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2016年3月15日号 2面・社説

米帝国主義による朝鮮圧迫
強化で緊張する 北東アジア


アジアの平和をめざし、 朝鮮との
即時・無条件の国交正常化を

 米帝国主義は三月七日、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の領土・領海の目と鼻の先で、米韓合同演習を開始した。空前の規模での、軍事的威嚇・挑発である。
 これに先立つ二日、国連安全保障理事会は、米国が主導し、四度目の核実験と「人工衛星」打ち上げを口実に、朝鮮に対する制裁決議を採択した。決議は、朝鮮に出入りする貨物の検査など、従来からの制裁措置に輪を掛けた厳しいものである。
 大軍事演習と制裁決議は、朝鮮の主権を著しく侵害し、包囲・圧迫を強化し、体制転覆策動を強めるものである。
 世界中に紛争の種をばらまいてきた米国は、今また、北東アジア情勢を著しく緊張させている。朝鮮が民族の自立と尊厳をかけ、激しく抵抗しているのは当然である。
 対米従属の安倍政権は、国連決議を主導するなどで米戦略の先兵役を担っている。これはわが国をアジア近隣諸国・人民と対立させ、孤立に導く亡国の道である。自公与党はもちろん、野党各党も、衆参両院での朝鮮非難決議に賛成するなど、米日両政府の策動に追随している。
 偶発的事態を引き金とした戦争さえ、想定される事態である。
 米国とその追随者による、危険な策動を許してはならない。
 打開の道は、朝鮮との即時・無条件の国交正常化である。米戦略から脱却し、独立・自主の政権を樹立しなければならない。

朝鮮への軍事的政治的威嚇の強化
 米韓合同演習「キー・リゾルブ」「フォールイーグル」は、史上空前の三十万人以上を動員し、四月末まで継続して、朝鮮を軍事的に圧迫し続けている。朝鮮軍基地への攻撃だけでなく、首都平壌の攻略と金第一書記ら政府首脳の殺害を含む「五〇一五作戦計画」も演習される。朝鮮が「ミサイル発射」の兆候を見せただけで、三十分以内に先制攻撃し、「一気に武力統一する」という挑発的なオプションまで用意されているという。
 朝鮮は、「われわれの政治・経済・文化のすべての領域に対する前代未聞の圧殺攻勢」(国防委員会)として強く反発している。
 国連安保理による朝鮮への追加制裁決議は、「国連の歴史で前例がない」(韓国外務省)ほどに厳しいものである。
 朝鮮に出入りするすべての貨物の検査が義務化され、朝鮮からの金やレアアースをはじめ、石炭、鉄鉱石、鉄などの鉱物資源の輸入が一部を除き禁じられた。朝鮮所属機は、民間を除き航空機燃料の供給さえ許されず、小型火器を含むすべての武器輸出も禁じられた。核開発などに「関与する」と認定された、朝鮮政府や関連団体の資産が凍結される。
 各国による独自制裁もある。米国は朝鮮最高指導部の五組織、十二個人を制裁対象とし、安倍政権は朝鮮籍者の入国の原則禁止や送金規制などを打ち出した。韓国は南北交流事業の象徴であった開城工業団地の操業を中断し、高高度防衛ミサイル(THAAD)の在韓米軍への配備も積極姿勢に転じた。欧州連合(EU)も制裁措置を検討している。
 朝鮮に対する「戦時」にも等しい包囲網がつくられ、朝鮮の経済活動は制約・破壊され、独立国としての主権は甚だしく侵害されることになる。朝鮮の国民生活も大打撃を受ける。決議には、「国民の生活に影響が及ばない範囲で」などとあるが、欺まんである。
 軍事演習と決議は、米国が、朝鮮への軍事攻撃と体制転覆さえ想定した準備を進めていることを示している。現に、シャーマン前国務次官は、米日韓が「朝鮮崩壊の際のプランについて、静かに対話を重ねていく」と公言している。
 偶発的衝突の可能性を含め、朝鮮半島はきわめて緊張した情勢下にある


