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2016年1月1日号 1面〜5面

新春インタビュー

労働党中央委員会総政治部責任者
秋山 秀男同志に聞く

  「労働新聞」編集部は、新年に際し、労働党中央委員会総政治部責任者の秋山秀男同志にインタビューを行った。秋山同志は、昨一年の党の闘いをはじめ、新たな危機に突入した国際情勢、安倍政権の性格と展望、本年の党の闘いへの決意など、縦横に語った。以下、一部を掲載する。(聞き手・大嶋和広編集長)


大嶋 明けましておめでとうございます。

秋山 おめでとうございます。新年に際し、全国の同志、友人、「労働新聞」読者の皆さんに、ごあいさつ申し上げます。

大嶋 昨年に続いて、秋山同志に、昨年の党の闘い、内外情勢、そして今年の抱負という順序で、お話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

秋山 わが党は一昨年末、第十一回中央委員会総会(十一中総)を開き、昨年はその決定に基づいて活動してきました。昨年末には十二中総を開催し、この間の闘いを総括し、激動する内外情勢の特徴や闘い、党建設の課題などについても議論し、決定しました。
 今回のインタビューも、この決定に沿ってお話ししたいと思います。

昨一年、闘いを振り返って

大嶋 まず、昨年を振り返っていただきます。わが党の闘いについて、概括的にお話しください。

秋山 わが党は昨年、現場の同志たちから都府県委員会、中央まで、職場での労働者の暮らしや権利を守る闘い、農業者や中小自営業者の経営の課題、地域経済や国民生活の課題で、また、沖縄連帯や安保法制反対など国の進路の課題を取り上げて闘ってきました。
 全体として、全党はよく奮闘したと思いますし、階級闘争、政治闘争の発展に一定の役割を果たせたと思います。

大嶋 党建設上の成果についてはどうでしょうか。

秋山 党建設面でも、重要な成果がありました。貴重な経験も積みましたが、十一中総がめざした「党建設で新たな状況を切り開く」という点では、十分に成功したとは言えません。

大嶋 いくつかに分けて、紹介して下さい。

・いくつかの県党の前進
秋山 ある県党は、この二年ほどの努力によって党組織が様変わりし、強化されています。
 まず、「指導の行き届かない」同志たちを訪ね、掘り起こしと再結集で成果をあげています。党歴の長い同志が党主催の学習会に参加したし、ある労組で役員を務めていた同志が党の旗開きに参加しました。「労働新聞」の有料購読を約束した同志もいます。
 この影響もあり、現場の同志たちが活性化し、活動を強めています。職場での労働者の暮らしや権利を守る闘い、自治体政治を暴露する闘い、安保法制反対の闘争など、日常的に闘うようになってきました。同志たちは、認識面でも次第に変化しつつあります。ある同志は、大衆集会で「対米従属政治が諸悪の根源」と、党の見解を堂々と述べました。重要な大衆団体の再建・強化にも取り組み、地区組織の建設をめざして、沖縄連帯運動などに取り組んでいます。
 党の組織活動も堅持されています。指導部の強化も進み、県の特徴の把握や県政政策の研究、党指導問題などよく議論され、水準を次第に高めてきています。
 こうしたなかで、この県指導部は、従来の指導部が現状から浮き、同志たちを結果的に信頼していなかったという大きな過ちに気づきました。指導部は、同志たちの多くが労働組合や地域自治会などでがんばっている現実に触れ、また、かれらが党の前進を切に望んでいることを実感することで、「間違っていたのは指導の側である」と痛切に反省しました。結果、主観的に「小さい」と思っていた県組織が、実際には「大きく」なっていることを認識し、自信を深めています。
 そして、指導部だけでなく、現場の主な同志に党オルグに立ち上がることを呼びかけました。党員を増やす点ではまだ成果には至っていませんが、重要な変化で、党指導の改善を進める上でも貴重な経験を積んだと評価できます。

大嶋 ぜひ成果を上げたいですね。その県とは別に、実際に労働組合の活動家を獲得した県党もありますね。

秋山 労働運動に新たな手がかりをつくったという点で重要な成果です。具体的に党への結集を呼びかけたことが大事なのは言うまでもありませんが、地方議員が労働運動に接近して働きかけたこともありますし、同じ地域の工場細胞が主導して闘っている労働争議が良い影響を与えてもいます。沖縄連帯の大衆集会を呼びかけたことも影響したでしょう。
 忘れてはならないのは、この県党が第六回党大会決議を指針として「県政奪取の戦略計画」にそって闘いを模索し、労働運動に手がかりをつくろうと努力してきたことです。つまり、意識的に接近してきた経過があります。

