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2015年1月1日号 4面〜7面

総政治部責任者・
秋山秀男同志に聞く

 資本主義が末期症状を呈し、「戦争を含む乱世」の様相が色濃くなるなか、激動の新年が明けた。「労働新聞」編集部は、党中央委員会総政治部責任者の秋山秀男同志にインタビューを行った。同志は、昨一年を振り返って党の闘いと成果を概括するところから始め、内外情勢のポイントについていくつか、さらに本年の党の闘いについて語った。戦後70年を迎えることもあり、対米従属のわが国は、国の進路がいちだんと問われている。インタビューは、闘いと党建設、統一戦線の前進に向け、決意にあふれるものとなった。以下、掲載する。


 大嶋 あけましておめでとうございます。

 秋山 おめでとうございます。

大嶋 今年は党中央委員会総政治部責任者の秋山同志へのインタビューという形で新年を始めたいと思います。
 リーマン・ショック後の危機はさらに深く、米国は衰退を早めています。中国はアジアインフラ開発銀行(AIIB)などで、第二次世界大戦後の米国主導の国際秩序への「挑戦」を強めています。
 ウクライナ、中東などもあり、世界はまさに「戦争を含む乱世」の様相です。
 日本では、アベノミクスの下で国民の大多数の生活はさらに厳しくなった。一方で、大企業は空前の利益をあげています。
 詳しくは「社説」で述べていますが、安倍政権は昨年末に選挙に打って出て、野党の弱さもあって、自公与党では以前とほぼ同数の議席を確保した。
 第三次安倍政権は、アベノミクス、外交では日米同盟強化を続け、さらに踏み込もうとしています。今年は「戦後七十周年」でもありますが、わが国の独立がいちだんと問われる年になると思います。
 わが党は、一昨年の第十回中央委員会で新たな中央指導体制を決めました。その下で昨一年を闘ってきました。
 最初に、そこでの成果や課題などについて、お話しいただきたいと思います。

昨一年を振り返って、党の闘いと成果

秋山 国際的にも国内的にも情勢が激しく揺れ動くなか、われわれ労働党は昨一年、一生懸命闘ってきました。特徴的なことについていくつかお話ししてみたいと思います。

・思想政治面の闘い
 一つは、こんにちの世界の激動や動乱をどう評価するかという問題で、不十分ながら、党派闘争の試練に耐えられる一定の見解を打ち出せたのではないかと思います。
 数年前から、世界は「戦争を含む乱世」となったと論壇を下しましたが、ウクライナ危機、中東大動乱、米中間の「新しい大国関係」と言われる複雑なせめぎあいの進展など、ますますその様相が深まったのではないでしょうか。
 二〇一四年は主要な大国間の力関係の変化の結果、国際政治でも新たな地殻変動が生まれてきた年であると考えます。
 もう一つ、われわれはこの数年前から、〇七年サブプライムローン問題、〇八年リーマン・ショック以降の米国発の世界金融・経済危機の深刻化に関連して、資本主義の末期症状がいちだんと深まっている、と考えています。資本主義は、来るところまで来ている。世界に対する大局的な認識で、敵と闘える考え方を打ち出しているのではないかと思っています。
 しかし、こんにちの危機がどのような経路をたどって、どこに行くのか、その素描することが第十回中央委員会総会以降の課題になっています。まだ力不足ですが、今後引き続き進めていきます。
 ここで、安倍政権と闘っていく上での理論政策面、あるいは路線上の問題についても若干の前進があったので、触れておきたい。
 わが国の危機は非常に深いと思います。安倍は彼なりに、危機をどう脱却して「強い日本を取り戻す」のかということを目標にして、「経済再生」から始めていくという。安倍は包括的な政策を打ち出して、戦略的に進めています。残念なことに、野党は、安倍に対して政策的な対抗軸を出せないということが非常にハッキリしたわけです。
 わが党はこの点について非常に鮮明です。諸悪の根源が、歴代自民党政権の多国籍企業中心で対米従属の政治であること暴露し、独立の旗を掲げて、統一戦線を築き、独立・自主の政権をめざして戦略的に闘おうと主張しています。共産党も含めて、他の野党はこうした対抗軸を提起できていないのです。
 共産党はむしろ、米帝国主義との闘争や対米従属政治には触れないことに、最近の特徴があると思います。それはやはり、共産党はいずれ保守政党主導の連合政権に加わりたいのか、政権にありつくために米国や対米従属政治のことを正面から暴露しない。
 わが党は、昨年十一月に第十一回中央委員会総会を行いました。そこでも、まだ不十分ですけども、外交・安全保障、経済、それから地方政策などで、党の政策を一定程度打ち出しています。これも、若干の前進ではないでしょうか。
 少し長くなりましたが、政党の生命線である理論、政策の問題や思想政治面での闘いという点では、そうしたことが昨一年、やってきた主な内容です。

