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2019年9月15日号 1面

台風15号で深刻な被害 
自治体・東電に任せきり 
住民無視の安倍政権許すな

 政府は救助・復旧に全力を尽くせ

  九月初旬、首都圏を直撃した台風十五号によって、甚大な被害が発生した。
 人的被害は死傷者六十人以上、最大瞬間風速五十メートル以上の暴風によって多くの家屋が損壊した。送電設備が倒壊、姉崎火力発電所(千葉県市原市)など火力発電所三基も停止した。JRや私鉄などは、大規模に運休している。学校も休校が続いている。
 それだけではない。千葉県や神奈川県を中心に、一時、約九十三万四千九百世帯で停電が発生、台風上陸から三日後の十二日に至っても、千葉県で約四十万軒以上、神奈川県でも約三千軒の停電が続いている。このほか、断水が約二万件、インターネットの光回線も約五万六千回線で不通となっている。
 これら、生活インフラの完全復旧のメドさえ立っていない。
 猛暑の中、屋内は「蒸し風呂状態」で、熱中症で死亡する高齢者も出ている。暑さを避けるため、エコノミークラス症候群(旅行者血栓症)におびえながら、車中泊を強いられる人も多数いる。ガソリンスタンドでの給油や市役所などでの給水には、二時間以上も待たなければならない。携帯電話が使えず、家族の安否や避難所・支援物資の情報を得られない人びともいる。寝たきりの高齢者が、避難所への入所を断られたという例まである。
 さらに雷雨が、被災者の苦難に追い打ちをかけている。
 数十万人の人びとが命の危機にさらされており、犠牲者はさらに増える可能性がある。
 大雨や暴風は自然災害だが、それがどの程度の人的・物的被害となるか、どの程度の期間、どのような内容で復旧・復興できるかは、まったく政治の責任である。いわゆる「都市インフラのぜい弱さ」も、政治の責任である。
 政府はあらゆる手立てを尽くして被災者を救助し、復旧を急がなければならない。困難を強いられている住民の命と生活を守らなければならない。
 この危機的事態にもかかわらず、安倍政権は復旧・復興を東京電力や地方自治体に「任せきり」で党・政府人事に明け暮れ、十一日に第四次安倍改造内閣を発足させた。
 安倍首相は十二日になってようやく「復旧は待ったなし」などと号令したが、それさえ口先だけである。その証拠に、関係閣僚会議すら開かれず、閣僚「懇談会」で対応を指示したのみである。経産省が「対策本部」を設置したのは、十三日になってからだ。
 内閣改造によって、大臣・副大臣・政務官は基本的に交代となる。「引き継ぎ」には時間を要する上、今回は新任の大臣が多い。それだけ、復旧・復興は遅れ、住民の命と生活が脅かされるのである。
 「(東電が東日本大震災以降)送電関連の設備投資の抑制による電柱の老朽化が倒壊を増やした可能性」(日経新聞)との指摘もある。だが、東電は実質国有化されており、すなわち「政府の責任」である。
 世耕経産相は東電に「電源車の配備」などを指示したというが、現実にはまったく不足している。東京電力が当初に想定・発表した「復旧見込み」は「大甘」だったが、政府が独自に検証した形跡もない。
 安倍政権下で二〇一六年に始まった電力自由化(発送電分離)との関係も、窺(うかが)わせるに十分である。
 政府の姿勢は、西日本を襲った台風十号(八月)当時の対応と比べてもおざなりなもので、許し難い。
 安倍政権のこうした被災者に冷淡な態度は、今回に限ったことではない。
 安倍政権は「被災者生活再建支援法」に基づく支援金(最大三百万円)の引き上げに、消極姿勢を続けている。応急仮設住宅の入居期限もわずか二年で、全国で延長停止が相次いでいる。
 典型は、昨年七月の西日本豪雨災害の際の対応である。気象庁が「厳重な警戒」を呼びかけるなか、安倍首相は取り巻き議員と共に「赤坂自民亭」なる宴会に興じていたのである。
 政府は、「早く元の生活に戻りたい」という住民の願いに、直ちに応えなければならない。全国の力を集めて、給水、電源車の増配などに努めなければならない。
 住民大多数のための復旧・復興を実現するため、国民生活無視の安倍政権を打ち倒さなければならない。労働組合、政党・政治家、知識人などは、力を合わせなければならない。(O)


被災者の声
千葉市・年金生活者
 マンションに住んでいます。
 台風で停電した上に、ポンプも動かなくなったので断水しました。ガスは通じていましたが、湯沸かし器が動きません。この暑さの上に風呂にも入れず、とても生活できない状況だと判断しました。
 近所の人に聞いても「すぐには復旧しない」ということでしたし、心臓に持病を持っているので、やむを得ず、埼玉県内の実家に戻ることにしました。
 夜中、信号機も点かないなかで車を運転することは恐怖でした。埼玉に移ってから千葉に残っている友人に電話してみましたが、「車中泊を続けている」という人もいれば、いまだに携帯電話がつながらない人もいます。
 車中泊をしている友人は、営業中のスーパー銭湯に「避難」しようとしたらしいのですが、超満員で入場制限がかかっており、入れなかったそうです。
 他県に避難できた私は、幸運な部類でしょう。
 十二日の昼になって、ようやく千葉に戻れました。いつの間にか電気は復旧していましたが、「通電火災」にならずによかったです。
 それにしても、政府は自治体や東京電力に任せきりで、何もしてくれません。こんな政府は退陣してほしいですね。


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