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2016年9月25日号 1面〜2面・社説

朝鮮による5回目の核実験について

米帝国主義、安倍政権の
朝鮮敵視策動と闘おう

 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)は九月九日、今年二回目の核実験を行った。
 オバマ米大統領は朝鮮を「地域の安全保障と世界の平和・安定に深刻な脅威」と決めつけ、「核保有国になることを認めない」と非難する一方、軍事的圧力を強めている。米空軍は十三日、B1戦略爆撃機二機をグアムから派遣、韓国のソウル上空を低空飛行させ、在韓米軍に配備した終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の発射デモンストレーションを行った。さらに朝鮮指導部の「斬首作戦」を織り込んだ米韓合同軍事演習を十月にも強行しようとしている。
 米国は、朝鮮核開発問題を好機に中国へのけん制をいちだんと強めようとしている。
 安倍首相は米国のお先棒を担ぎ、国際的に策動している。
 国内ではマスコミを使った異常なキャンペーンが繰り広げられるなか、衆議院外務委員会は十四日、自公与党と共産党を含む野党が全会一致で、朝鮮に抗議する決議を採択した。
 これに対して朝鮮は、「米国による核戦争の脅威に対する自衛のため、核戦力を質量ともに増強する政策をとり続ける」(李外相)と、闘う意思を表明した。
 東アジアの緊張を高め、朝鮮を核武装に追いやり、危機を深刻化させているのは、米帝国主義とその追随者である。
 われわれは、朝鮮敵視の大合唱には加わらない。
 朝鮮の核が「危険」というのであれば、唯一の解決策は、米国と追随する日本や韓国による朝鮮敵視政策をやめさせ、平和条約で休戦状態に過ぎない朝鮮戦争を終わらせ、朝鮮の体制存続を保証し、国交正常化を実現することである。
 平和を願う人びとは、今こそ奮闘しなくてはならない。