・沖縄県民の闘いを支持し、本土で連帯活動に取り組む
 次に安倍政権との闘争です。いくつかの方面があったと思います。
 強調しておきたいのは、沖縄県民の闘いを支持し、その動きを全国で発展させていくため、いろいろな活動に取り組んだことです。
 沖縄県民はこの数年間、普天間基地(宜野湾市)の返還問題、名護市辺野古の米軍新基地建設問題や、垂直離着陸輸送機オスプレイの配備などをめぐって、県民運動が起きています。数年前には上京団を派遣し、「建白書」を政府にぶつけ、「島ぐるみ」の闘いが発展しています。「建白書」の内容を見れば、米軍基地問題だけではなく、主権国家としての日本のあり方を問うということも言われています。
 闘いは「島ぐるみ」で大きく発展してきました。ある意味では保守層主導ですが、統一戦線というか、いろいろ努力しながら県民運動を進め、安倍政権の策動に反対して闘い、県知事選でも一四年末の総選挙でも政治的に勝利を得るところまできました。
 わが党は昨年は県民の闘いを支持し、それを本土で発展させることに取り組みました。この取り組みは、沖縄県民の闘いを発展させる上で、多少は役立ったのではないかと思います。もちろん、この闘いは自主・平和・民主のための広範な国民連合を中心に、いろんな人びとと共同して行いました。特に良かったと思うのは、労働組合の参加です。労組と一定の信頼関係をつくることができました。これは大事なことだと思います。

・労働運動の課題
 三番目に、労働運動の前進をめざして闘ったことです。
 昨年の一四春闘では、消費税も四月から引き上げられることはハッキリしていましたし、円安で物価も上がっていましたから、労働者の暮らしを最低限でも保障するためには、「五%ぐらいの賃上げが当然」と訴えてきました。官公労では、賃金切り下げの策動がありました。条件があるところでは闘いを激励しました。民間の中小企業は深刻な状況ですが、そこでも闘いを訴えています。
 それだけでなく、労働者階級が国の進路、あるいは沖縄のような課題でも闘うように訴えてきたわけです。また、環太平洋経済連携協定(TPP)や深刻化する農業、中小企業の問題など、労働運動が他の諸階層の暮らしに関心を寄せ、その要求や闘いを支持して闘うようにも訴えてきました。
 労働者階級が、財界なり一握りの敵と闘うためには、自分たちだけではなく、農民や中小企業、そういう人たちと広範な統一戦線を組んで政治を問題にして闘ってこそ勝利できるわけです。そういう角度から、労働運動の前進を願って努力してきました。
 ただ、わが党の労働運動での活動はまだ不十分だと思っていますので、引き続き強めていかねばなりませんね。

