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2015年5月25日号 2面

「大阪都構想」とん挫で
安倍政権に打撃

 大阪市を廃止して五つの特別区に分割する「大阪都構想」の是非を問う住民投票が五月十七日に行われ、否決された。
 維新の党が「原点中の原点」としてしてきた「都構想」がとん挫したことで、橋下市長(維新の党最高顧問)は任期満了を持って政界から引退することを表明した。松井府知事(党顧問)は態度を明言していない。党の江田代表も辞任、十九日には松野幹事長が後任代表に就任、幹事長には柿沢政調会長が就いた。
 松野代表は「立て直し」を急ぐというが、容易ではない。国政・地方政治の議員、とくに「橋下人気」で当選した「大阪系」議員たちは動揺して求心力は低下、従来からの、野党再編への態度などをめぐる「東西対立」は激化する。
 橋下市長が掲げた「大阪都構想」は、財界の願う道州制への一歩である。道州制は究極ともいえる行政改革で、多国籍大企業が国際競争に勝ち抜くための「効率的で強じんな国家」をつくるためのものである。他方、国民は社会保障制度の改悪や各種行政サービスの後退、地域経済の衰退など、多大な犠牲を押しつけられる。
 橋下市長は、「大阪都」を実現すれば、府・市民の生活難が打開できるかのごとき欺まんを演じてきた。今回、住民投票で「反対」を主張した自民党や公明党、さらに民主党なども、事あるごとに維新に秋波を送り、ときに連携を模索してきた。「橋下人気」にあやかりたいだけでなく、財界の意思を知っているからである。
 これがとん挫した。
 橋下市長の「引退」は額面通り信じることはできないが、威信が失墜したことは疑いない。財界のもくろみも、ひとまず挫かれた。
 投票結果は、安倍政権にとっても打撃となった。
 安倍自民党は公明党との連立政権を維持しつつ、憲法改悪や安全保障法制を推進し、とくに支持基盤の不満や「反対」を気にする公明党をけん制するため、維新の党を積極的に利用してきた。今回の住民投票も、首相官邸、公明党中央の「鶴の一声」で、公明党大阪府連を裏切らせて実現させたものである。
 維新の失墜で、安倍政権がもくろむ憲法改悪は、来年の参議院選挙を経ても発議のための三分の二を得られず、重大な困難に直面する可能性が従来以上に高くなった。当面の安全保障法制さえ容易ではない。
 「量的・質的金融緩和」が限界に達し、アベノミクスの正体が暴露されて国民の不満が増大しつつあるなか、安倍政権はまたも難題を抱えることになった。
 連立相手の公明党は、維新の失墜で相対的に存在感が増し、ほくそ笑んでいるかもしれない。住民投票に賛成し、都構想に「反対」するというデタラメな対応も、「つじつまが合った」と思っているだろう。
 だが、その公明党中央も、「維新の政権入りを阻止する」ということで、維新の存在を自らの裏切りの言い訳にしてきた面もある。この欺まんが使いにくくなることは、公明党中央にとっては「痛し痒(かゆ)し」である。党中央は引き続き「大臣のイス」にしがみついて裏切りを進めるだろうが、これは支持者、下部党員との矛盾をいちだんと激しくさせる。その兆しは、先の統一地方選挙の結果にも見て取れる。
 民主党は、維新議員の取り込みによる野党再編を狙っている。だが、民主党自身が自民党への対抗軸を立てられない上、「選挙互助会」と言われるほどに、党内が政策で一致できていない現状である。いくらかの議員を吸収できたとしても、それだけで自民党に対抗できるはずもない。
 ところで、橋下市長は残りの任期中、「都構想」の代替案として自民党などが示した「総合区」制度を検討するなど、画策を続けるだろう。維新以外のほとんどの党は「二重行政解消」には異論がない上、道州制にも賛成である。マスコミも「『大都市改革』の必要性は変わらない」(日経新聞)などと宣伝している。安倍政権や維新がその任務を果たせなければ、支配層は別の人物・勢力に託そうとするだろう。
 「都構想」が財界の要求であることを見抜き、闘わなければならない。(O)