・党の理論政策活動
大嶋 政党らしい活動といえる、党の理論政策活動、思想政治建設の闘いではどうでしょうか。

秋山 以前からですが、わが党は昨年も、党の政治機関紙「労働新聞」や理論誌「労働党」で見解を発表し、理論政策面、思想政治面で、帝国主義のイデオロギー攻撃や他党派の日和見主義的な見解を暴露しました。
 まず、沖縄県民の闘争を支持することを表明し、本土での連帯運動に取り組むよう呼びかけました。また、「安保関連法案反対、安倍政権打倒」のスローガンを掲げ、全国各所の街頭や大衆集会などで、精力的に宣伝活動を展開しました。
 こうした活動で、労働者人民の闘争を励まし、闘争の発展に一定程度貢献できたと思いますし、党内も活性化しました。
 ちょうど一年前になりますが、二〇一五年新春講演会・旗開きでの大隈議長の講演は重要だったと思います。内容が豊富なので全体を紹介することはできませんし、一言でいうのは無理があるのですが、私が思うに、こんにちの世界がどこに向かっているのか、その全体的すう勢を明らかにし、米帝国主義との闘争を訴える、重要なものだったと思います。また、同じ敗戦国で、先進国であるドイツと比較しても、国の存立の基礎である食料、エネルギーなどの分析を踏まえて、わが国の対米従属が際立っていることを暴露し、対米従属政治の打破を強く訴えました。
 米帝国主義とその手先である安倍政権と闘う者を鼓舞激励し、闘いの理論的な武器となるものだと思います。

・県政奪取の戦略計画、党の県政政策づくり
 もう一つは、「県政奪取」のための戦略計画づくりで前進したことです。
 この問題は、六大会で党建設方針の中心として決定して以降、努力を重ねてきました。昨年は、数回にわたって党学校を開き、認識面で一歩前進したと思います。とくに重要だったのは、経済・財政データを分析する方法、唯物弁証法についても議論と実践の中で学び、次第にできるようになったことです。
 以上が、昨年の闘い、成果だと思っています。

世界資本主義は新たな危機に突入

大嶋 次に、内外情勢についてお伺いします。
 まずは国際情勢です。二〇〇八年のリーマン・ショックから七年が経過しました。マスコミはもちろん、「左派」的人びとのなかにも、こんにちの世界が危機にあることを否定する見解があふれています。わが党は、危機はいちだんと深刻化しており、資本主義は末期症状を呈していると主張してきました。むしろ、帝国主義者こそが危機感を深めている。  
 政治面でも、現状を「戦争を含む乱世」とし、各国内で階級闘争が激化していることを背景に、国家間の対立、とくに米国を中心とする帝国主義と、その他の国組との間の矛盾が激化していると主張しています。各国内での階級矛盾も激化の方向です。
 昨一年、とうに後半の情勢を見ると、この認識が正しかったことが証明されていると思います。どうお考えでしょうか。

秋山 おっしゃる通りだと思います。リーマン・ショック後の危機は「落ち着く」どころか、新たな危機の局面に入っていることが、とくに昨年夏を機に、明らかになっていっていると思います。
 リーマン・ショックは国際的不均衡を背景とした金融危機で、それが実体経済に波及し、「百年に一度の大津波」と呼ばれました。それがなぜ、一九三〇年代のような「世界大恐慌」に陥らなかったのか。この理由として、わが党は、各国支配層が金融政策と景気対策に膨大な資金を投入したことと、二十カ国・地域(G20)会議のような場で「国際協調」を図ったこと、この二つが破局を押しとどめたと、主張してきました。
 これは正しい指摘だったと思います。では、この二つはこんにち、どうなったでしょうか。
 最初の「資金投入」については、金融政策と財政政策に大別できます。
 まず金融政策ですが、この七年間、先進国の中央銀行は膨大な資金を垂れ流してきました。
 昨年末、米連邦準備理事会(FRB)が金利を引き上げ、ようやく「ゼロ金利」を終わらせました。ですが、欧州中央銀行(ECB)は量的緩和を延長しましたし、日銀も「補完措置」をとり、緩和政策が続いています。
 景気対策では、米国は危機直後に七千億ドル(約六十一兆八千億ドル・当時のレート)を投入しました。なかでも大きかったのが、中国の四兆元(約五十三兆円・同)の景気対策です。実際に投じられた資金は、もっと大きいと言われていますが…。

大嶋 一説では、官民を合わせて百兆元を超えていると言われていますね。その資金は、政府支出だけでなく、銀行の融資、外国からの資金流入、さらに「理財商品」という怪しい手口で国民から巻き上げたものを元手にしているとか。

秋山 そうです。ともかく、中国の資金投入は、アジアをはじめ、先進国や資源国に膨大な需要をつくり出した。「中国による資源の爆食」とか言われましたよね。中国への資源や中間財などの輸出も増え、各国経済を押し上げる要因になりました。リーマン・ショック後、総じて、先進国は低成長、中国など新興国はそれより高い成長が続きました。
 それでも、世界全体として見れば、多額の資金をつぎ込んで、ようやく数%程度の成長が維持されたにすぎません。しかも、〇八〜〇九年の危機対応策は一一年頃には早くも「息切れ」し、世界の国内総生産(GDP)成長率は、全体として低下しています。国際通貨基金(IMF)による成長予測の下方修正が相次ぐようになったのも、一一年ぐらいからです。
 金融緩和政策の結果、FRBの資産規模は約五倍、日銀も約四倍になるなど、世界の「カネ余り」はきわまり、投機資金が株式や商品市場に流れ込みました。資金は新興国にも流れ込んで成長を押し上げる反面、世界のあちこちでバブルをつくり出し、経済をさらに不安定化させました。ある意味、バブルを意図的につくることで、経済を保たせてきたと言ってもよい。
 また、各国政府の財政赤字は膨大なものとなりました。ギリシャをはじめとする南欧諸国が典型で、国家債務(ソブリン)危機です。各国人民には数々の犠牲が押しつけられています。ギリシャは、五十年先まで緊縮財政策を強いられる事態で、国民はさながら「債務奴隷」です。日本もその前から「先進国随一」の赤字を抱えていますが、さらに増えました。
 危機後の数年間で、大銀行や多国籍大企業は素早く立ち直り、「火事場泥棒」のように肥え太りましたが、労働者をはじめ、世界の大多数の人びとはますます困窮しているのが実際です。

