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2020年3月25日号 1面

コロナ対策/消費税廃止、
中小企業に無利子融資行え


一人月10万円以上、無期限の直接給付を

 安倍政権は三月十日、新型コロナ緊急対策第二弾を発表した。
 内容は、「一斉休校」に伴う助成金と給食費の返還、中小企業向けの特別貸付制度(五千億円規模)の創設、雇用調整助成金の対象拡大、観光業界への支援策などである。
 これらの総額は四千三百億円で、二月中旬に閣議決定された「第一弾」の百五十三億円と合わせても、四千五百億円程度にしかならない。
 政府・与党は、新年度補正予算として三十兆円規模の経済対策を検討しているとされる。だが、補正予算は四月に入ってからの審議である。
 これらの対策はあまりに遅く、そして少額である。二月に一兆円以上の財政出動を打ち出した韓国などと比べても、その差は歴然としている。

少額で不十分な対策
 対策の内容もきわめて不十分で、国民生活を救うものではない。
 休業せざるを得なかった労働者の賃金保障助成(日額八千三百三十円が上限)も不十分だが、フリーランスの労働者はその半額にも満たない四千百円である。安倍政権は「働き方改革」で、正社員のフリーランスへの転換を進めている。そのさなかでこのような差別を設けることは、どさくさ紛れに正社員のフリーランス化を進める政策と考えざるを得ない。しかも、この助成を利用するかどうかは、事業主の裁量次第である。
 雇用調整助成金は、これまた企業が申請して始めて支給されるもので、「雇用確保」に名を借りた企業支援策である。
 給食費の返還は、国の負担は一部で、残りは各自治体に要請するというシロモノである。安倍首相が唐突に打ち出し、自治体や教育現場を混乱に陥れたあげく、その責任を自治体に押し付けるとは許し難い。

日銀は大企業に奉仕
 また、日銀は十六日、金融政策決定会合を前倒し、約三年半ぶりの追加緩和策を打ち出した。内容は、上場投資信託(ETF)買い入れ枠を年十二兆円に倍増、コマーシャルペーパー(CP)と社債に新たに二兆円の買い入れ枠を設ける、ゼロ金利で金融機関に貸し付ける制度も新設するなどである。
 ETFに組み入れられている株式、CPや社債も、すべて大企業のものである。日銀が守ろうとしているのが大企業・投資家の利益で、国民の命と健康ではないことは明らかである。ゼロ金利の貸し付け制度も、資金難の中小・零細企業に回る保証はない。
 この決定に基づき、日銀は十九日だけで二千億円もの資金をETFにつぎ込み、株式市場を支えようとしたが、無惨に失敗した。

規制改革求める財界
 東日本大震災後、政府は「復興」に名を借りて、さまざまな大企業支援策を行った。被災地とまったく関係のない事業まで盛り込まれた。これは、財界の意図を受けてのものであった。
 経団連は三月九日、「当面の課題に対する考え方」で、新型コロナ対策などと併せて、改めて「Society5・0の実現」などを掲げた。
 さらに十七日、「Society5・0の実現に向けた規制・制度改革に関する提言」などを公表、さらなる規制改革を求めている。内容は、医薬品の遠隔販売、オンライン診療・服薬指導における対面原則の撤廃、宿泊施設におけるフロントレス環境の実現などである。
 まさにコロナ危機を「好機」とばかり、自らの宿願である規制改革を実現させるべく、政府に迫っているのである。
 「柳の下のどじょう」を狙い、危機に便乗して利益をむさぼろうとする財界の策動を許してはならない。

国民への現金給付を
 コロナ危機が到来する前から、国民の生活と営業は多大な困難に直面している。もっと思い切った、国民・患者への生活支援策が緊急に必要である。国民の命と健康を守るための政策に、躊躇(ちゅうちょ)があってはならない。
 もっとも必要で緊急に行うべき施策は、全国民に対する直接給付である。
 リーマン・ショック時の一万二千円では、とうてい足りない。当時の施策は国民の苦難を救済できなかったからである。現在のコロナ危機は、当時以上に「いつまで続くが分からない」深刻な危機である。
 われわれは、全国民に一月あたり十万円以上を、この感染危機が落ち着くまで「期限なし」で支給すべきであると考える。
 またこの際、逆進性の強い消費税を全面的に廃止すべきである。共産党などの主張する「消費税五%への減税」では不十分である。これは、直接の納税者である中小企業への救済策でもある。
 派遣社員やパート労働者など、非正規労働者への解雇や雇い止めは深刻で、正社員も例外ではない。政府は、解雇・雇止め・新規採用社員への「内定取り消し」を、一月にさかのぼって全面的に禁止しなければならない。
 また、政府は、農業者や中小・零細企業に無利子のつなぎ融資を提供し、既存債務の減免・返済猶予を行うべきである。すでに、老舗旅館やクルーズ運営会社、食堂経営会社など、コロナ危機による倒産が相次いでいる。リーマン・ショック時の支援枠は二十兆円であったが、最低でも二倍程度は確保すべきであろう。先行きへの絶望から廃業に追い込まれないよう、事業承継税制も充実させるべきである。
 感染拡大を防ぐ措置は、依然重要である。
 世界保健機関(WHO)の勧告通り、PCR検査を早急に拡大しなければならない。感染状況の把握は、すべての政策の基礎だからである。
 これらを行うための財源はある。
 一例だが、約四百五十兆円に膨らんだ企業の内部留保を活用することである。資本金十億円以上の大企業の内部留保だけでも、約二百三十兆円もある。
 大企業の内部留保に二〇%程度の課税を行うだけで、全国民に四カ月程度、十万円を支給し続けることが可能になる。
 さらに、リーマン・ショック後の金融緩和政策でしこたま儲(もう)けた投資家に対し、キャピタルゲイン(資産売買差益)増税を行うなどの措置をとるべきである。
 富裕層への現金給付という不平等部分は、これで取り返せる。
 約一兆ドル(約百八兆円)ある米国債を売却することも、状況に応じてためらうべきではない。
 それらの上で、赤字国債の発行が必要なら行うべきである。
 国民の命と健康を守るため、労働組合、政治家、団体、知識人などが力と知恵を寄せ合うべき情勢である。(O)


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