米国こそ朝鮮半島の危機の根源
 朝鮮半島の戦後史を振り返れば、危機の根源は米帝国主義とその追随者の朝鮮敵視政策にあることは明白である。
 民間人を含め四百万人以上が犠牲となった朝鮮戦争は、一九五三年以来「休戦状態」にあり、いまだ終わっていない。米国は一貫して朝鮮を正当な国家として認めず、また停戦後も韓国に米軍を駐留させて、核兵器を配備し、圧力を加え、さまざまな口実を設けて敵視・包囲し、体制転覆を策動してきた。
 朝鮮は一貫して米国の核包囲の下に置かれた。
 朝鮮が米国に求めているのは、「平和協定」を締結して戦争状態を終わらせることである。戦争の終結が、自国の存立と民族の安全保障の前提だからである。
 だが、米国は九三年の「第一次核危機」、二〇〇二年のブッシュ政権による「悪の枢軸」規定と先制核攻撃の言及など、朝鮮を追い込み、幾度も戦争の縁に立たせた。一九九四年に合意された朝鮮への軽水炉支援の約束も破った。
 〇三年には、中国やロシアを巻き込んだ「六者協議」が始まった。米国は協議を通じて、朝鮮の核放棄と体制転覆を策動した。〇五年の合意では「協議の目標」の一つとして在韓米軍を含む「朝鮮半島の検証可能な非核化」が明記された。だが、米日は当初から画策し、次第に朝鮮だけの「核放棄」へとすり替えた。
 〇六年の朝鮮による最初の核実験は、米国の譲歩を引き出した。〇七年には朝鮮が核施設を無力化することと引き替えに、米国は「テロ支援国」認定と金融制裁を解除した。
 だが、オバマ政権はその誕生以来、「戦略的忍耐」の名の下、朝鮮が核・ミサイル開発を放棄し、非核化を実現することなしに交渉しないとする強硬政策に転じた。
 この下で、今年一月の朝鮮の核実験を口実に、国連安保理を主導して、「航空燃料の朝鮮への輸出禁止」「朝鮮からの鉱物の輸入制限」など、きわめて厳しい制裁決議を採択・実施した。
 三月には史上空前の三十万人以上を動員する米韓合同演習「キー・リゾルブ」「フォールイーグル」が強行された。ここでは、朝鮮が「ミサイル発射」の兆候を見せただけで三十分以内に先制攻撃する作戦のほか、金党委員長ら政府首脳の殺害を含む「斬首作戦」までもが演習されている。THAADも韓国に今年七月に実戦配備が決まった。地中貫通爆弾(バンカーバスター)を搭載できるB1戦略爆撃機の飛行は、米国が「斬首作戦」を実行する脅しである。
 米国にその気があれば、いつでも朝鮮危機を解決することができた。米国が敵視政策を撤回し、米朝平和協定締結の話し合いのテーブルにつくことを承諾すれば、朝鮮サイドにはいつでもそれに応じる用意があるし、それは繰り返し表明されてきた。それをせず敵視を繰り返し、「体制転覆」を狙っている。しかし、朝鮮は困難を乗り越えて「核開発と経済建設」という戦略的な路線に沿って自国の発展を追求している。米国の対朝鮮政策の失敗にほかならない。
 冷戦崩壊後、一九九五年の「東アジア戦略」にはっきりと出ているように、米国は中国を戦略的ライバルと位置づけ、再び米国に挑戦する実力を持った超大国に中国が成長しないように画策してきた。その一つとして、朝鮮半島に危機や揉(も)め事をつくり出し、不安定化させることで中国に荷物を背負わせ、時には圧迫を加えながら米国のコントロール下におこうと画策した。同時に、中国、朝鮮を「潜在的な脅威」と宣伝し、アジアで米軍のプレゼンス(十万人体制)の必要性の口実とした。
 米国のアジア支配を維持するために、戦略的なライバルである中国をけん制するためにも朝鮮半島に問題があり、いつも揉めていることが米国にとっては必要であった。
 米帝国主義は力の限界を意識して、二〇一〇年代初頭に「アジア・リバランス戦略」を策定し、米国の資源をアジアに集中配備し、中国の台頭に備えた。ここ数年は、中国の海洋進出を阻止し、力による現状変更を認めず、また「国際法の順守」との口実で中国をけん制している。南シナ海問題を大騒ぎして国際的な政治問題にし、紛争が絶えなくなったのは、米国のアジアリバランス戦略以降である。在韓米軍へのTHAAD配備は「朝鮮向け」といわれているが、中国、ロシアに対する備えであることは明らかである。また、日米韓連携を強化し、中国への包囲網を強化している。オーストラリア、フィリピンなどとの連携も強めている。
 しかし、米国は直近の二十カ国・地域(G20)サミットや東アジア首脳会議で海洋問題での中国非難決議を盛り込もうと画策したが、失敗した。米国(および日本)の思惑通りにはいっていない。朝鮮への制裁にしても、オバマ大統領自身が「(さらなる制裁は)成功する保障はない」と泣き言を述べるほどである。かれらの瀬戸際政策は、弱さのあらわれでもある。
 オバマ大統領が〇九年に唱えた「核なき世界」は欺まんである。オバマ大統領は「世界に核兵器が存在している限り、米国は核抑止力を維持する」と言っている。米帝国主義が、自ら核兵器を手放すはずはない。その狙いは、米国の核兵器の小型化・軽量化が進んだ(技術革新)ことで、大国の核独占体制を再編・強化することであり、朝鮮のような反米国家が核武装しないよう、国際「世論」も動員して制限を加えようというものである。
 来年一月に発足する米新政権が新しい朝鮮政策、アジア政策を決めることになるが、アジアが、戦争の可能性を含みながらいちだんと「波高し」となることは確実である。

国連舞台に敵視を策動する安倍政権
 先ごろの国連総会は、安倍首相にとって、「闘争の舞台」となった。
 安倍首相は一般討論演説で、核実験を強行した朝鮮の「脅威」を「これまでと異なる次元」と指摘し、制裁の強化を呼びかけた。
 さらに安倍首相は、キューバ、イランとの首脳会談を行い、朝鮮の友好国である両国の取り込みを図った。
 安倍政権は、また米国も、そのカギを制裁に慎重とされる中国にあると見ている。
 米日は、一月の核実験を口実に追加制裁を実施したが、参加しているのはわずか四十七カ国で、米日政府は不満を募らせている。カーター米国防長官は「中国の責任だ」と、その矛先を中国に向けている。中国が朝鮮包囲網に実質的に加わり、「積極的な役割」を果たすように圧力をかけようとしているのである。
 安倍首相は、政権移行期にある米国のお先棒を担ぎ、朝鮮敵視の先兵役を買って出、アジアの緊張を高めている。