大嶋 こんにち、危機はさらに深まっていると言ってよいわけですね?

秋山 先ほど、世界経済の成長率低下を指摘しましたが、こんにちの特徴は、リーマン・ショック後の成長を引っ張ってきた新興諸国の成長が鈍化、国によってはマイナスに転じていることです。世界の成長率はさらに下がっています。
 中国はすでに第二の経済大国で、購買力平価ベースではすでに米国を上回る経済力になっています。人民元はIMFの準備通貨にも採用されました。
 その中国の低迷は、よく言われる「住宅バブル」の問題もありますが、景気対策のために積み上げた過剰投資、この「後始末」と経済調整には、指導部でさえ「五年はかかる」と言っています。何しろ、実需の数倍もの鉄鋼やセメントが余っているのですから。
 この低迷は世界に大きな影響を与えずにはおかないし、現に与えています。ブラジルは大きく経済が落ち込みました。アジアでも、金融政策に苦慮している国がいくつもあります。
 はたして、中国の「調整」が「五年」で済むかどうか。世界経済を引っ張ってきた中国が、ある種、「重荷」に転じてしまった。世界の資本家からすれば、米国、中国と続いた「需要の受け皿」が見つけられない状況です。つまり、有り余った商品の「売り場」、資金の持って行き先がない。巻き添えになる発展途上国はさらに厳しい。
 そこに米国の利上げです。投資資金が新興諸国から米国に逆流している。新興国は金融政策のカジ取りがいちだんと難しくなり、成長の過程で民間企業が抱えたドル債務が膨らみ、経済の足を引っ張っています。経済成長が続けば債務は返済できるでしょうが、そのあてはない。外貨準備を大きく減らしている国もあります。どの国から金融危機が始まっても、おかしくありません。
 これらは、きわめて深刻な危機です。

大嶋 もう一つの要因である国際協調も、ますます怪しいですね。

秋山 そうですね。G20会合での合意は、以前にも増して、ますます実行されなくなっています。リーマン・ショック直後は、「景気対策」で協調しましたが、金融規制や、財政再建と成長のウェイトの置き方などで米欧、とくに米国とドイツの溝は深く、一致できません。ブラジルなどの新興諸国は「通貨戦争」とまで言って、米国の金融政策を批判しました。対する米国は、中国の人民元改革の要求も持ち出して揺さぶっている。こうした対立はますます厳しく、死活がかかったものになっています。
 最近の会議は、本来、会議の趣旨とは異なる「反テロ」で結束をアピールせざるを得ないほどです。
 G20だけではないですね。諸国間の力関係も大きく変わり、米国など帝国主義が思うように世界を支配できる状況ではなくなっています。ウクライナ問題やシリア内戦、あるいは欧州に押し寄せる難民問題など、さまざまな難題が吹き出していますが、対応策で大きな対立を含んで一致できません。
 深刻な危機のなか、労働者・人民の貧困化が深刻です。不満が高まり、各国で政権交代が相次ぎ、政治は不安定化しています。
 議会政治の「先進国」で、資本家による政治支配が比較的「安定」している欧州諸国でさえ、リーマン・ショック後は政権交代が増えています。ソブリン危機のさなかには、投資家が直接に首班となって政権を組織する例が、ギリシャ、イタリアで見られました。さらに、極右政党や、従来の「二大政党」の枠にとどまらない新興政党が台頭しています。社会民主主義政党でさえ、内部で「左派」が台頭しているところがあります。
 他方で、ほとんど国で投票率が低下しています。投票に行かないと罰金などが科される国でさえ、下がっています。国民が政治を変えなければ生きられなくなっている一方で、議会政治・政党に対する不信・不満が強まっています。
 勢い、人びとは直接行動に訴えざるを得ません。現に、各国内でデモやストライキなどの階級闘争が激化しています。数年前に中東・北アフリカ諸国で起きた「アラブの春」も、きっかけは、インフレなどによる国民生活の悪化です。「テロ」だって、基本的は、帝国主義の過酷な支配に対する人民の怒りのあらわれの一つでしょう。
 各国政府の手は縛られて対外的妥協がしにくい。妥協すれば、国内の不満で政権が倒されかねないからです。国際的な市場争奪・資源争奪も激化していますし、世界的な武器売買も急速に増えています。
 国際協調の仕組みは以降も残るでしょうが、ますます実質がなくなり、国家間の対立は激化していくでしょう。

