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2015年5月15日号 2面・社説

日米首脳会談

唯一、米戦略に忠誠誓う
安倍政権の亡国の道と闘おう

 安倍首相とオバマ大統領による日米首脳会談が四月二十八日、米国のワシントンで行われた。
 両国の共同声明は、首脳会談を「日米のパートナーシップにおける歴史的な前進」と自賛し、安倍首相は、恥知らずにも、米議会演説で「希望の同盟」などと言った。
 実態は、急速に傾く米国の世界支配を支える手駒として日本が中国に対抗する先兵役を引き受けたのである。「米英同盟」を基本としてきた英国すら、中国が提唱し米国が阻止に動いたアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を決める世界である。何という時代錯誤か。このままではアジアでの孤立、日中対立は決定的となろう。
 安倍政権はその具体化として、「対米公約」した集団的自衛権行使のための安全保障法案の成立、沖縄県名護市辺野古の新基地建設、中国への対抗をますます公然化させ、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉妥結に向け策動を強めている。
 安倍政権が進める「米国の鉄砲玉」となる亡国の道を打ち破り、独立・自主の政権をめざす闘いを急がねばならない。安倍政権の政治的支柱、公明党中央を徹底的に暴露することが重要である。
 わが党は、各界の皆さんに広く連合して闘うことを呼びかける。労働者階級は、そのけん引車としての役割を果たさなければならない。

危機の中、孤立の日米の巻き返し策
 米国は、安倍首相の訪米を異例の歓待で迎えた。オバマ大統領は日本語で「もてなし」、上下両院合同会議は安倍首相に演説の場を与えた。
 米国は中国へのけん制を強めるためにアジア・リバランス戦略を採用したが、ウクライナ問題でロシアを屈服させられず、中東でも人民の挑戦を受けている。国内では深刻な雇用問題を背景に、黒人青年射殺事件を契機とする抗議デモに揺さぶられ、大統領選挙も近づいている。
 米国の衰退と、世界の「特殊な多極化」は加速した。第二次世界大戦後の米主導の秩序は再編期に入り、「戦争を含む乱世」の様相はさらに明白である。欧州はもちろん、米国に従ってきた中東諸国でさえ、国益を貫く動きを強めている。
 とりわけ、中国が主導するAIIBの提唱に、アジア諸国だけでなく、欧州先進国も加盟を表明したことで、米国とそれに追随した日本だけが孤立する事態となった。
 アジア・リバランス戦略が深刻な打撃を受け、その再構築を迫られたこんにち、米国はもっとも忠実な同盟国である、安倍政権の力にますます頼り、利用しようとしている。

TPP交渉の推進役を買って出る
 安倍首相は演説で、米国のアジア・リバランス戦略を「徹頭徹尾支持する」と明言した。
 共同声明の第一番目には、TPP協議の「早期妥結」を掲げた。
 日米は、AIIBへの参加が六十カ国に迫るなか、これに対抗し、米国主導の貿易・経済ルールをアジアに押しつけ、収奪する狙いから交渉を急いだ。米国にとって、TPPは単なる経済問題ではなく、対中対抗のための安全保障問題でもある。
 安倍首相は「(TPPは)経済的な利益を超えた安全保障上の意義」(議会演説)と、米国に忠実に従った。さらに、米議員に「貿易促進権限(TPA)法案」への支持を呼びかけ、オバマ政権を援護射撃した。
 安倍政権はすでに、TPP交渉でコメなどで大幅な対米譲歩を繰り返し、農業をはじめとする国民経済・国民生活を、米国と多国籍大企業に差し出そうとしている。
 むろん、コメや自動車部品などでの最終合意は、安倍政権といえども容易ではない。新興諸国は、米国が求める私的所有権問題などで抵抗しており、交渉には「漂流感」さえある。それでも、仮に日米間で合意ができれば、他の加盟予定国が合意しなくても、日米間だけで合意内容が実施される可能性がある。
 安倍政権は、米戦略の一環であるTPPの推進役を買って出ている。

