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2017年6月5日号 1面

多国籍企業のための
生産性向上策許すな 
日和見主義の連合中央を
打ち破り闘おう

「働き方」法案の衆院強行採決糾弾

 「働き方改革」関連八法案が五月三十一日、衆議院本会議で、自民党、公明党、日本維新の会などの賛成多数で強行可決され、参議院に送られた。
 過労死遺族が傍聴席に並ぶなか、断じて許されない暴挙である。
 同法案は、労働者の労働条件を著しく悪化させる悪法である。
 まず、「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)などと称し、「残業代ゼロ」を制度化する。「年収一千七十五万円以上」の「高度専門職」を対象としてはいるが、財界は「四百万円以上」を要求しており、将来の引き下げ(対象拡大)を狙った「アリの一穴」である。与党が「修正」した制度からの「離脱」条項など、現実の職場の力関係の下では、「歯止め」にはなり得ない。
 また、「みなし労働時間制度」の対象を営業職や調査担当職などに拡大、労働基準法に時間外労働の上限を取り入れることで、実際には、「過労死ライン」を超える長時間労働を合法化させる。
 正規と非正規雇用の格差についても、企業による労働者の能力・成果など恣意(しい)的判断による差別を容認・拡大させる。安倍政権は「同一労働同一賃金」と繰り返したが、均等待遇の対象となるパートタイム労働者はわずか一・五%しかなく、実際には「格差」を温存・拡大させるものである。
 さらに、雇用対策法の「目的」から「労働力需給の均衡」を削除、代わりに「生産性の向上」を加え、「多様な就業形態の普及」を中心に据えた。首切りや労働条件引き下げといった「リストラ促進」につながるものである。
 この悪法は、わが国多国籍大企業の要求を受け、これに奉仕するものである。
 世界経済の危機はいちだんと深刻化し、企業間、国家間の争奪が激化している。急速な技術革新も、この競争激化を促進している。さらに、トランプ政権が「米国第一」を掲げて世界、とくに中国に対して「貿易戦争」を仕掛けている。新興諸国は米金融政策の「出口」に揺さぶられて資金流出に見舞われ、欧州でも政治リスクが増大している。
 わが国を取り巻く外部環境は悪化の一途で、多国籍大企業を中止とする財界は焦りを深めている。財界にとっては「生産性向上」によって利潤を確保することが、ますますの「至上命題」となったのである。
 また、高プロの拡大版である「ホワイトカラーエグゼンプション」などは、米国が一九九〇年代以降、「年次改革要望書」などで日本に要求してきたことでもある。フランスなどでも同様の法改悪が進められている。
 財界は今回の関連法案を突破口に、「解雇の金銭解決」の実現などにも踏み込んでくるだろう。労働組合を中心とする闘いで、関連法案を廃案に追い込まなければならない。
 さらにこの法案は、基礎となるデータの改ざん・ねつ造が相次いで発覚している。法案の前提がそもそも崩壊しており、撤回以外にないシロモノである。
 この悪法に対し、労働組合が連日のように国会前行動を行うなど、闘いが粘り強く続いている。
 連合中央も街頭行動などを行っているが、昨年夏の「高プロ」をめぐる混乱以降も、対応はきわめて「腰砕け」である。そもそも、連合中央幹部は政府の労働政策審議会に加わり、「働き方改革」関連法案の準備に手を貸してきた。
 少なくない産別からも、連合中央への批判が上がっているのは当然である。
 連合中央による「協議路線」の根本的な見直しが求められている。連合中央の日和見主義を打ち破り、法案を廃案に追い込まなければならない。   (K)


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