大嶋 リーマン・ショック後の危機を破局に至らずに押しとどめた「二つの要因」が、大きく変化したということですね。

秋山 わが党は以前から、この「二つの要因」が崩れれば、「情勢は一変する」と評価していました。少なくても、それに近づいていることは間違いないですね。
 総じて言えば、大隈議長が数年前に指摘した、世界資本主義の「末期症状」はさらに明らかです。世界は、共産党の言うような「平和の流れ」どころか、「戦争を含む乱世」の様相がいちだんと濃くなった。
 米帝国主義は衰退から脱却して世界支配を維持するため、ウクライナやシリアなどで冒険的な策動を繰り返しています。とくにアジアは、米国が「アジア・リバランス戦略」を掲げ、市場確保と中国へのけん制強化のために「重視」している地域です。シリア問題でロシアに主導権を譲り渡すなど、米国の影響力はさらに失墜しています。それだけに、アジアでの巻き返しに必死です。現に、TPPの「大筋合意」を急いだし、南シナ海問題などで介入を強めています。今後も、世界中で策動を強めることは間違いないでしょう。
 全世界の労働者階級が、中小諸国・人民と連帯して、米国を先頭とする帝国主義の世界支配を打ち破らなければなりませんし、その条件は、客観的には増しています。なかでも、先進国の労働者階級、革命政党の役割が決定的です。
 われわれもその一部として、党建設を前進させななければなりませんね。

難問山積、悪化する日本経済

大嶋 わが国安倍政権は米国の世界戦略への追随を深め、国民の反発を押し切って安保法制を成立させました。
 一方で、どの政権もそうですが、安倍政権は「株価連動内閣」と言われるほどに経済事情に規定されています。安倍政権自身も「経済最優先」と言っている。
 その点から、世界の危機が深まるなか、日本経済の現状についてどう見ていますか。

秋山 「失われた二十年」などと言われる日本経済ですが、リーマン・ショック後もいちだんと成長率が下がり、ゼロ成長が続いています。世界の購買力平価GDPに占める比率で見ても四・四%と、一九九〇年の半分になっています。安倍首相が「強い日本を取り戻す」などと焦るのも、無理のない面があります。
 このゼロ成長さえ、世界経済と、政府・日銀のかつてない大規模な財政政策、金融政策によってもたらされたものです。いわゆる景気対策は、リーマン・ショック時の麻生政権が約二十兆円、三年余の民主党政権が約十四兆円、安倍政権は計四回で約六十一兆円もつぎ込んでいます。これは、九〇年代末の橋本・小渕・森政権時の経済対策と比べても、大規模なものです。
 日銀は二〇一〇年に金融量的緩和政策を再開、一三年四月からの「黒田バズーカ」と呼ばれる異次元の緩和政策で、マネタリーベースは、リーマン・ショック時の約四倍、GDP比で七割を超え、現在も増え続けている。同じく緩和策を行っている米国や欧州と比べても、はるかに大規模に資金を垂れ流しています。麻薬中毒ならぬ、「緩和中毒」状態といえます。
 これほどの財政、金融政策を総動員してさえ、経済はほとんど成長していないわけです。わずかに成長しているのは、GDP構成要素のなかで輸出と政府支出、つまり公共事業です。
 一方、累積債務残高は、ショック時点から一・三倍、GDP比で二三〇%にも拡大しています。ソブリン危機に陥ったギリシャよりも、対GDP比率は高いのです。通常の歳入歳出改革では財政再建は不可能です。

大嶋 そうしたなか、日本の銀行、多国籍企業は国際競争に対応して海外展開を進めました。海外直接投資残高は増え、製造業の海外生産比率は三割に近づいています。「不採算」事業からの撤退などリストラも続き、国内産業の空洞化もさらに進みました。中小企業には、単価切り下げなどコスト削減要求を強めています。
 アベノミクスによる円安も、多国籍大企業の海外収益を数字の上で押し上げています。結果、リーマン・ショック後、すぐに立ち直り、空前の利益を上げています。

秋山 為替の話が出たので触れますと、輸出など海外で稼ぐ大企業が円安で大儲(もう)けする一方で、輸入物価の高騰で中小企業には原材料高が襲いかかり、労働者の実質賃金は押し下げられています。その上に、消費税増税や社会保障制度の改悪です。個人消費が低迷し、内需が冷え込むのは当然です。
 よく、アベノミクスの「副作用」とか「負の側面」などと言われますが、その本質は、大多数の国民から、大銀行や多国籍大企業、内外投資家への所得移転政策です。その政治的、階級的狙いからすると、アベノミクスは「うまくいっている」わけです。国民にとってはとんでもない政策で、闘って打ち破る以外にないですね。

