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2017年5月15日号 2面・解説

歴史的な南北首脳会談

 「板門店宣言」を支持し、
アジアの平和を

 韓国の文在寅大統領と朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の金正恩・朝鮮労働党委員長が四月二十七日、軍事境界線のある板門店ので首脳会談を開催した。十一年ぶり三回目の首脳会談は、両国政府と人民の、平和と統一を願う力が実現したものである。われわれは、会談で合意された「板門店宣言」を歓迎し、断固支持する。米朝首脳会談が六月にシンガポールで行われることが発表されているが、朝鮮半島とアジアの平和を実現するため、わが国労働者、国民諸階層が闘いを強めることが求められている


 両首脳は、「板門店宣言」を発表した。
 宣言の冒頭では「南北は、わが民族の運命は我々自身で決めるという民族自主の原則を確認」すると、民族自決の立場を高らかに宣言した。
 さらに「完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島を実現する」こと、年内に朝鮮戦争の終戦をめざした会談を進めること、両首脳間の直通電話を設置すること、「一切の敵対行為」を全面的に中止すること、北方限界線(NLL)周辺を平和水域とすること、南北共同連絡事務所を朝鮮の開城地域に設置すること、南北離散家族・親戚の再会を進めること、今秋に平壌で再度首脳会談を開催することなどでも合意した(別掲)。
 「朝鮮戦争の終戦」で合意したことも重要である。韓国は朝鮮戦争における休戦協定の当事者ではない。それでも、戦争終結に向けた南北の意思を示すことで、米国による朝鮮敵視政策の「根拠」の一つを取り除くことを表明した政治的意義は大きい。
 さらに、二〇〇七年の南北首脳会談による「『一〇・四宣言』で合意した事業を積極的に推進していく」として、経済協力にも言及している。
 〇七年当時、韓国政府は十四兆三千億ウォン(現在の為替レートで約一兆五千億円)の支援を試算している。韓国政府は、当時を上回る規模の協力を想定していると考えられる。
 国連安全保障理事会による制裁決議があっては経済支援は実行できないため、韓国は言外に、制裁解除のために努力することを約束したとも解釈可能である。
 これらの南北間の諸合意は、アジアの平和に大いに貢献し、全世界人民を激励するものである。
 われわれは「板門店宣言」を歓迎し、断固支持する。

南北と人民の力が実現
 朝鮮戦争は一九五三年に休戦協定が結ばれたが、戦争状態はこんにちも続いている。米帝国主義は朝鮮が一貫して求める「不可侵条約の締結」「敵視政策の転換」に耳を貸さず、敵視政策を続け、体制転覆を策動し続けている。九〇年代の「核合意」など、ときに緊張が緩和したときもあったが、米国はその都度、さまざまな口実を設けて合意を反故(ほご)にした。二〇〇六年に最初の核実験を行うなど、朝鮮が対抗措置をとったのは当然である。
 日本は、一貫して米国の先兵役を果たしてきた。韓国では、〇〇年の南北首脳会談(金大中・韓国大統領と金正日・朝鮮国防委員長)を機に、自主的統一を願う気運が高まった。
 トランプ米政権は、オバマ前政権による「戦略的忍耐」政策を修正し、武力攻撃を含む「あらゆる選択肢」を公言して、国連を動員して朝鮮への包囲を強化した。
 これにより、朝鮮半島情勢は極度に緊張した。
 この打開を主導したのは、南北両政府と人民の力である。
 韓国で開かれた平昌冬季五輪を機に、一気に南北融和が進んだ。韓国からは、国家安保室長らが訪朝、今回の板門店での南北首脳会談の開催が決まった。
 トランプ政権は、「朝鮮半島の運命は自分たちで決める」という朝鮮民族の意思に押され、中間選挙を秋に控えた「実績づくり」、なかでも通商問題を中心に「対中国」の対処を優先せざるを得ない事情から、米朝首脳会談に応じざるを得なくなった。
 米帝国主義がいかに挑発・干渉を強めようとも、「独立・自主」を求める全世界の民族・人民の闘いはそれをはねのけて前進できることを示している。 

闘いの重要性は増した
 こんにち、米帝国主義は、台頭する中国を自らの世界支配を脅かす存在とし、抑え込もうとしている。一方の中国は、二十一世紀半ばまでに、米国に肩を並べる「社会主義現代化強国」となる長期戦略を打ち出している。
 米国による中国への通商上の制裁措置や、中国ハイテク企業への規制、台湾との関係強化による揺さぶりなど、米中対峙(たいじ)は全面的なものとなり、広義の「戦争状態」といえるものとなった。
 今後の朝鮮半島情勢は、隣接する中国に対する米国の態度に、従来以上に規定されたものとなる。
 その上で、米朝会談でどのような合意がされたとしても、朝鮮半島の平和がすんなりと実現されることはない。
 米国は、要求に応じて核開発計画を放棄したリビアに対してさえ、国内の反政府運動を契機に武力で体制を転覆した。イラクに対しては、ありもしない「大量破壊兵器」のデマをあおって侵略、占領した。こんにちでは、イランとの「核合意」から一方的に離脱、制裁を再強化している。
 朝鮮は、こうした事実を十分に知り、教訓にしているだろう。米国と「非核化」で合意できたとしても、その実現方法と範囲で合意するのはきわめて難題である。だからこそ、中国との関係強化で足場を固めようとしているのだろう。
 金正恩委員長は在韓米軍の存在を認める意向だと報じられているが、米軍縮小や戦略兵器の撤去は譲れない点であろう。これは、中国も望む点である。他方、中国をにらんで、アジアにおけるプレゼンスの維持をめざす米国にとって、在韓米軍削減は容易ではない。
 また、米国は「核廃棄」が完全に実現するまで「制裁と圧力を維持し続ける」という態度であるが、韓国、中国は「行動対行動」による段階的な非核化を主張する朝鮮の立場に理解を示している。また、トランプ大統領は、自らの任期中(二〇年末まで)という短期間に「核放棄」を実現したいところでもあろう。
 このように、米朝会談とその後の情勢がすんなりと進むことは考えにくい。まして、米帝国主義、トランプ政権は「平和愛好勢力」になったかのごとき幻想を抱くことは禁物である。
 アジアの平和を求め、「アジアのことはアジア人が決める」という大義を掲げ、米帝国主義のアジア戦略と闘うことが求められている。 

無条件の日朝国交正常化を
 米国に追随し、朝鮮敵視の先兵役を買って出ていた安倍政権の外交は、「寝耳に水」の米朝首脳会談開催発表と、「板門店宣言」の成果の前に立ち後れ、完全に行き詰まった。
 中国抑え込みが主要戦略である米国は、自国に届かない核やミサイルであれば「容認」する可能性さえある。そうなれば、日本の売国勢力が期待する米国の「核の傘」など気休めにもならない。米国にとって、拉致問題の解決も大きな関心事ではない。
 一方で、米国は日本に大軍拡を要求(米国製武器の大量購入)し、核武装さえ容認する可能性さえある。
 対米従属下での軍事大国化の道か、平和で自主の道か、日本には、二つの道の争いが本格的に問われる。
 日朝の即時・無条件の国交正常化を要求し、対米追随の安倍政権を打ち倒して、独立・自主の政権にとって替える闘いは喫緊の課題となっている。(O) 


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