「大阪市廃止・特別区設置」の住民投票の結果について
二〇一五年五月二十日 日本労働党大阪府委員会 委員長・川崎正

一、大阪市の廃止・特別区の設置の是非を問う住民投票は、僅差であったが「反対」多数で、橋下・維新の党が主張した、いわゆる「都構想」は否決された。

一、私たちは、住民投票で問われたものは、いわゆる「都構想」の是非だけではないと主張してきた。橋下市長は住民投票実現のために安倍政権に助けを求め、引き替えに安倍首相が悲願とする「憲法改悪」を積極的に支持することを表明した。したがって問われていたのは、安倍政権を補完する橋下・維新の政治を終わらせるのか、それとも継続するのかであった。
 「反対」多数という結果、橋下市長は「任期満了」による政治家「引退」を表明し、対米従属で大企業優先の政治を進める安倍政権に打撃を与えた。安倍政権は、自民党大阪府連の反対を押し切って露骨に橋下・維新を支持して画策した。安倍政権の狙いは、野党を分断し、橋下・維新の党を当面の安保法制、さらに「憲法改悪」で政権に協力・補完させることであったが、狙いは打ち破られた。

一、秋の府知事・市長選をめぐって新たな争いが始まっている。今後の府政・市政を考える上で、二〇〇八年以降の橋下・維新の政治とは何だったのか、総括が必要である。その実際は財政危機や二重行政の解消(「都構想」)を口実にして、(1)徹底した公務員攻撃、(2)中小企業や農林業者支援の補助金はじめ府民生活に直結する医療や福祉サービスや文化振興等削減政策、(3)府や市の資産売却、さらに大阪市では地下鉄、バス、水道、保育園、病院など九事業で民営化の促進等であった。橋下市長は、関西経済連合会(関経連)と部分的に対立もしていたが、彼が進めてきた政治は道州制をめざした「都構想」、公務員攻撃なども含めて、財界の要請する政策であった。
 関西経済同友会は、住民投票結果を受けて、「『二重行政の解消』『民営化の促進』など課題が残されている」「併せて、大阪の成長戦略の推進と関西全体の活性化を牽引する大阪の将来像を明確に描くことが重要」と大阪府市に要求している。
 住民投票で反対した、自民、公明、共産、民主など各党が以降、どういう政治をめざすのか、誰のための政治を行うのかが問われる。

一、国内外とも大激動の情勢の下で、大阪府民・市民の生活をどう守るのか。世界経済がどうなるか、その下での大企業の活動や、国政がどうなるかによって、府民・市民生活は大きな影響を受ける。世界的な危機はいちだんと深刻化し、対米従属で大企業優先の安倍政権は行き詰まり、アベノミクスの破綻、財政破綻は「時間の問題」となっている。大銀行を頂点とする大企業の利益最優先、つまり、労働者や下請企業や地域経済を犠牲にする活動がいっそう強まる。こうした大企業の活動と国民犠牲の安倍政権と闘いつつ、労働者、中小零細業者、自営業者など府民・市民大多数のための府政・市政が求められる。
 大阪の地域資産や資源を生かし、中小企業や小規模企業の存立を重視すること、アジアとの真の共生を図り、徹底して内需を拡大して、労働者はじめ府民各層が生活できる府政・市政に転換しなければならない。
 こうした政治へ転換するためには、労働運動の果たす役割が重要である。八十年代以降労働運動が地方政治で闘わなかったことが橋下らの登場を許したのである。大幅賃上げ、非正規労働者の待遇改善など現場の闘いとともに、同じ悪政の下で苦しむ中小零細・自営業者の要求の支持し、府民各層の連携を促進することが必要である。

一、われわれ日本労働党は、府政、市政の大転換のために、府民各層の人びとと連携し、政策能力を高め運動を組織していく決意である。

以上


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