大嶋 そこに、先ほどの国際情勢のところで触れられた、昨年夏からの新たな危機が襲っている……。

秋山 投資家は「日経平均株価が二万円を超えるか」などと浮かれていますが、実体経済の危機は加速するでしょう。財政危機と「緩和依存」で、取り得る政策手段は限られます。世界的金融危機の発生は一般的にいつ起こっても不思議ではないですが、それは日本を巻き込みます。日本国債の暴落による破局、「日本発の金融危機」も十分あり得ます。
 支配層、安倍政権はこの状況に対応しなければなりません。まさに「難問山積」でしょう。国民に危機を押しつけるでしょうが、階級矛盾がいちだんと激化することは間違いありません。

安倍政権は誰のための政権か

大嶋 その安倍政権ですが、「左派」の大部分は、以前から「暴走」とか「立憲主義に反する」という批判にとどまっています。肝心なことは、安倍政権が誰のための政権なのか、その階級的性格を暴露することだと思いますが、そうした論潮はほぼありません。
 成立から三年を経ましたが、安倍政権の性格について、どうお考えですか。

秋山 安倍政権はこの三カ年、「強い日本を取り戻す」などといって、経済政策ではアベノミクスに、外交・安全保障では「地球儀俯瞰(ふかん)外交」や「積極的平和主義」、国家安全保障会議(日本版NSC)の設置と「国家安全保障戦略」「防衛計画大綱」、日米防衛協力の指針(ガイドライン)合意、集団的自衛権行使を可能にする安保法制、環太平洋経済連携協定(TPP)、原子力発電所の再稼働などを矢継ぎ早に行ってきました。
 政権基盤では、一三年の参議院選挙で「ねじれ」を解消し、以降、総選挙でも安定多数を得ました。投票率の低下など、選挙結果を子細に見ると、必ずしも有権者の多数の支持を得たわけではありませんが、国会内の力関係では「優位」にあります。
 さて、安倍政権の性格ですが、彼は〇六年九月から〇七年八月まで「第一次政権」を組閣しています。当時、わが党はおおよそ以下のように指摘しました。
 第一に、巨大独占体の覇権的利潤追求の政治であること。
 第二に、その前の小泉政権下で悪化していた中国、韓国との関係を改善したものの、中国を孤立させて勢力圏を築く「主張する外交」を進めていること。
 第三に、政権発足時に「憲法改悪」を掲げた戦後初めての政権であり、「戦後レジームからの脱却」を掲げた復讐(ふくしゅう)心に満ちた政治家であること。
 第四に、財政再建を課題となしがらも「成長なくして財政再建なし」と、小泉政権からの修正を行っていること。
 第五に、しょせんは対米追随で売国的な軍事大国化の政治であり、経済成長も不可能であること、などです。

大嶋 その特徴を、こんにちの第二次安倍政権と比較すると、どうでしょうか。

秋山 まず、安倍政権の進める政治が、巨大独占体の覇権的利潤追求に奉仕するものであることは、従来と同じです。現に、経済財政諮問会議の再組織、財界と一体となった法人税減税などの「成長戦略」、TPP、原発再稼働、円高是正、労働法制の規制緩和など、財界が「六重苦」などと騒いだ課題を、次々と断行しています。
 この数年間、わが国多国籍大企業は、海外進出などで空前の利益をあげており、この強力な支持の下で、安倍政権は維持されています。東レ出身の榊原会長は、財界の中からさえ不満が出るほどに「政権べったり」で安倍を支えています。
 第二に、かつての「主張する外交」は「地球儀俯瞰(ふかん)外交」となり、対米従属の下で、より露骨に中国に張り合う形で展開されています。米国が「アジア・リバランス戦略」を打ち出し、その中での日本の位置づけもより明快になっています。いわば先兵役ですね。ただし、米国、日本、中国の力関係は大きく変化しており、米日が落ち込む一方で中国が強大化しました。中国が提唱したアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、アジア、欧州諸国がこぞって参加したのは、安倍政権にとって衝撃だったでしょう。
 第二次安倍政権の対中対抗の外交は、いわば「つま先立ち」で、相当に無理をしています。この限界を見ておく必要があります。
 三番目ですが、憲法改悪をめぐっては、公然と「国民運動」を組織しようとしています。参議院選挙の結果次第で、これは日程に上ってくるでしょう。この点は、第一次政権から貫かれている点です。
 第四に、現在は「成長なくして財政再建なし」とは言っていませんが、日銀による異次元緩和政策や積極的な財政政策など、内実は同じです。危険性を知ってか知らずか、バクチ的な政策ですね。
 最後に、その対米従属性は、誰の目にも分かるようになっています。外交・安全保障だけでなく、金融政策も米国に縛られ、米国が「出口」に進むなか、その補完役を買って出ています。
 「株価が上がった」などと宣伝していますが、政権支持率の最大の根拠は日銀の金融政策と財政政策ですし、米国の支持がなければやっていけません。中国に対抗した外交にしても、米国にさんざん利用されたあげく、米中関係の推移次第で「はしごを外される」可能性もあります。米国は自国の国益のために外交・安保政策を行っているのであり、「日本のため」などではありませんから。
 「暴走」と言うばかりでは、このような階級的性格、さらに弱さや限界も見抜けず、十分に闘えません。
 また、「立憲主義」の立場からだけでは、対米従属政治を批判し、保守層を含む広い戦線をつくるには限界があります。このことは、労働組合の皆さんに、強く訴えたい点です。

