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2019年7月5日号 1面

G20、世界は激動する転換期

対米従属の限界はさらに鮮明

  大阪で開かれた二十カ国・地域(G20)サミット、米中首脳会談、直後の米朝首脳会談などは、まさに、世界が破局に向かって激動する歴史的転換期にあることを示している。
 G20サミットの「大阪宣言」では、「保護主義と闘う」との文言は、二年連続で見送られた(2面に詳細記事)。
 リーマン・ショック直後のG20サミット(米ワシントン)では、各国が国内総生産(GDP)の二%程度の景気対策を行うことで合意した。こんにちの状況とは雲泥の差である。
 G20に代表される「国際協調」と各国での金融緩和と財政出動が、世界が破局に至ることを押しとどめた。こんにち、この条件は失われ、新たな金融危機が迫っている。
 G20サミットは、主要国(G7)だけでは危機に対処できないことから定例化された。こんにち、そのG20も機能不全に陥った。「多国間主義」は、もはや風前の灯火となった。
 G20に限らず、世界を混乱に陥れているのは、米帝国主義である。「世界は米中に振り回されている」(日経新聞)などという論調は、米国の悪行を免罪するものである。
 トランプ政権は「米国第一」を掲げ、歴史を巻き戻そうとしている。それは、人種暴動、麻薬・銃犯罪などとしてあらわれる、国内の深刻な階級矛盾をそらす狙いも込められている。
 それは、米国の歴史的な衰退の結末であり、弱さの反映である。
 その第一のターゲットは、台頭する中国である。ペンス米副大統領は昨年十月、中国に対して事実上の「宣戦布告」を行った。その戦略目標は、中国共産党体制の転覆である。
 米中首脳会議では米国からの追加関税(第四弾)が見送られ、トランプ大統領は華為技術(ファーウェイ)との取引禁止を緩和することを表明した。中国は農産物の市場開放や金融自由化で、大きく譲歩した。
 これは当面の「休戦」にすぎない。トランプ政権は、来年に控える大統領選挙を意識せざるを得なかった。対中関税の悪影響が米国内に跳ね返り、トランプ政権の支持基盤である農民やハイテク業界が反発を強めていたからである。中国も、経済の停滞を防ぐ必要があった。
 それでも米国は、毎月行っている台湾海峡への艦船派遣、「人権」を口実とする中国への内政干渉は続いている。実施済みの追加関税も解除されていない。
 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)との三回目の首脳会談に踏み切ったのも、同様の「実績づくり」からである。米大統領として初めて軍事境界線を越えたのは政治的パフォーマンスにすぎず、トランプ大統領が「平和」に目覚めたわけではない。
 米国にとって中国が「第一の敵」となったことで、朝鮮を対中政策上の「くさび」として利用しようとしているのである。中国も、朝鮮を「対米カード」にするもくろみがある。
 米国の対中攻勢は、中長期的にいちだんと強まる。アジアを中心に、軍事的緊張が高まっている。
 トランプ政権は、不当な対中制裁措置を直ちに全面解除すべきである。国連による朝鮮への制裁措置も、直ちに解除すべきである。
 トランプ政権による策動は、イランやベネズエラへの干渉と軍事的圧迫、移民問題でのメキシコなどへの圧力、欧州諸国や日本への通商・安全保障要求など、枚挙に暇がない。
 米帝国主義との闘いは、全世界の労働者階級、人民、中小諸国にとって第一級の課題である。
 戦略的には米国を追い抜くことをめざしている、中国の態度はどうか。
 かつての中国は、建国直後の困難な状況下にもかかわらず、朝鮮戦争に義勇軍を派遣して米帝国主義と闘った。その後、中国は核武装し、こんにちでは、核戦力・通常戦力ともに十分な抑止力を備えるに至っている。経済的にも強国となった。
 それでも、悪あがきを強める米国に譲歩した。米国は、毎月のように台湾海峡に艦船を派遣している。米国防総省は六月一日に発表した「インド太平洋戦略報告書」で「民主主義の台湾に支持」を示している。シャナハン米国防長官代行は、シンガポールで開かれた「アジア安全保障会議」で、武器輸出を含む「台湾関係法を履行」すると明言した。「人権」問題での圧迫も続けている。
 中国は、このような策動を許せるのか。台湾問題は「核心的利益」ではなかったのか。
 中国は、今回の米朝首脳会談を「仲介」したと誇っている。これも、理解に苦しむ態度である。
 中国は、全世界人民・中小国と連携し、米帝国主義と闘う態度を鮮明にさせるべきではないのか。
 わが国も、その進路が問われている。
 安倍自民党は、参議院選挙公約の第一に「外交」を掲げ、「世界の真ん中で力強い日本外交」などと訴えている。
 実態は、従来以上の対米従属政治である。歴史的変動期を迎える、世界のすう勢に反するものである。
 安倍政権は、G20サミットでも、「宣言」の文言をはじめ、米国に最大限に配慮した。対米関係に腐心したところで、衰退する米国が対日要求を「緩める」はずもない。
 トランプ政権は「日米安保条約は不平等」と不満を表明し、わが国にいちだんの軍事負担を求めている。参議院選挙後には、農産物の市場開放を中心に、事実上の日米自由貿易協定(FTA)交渉が本格化する。
 わが国は米国の世界戦略に徹底的に利用され、国民経済・国民生活はさらに犠牲にされるのである。
 対米関係だけではない。
 日中首脳会談は「蜜月」を演出したが、米世界戦略を支える安倍政権が、中国との信頼関係を築けるはずもない。
 韓国には理不尽な報復を強行、関係は戦後最悪である。朝鮮との「無条件の対話」を打ち出したが、敵視政策の破綻は明らかである。ロシアに配慮したあげく、北方領土問題が前進する気配はない。イランとの外交でも「恥をさらした。
 日本経済も、世界の「津波」が押し寄せつつある。国民生活の実態は、消費税増税には耐えられない。
 安倍政権の対米従属外交は、保守層を含む広範な国民に怒りと不安を広げている。農民はもちろん、財界の相当部分さえ同様である。「多面外交」を求める識者も増えている。トランプ大統領との会談の多さは、安倍政権自身が不安を募らせていることを示す。
 安倍政権も米国の衰退を意識し、「自主」を装うことを強めている。G20の議長を務めたことで、有権者に「世界の真ん中」を一定、印象づけたことは間違いない。だが、安倍外交は、対米従属を一歩も超えない欺まんである。
 安倍政権による対米従属の継続か、日米安全保障条約を破棄した、独立・自主で国民大多数のための政権か、わが国の独立をめぐる「二つの路線」の争いは、ますます切迫したものとなっている。  (K)


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