・国民連合の強化
 次に、統一戦線の問題です。
 独立の旗を掲げて、広範な国民諸階級が結集する幅広い統一戦線をつくり、労働者階級が指導権を発揮して闘うような統一戦線構築をめざし、悪戦苦闘中です。
 昨年の新春講演では、大隈議長が、わが党は国民連合の前進に責任を負うと明言しました。以降、党は国民連合の闘いを支持し、沖縄連帯活動に取り組んだり、いくつかの県で国民連合組織再建・強化の闘いに取り組み、一定の成果を上げました。
 昨年十一月には、国民連合を中心に「総選挙—緊急提言集会」が組織されました。総選挙では、国の進路や独立の問題がまったく争点になっていない。アジアの平和、国民生活の問題を見ても、対米従属政治を打ち破る以外にないわけですが、どの政治勢力もこれを問わない状況を見て、国民連合の皆さんは我慢がならず、急きょ集会を開いたと聞いています。党としてもこれを支援しました。
 これは、現在の情勢の下で、政策的な対抗軸を立てて方向を示せれば闘争を組織できることを萌芽的ではあれ示したもので、大事な経験をしたのではないかと思っています。
 最近、国民連合は少し勢いが出てきて、前向きになってきているようですね。今年はいっそう大きな政治を打ち、特に国の進路の問題で大胆な問題提起をして闘っていくことを期待していますし、われわれも応援したいと思っています。

大嶋 そして、肝心の党建設ですね。

・党建設について
秋山 はい。最後に、党建設の問題です。
 わが党は〇五年に第六回党大会を開き、党建設について問題点を整理して闘う方向を明確にしました。以降、その建党路線にそって党建設を進めてきましたが、一進一退の状況が続きました。一昨年の第十回中央委員会総会では、もう一度六大会の建党路線に立ち戻って闘うことをハッキリさせ、昨一年も進めています。
 組織建設での具体的成果は乏しく、まだ、これからです。しかし、いくつか貴重な経験をしましたし、先進県では、今後の党建設に向けた一歩を踏み出しました。
 たとえばある県ですが、党籍がありながら関係が疎遠になっていた同志たちに会いに行き、話をする活動に取り組んだ。県党は、こうした取り組みの結果、活性化というか、党に勢いが出てきている。それに、現場の同志たちが、まだ少数ですが、立ち上がりました。これは、以前に比べれば大きな変化です。指導部自身が、「県党には実力がある」と、党の力が大きく見えるようになった、そのように党への認識が変わり、元気になったからです。
 なぜ勢いが出てきたのか。何十年ぶりに会う同志もいましたが、そういう同志に会うと、かれらが胸中に党の旗を掲げてがんばっていることが分かる。地域で労働組合運動をやっている人もいるし、自治会や農民団体で活動している人びともおり、皆、安倍政権に不満を持ち、「何とかしなければいけない」と思っている。労働党の前進に期待している。県の指導部は、現場の同志たちの多くが、党員としてがんばっているということを改めて実感したということが大きかったと思います。
 なぜ関係が疎遠になっていったかというと、詳しくは省きますが、指導部が諸般の事情から連絡を取らなかったり、勝手に切り捨てたりしたことが大きな理由です。
 この間、労働党には何千人も党員が入っているのですが、特に工場労働者が多かった。振り返ってみれば、指導部は現場からかなり浮いていたのです。指導部は現場の同志たちに党の必要さからいろいろ要請しますが、しかし、党の同志たちが現場でどうしているか、どんな困難、悩みを抱えているのか、党指導部に何を求めているのかということについて、よく話を聞き、現場の闘いを尊重して、発展を促す点で、指導部は考え方の面でも弱点があり、また実力不足だったことを改めて反省しなければならないなと思っています。
 根本的には、労働者階級の可能性、力、それを理論的にも、経験を通じても、なかなか信じられなかった党幹部の思想上の弱さに気づかされたと思います。それは、今後、現場党員を指導していく上でも、労働者階級の中に入り、結び付きを広げる点でも、党建設上、重要なヒントを得たことになると確信します。
 もちろんすべての県が同じように取り組んだわけではない。量的活動が随分と違う。また取り組んだ県でも、二〜三の県を除き、闘い取った成果に違いがあります。余りにもバラつきがあることも事実です。
 しかし、党建設を進める上で貴重な経験をしたことは確かです。