大嶋 流れから少しはずれますが、公明党の役割についてはどうでしょう。

秋山 公明党は安保法制を認め、地方議員を動員して支持者の「説得」に努めました。わが党は以前から、公明党を「安倍政権の政治的支柱」として批判してきました。その後の「軽減税率」をめぐる合意を含め、昨年を通して、公明党中央の犯罪性はますますきわまったと思います。
 軽減税率で首相官邸が公明党の要求を容れたのは、安保法制の際の「恩返し」でしょう。参議院選挙もありますしね。

大嶋 一九九九年の公明党の連立入りは、「地域振興券」の実施と引き替えでした。野中官房長官(当時)は、「七千億円の国会対策費」と露骨に述べましたが、今回も似たような取り引きといえますね。

秋山 まさにそうで、自民党からすれば「安いもの」でしょう。
 しかし、軽減税率で公明党支持者の生活が救われるわけではありません。景気後退、増税、社会補償制度改悪などによるいちだんの生活と経営の悪化、さらに憲法改悪ともなれば、公明中央が何を言おうと、支持者をゴマかし続けるのにも限界があります。現に、安保法制に反対して、結構な数の創価学会員が行動を起こしました。これを単なる「ガス抜き」とだけは言えません。
 客観的条件としては、自公与党の関係の先行きはそう長くないと思います。それでも大臣のイスにしがみつく、公明党中央に批判を集中しなければなりません。

本年、労働党の闘い

大嶋 もっといろいろ伺いたいのですが、紙面の都合もあります。今年、わが党がどう闘うか、課題と政策について、時間の許す限りお話しください。

秋山 これも、いくつかに分けて述べます。

・全国的な政治課題
 まず、全国的な政治課題について、簡単に触れたいと思います。
 今年も、沖縄県民と連帯し、名護市辺野古への新基地建設に反対して闘います。

大嶋 そういえば、昨年末には沖縄に行かれたそうですね。

秋山 「オール沖縄会議」の結成大会に参加してきました。この新しい団体もそうですが、辺野古ゲート前での行動が粘り強く続けられるなど、県民運動は健在です。久しぶりの訪問で、それは実感できましたし、重要な人士との信頼関係もあります。
 当面は、普天間基地のある宜野湾市長選が焦点のようですが、それにとどまらず、本土で闘いを組織したい。これは従来から闘っている課題ですが、とくに労働者のなかで連帯運動をつくり出すことに注力したいと思います。
 第二に、「テロ対策」を口実し、日米同盟強化の一環として安倍政権が進める、共謀罪導入などの治安弾圧体制強化、政治反動、憲法改悪に反対して闘います。植民地支配と侵略戦争を美化する思想攻撃、教育の反動化と闘います。これは民主主義を求める闘いであるというだけでなく、日本の進路、わが国がアジアでどう生きていくのかという課題でもあります。
 第三に、消費税増税に反対し、国民生活を守る闘いです。
 自公が合意した「軽減税率」は欺まんで、一〇%への増税が前提です。「軽減」などではありません。軽減されるのは法人実効税率で、まさに大企業に奉仕するための増税でしょう。消費税は廃止すべきで、大企業に適切な課税を行うべきです。そのほか、年金や生活保護制度などの社会保障制度の改悪に反対します。
 第四に、TPPの「大筋合意」を撤回させる闘いです。
 TPPは国家主権を米国に譲り渡し、国民経済、とくに地方を破壊し、食料安全保障をないがしろにするものです。「国民皆医療制度」も破壊されます。国の独立の基礎である、農業など国内産業を守るため、TPPに反対する運動を繰り広げたい。
 第五に、米帝国主義の危険な策動に反対し、国の完全な独立で「平和、共生のアジア」をめざします。米国による南シナ海問題への介入に反対し、安倍政権がその先兵となって自衛隊などを派遣することを許しません。AIIBを敵視するのではなく、アジア諸国の経済発展、そのための連携を支持し、平和共生のアジアをめざします。「平和のためのアジア民間交流」を促進するために奮闘したい。