朝鮮敵視続ける米帝国主義
 誰がこの緊張をつくり出しているのか。その責任はあげて、米帝国主義とわが国安倍政権などの追随者にある。この肝心な点で、野党各党や連合中央は、米日両政府とほとんど同じ立場に立っている。
 朝鮮半島では、朝鮮戦争は一九五三年以来、「休戦状態」にすぎない。米国は一貫して分断国家の一方である朝鮮を正当な国家として認めず、その瓦解を策動し、「人権」「核」などさまざまな口実を設けて敵視・包囲してきた。
 一九九三年の「第一次核危機」は、戦争の瀬戸際までいった。二〇〇二年には、ブッシュ政権が朝鮮を「悪の枢軸」などと決めつけ、「第一次核危機」終結の際の合意である、朝鮮への軽水炉支援の約束を破り、先制核攻撃まで公言した。
 わが国政府は、戦前の朝鮮への植民地支配を一貫して清算せず、むしろ朝鮮戦争の「後方基地」を担ったことを手始めに、米国の朝鮮包囲、分断に追随してきた。日朝関係を一定前進させた〇二年の平壌宣言すら反故(ほご)にし、拉致問題を口実として敵視と排外主義を激化させた。
 韓国も、米国の支持の下で軍事独裁政権が続き、朝鮮敵視政策が続いた。だが、人民の闘いで一定の民主化が実現されるとともに、「太陽政策」の下で〇〇年の南北共同宣言など、統一に向けた自主的気運が高まった。
 〇三年には、中国やロシアを巻き込んで、六者協議が始まった。米国はこの協議で、朝鮮の核放棄と体制転覆を狙った。〇五年に「協議の目標」の一つとしてうたわれ、それゆえに朝鮮も協議に応じた、在韓米軍を含む「朝鮮半島の検証可能な非核化」は、朝鮮だけの「核放棄」にすり替えられた。
 朝鮮半島の危機をつくりだしてきたのが、米帝国主義とその追随者であることは明らかである。

朝鮮の願いは自国の安全
 朝鮮が一貫して米国に対して求めているのは、朝鮮戦争の停戦協定を「平和協定」に替えることである。戦争状態を終わらせることが、自国の存立と民族の安全保障のために不可欠だからである。
 朝鮮政府と人民が、あくまでも国家存立と体制保障を認めない米国に対し自国の存立のための闘うのは当然である。冷戦体制終えん後、ソ連や中国の支援を失った朝鮮が、独自に核兵器やミサイルを開発して核超大国・米国に備えるのは、生きていく上での「選択」の一つで、至極当然のことである。
 〇六年、朝鮮による初めての核実験後、米国は対応を余儀なくされ、一定の譲歩を行った。〇七年には朝鮮が核施設を無力化することと引き替えに、米国は「テロ支援国」認定と金融制裁を解除するなど、緊張が一時的に緩和した。
 朝鮮の核武装は、米国の譲歩を引き出した。これが現実である。
 米国は、世界でもっとも核兵器を保有している。安保理常任理事国はすべて核保有国である。米国は、インド、パキスタン、イスラエルの核保有国を認めている。朝鮮だけが核保有を許されないという道理はない。
 また、朝鮮は国際法にのっとった手続きで「人工衛星」を打ち上げた。米国でさえ、一月末の「人工衛星」が「地球を回る軌道に投入された」と認めている。ロケット発射は米国やわが国も何度も行っており、朝鮮のみが批判されるいわれはない。中国までが国連決議うんぬんを持ち出しているが、独立国の権利を国連が制裁する権限はない。
 朝鮮は一月の核実験直前の昨年後半にも、米国に対し、平和協定を結ぶための交渉を呼びかけている。だが、米国はまたも朝鮮だけの「非核化」を持ち出し、これを拒絶した。しかも米国は、核兵器を搭載した戦略爆撃機B52を韓国上空で低空飛行させて朝鮮をどう喝し、平和協定を一顧だにしないという意志を示したのである。
 誰が平和を求めているか、誰が戦争を挑発しているか、このことだけでも明瞭である。

