ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

2017年5月15日号 1面

南北首脳会談などのアジア情勢
急展開に対応できぬ安倍外交

対米従属政治は完全に行き詰まった
独立の政権めざす国民運動を

 安倍政権は「強い日本を、取り戻す」などと粋がり、米国のアジア戦略に追随して中国へのけん制を強化し、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への敵視をあおる「地球儀俯瞰(ふかん)外交」を進めてきた。
 こんにち、この外交・安全保障政策は完全に行き詰まった。
 米国は衰退の巻き返しを急ぎ、「貿易戦争」や中国企業による投資の規制、台湾との関係強化、南シナ海などでの挑発行動など、中国への包囲と対抗を強化している。その狙いは、中国が自らの世界支配を脅かす大国として登場することを阻止することである。
 米中対峙(たいじ)と朝鮮半島情勢の劇的展開で、東アジアの政治状況は流動化し始めている。
 日本への通商要求も激しい。トランプ米大統領は「(安倍政権が)米国をだませたとほくそ笑んだ日はもう終わり」とまで言い、日本にも鉄鋼・アルミニウムでの追加関税を課した。
 安倍政権はトランプ政権にこびを売り、大統領就任前から「祝い」に駆けつけ、ゴルフに打ち興じた。四月中旬の日米首脳会談でも、安倍首相はトランプ大統領にすがり付いたが、鉄鋼などでの制裁措置は解除されず、さらなる対日干渉の枠組みとして「新通商協議」の設置で合意させられた。農産物や自動車が標的になり、いちだんの対米譲歩を求められることは確実である。安倍首相は、米国製の高額軍需品の購入拡大も約束している。
 第二次世界大戦後、わが国は農林業、繊維産業を手始めに、米国から繰り返し市場開放を要求されてきた。一九八〇年代末からの日米構造協議では、十年で六百三十兆円という膨大な公共事業を約束させられた。九〇年代の「年次改革要望書」では、わが国の経済構造がやり玉に挙げられ、中小企業、地方の地場産業、国民が犠牲にされた。歴代政権は独立の基礎である食料やエネルギーの自給も放棄した。
 安倍政権は、こうした屈辱的な対米従属外交を継続・深化させた。日米の「揺るぎない絆」の実態がこれである。

「手直し」もままならず
 財界をはじめとする支配層は、日米関係への不安に駆られている。
 安倍政権は憲法改悪、空母や「敵基地攻撃能力」の保持など、対米従属下での軍事大国化を進めている。核武装の検討も進むだろう。他方、日中韓首脳会談の開催による対アジア関係の改善や「独自性」を装った中東外交など、対米従属外交の「手直し」も進め始めた。
 その日中韓首脳会談、さらに日中、日韓首脳会談では、実務レベルの合意が進んで「関係改善」がアピールされた。
 だが、朝鮮の「不可逆的な核放棄」へ「圧力をかけ続ける」という日本と、対話と「非核化」を並行させるべきとする朝鮮の意見に理解を示す中韓との違いは明白である。
 「米国頼み」の安倍政権は、中韓から朝鮮との直接対話を促されるありさまだ。
 安倍政権の孤立と立ち後れはますます鮮明である。
 戦後七十数年間も米国に縛られ、自国を自らの力で運営する気概さえ失った支配層の主流に、自主的な国の進路など実現できない。

窮地の安倍政権を倒せ
 行き詰まっているのは、対米追随の外交政策だけではない。アベノミクスによる「日銀依存」の金融・経済政策はバブルそのもので、限界に達しつつある。二〇年の東京五輪を前に、政府の累積債務もますます深刻化し、再度の危機が世界とわが国を襲った際、日本政府がとり得る対応策はきわめて限られている。
 森友・加計問題、官僚の相次ぐスキャンダルなど、政府・与党の腐敗と制度疲労も深刻化している。
 国民諸階層の安倍政権への不満と批判は高まり、政権支持率は急低下している。九月の総裁選挙を前に、自民党内も流動化してきた。
 それでも安倍政権は続いている。議会内野党が安倍政権に対する対抗軸を立てて闘えていないことと、労働運動、連合中央が闘わず、安倍政権の社会的支柱になっているからである。
 マスコミの一部からさえ「アジア外交の見直し」が主張されている。国の大方向で政権と闘えず、野党といえるのか。
 安倍政権を倒し、歴代対米従属政治を清算すべきときである。労働運動は国民運動の中心勢力として、独立・自主の政権を樹立することをめざして奮闘しなければならない。  (K)


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2018