激動の内外情勢について

大嶋 ありがとうございます。
 次に、昨一年の内外情勢を振り返っていただきたいと思います。
 まず、国際情勢の現象的なことについて羅列しておきます。
 昨年は、春にはウクライナ問題の発生、夏には「イスラム国」の台頭、秋にはAPEC総会などがあった。それらを通して、米国の衰退が以前にも増して鮮明になったと思います。そのオバマ政権は、中間選挙で歴史的な大敗を喫した。一方、中国はAIIBを呼びかけるなど、米国主導の第二次大戦後の国際秩序に挑戦する動きも強めました。国際的に、「反米」「非米」の動きが広がっている。
 経済では、リーマン・ショック後の危機が、いちだんと深い。米国の金融緩和からの「出口戦略」は世界に混乱の火種を振りまいていますし、昨年末には原油安をきっかけとして新興国、とくにロシアが困難に陥っている。ヨーロッパや中国などでも実体経済が鈍化しました。米国内での雇用情勢も大変です。
 危機のなか、各国支配層は人民への犠牲の押し付けを強めており、これに対する闘いもあります。G20(二十カ国・地域)会合などでも何も決まらず、諸国間の対立も激化しています。まさに「戦争を含む乱世」です。
 まずは国際情勢のなかで、ポイントを思われる点について触れて下さい。

・米中関係や米国の階級情勢
秋山 まずは米中関係についてです。
 昨秋のAPECなど一連の国際会議で、中国の国際政治における台頭、影響力の拡大が目立ってきた。戦後の米国を中心とした、金融、経済、安全保障の「秩序」に挑戦していることが非常に具体的にあらわれた点が、最近の国際情勢の一つの特徴ではないかなと思うんです。
 具体的には、ご指摘のAIIBを提唱している。あるいはBRICS開発銀行を提唱しているわけです。AIIBには、中国と領土問題を抱えるベトナム、フィリピンとか、かなりの多くの国々が参加を表明している。
 根拠は、中国に経済的、金融的実力があることです。輸出による貿易黒字が相当大きく蓄積し、外貨準備が膨大にある。四兆ドル弱ですね。以前は日本が一番だったんですが。この間、中国経済の発展で、金融的な実力が飛躍的に大きくなっている。
 そのカネを使って、AIIBなどを提唱したということです。米国が戦後、ドルを基軸通貨として、金融面、経済面で国際秩序をつくってきたわけですが、それがいま揺らいでいる。米国は金融業で稼ぎ、少数の金融資産家がボロ儲(もう)けしているが、大多数の労働者国民は貧困にあえいでいる。米国資本主義は、一部の人を除いた国民を食わせることがなかなかできず、経常収支と財政という「双子の赤字」も解決できない。世界最大の借金国家なわけですが、ドルがまだ基軸通貨であるということで、まだ力は持っています。それでも、米国からすれば、中国の挑戦は怖いことですね。「ドルの相対化」を促すことになるのですから。
 米国の衰退を考える上で、国内情勢について若干述べます。米国経済については「好調」という宣伝も多いですからね。
 米国の優位性のある産業といえば、やはり金融です。では、それで国民がちゃんとメシが食えているのかという点からすれば、そうではない実態があります。「雇用が良くなった」といわれますが、失業率にもいろいろな計算の仕方があります。就職活動をあきらめてしまった人を含めれば、米国の失業率は九%〜一〇%といわれています。職にありついたとしても非常に低賃金で、とくに製造業での低賃金がなかなか解決できない。
 昨年は、黒人青年射殺事件を契機とする暴動やデモが頻繁に起きています。人種暴動ともいえますが、背景を見てみると、黒人の失業率は白人よりずっと高い。黒人労働者の生存条件が非常に悪化して、窮乏化が進んでいるわけです。階級矛盾の激化ともいえます。
 要するに、米国は一部の金融資産家、大銀行、ヘッジファンドなどは非常に儲けていますが、大多数の国民は貧困にあえいでいる。ある意味で、貧困大国、格差大国です。もう、米資本主義は人びとを養うことができなくなっている。歴史的な限界と見ることができるんじゃないでしょうか。

