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2020年3月15日号 1面

コロナ特措法成立を許すな

追随した野党の責任は重大
人民弾圧のための反動法制

 衆参両院は三月十三日、新型コロナウイルス感染症を「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に加える改定法案を可決・成立させた。自民・公明の与党に加え、維新、さらに立憲・国民・社民の共同会派が賛成した。
 わが党は、特措法改定に抗議し、徹底的に糾弾する。

国民の諸権利を大きく制約
 この特措法は、感染症などで「政令で定める要件に該当する事態」となった場合、首相に「緊急事態宣言」を行う権限を与えている。
 緊急事態が発動されれば、政府と都道府県知事は、全国民に外出自粛要請、興行・催物などの制限要請・指示、学校や映画館、体育館などの使用制限・停止を行うことができる。国民や団体が要請に応じない場合、強制も可能となる。「医療体制の確保」を口実とした土地や建物の強制使用、「必要な物資」の売り渡しや収用も可能となる。NHKなどの「指定公共機関」は、首相から「必要な指示」を受けることになるため、国民の知る権利も制約される。
 知事は「緊急事態宣言」の前でも、「団体・個人に対し必要な協力の要請」ができる。
 一方、人権侵害への救済措置や経済的補償は一切ない。
 特措法は、首相・政権に広範な権限を与え、個人・団体の自由や権利を著しく侵害するものである。「緊急事態宣言」が出されれば、事実上、政府の対策を批判する集会やデモすら開けなくなる。事実上の「戒厳令」にほかならない。
 法律の条文では、国民の自由と権利の制限は「必要最小限のものでなければならない」と定められてはいる。付帯決議でも、国会への「事前報告」と専門家への意見聴取などが盛り込まれた。
 だが、付帯決議に法的拘束力はない。しかも、森友・加計学園問題、「桜を見る会」、さらに東京高検検事長の定年延長など、法律の拡大解釈とわい曲を推し進めてきた安倍政権が、自らの手を縛り、憲法に保障された基本的人権を制約することがないと保証できるはずもない。
 特措法で当事者となる全国知事会が、批判の「緊急提言」を行ったのは当然である。

失政を画す狙いは明白
 安倍政権は、初動の立ち遅れ(台湾が新型コロナウイルス感染症を指定感染症に指定したのは一月中旬だが、安倍政権は二月七日)とクルーズ船・ダイヤモンド・プリンセスでの検疫失敗など、失態を重ねてきた。
 安倍政権は失政への反省もなく、国民・患者を助けるための財政出動も出し渋り、PCR検査の数さえ不十分な状態を放置したまま、「一斉休校」などで国民生活を混乱に陥れている。
 国民の生活と営業は急速に悪化、安倍政権への不満が高まっている。
 安倍政権は、感染症危機の高まりを「好機」とばかり、「強い政権」をアピールすることで「失地回復」を狙ったのである。

人民の決起恐れた予防弾圧
 こんにち、世界資本主義の危機は深まり、末期症状を呈している。
 世界の労働者階級・人民の生活は極度に悪化し、一握りの大金持ちとの「格差」はますます開いた。不満と怒りを背景に、各国で階級矛盾が深まり、いわゆる「ポピュリズム勢力」の台頭や、デモやストライキといった実力行動が激化している。
 歴史的変動期に労働者・人民が闘わざるを得ない情勢が迫るなか、世界の支配層は自らの政治支配を維持するためにキバを研ぎ、弾圧手段を整備している。
 フランス・マクロン政権によるデモ規制法(反カッスール法)のほか、インドネシアや中南米諸国では、デモへの弾圧が強化されている。イタリアでは、国土封鎖のために軍隊と武装警察を出動させた。
 今回の新型コロナ特措法も、その一環である。この点で、全日建連帯労組関西生コン支部に対する、事実上の「共謀罪」適用ともいえる弾圧と、軌を一にするものである。

闘わず追随した野党
 安倍政権は三月二日に同法改定を表明、わずか十日あまりでの成立である。
 野党はほとんど議論もないまま、安倍政権に追随して特措法成立に手を貸した。
 従来、安倍政権は憲法改悪による「非常事態条項」創設をもくろんでいた。野党の協力によって、憲法に手を付けぬまま、この権限を手に入れることに成功したのである。
 特措法成立は、その意味で「部分改憲」を成し遂げたものとさえいえる。
 そもそも、この法律は二〇一一年五月、旧民主党政権(菅政権)によって成立した法律である。〇九年に世界的に流行したインフルエンザなどを口実に、東日本大震災のドサクサ紛れに成立させた。今回の態度で、旧民主党を引き継ぐ立憲民主党、国民民主党の限界はますます明白となった。立民から造反が出たのも当然といえる。社民党の現場にも異論がある。
 共産党は唯一、特措法に反対した。だが、選挙での「野党共闘」への幻想を吹聴するこの党は、立憲や国民を批判できない「腰砕け」ぶりである。
 特措法に反対し、国民・患者のための感染症対策を求める闘いが急務である。(O)


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