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2017年12月5日号 2面・解説

総選挙で惨敗の共産党

 「共闘」と「躍進」のジレンマは深刻

  共産党は十二月二、三日、第三回中央委員会総会(三中総)を開いた。十月に行われた総選挙で、共産党は十二議席(解散時二十一議席)と惨敗した。厳しい総括が求められるはずだが、志位執行部はまたもデタラメな「総括」を行っている。共産党の選挙総括を批判するには、本来、かれらの情勢認識から政策、選挙戦術に至るまで、全面的な批判が必要である。紙幅の関係で部分的なものにとどまらざるを得ないが、闘う陣営に混乱を持ち込む共産党への批判はますます重要となっている。


 共産党が総選挙で得た得票は約四百四十万票(比例代表)、相対得票率は七・九%であった。前回(二〇一四年)総選挙で得た約六百六万票から百六十万余票も減らし、議席でも野党でもっとも減らしている。
 志位委員長は、この結果は「比例の伸び悩みが敗因」とし、「党への支持を広げる取り組み」を強化するとした。さらに、前回総選挙での躍進(八議席↓二十一議席)は「他に入れるところがない」との「消極的支持だった」と「反省」してみせてもいる。


目標の半分という惨敗
 三中総ではほとんど言及されなかったが、共産党は、一七年一月に開いた第二十七回党大会で、次のように決議していた。
 今回の総選挙の課題は、「二〇一三年参院選に始まり、二〇一四年総選挙、二〇一五年統一地方選、二〇一六年参院選と続いている日本共産党の『第三の躍進』を大きく発展させることである」。
 そのため、選挙では比例代表で「八百五十万票、一五%以上」を目標とする。全国十一のすべての比例ブロックで議席増を実現し、比例代表で第三党をめざす。比例だけでなく、「野党共闘」で小選挙区での「必勝区」を「攻勢的に設定」し、議席の大幅増に挑戦する。
 この結果が、先に述べたようなものである。
 比例代表では得票数も得票率も目標の半分強にとどまり、「第三党」どころか、立憲民主党や希望の党の後塵を拝する第五党であった。
 まさに惨敗である。
 志位委員長は、街頭演説などで「立憲民主党が躍進し、共闘勢力全体としては議席を伸ばした。大きな喜びだ」などと述べているが、後退でがっかりしている党員・支持者には説得力はないだろう。
 志位委員長は、「野党共闘が安倍政権に代わる受け皿だと伝わった選挙区では、比例代表で得票を伸ばしている」と強弁しているが、具体的にあげたのは新潟三区・四区のみであった。だが、共産党が小選挙区で候補者を擁立したのは二百六選挙区で、擁立しなかった選挙区は、事前に決まっていたものを含めて八十一選挙区もあった(前回、擁立しなかった選挙区は六選挙区だけ)。比例代表の得票は、全都道府県で減らしたというのが実態である。わずか二つの選挙区の結果をもとに「得票を伸ばしている」と言っても、これまた説得力はない。

深刻なジレンマに直面
 志位委員長の「党の力不足」という「総括」も、まったく具体性はない。
 共産党は、「(野党)共闘破壊の突然の逆流と分断」、すなわち、民進党の希望の党への「合流」決定と分裂で、共産党が当初、描いていた民進党との全国的な選挙協力が破綻したことを「理由」にしたいのだろう。実際、総選挙直後の常任幹部会声明では、自公与党の勝利は「希望の党という自民党の新しい補完勢力が、野党共闘に分断と逆流をもちこんだ結果」などと述べていた。
 見苦しい言い訳である。仮に民進党が分裂しなかったとしても、「共闘」に消極的な前原執行部(当時)の下、共産党との間で選挙協力が成立していた保証はない。むしろ、希望の党と立憲民主党に分裂した結果、共産党は、希望の党が擁立した選挙区に「堂々と」候補者を立てることができた。これがなければ、共産党の小選挙区候補者はさらに少なくなっていた可能性が高い。そうなれば、現在の小選挙区比例代表並立制という制度上、比例代表の得票はさらに減っていた可能性さえある。
 共産党は三中総で、一九年夏の参議院選挙で「自公とその補完勢力を少数に追い込む」ためとして、「全国三十二の一人区で共闘を実現し勝利をめざす」とした。ただし、「本来選挙協力は相互的なもの」とし、他の野党に共通公約や相互推薦を要求し、「(候補者を下ろす)一方的な対応は行わない」とした。
 今回の総選挙の結果から見ても、「共闘」すれば共産党への支持は伸びない。さりとて「共闘」の旗を降ろせば、共産党への批判は避けられない。党勢後退の下、独自候補の擁立はますます困難である。
 だが、衆議院の野党第一党で、今のところ一五%前後の支持率がある立憲民主党が、参議院選で共産党に「一方的な対応」を望まない保証はない。選挙中でさえ、枝野・立憲民主党代表は、共産党が言う「共闘」を否定はしなかったが、自ら口にすることはほとんどなかった。
 共産党が「一方的な対応」を拒否して見せたのは、共産党が直面する深刻なジレンマを示している。

警戒すべき連合切り取り策
 警戒すべきは、共産党がこのジレンマを打開するために、連合傘下の労働組合に触手を伸ばそうとしていることである。
 志位委員長は、会議後の記者会見で「自治労、日教組傘下の労働組合との協力、共闘が広がった」「ナショナルセンターの違いを超えて、日本の政治を良くしていく大同団結が必要ではないか」などとも述べている。安倍政権への対応や政党支持問題で分岐が深まる連合に「左」から接近し、切り取ろうという意図が見え見えである。
 議会主義に転落した共産党が、労働運動に対してどのような役割を果たしてきたか、今一度、思い起こす必要がある。
 一九七〇年代、労働運動がストライキに立ち上がった際、共産党は「スト万能論批判」などをぶち上げて敵対した。日教組に対する「教師聖職者」論、「公務員=全体の奉仕者」論もあった。八〇年代に労働戦線の統一が問題となった際には、共産党は「連合は労働組合ではない」などと言い、当時の総評内外に「統一労組懇」を組織し、戦線を分裂させた。
 これらは、選挙での共産党の票ほしさのため、徹頭徹尾の党利党略である。
 リーマン・ショック後の世界の危機は深まり、資本主義は末期症状を呈している。帝国主義者は現状にとどまれず、労働者階級・人民・中小国に襲いかかっている。トランプ政権による世界支配のための「巻き返し策」は、世界を「地獄の道連れ」にしようとしている。
 歴史的変動期、歴代政権の対米追随政治は限界である。安倍政権が振りまく「ニセの独立」を打ち破って、独立・自主の政権の樹立しなければならない。
 この方向は、選挙だけでは実現できない。労働者を中心とする広範な戦線、強力な国民運動こそが、前進を確かなものとできる。
 共産党の振りまく議会主義は、ますます展望がないものとなっている。
 労働者・労働組合は、共産党に期待せず、自らの力に依拠して闘わなければならない。激動の情勢は、そうした闘いを喫緊の課題としている。    (O)


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