中国の対朝鮮政策について
 中国も朝鮮が核兵器を持つことに反対し、国連決議の完全な履行を求めている。同時に、米国が対話に応じて、「停戦協定」を平和協定に切り替えることが必要だと訴えている。米帝国主義や日本のように敵視政策に凝り固まっているわけではない。米日主導の軍事的な脅かしにも懸念を示し、話し合いで解決することを主張している。
 中国は「朝鮮半島の非核化」を必要としているし、朝鮮半島で揉め事が起こらないことを望んでいる。
 しかし、〇六年以降、中国が米国主導の国連安保理での朝鮮制裁決議採択に同調してきたことは帝国主義に利するもので、誤りである。
 朝鮮は、米帝国主義のような大国に存立と国家の安全保障を脅かされ続けて生きなければならないのか。朝鮮労働党機関紙「労働新聞」(九月十二日付)は、「米国の核の脅かしに対処するためにわが国は核保有の道を選択せざるを得なかった」と主張している。これは、完全に正しい言い分である。
 朝鮮は核保有国の道を踏み出したことで、帝国主義に侮られる存在から脱却する、一つの手段を得たのである。
 中国も毛沢東時代に、ソ連の反対を押し切って核実験を行った。中国がこんにち、世界で政治的経済的な大国として発展したのもこのときの決断が大きく貢献している。このような独立・自主の経験を持つ中国が、なぜ朝鮮の重大な決断を評価できないのか。中国に許されたことが、朝鮮には許されないとでもいうのであろうか。
 米国は世界支配のため、他の核保有国を巻き込んで核独占体制を構築してきた。中国は、核保有国として、これに協力していた。「大国特権」の共有とでもいうべきだろう。しかし、米帝国主義はその中国も、自国の支配を脅かすことは許さない。
 天下動乱とはいえ、帝国主義の支配する時代である。米国は落ち目になったがゆえに、覇権的な地位を維持するために画策している。こうした激動の世界で中国は米国と闘うときがいずれ訪れるであろう。米帝国主義は黙って引き下がらないからだ。そのとき、隣国・朝鮮が米帝国主義の圧迫に抗して闘っていることは、大事な政治的資産ではないのか。
 この世から核兵器をなくしていくには大国主導の約束ではなく、また小国を抑えるのではなく、帝国主義との闘争を発展させることと結び付けて追求すべきなのである。

朝鮮非難の先兵務める共産党
 日本でも、議会内野党、連合中央、御用学者などが、安倍政権による「朝鮮非難の大合唱」に加わっている。マスコミは国民を洗脳することに熱中している。
 わが党はこの大合唱に加担するものではない。わが党はこうした朝鮮非難の大合唱を打ち破り、現実の階級闘争、政治闘争を前進させなければならない。
 より警戒心をもって闘争すべきは、闘う勢力に一定の影響力を持つ日本共産党である。かれらは、「革新」政党として、安倍政権に届かないところに支配層のイデオロギーを届けている。
 志位委員長談話(九月九日付)、第六回中央委員会総会志位委員長の幹部会報告(二十二日付)では、朝鮮の核実験を「暴挙」とし、「糾弾」するという。
 共産党の言い分の第一は朝鮮が決議違反をしているということだ。かれらは「平壌宣言違反」と朝鮮を非難するが、宣言を履行しなかった主な責任は、対米追随の日本の歴代政権である。日本がいまだに国交正常化交渉に応じていないのは、明らかな宣言違反である。
 朝鮮が一方的に六者協議の共同声明(〇五年九月)に違反したという言い分は、事実に反する。米国が朝鮮の「人権問題」など無理難題を持ち出し、また金融制裁を行ったりして共同声明の確認事項を破ったのである。
 また、ブッシュ大統領は朝鮮を「悪の枢軸」と決め付けて重油提供を一方的に停止したことで、朝鮮は核不拡散条約(NPT)体制からの離脱を余儀なくされた。
 このように、共産党はまったく具体的分析を行っていない。
 また、共産党は「対話による解決」や六者協議による「話し合い」を提案するが、いったい対話を拒んでいるのは誰なのか。事実は、米国である。
 朝鮮を六者協議のテーブルに「引き出す」ために「制裁措置の厳格な実施」を含めて政治的外交的努力を払うというのは、米日両政府の手先そのものの見解である。
 共産党は朝鮮に核放棄を迫るが、「イラクやリビアのように」滅ばされることはないのか。共産党が、朝鮮の安全と存立を保障できるはずもないではないか。また、米国など核大国が「核兵器のない世界」への具体的な行動に取り組むことができると本当に思っているのか。米国を頂点とする帝国主義と闘うことなくして、「核なき世界」は実現できない。
 共産党は朝鮮非難の大合唱の先兵役を務め、わが国労働者など闘う勢力に、帝国主義と闘う意思を放棄させる犯罪的見解を振りまいている。 