・労働運動
大嶋 政治変革の中心部隊たるべき、労働運動についてはどうでしょうか。

秋山 危機的情勢が深まるなか、労働者階級が政治権力を握り、自らの解放を実現するためには、労働運動の階級的・革命的な形成発展が緊急に求められています。
 わが党はそのような角度から、五千万労働者階級の全体を視野に入れ、その生活と意識、闘いに関心を払い、階級的政治的前進を促すために奮闘したい。
 わが国労働者の賃金は、先進国で唯一、低下の一途です。安倍政権下、名目賃金はわずかに上昇に転じましたが、物価高で実質では低下し続けています。低賃金の非正規労働者が労働者の四割以上、ワーキングプアと呼ばれる年収二百万円以下の人びとも一千八百万人、全労働者の三分の一を超えています。
 「民事上の個別労働紛争」も、〇八年以降、毎年百万件を超えています。統計を見ると、毎年約二十万人の労働者が「解雇」や職場の「いじめ」を解決しようと、行政の窓口を通じてとはいえ、一人で経営者側と「闘って」いるのです。
 これは、多くの労働組合が労働者から信頼されていないことを示しています。むろん、がんばっている労働組合もありますが、労働党もこうした願い、闘いに応えないといけないと思いますね。
 しかも、新たな危機が日本を襲い始めているこんにち、リストラによる首切り、賃下げ、労働条件悪化は増えていくでしょう。東芝のように、経営者の明々白々なデタラメによる経営難を、労働者への犠牲転嫁で乗り切ろうという企業もあります。断じて許さず、闘って、攻撃を跳ね返さなければなりません。すでに闘っている労働者・労働組合はこれを激励し、闘いの勝利に貢献したい。
 革命をめざすわが党にとって、戦略的に重要なのは組織労働者、とくに民間大工場労働者です。しかし、極度の低賃金・不安定雇用を強いられている非正規労働者、とくに若年労働者の生活と要求、意識と闘いに深い関心を払うことなしに、労働者階級全体の階級的政治的前進を促すことは不可能です。
 わが党は、一六春闘で大幅賃上げを要求して闘うことはもちろん、最低賃金の引き上げ、労働法制の改悪反対、首切り・リストラ反対などで闘います。

大嶋 TPP「大筋合意」でさらなる危機にある農民や中小商工業者についてはどうでしょうか。

秋山 労働者だけでなく、農民、中小商工業者の要求を支持し、その発展にも力を尽くしたいですね。

・諸階層の闘いを支持する
 農民階級は、基本的に労働者階級の同盟軍です。わが国売国農政の下で追い込まれてきましたが、こんにち、米価下落やTPPの「大筋合意」でますます展望を奪われています。
 わが党は、労働者階級、労働運動が農民の要求を支持し共に闘うことを促していきます。農業・食料は国の独立の基礎です。労働運動が農民と連携し、こうした民族的な課題を積極的に担うことが、労働運動の発展にとっても重要だと思います。
 中小商工業者も、大資本、大企業が従来の中小企業分野にまで進出し、さらにコストダウン要求も厳しく、急速に廃業に追い込まれています。アベノミクスの円安による資源、資材高騰もも厳しい。雇用の七割を担っている中小企業に対する、抜本的な経営支援策が必要です。消費税再増税の撤回を求めるのは、当然のことです。
 いずれにしても、労働運動が農民、商工自営業者の要求を支持し闘い、成長していくよう、わが党は汗をかきます。民族的な課題で支配層と指導権を争い、勝ち抜くためにはこのことが必要なのです。

・地方自治体闘争
 地域経済の疲弊は著しく、安倍政権も「地方創生」という看板を掲げざるを得ないほどです。そこに、新しい危機とTPP、消費税増税などが襲いかかります。自治体財政を食い物にして自公政権を支える地域支配層、一部の反動派による自治体支配に対する闘いを、政府に対する闘いとともに発展させます。
 また今年は、自主・平和・民主のための広範な国民連合が「地方議員交流会」を開催する予定だと聞いています。この成功に貢献し、全国で積極的に取り組みたい。

大嶋 昨年の安保法制反対運動の際には、青年・学生の行動が目立ちました。こうした動きは、特定秘密保護法の制定強行のころからですが、どう見ますか。学生運動出身の私としても、いろいろと考えさせられるものがありますが(笑)。

秋山 確かに、学生の街頭での行動の発展は、随分久しぶりだと思います。運動の背景には、青年・学生全体の貧困化があると思います。大学や専門学校の学費高騰、最高で七百五十万円を超えるとされる奨学金返済問題、就職問題や非正規化など、学生の共通課題に関心を払う必要があると思います。
 ただ、かれらの大部分は、安倍政権が進める政治に対し、「自由と民主主義」を対置したものですよね。現在の運動を支持するだけではなく、かれらにマルクス主義を届けることが必要です。たとえば、民主主義を「守る」のではなく、「実力で闘い取る」観点を提起することです。「誰のための民主主義か」という問題などもありますね。

・自主・平和・民主のための広範な国民連合について
 総じて、労働運動を発展させることを基礎に、広範な国民が連合して、自公政権、大企業中心の対米従属政治を打ち破るための戦線形成に尽力したいと思います。
 幸いにして、安倍政権が安保法制を強行したことなどを通じて、「米国の戦争への協力、対米従属が問題」という認識が急速に国民各層の中に広がっています。AIIB加盟や南シナ海問題をめぐっては、財界や自民党のなかにさえ意見の相違があるようです。
 沖縄県民の闘いの前進とともに、国の独立の達成を優先させた「当面する革命」をめざす、わが統一戦線運動にとって有利な情勢が発展していると確信しています。このチャンスを生かし、国民連合の拡大・強化に結び付けなくてはならないと思います。

共産党の「国民連合政府」について

大嶋 ところで、共産党は「国民連合政府」を提唱し、来る参議院選挙、あるいは総選挙での「野党連合」を主張しています。安保法制を廃止することを主目的とする「政権」をめざすという。他方、小沢・生活の党党首らも「オールジャパン・平和と共生」を立ち上げています。
 社会民主主義勢力にも、共産党に期待する向きがあります。どう考えればよいでしょうか。

