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2015年3月25日号 6面・2015年3月23日

大阪市廃止・再編を
決する住民投票について

橋下・維新の党の政治に終止符を

日本労働党大阪府委員会委員長 川崎 正

 四月の統一地方選挙直後に橋下・大阪市長らが提唱した「大阪都構想」の住民投票が行われる。日本労働党大阪府委員会(川崎正委員長)はこの住民投票に反対し、橋下政治を終わらせよという声明を出し、労働組合、市民各層への働きかけを強めている。以下、声明を掲載する。


1、住民投票に反対を呼びかける
 大阪市を廃止して、五つの特別区を設置するための、いわゆる「大阪都構想」住民投票が四月二十七日告示、五月十七日投票の日程で実施されることになった。
 住民投票で問われるのは、「大阪都構想」の是非だけではない。橋下市長は、住民投票実現のため安倍政権に助けを求め、引き替えに安倍首相が悲願とする「憲法改正」を支持することを表明した。また二〇〇八年以降の橋下・維新政治の実際は、財政危機に責任のない一般公務員を含む大多数の府民に、財政再建の名で犠牲を強いてきた。
 問われているのは、この橋下・維新政治を終わらせるのか、それとも継続させるのかである。
 大阪市民に住民投票で反対票を投じ、この橋下・維新の政治に終止符を打つことを呼びかける。

2、安倍政権を右から支える橋下・維新の党
 「大阪都構想」は、一〇年に当時大阪府知事だった橋下らが立ちあげた「大阪維新の会」の看板政策として掲げられた。だが、橋下の大阪府政への登場自身も、この構想も、堺屋太一を導きとした関西財界、一部中小企業家らが準備したのである。〇二年には関西経済同友会が「関西活性化のために大阪府と市の統合を」と関西州に向けた提言を出している。
 「二重行政の解消」で大阪市を廃止し、権限や財源を府(都)に集中し、直接的には地下鉄や上下水道などの資産を民営化、売却し、カジノ設置や広域インフラ整備を効率よく進めるためである。
 もう一つ、橋下が財界に託されたのは、徹底した労働組合攻撃という階級的要請だった。公務員、教職員、交通局などの大幅な賃金カット、どう喝と職員基本条例、教員基本条例などの政治的弾圧である。
 これらの政治が支持を受けたのは、一九九〇年代以降の大阪経済の「地盤沈下」が著しく、そこにリーマン・ショックが事態を加速し、大阪府民の低所得化、貧困化が進むなかで、その民意に働きかけた橋下の巧みな宣伝が功を奏したからである。
 「維新」は一一年の統一地方選挙、府知事、市長のダブル選挙で勝ち、民主党政権の「決められない政治」を批判して、「日本維新の会」を結成、一二年の衆議院選挙で国政に登場した。石原、平沼らの保守反動派と結びつき、その政策は、日米同盟基軸、憲法改悪、決定できる統治機構などの反動的政策で、対米従属のわが国支配層の基本政策そのものであった。維新の主要幹部は、松井幹事長ほか大阪自民党の一部、これに竹中平蔵、上山信一ら米国肝入りの輩(やから)がつき、今でも事実上の府政、市政の司令塔、「府市統合本部」の顧問などに居座っている。
 第二次安倍自公政権のもとで、相次ぐ不祥事もあり、堺市長選挙での敗退、昨年の出直し市長選挙でも一人芝居を演じ、橋下・維新の党は退潮が明白となった。公明党はいったんは「都構想反対」に回った。
 これが一転し、「住民投票」が現実になったのは、一四年末の衆議院選挙とこんにちの安倍政権の事情がある。安倍政権は難局の打開を狙って選挙を行い安定多数を確保し、四十二議席を確保した維新の党を抱き込む工作をした。橋下・維新が改憲に協力することと引き替えに、創価学会を通じて公明党中央に動かせ「住民投票」実現を決めたのである。安倍政権は道州制への突破口となる「都構想」にも期待しているのである。
 その後、安保法制整備や改憲策動、対米従属の政治が自公合意のもとに急ピッチで進められている。さらに支配層は財政危機を増税、社会保障費や人件費削減などの国民負担で乗り切るために、実績のある橋下の役割を必要としている。
 橋下・維新は安倍政権の政策を右から支える役割を担おうとしているのである。

