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2020年5月15日号 1面

コロナ禍/
相次ぐ国民犠牲を許すな

医療制度改悪のツケが噴出
安倍政権打倒こそ最大の対策

 安倍政権は五月四日、新型コロナウイルス感染症に関する「緊急事態宣言」を、全国を対象に三十一日まで延長することを決めた。
 首相は、言葉では「責任」に言及したが、コロナ対策における対策の決定的な遅れについて真摯(しんし)に反省することはなかった。
 相も変わらず国民に「理解と協力」を求めたが、明日の生活さえ見通せない労働者、勤労国民、休業要請を受けながらほとんど補償を受けられない中小零細業者を救う方策には言及しなかった。
 首相は「五月は次なるステップに向けた準備期間」などと言い、十三の「特定警戒都道府県」以外の三十四県では「休業要請の解除や緩和」を検討するよう要請した。
 宣言を延長し、国民にいっそうの犠牲を強いる一方、さも、感染症の収束が近いかのような演出に腐心したのである。
 さらに、安倍政権は第二次補正予算の編成の検討を始めた。
 安倍政権によるコロナ対策は、国民の命と健康を守ることは放置するか、行っても「遅く、わずか」である。その結果、国民生活は破綻に追い込まれている。
 すでにコロナ禍によって、旅館や飲食店など、全国で百二十八の企業が経営破綻に追い込まれている。これは「氷山の一角」である。廃業を選択せざるを得なかった零細企業、自営業者は数多ある。その下で働いている労働者、とくに非正規労働者には、解雇と待遇悪化を押し付けられ、生活の糧を失った。
 西村経済財政・再生相は、最低賃金引き上げを凍結することにも言及した。
 一方、検察官の定年を六十五歳に引き上げる検察庁法改悪案は、政権の都合で審議を強行した。
 人工知能(AI)など先端技術を使った都市「スーパーシティ」構想を実現する国家戦略特区法改定案も成立の見込みである。
 安倍政権の徹底した国民軽視に対する、怒りと批判は著しく強まっている。マスコミの調査でさえ、過半の国民が政権のコロナ対応を評価していない。
 安倍政権は十四日、一部県に対する特措法指定を解除したが、感染者減少は政権の功績ではない。

医療政策が事態を悪化
 わが国の感染者数は一万六千人を超え、死者も六百七十人を超えた(五月十三日現在)。
 だが、第三者に感染させる可能性のある無症状感染者は、すでに確認されている感染者数の一〇倍に達するともいわれる。死者も、コロナウイルスが引き起こす免疫暴走(サイトカインストーム)による心筋梗塞などによる死者数を反映してはいない。
 「日本は踏みとどまっている」などと楽観論を振りまくことはできない。
 コロナ禍を通じて明らかになったのは、わが国の医療政策の貧困ぶりである。
 まず、医師数の絶対的な不足である。
 日本の人口一千人あたりの医師数は二・四人で、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の三・五人より一人以上少ない。
 背景には、政府の医師数抑制政策がある。一九七〇年代以降、政府は医学部の新設や定員増を認めなかった。これにより、地方の医師不足や勤務医の過重労働が深刻化した。
 さらに、二〇〇四年に導入された臨床研修制度で、大卒医師が都市の民間病院を研修先に選ぶようになり、「大学病院離れ」が進んだ。結果、地域医療を支えてきた大学病院からの派遣医師が減り、地方の医師不足が一気に加速した。
 医療が財政再建の標的にされた結果、集中治療用の病床数不足も圧倒的に不足している。日本の十万人あたりの集中治療室(ICU)病床数は、約五床しかない。ドイツの約三十床はもちろん、「医療崩壊」したイタリア(約十二床)の半分以下である。
 まさに、「コロナ以前」から、わが国は「医療崩壊」状態だったのである。

先進国でない感染症対策
 感染症対策においては、さらに貧困である。
 一九七〇年代以降、AIDS(後天性免疫不全症候群)、O―一五七など新しい感染症が出現した。二〇〇〇年代に入ると、SARS(重症急性呼吸器症候群・〇三年)、鳥インフルエンザ(〇三年、一三年)、MERS(中東呼吸器症候群・一二年)と、新しい感染症が次々に出現した。世界保健機関(WHO)は〇七年、「感染症は国境を越えて拡大する世界的問題」と警告していた。
 世界は感染症対策を強化していたが、日本では一九九九年の「感染症法」の施行以降、逆行する政策をとってきた。
 典型は、国立感染症研究所(NIID)の予算と人員削減である。同予算は十年で三分の一も減らされた。二〇一一年の段階で、「(NIIDの)運営には限界がきている」(NIID研究評価委員会「評価報告書」)と、警鐘が鳴らされていたほどである。
 地域における感染症対策の最前線である保健所は、〇〇年代以降、政府とそれに追随した自治体当局によって、大幅に統廃合された。しかも安倍政権はこの数年間、医療費削減を目的に、地域における感染症対策の「拠点」である全国の公立病院に、病床削減などを押し付けてきた。
 他方、安倍政権は「国家戦略特区」の一環として、「人獣共通感染症対策」をうたった加計学園(岡山理科大)に百八十六億円もの血税をつぎ込んだが、何の役割も果たしていない。
 わが国でPCR検査数や感染症病床が諸外国に比して圧倒的に少ないのは、こうした医療政策のツケにほかならない。日本の人口十万人あたりの検査数は、安倍首相の「一日二万件にする」という約束から一カ月余を経ても、イタリアやドイツの一六分の一程度にすぎない。
 検査体制の圧倒的不備とそれを放置したことが、「四日間の自宅待機」など、軽症者を放置することで感染者と死者を拡大させることにつながったのである。加藤厚労相は「誤解」などと言っているが、失政を隠す責任逃れである。
 仮にこの局面を乗り切れても、どの時点になるかはともかく、第二波、第三波の襲来は不可避である。その度に「外出自粛」などを繰り返せば、わが国経済への打撃はますます計り知れないものとなろう。
 国民の命を軽視した医療対策を抜本的に転換させなければならない。安倍政権を倒すことこそ、最大のコロナ対策である。
 「いま辞めろなんて言わない」(枝野・立憲民主党代表)などという態度は、政府を助けるものである。
 国民の命と健康を守るため、労働組合、良識ある政治家、学者など広範な人びとが闘いに立ち上がらなければならない。(O)


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