業のための「成長戦略」として打ち出された。だが、計画は相次いでとん挫した。軍需産業にとっては「捲土重来」(けんどちょうらい)である。
 これに先立って、茂木外相もポルトガル、フランス、サウジアラビアを訪問、中国包囲網への諸国の取り込みを画策した。
 安倍前政権の下で国交回復後最悪となっていた対韓国関係では、元徴用工問題をめぐる韓国側の「譲歩」を首脳会談の条件として押し出した。ドイツ・ベルリンに設置された慰安婦被害者を象徴する「平和の少女像」についても、撤去のためには外交力を動員している。侵略と植民地支配の責任を徹頭徹尾、否定する反動的な態度である。
 沖縄県名護市辺野古への米軍基地新設も、工事を強行する姿勢を変えていない。
 憲法九条改悪では、年内に改憲原案をまとめるための起草委員会を設置した。
 これらは、大統領選挙に手をとられた米国に代わり、そのアジア戦略を支えるためのものである。同時に、「アジアの大国」として登場することを願う、わが国財界・支配層の要求に応えたものでもある。
 安倍政権は「地球儀俯瞰(ふかん)外交」を掲げて中国包囲網の形成に血道をあげた。集団的自衛権のための安全保障法制、武器輸出三原則の廃止、軍事予算の相次ぐ増額、辺野古新基地建設強行などである。菅政権は、この面も継承・強化しようとしている。
 従来、新任首相の第一の訪問相手国は、米国がほとんどであった。今回、菅政権がアジアを選んだことも、こうした事情と狙いからのものである。

弱さを突いて闘おう
 だが、菅政権の内外政治は、成功が保証されたものではない。
 世界資本主義の危機は深く、コロナ禍がそれに追い討ちをかけている。新興諸国の債務問題など、「破局の芽」は至るところにあり、しかも拡大している。
 各国内では階級矛盾が深まっている。諸国間の矛盾も深まっている。米国は中国抑え込みに血道をあげているが、対日要求も激しさを増すことは必至である。
 「成長戦略」をめぐっては、菅首相のブレーンであるアトキンソン・小西美術工藝社社長と三村・日本商工会議所会頭の対立が報じられるなど、支配層内も意見の違いがある。それは、菅政権の進めようとしている改革政治が、財界の一部を含む広範な国民に犠牲と負担を押し付けるものだからである。
 外交においても、米国の対中戦略に付き従って「アジアの大国」をめざすことは、わが国を戦争と亡国に引きずり込む道である。東南アジア諸国連合(ASEAN)内にも分断を持ち込み、アジア諸国の結束と繁栄を妨げることになる。
 これらは菅政権の弱さである。
 亡国・反動・国民犠牲の菅政権を打ち倒さなければならない。もっとも効果的なのは、政権の弱さを突き、広範な戦線をつくって大衆行動で闘うことである。
 労働組合は、その戦線の先頭で闘うことが求められている。(K)


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