即時無条件の国交正常化を
 戦後のわが国歴代保守政権は、戦前の朝鮮への侵略と植民地支配を清算せず、むしろ朝鮮戦争では米国の「後方基地」を担った。以降、米国による朝鮮包囲と民族分断に加担してきた。日朝関係を一定程度前進させた〇二年の平壌宣言すらその後反故(ほご)にし、拉致問題を口実として敵視と排外主義を激化させている。
 とくに安倍政権は、「強い日本を取り戻す」などと粋がり、日米安保同盟の強化の下で中国に対峙(たいじ)しながら内外政治を行っている。
 安倍外交のもう一つの狙いは、短期的には次期総選挙に向けて、有利な環境をつくるということである。総選挙に打ち勝って政治基盤の強化を図り、念願である憲法改悪を有利に進めようとしている。中長期的には、対米従属の下での日本の政治・軍事大国化の実現である。
 安倍政権の支持率は国民生活の困窮化と所得格差の拡大にもかかわらず、比較的高い。議会内野党が安倍に対抗するには無力で、政策的な対抗軸を出して闘うことができず、国民の信頼を得ることができていないからである。その責任はとりわけ民進党にある。
 さらに、二十八兆円の経済対策がある。
 もう一つは、安倍政権が中国の海洋進出、朝鮮問題、北方領土返還をめざす対ロ外交の展開など国の進路あるいは民族的課題を積極的に取り上げて、「解決」するかのようにみせかけていることである。
 その好例は、今年五月のオバマ広島訪問である。日本人の核への恐怖の感情に巧みに訴え、またマスコミの翼賛報道もあり、安倍政権の支持率を高めることに役立った。
 議会内の野党が安倍政権に対抗して政治的に勝利しようとするのならば、護憲などの国民的な政治課題や生活問題を取り上げて闘うだけでなく、民族的な課題を取り上げて支配層の欺まんを暴露して指導権を争って闘うことが必要である。
 安倍政権は世界のすう勢に背を向け、米国に追随して朝鮮敵視の先兵となっている。昨年成立した、集団的自衛権の行使に伴う安全保障法制により、わが国は自動的に、米国の戦争に引きずり込まれる。
 わが国をアジアでさらに孤立させ、戦争の縁に立たせる亡国の道を許してはならない。
 安保法制に反対する政党、労働組合、諸団体はもちろん、わが国の独立と平和を願うすべての人びとが立ち上がり、安倍政権の進める亡国の道に反対して闘わなければならない。戦争を招きかねない朝鮮への制裁強化に反対し、日朝両国間の平和と共栄を保障する、即時無条件の国交正常化を要求しなければならない。
 保守層のなかにも、安倍政権の「瀬戸際政策」に批判と懸念を持つ声が広がっている。
 だが、議会内野党は、米日両政府とほとんど同じ立場に立っている。
 共産党についてはすでに触れた。
 連合中央も同様に、「決議の完全なる履行」を求めている(逢見事務局長談話)。連合の見解はオバマ政権、米帝国主義への幻想で満ちており、対米従属の安倍政権の支柱としての役割を演じている。
 労働者階級はこうした帝国主義のイデオロギー攻撃やそれを補完する共産党などの見解を暴露し、朝鮮との即時無条件の国交正常化を求めて闘わなければならない。独立・自主の新たな国の進路を切り開く壮大な国民運動の形成・発展をめざして闘おう。


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