秋山 結論を先に言うと、共産党の提唱する道には展望はなく、幻想を捨てて闘わなければなりません。とくに、労働組合の皆さんにそう申し上げたい。
 わが党は結党当初から、選挙闘争を重視してきました。それは、選挙で政治が変わると思っているからではありません。政治を変えるのは、労働者をはじめとする国民各層の連携した行動、国民運動です。それでも、現実の政治にかかわり、敵の支配や欺まんを暴露する上で、議会が有利である限り、これを利用します。
 私たちは、今回の「国民連合政府」を、そういった一般的な観点からだけ批判しているわけではないんですね。
 先ほども述べましたが、昨年は安保法制をめぐる闘いが高揚しました。安倍政権の対米従属性はこれまで以上に暴露されました。沖縄県民の闘いも続いています。
 共産党の提案は、そのような大衆運動が発展した時期に提唱されました。
 せっかく大衆運動が高揚したのですから、それをさらに強め、その力で政府を倒せばよく、そうすべきなのに、「次は選挙」と言う。橋下・大阪市長(当時)が「デモで国家の意思が決定されるのは絶対にダメ」と述べたように、支配層は、国民の大衆行動、実力行動を死ぬほど恐れています。かれらが恐れていることをせずに、「上品な」選挙の道を説くとは、わざわざ「敵の土俵に乗れ」と言っているようなものです。

大嶋 一九六〇年代末、全人口の約二割が参加したゼネスト、「五月危機」に揺さぶられたフランスのド・ゴール政権は、総選挙を約束して闘争を「落ち着かせ」、選挙でも大勝しました。フランス共産党はまんまとその手に乗せられたし、学生デモを非難して闘争に水をかける役割さえ果たしました。ギリシャの労働者も二〇一〇年以来、二十回以上もゼネストを闘い、緊縮財政策に抵抗しています。それでも、実力で政権を奪い取るという観点に立った革命党がないために、犠牲を強いられたままです。
 私は「歴史好き」なので、つい語ってしまいますが、こうした教訓に学ぶことも大切ですね。

秋山 しかも「国民連合政府」は、安保法制以外の政策を事実上「棚上げ」するという。
 外交・安全保障政策でも、安保法制以外の課題があります。「国民連合政府」は日米安保条約を「棚上げ」するといいますが、日米ガイドライン、海外派兵の拡大、軍備増強、武器輸出、対中国などアジア外交、TPPといった難題に、どう対応するのでしょうか。そのほかにも、深刻な国民生活の打開や財政再建、社会保障制度など、わが国の抱える難題は山積みです。
 複雑で多方面のことを行わなければならない政治の現実を知らないはずはないのに、共産党の提唱は、何とも無責任なものです。
 まして、橋下氏ら「おおさか維新の会」が安倍政権との連携を強めており、「野党統一」は事実上不可能です。民主党内だって、保守系議員が反対してまとまっていない。
 仮に「維新」を含めてまとまっても、自公与党に勝てるのは、参議院の一人区で七〜八程度とか。参議院選挙での与野党逆転がほとんど不可能なことは、各種の試算でも出されています。
 議会政党の皆さんに「選挙闘争をやるな」とは言いません。ですが、まずは国民運動を発展させることに注力すべきではないでしょうか。

党建設の前進へ奮闘する

大嶋 では最後に、党建設の問題について、お考えをお聞かせください。

秋山 世界資本主義の危機はいちだんと深刻で、胸躍る素晴らしい情勢、歴史的なチャンスの到来だと確信しています。党の強化・拡大を向こう数年間のうちに成し遂げることができれば、わが党は大きな役割を果たせるでしょう。
 帝国主義が危機を立て直し、支配の再編に「成功」するか、それとも先進諸国の労働者階級が政治に登場できるか、世界の前途はその速度をめぐる競争にかかっています。帝国主義による支配の再編の過程では、低賃金、失業、増税など、労働者・人民に多大な犠牲が押しつけられることは必定です。戦争さえ排除できません。
 労働党の建設のために全力で闘い、これを達成しなければなりません。そうして初めて、労働者階級が指導権を取って本格的な統一戦線を構築し、独立・自主の政権樹立に向けて闘いを前進させることができます。
 今年は、昨年にも増して、六大会決議の全面的な具体化に向けて奮闘し、党建設で成果を上げたい。労働者、国民諸階級の生活感情、要求に思いをはせ、かれらの要求と闘争を支持し、その発展のために闘います。
 ある同志は職場の仲間とよく付き合い、いろいろな悩み事に耳を傾け、必要なときは職制や会社側に申し入れて信頼を得ています。別のある同志は、職場でいじめられている労働者を守るために企業に異議を申し立て、不当な攻撃を打ち破っています。
 労働者階級を信頼し、かれらの苦しみと怒りを闘争へ発展させるために努力を倍化したい。かれらと結びつき、信頼を得ることのできる党をつくっていかねばならないと、改めて決意しています。

大嶋 ありがとうございました。団結してがんばりましょう。


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