3、橋下・維新の政治で府民・市民の生活はいちだんと悪化した
 世論調査などでは「都構想」に賛成する理由として、橋下の「改革への姿勢や手法」を第一にあげている。こうした橋下の支持層は、財界や中所得者層だけでなく、低賃金で生活に困窮している労働者や中小商工業者も多く含まれている。
 橋下・維新の政治が行ってきたことは、財政再建を理由にして、公務員攻撃による人件費削減、生活や文化や各団体等への膨大な数の各種補助金を削減、これらに都市開発や空港ターミナルなどの資産売却、大阪市では地下鉄、バス、水道、下水道、ごみ、幼稚園、保育園、病院、博物館など九事業の民営化を狙い、これら事業に徹底した競争原理を導入することであった。
 これらは「大阪経済の地盤沈下」も「破綻寸前の財政」を理由としたものであった。しかしそれにはそれぞれ原因があり、責任がある。
 まず、大阪府で六兆円超、大阪市で五兆円超もの財政赤字の原因は九〇年代のりんくうタウン、WTCなどの大規模開発である。日米構造協議での六百三十兆円の公共事業支出の地方負担であり、これによってゼネコン、電気産業など関連する企業、利子払いを受けた金融機関にとっては利益となった。
 それに、府内大企業はこの二十年間、グローバル競争に勝つためとして業界再編、東京への本社移転、海外進出、そして総額人件費削減と中小零細への犠牲の転嫁をしてきた。 府民経済計算で見ると、企業利益は右肩上がり、労働者の賃金総額と自営業者の所得は右肩下がりである。大企業は利益を上げたが、同時に大阪から逃げ出した。所得流出、転出人口の増加の原因はそれらの大企業がつくってきたのである。
 その結果、大阪市では年収三百万円以下の世帯は、九八年には全世帯の三七%だったのが、一三年には五〇%になっている。半分の世帯が年収三百万円以下で生活をしている。そのうち年収二百万円以下の世帯が約三割で他都市に比べてきわめて高い。
 橋下政治のこの期間も、大企業の活動とそれを支援する国政の下で、大阪府民の生活は悪化し、貧困化が進んだのである。誰に責任を取らせるかは明白である。
 国民犠牲の国政と闘いつつ、困窮する府民・市民を支援するのが府政・市政の役割である。ところが、橋下・維新の政治の実態は、財政危機を公務員を含む府民、市民に押し付け、一部を潤している。この実態を、打撃を受けている人びとの中でこそ暴露しなければならない。

4、公明党は市民との約束を果たすべきである
 公明党中央の裏切りが、この住民投票実現という新たな情勢をつくった。
 公明党は、九九年の自公連立政権以降、自民党と相互依存を強め、こんにち、安倍政権の悪政を支えている。昨年の集団的自衛権容認では、「平和の党」を事実上捨てた。歯止めはなくなり、こんにち、自衛隊の海外活動を大幅に拡大する安保法制を自公両党で合意した。また一歩、対米従属でアジアと敵視する政治を支える役割を果たそうとしている。全国の公明党員や支持者の思いを裏切るだけでなく、日本の将来を危うくする問題であり、われわれは公明党中央の態度を厳しく批判する。
 今回の住民投票をめぐっての公明党中央の裏切りは、地元の党、議員にとっても寝耳に水であった。現場には大衆のために働くまじめな議員がいることを知っているし、また支持者の多くは本来、安倍や橋下の政治によって犠牲を受けている府民、市民である。
 公明党は「住民投票は実施するが、『大阪都構想』には反対」を確認したと報道されている。しかし、すでに十五万票の組織票をもつ関西創価学会としては自主投票を決めたという。公明党員と支持者が一致して住民投票で「反対票」を貫けなければ、府民、市民から批判を受けざるを得ない。
 安倍政権を支える、一連の公明党中央の態度を是認すれば、安倍政権がめざす「憲法改正」まで突き進むことになる。大阪では大阪市が解体され混乱し、府民・市民の生活がさらに悪化し、維新政治が継続されることになる。
 公明党員、その支持者には、自らの信念をもち、住民投票で「反対」することを呼びかける。

5、橋下政治を終わらせ、府民大多数のための府政の実現をめざそう
 目前の住民投票では橋下・維新政治に反対するすべての団体、勢力、個人の努力を支持する。
 橋下・維新の政治の下で、一般公務員、教育現場、福祉や医療現場、文化団体など広範な人びとが、犠牲転嫁を強いられ、不満を抱いている。こうした声を促進し、住民投票での「反対」に結びつけよう。すでに反撃が始まっている。
 住民投票の後には、十一月に府知事選挙、市長選挙が予定されている。
 長期にわたる大阪経済の長期低迷は、根本的には環太平洋経済連携協定(TPP)、日米安保体制の強化など対米追随で大企業重視の国政を転換することなしにあり得ない。こうした安倍政権の政治方向に反対し、大阪の地域資産、資源を生かし、中小企業、小規模企業の存立を重視すること、アジアとの真の共生を図り徹底して内需を拡大し、労働者はじめ府民各層が飯を食えることを第一とする府政、市政に変えなければならない。
 労働運動の果たす役割が決定的である。八〇年代以降労働運動が地方政治で闘わなかったことが橋下らの登場を許したのである。大幅賃上げ、非正規労働者の待遇改善など現場の闘いとともに、同じ悪政の下で苦しむ中小零細・自営業者の要求の支持し、府民各層の連携を促進することが必要である。
 われわれ日本労働党は、府政、市政の大転換のために、政策能力を高め運動を組織していく決意である。 


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