米国との闘いこそ国際戦線の課題
 米国による中小国・人民への敵視と攻撃は、朝鮮に対してだけではない。日本共産党などの「帝国主義がなくなった」かのような見解は、米国を美化する反動的な見解である。
 こんにち、米国はウクライナに陸軍部隊まで投入してロシアと敵対し、ロシアと欧州諸国、とくにドイツとの分断を図ろうと画策している。シリア内戦も、米国がアサド政権を倒すべく反政府勢力への軍事支援を行っているがために泥沼化し、大量の難民が発生している。
 世界の紛争や争奪戦で、米帝国主義が関わっていないものはない。
 イラクに対しては、核など「大量破壊兵器」疑惑をでっち上げ、一方的に戦争を仕掛け、フセイン大統領を追い詰めて殺害し、「安定」していた国家を崩壊させた。その後のイラク、中東の混乱は周知のことである。こうした歴史を眼前にした朝鮮人民と政府が、核兵器やミサイルによる防衛を強化して、国家と民族を守ろうとするのは当然すぎることである。誰が、反対できようか。
 リーマン・ショック後、とくに最近、米国は衰退を速めている。国内経済も深刻で、階級矛盾は激化し、政治は不安定化している。世界支配を維持するために、地域の諸国を対立させて支配を維持する「バランス・オブ・パワー戦略」で、アジアに紛争の火種を撒き、朝鮮半島でも、南シナ海でも、また、中国と日本を争わせて支配を維持し、かつアジア市場を収奪しようとしている。
 米帝国主義は、自ら進んで覇権的地位から降りることはない。歴史上、「理性的な」帝国主義者など存在しない。
 わが国は、朝鮮を非難する合唱に加わってはならない。核を含む圧倒的な軍事力で中小国を脅す米帝国主義とその追随国の側に立つのか、あるいは国の独立を守るために奮闘する国の側に立つのか、われわれの態度が問われている。
 中国の態度も問われている。
 中国自身、一九六四年、米国の包囲・圧殺策動を打ち破るため、当時のソ連の反対を押し切って核武装に踏み切った。
 そうやって、国の存立を自力で守ったからこそ、こんにちの中国があるのではないか。
 その中国が、今、朝鮮が同じように武装を強化することに、どうしてあいまいな態度をとるのか。どうして、かつてのソ連のように反対するのか。
 こんにち、米中は深い依存関係にあるが、米国は中国による南シナ海での人工島建設を騒いで艦隊を派遣したり、人民元改革要求などを強めている。環太平洋経済連携協定(TPP)など、アジアの一部を巻き込んだ、中国に対するけん制網もある。朝鮮半島の問題は、隣国の中国をけん制するための口実でもある。
 仮に米国が朝鮮を崩壊させれば、中国は、国境を隔てて直接に在韓米軍と対峙(たいじ)せざるを得なくなる。この事態は、中国にとっては「悪夢」であろう。
 米帝国主義は、譲歩をすれば、さらに踏み込んでくる。あいまいな態度は、結果的に帝国主義への追随を余儀なくされ、「中華の復興」どころでなくなる。
 帝国主義に蹂躙(じゅうりん)され続けてきた世界中の国々は、帝国主義の支配をはねのけることを望んでいる。この闘いは、大きく前進もしている。
 中国は、米帝国主義と闘う戦略的立場に一貫して立つべきである。
 労働者階級の国際的任務は、中小国・人民と連帯して、帝国主義の頭目である米帝国主義と闘うことである。帝国主義国ではない中国やロシアはもちろん、米国への追随をよしとしない帝国主義国の一部も、この戦線の一翼に加わり得る。
 広範な国際的戦線で、米帝国主義と闘わなければならない。

朝鮮と正常化、独立・自主の政権を
 安倍政権は米戦略を積極的に支え、国連決議を主導した。朝鮮総聯を標的とした独自制裁のほか、「不正輸出」などを理由とする在日朝鮮・韓国人への政治弾圧も続けている。
 「地球儀俯瞰(ふかん)外交」、集団的自衛権行使のための安保法制、沖縄県名護市辺野古への新基地建設、軍備増強、憲法改悪策動などは、朝鮮への敵視政策と一体のものである。「第一次核危機」の際には不十分だった、米軍支援のための法整備も、ほとんど行われている。
 安倍政権は「強い日本」などと粋がるが、結局は、対米従属を一歩も出ない。
 安倍政権の進める、米国の世界戦略を支えてアジアで孤立し、わが国を対朝鮮・対中国の矢面に立たせる道か、朝鮮を含むアジア諸国と平和的に共存・共栄する新たな国の進路か、「二つの路線」が争われている。
 わが国政府は直ちに朝鮮敵視政策をやめ、無条件で国交正常化すべきである。朝鮮を「危険」「独裁」などと非難するのではなく、かれらの言い分を聞き、かれらが独立国として生きられるよう、可能な支援を行うべきである。
 確かな道は、安倍政権を打ち倒し、独立・自主の国の政権を樹立することである。
 安倍政権の内外政治に対する怒りは高まり、保守層の中にも不安や危ぐが広がっている。国民諸階層は、広い戦線をつくって闘わなければならない。
 国民運動で中心的役割を果たすのは、本来、労働者階級の任務である。先進的労働者は、労働運動が国の進路の課題を自らの課題として闘うよう、奮闘しなければならない。


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