 安全保障で「火中の栗を拾う」選択
 両首脳はアジア太平洋における「一方的な現状変更の試みに反対」などと、中国へのけん制をあらわにさせた。米国は安倍政権による集団的自衛権の行使容認などの「積極的平和主義」を歓迎し、安倍首相は、閣議決定さえしていない法案を「夏までに」成立させると公約した。普天間基地(沖縄県宜野湾市)の辺野古移設も「確認」した。
 首脳会談に先立つ外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)では、日米防衛協力の指針(ガイドライン)の改定で合意した。日本の島嶼(とうしょ)防衛での共同対処が盛り込まれたほか、日米がアジア太平洋を越え、平時・有事に関係なく連携するためのもので、中東・ホルムズ海峡での機雷掃海や南シナ海での船舶検査などが想定されている。オーストラリアを想定した「多国間の防衛協力」も明記され、宇宙空間やサイバー対策での連携も合意された。
 ケリー国務長官が「歴史的な転換点」と述べたように、曲がりなりにもあった「極東」の範囲や「専守防衛」はなくなった。自衛隊による米軍支援は飛躍的に拡大され、世界中で軍事貢献を行うことになった。
 米国は、中国とフィリピンなどの間に領有権問題があり、昨年も衝突が起きた南シナ海に艦船や偵察機を送ることを検討し始めた。日本も哨戒活動を行うという。紛争に自ら首を突っ込もうというのである。アジアはさらに「波高し」である。
 また、核拡散防止条約(NPT)再検討会議を念頭に、米主導の核独占体制再構築への協力を表明した。
 安倍政権は、衰退する米国のバランス・オブ・パワーの策略に縛られ、捨て駒にされる道を選択した。わが国は対中国で矢面に立ち、偶発的事態を含めて軍事衝突に巻き込まれかねない。「希望の同盟」どころか、亡国と絶望の道である。

売国政権倒し、独立・自主の進路を
 安倍政権による亡国の道を打ち破らなければならない。
 「平和の党」を自称しつつ、安全保障法制で訪米前にやすやすと安倍・自民党に屈した公明党中央を徹底的に批判することが必要である。
 日本は一九五一年に形式的に「独立」したが、以降も、政治・経済すべてにわたって米国に縛られた従属国のままである。沖縄の米軍基地問題だけでなく、国の独立に不可欠な食料やエネルギーの自給を放棄し、国富は米国債購入などで収奪され、バブル景気とその崩壊による国民経済・国民生活の疲弊、さらに深刻な財政危機を抱え込むことになった。
 安倍政権が日米首脳会談で約束した道は、対米従属政治を危険な方向にさらに深め、国民経済・国民生活の苦難を倍化させるものである。
 独立・自主で、中国も含むアジア諸国と連携して平和を確保し、アジアの共生を図る方向へと、国の方向を変えなければならない。この下でこそ、領土問題でも一歩も譲らず、戦略的に解決できる。
 安倍政権の策動はすんなり進む保証はない。
 沖縄県民をはじめ国民の、財界や保守層の一部を含めた反発は不可避である。沖縄県民は「辺野古基金」など新たな闘いを開始、政府と対峙(たいじ)している。
 TPPも、農協改革など「岩盤規制」問題と相まって、自民党の支持基盤にも甚大な影響を与える。これは地方を中心に自民党内に反映するし、現に不満と抵抗がある。
 韓国や中国など近隣国との関係も打開できず、財界や官僚の中にさえ、不満が高まろう。
 そもそも、米中関係は経済面を中心に深い依存関係にあり、「新しい大国間関係」で合意してもいる。今秋には、習近平国家主席の訪米も予定されている。わが国は対中関係で米国に利用されたあげく、「はしごを外される」可能性さえある。
 独立・自主の政権をめざす広範な戦線をつくり、労働組合はその先頭で闘わなければならない。
 沖縄県民との連帯はきわめて重要である。県民の闘いは、わが国の独立を求める国民運動の重要な一部になり得るからである。
 労働者・労働組合の戦略的な闘いだけが、事態を変えられる。


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