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2020年2月25日号 1面

新型肺炎/市中感染拡大の危機 経済に打撃、
医療政策の矛盾露呈

 国民の命守らぬ安倍政権を倒せ

 新型コロナウイルスが引き起こす肺炎により、死者が相次いでいる。感染者はすでに八百人を超え(クルーズ船乗客を含む)、最初に感染者が発見された中国に次ぐ、「第二の感染国」となっている。
 確認された感染者は「氷山の一角」であり、わが国はすでに市中感染が拡大、「流行段階」に入っていると認識すべきである。
 隣国の韓国は、危機レベルを最高段階に引き上げた。安倍政権の認識は、著しく甘い。
 国民の命と健康が著しく脅かされる、危機的事態である。

国民の命軽んじる安倍政権
 安倍政権の対応は混乱をきわめ、「ぶざま」そのものである。
 政府は当初、感染検査の「武漢縛り」にこだわり、「水際作戦」はすぐに破綻した。検査対象拡大や中小企業支援などの対策を打ち出したのは二月十四日で、世界保健機関(WHO)が緊急事態宣言を行ってから半月も後のことであった。
 現在も、検査さえ受けられず放置されている患者が多数いる。政府は、自治体の判断に丸投げする無策ぶりである。
 危機を過小に見せかけたいのか、政府は感染者情報を十分に開示せず、国民の不安は広がる一方である。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での「隔離」は完全に失敗し、乗客と乗員に劣悪な環境を強いたあげく、かえって感染を広げる結果となった。
 安倍政権では「政府対策本部」の会合を小泉環境省、萩生田文科相、森法相が欠席するという、緊張感・危機感のなさである。
 一連の政府の対応を、怒りなしに述べることはできない。対応が適切であれば、多くの人が感染で健康を害されることもなく、失われた命が救われた可能性が高いのである。クルーズ船で感染・死亡した高齢女性は、発熱のなか一週間も放置された。国に見捨てられたに等しい。
 国民はもちろん、諸外国が日本政府の対応を批判し、日本人の入国を拒否する動きも広がっている。これはあげて、安倍政権の責任である。

感染症軽視の政策のツケ
 戦後の経済成長で、世界的は「感染症の医書をひもとく必要はなくなった」(米政府、一九六七年)という声さえ上がるほどの時期があった。
 だが、七〇年代以降、AIDS(後天性免疫不全症候群)、O―一五七など新しい感染症が出現した。この動きに突き動かされ、日本でも九九年に「感染症法」が施行された。
 二〇〇〇年代に入ると、SARS(重症急性呼吸器症候群・〇三年)、鳥インフルエンザ(〇三年、一三年)、MERS(中東呼吸器症候群・一二年)が出現した。WHOは〇七年、「感染症は国境を越えて拡大する世界的問題」と警告した。
 こうした世界のすう勢に背を向けてきたのが、わが国歴代政権である。
 典型は、国立感染症研究所(NIID)の予算と人員削減である。同予算は十年で三分の一も減らされた。この事態に際し、一一年の段階で、NIID研究評価委員会(委員長=金澤・日本学術会議会長)が「評価報告書」を公表、「(NIIDの)運営には限界がきている」と警鐘を鳴らし、「国の感染症に対する姿勢の問題」と断じていた。
 安倍政権は「国家戦略特区」の一環として、「人獣共通感染症対策」をうたった加計学園(岡山理科大)に百八十六億円もの血税をつぎ込んだが、何らの役割も果たしていない。
 すでに新型肺炎が日本に襲来するなか、文科省の「感染症研究の推進の在り方に関する検討会」(主査=岩田・国立がん研究センター中央病院感染症部長)は二月、「感染症研究国際展開戦略プログラム事後評価報告書」を公表した。
 「感染症研究の推進の在り方を検討する」という目的だが、内容たるや、アジア・アフリカでの感染症に対する「支援」がほとんどで、日本国内で流行はほとんど前提になっていない。文科省管轄とはいえ、あまりに緊張感がないものではないか。
 しかも安倍政権はこの数年間、医療費削減を目的に、地域における感染症対策の「拠点」である公立病院に、病床削減などを押し付けてきた。自治体当局も、独法化や民営化を進めた。厚労省は昨年九月、全国四百二十四の病院名を名指しして「再編」を迫った。
 今回の深刻な危機は、以上のような政府の政策によって「起こるべくして起きた」ものである。
 こうした国民の命を軽視した医療制度、感染症対策を抜本的に転換させなければならない。
 政府は、新型コロナ肺炎を直ちに保険適応しなければならない。感染検査の基準を自治体任せにせず、希望者全員が検査を受けられるよう、万全を尽くさなければならない。医師会や大学、民間企業などと連携し、専門病院の建設も検討に値する。
 経済のグローバル化を背景に、今後も、新型感染症流が行する頻度が上がることは確実である。
 中長期的に、政府の対策を抜本的に強化しなければならない。医療費削減を目的とした、各種の国民負担増加策をすべて撤回すべきである。
 国立感染症研究所の体制充実、地域医療の中核としての自治体病院の経営安定と人員確保に財政を投じるべきである。自治体病院の民営化や独立行政法人化、病床削減計画は、中止しなければならない。

労働者への犠牲許すな
 新型コロナ肺炎は、長期デフレから脱却できず、消費税増税で消費が冷え込むわが国経済に、さらなる重大な打撃を与えている。安倍政権は、二十日に公表した二月の「月例経済報告」で「(景気は)緩やかに回復」という判断を維持したが、「寝ぼけ話」にも程があるというものだ。
 新型肺炎の「震源」となった中国では、自動車を中心に、武漢市周辺での工場生産が全面停止した。国内での消費も著しく冷え込んでいる。中小企業の破綻リスクが拡大、習近平政権は対応に追われている。
 大国・中国の状況は、日本、アジアの供給網(サプライチェーン)に大打撃を与えている。
 日本全国の観光地で観光客が激減、各種イベントも次々と中止になっている。学生の就職にも影響を与えている。
 企業はこれを口実に、次々とリストラを発表している。家電量販店大手ラオックスは、子会社を含めて百六十人の希望退職(首切り)を打ち出した。一時帰休を検討しているバス会社もあると報じられている。業績悪化を口実に、労働者への攻撃はますます激化する。
 先進的労働者、労働組合の闘いが急務である。
 安倍政権を倒して国民大多数のための政権を打ち立てることこそ、国民の命と健康を守り、職と生活を守る最大の保証である。労働組合は、その先頭で奮闘しよう。(O)


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