・資本主義の末期症状について
 この米国が典型ですが、こんにちの資本主義は歴史的に行き詰まっている。この社会を打ち破り、別の新しい社会を打ち立てる以外にありません。労働者からすれば、食えないわけですから。そういうところにきているということです。
 ですが、世の中ではそういうふうに見てない人びとが多い。たとえば「福祉国家をめざす」などと言う人もいる。連合はリーマン・ショックの後に「金融主導の経済が良くない。普通の資本主義であればよい」「そこに戻れ」という趣旨のことを言っています。
 われわれは「資本主義の末期症状」と言っており、「戻る」なんてことは幻想であり、できないと思っています。
 注意しなければならないのは、資本主義が末期症状だからといって、自動的に新しい社会、新しい生産様式に移るわけではないということです。労働者階級が政治権力を取って新しい生産様式を目的意識的につくる以外にない。これが大事なことだと思うんです。
 では、どうやって権力を取るのか。上部構造、政治領域による階級間の闘争、党派闘争が非常に重要になる。末期症状とはいっても、敵階級、帝国主義が巻き返しを図り、戦争で生産力をぶち壊して「立て直す」、その道だってまったくないとは言えない。もう一つ、労働者階級が他の諸階級を率いて権力を取り、新しい生産様式をつくっていくという道もあるわけです。それも、諸階級の力の相互関係で決まるわけです。
 日本でいえば、こんにちの日本の発展を妨害している最大の要因は、米帝国主義の対日支配と、それに従属する歴代政権の対米従属政治です。真っ直ぐ社会主義をめざすのではなく、これを打ち破る革命、つまり民族民主主義革命が近くなっている。こんにちの情勢では、萌芽的にしても「芽を出している」、そういう情勢だと言いたい。われわれからすれば、歴史的なチャンス、すばらしい情勢が訪れつつあるということです。それに備えて、われわれは党と統一戦線をつくって闘わなければならないということです。

・総選挙の結果について
大嶋 国内情勢ですが、「社説」でも触れていますが、総選挙に対する評価について、補足的なことからいかがでしょうか。

秋山 われわれからすれば、今回の結果は、議会制民主主義の枠内ではあれ、今後闘う上でヒントになることを示した選挙だったのではないかと思うんです。
 一つは、投票率の問題です。投票率の低下にも歴史があり、特に九〇年代から、いわゆる「政治不信」が増えている。つまり既成政党に対する不信が増えている。
 どこで投票率が減っているのかというと、地方です。大都市部はそれほど減っていない。これは、自民党に入れてきた人たちが、他の政党に行かずに棄権したということがあると思うんです。〇九年の総選挙では、自民党から民主党に行った。大量の票が移動するという歴史的な経験があるわけですが、今回はどこにも投票しない人が大量にいたということです。
 もちろん、どこの投票率が低いのか、どういう階層が少ないのか。結構、高齢者も行かなかったという報道もあります。いろいろ理由はあるのでしょうが、やはり自民党政治に対してウンザリした。それがあると思います。
 もう一つは若者です。若者は以前から投票率が低いと言われますが、若者の政治意識が低いと結論付けるのは早いと思うんです。そうでない人もいるわけで、若者の心を打つような政策を打ち出せなかったと言ってもいい。
 引き続き、研究課題だと思っています。
 投票に行かなかった人に対して、「政治意識の立ち後れ」と思う人たちも多いようです。支配層は「民主主義の危機」と心配している。われわれはそういった面よりも、自民党政権あるいは野党に対する、政治・政党不信の結果であると理解しています。ある意味で「意識票」です。安倍に対抗して日本の危機突破を明確に政策的に示せる魅力ある政党があれば、全部とは言いませんが、その人たちは必ず投票に行くだろうと思います。投票率の低さをすべて否定的に見ることは間違いだと思います。
 総選挙の結果で面白いところのもう一つは、都市と農村の問題です。
 かつて、自民党は「農村で強い」と言われていた。都市部はむしろ無党派層とか社会党、共産党だとか言われてきたのですが、様相が変わったのではないかと思うんです。三大都市圏である首都圏、中京圏、近畿圏、そこは人口が増えているけど、他のところは減っています。それと似たような結果になっている。本当は選挙区ごとに見なければいけないわけですが、これまで自民党が強いといわれた農村部で、小選挙区の得票が減っているところが何カ所もある。比例区の絶対得票率でも、そういうところがあります。
 自民党は、もともと財界のための政党です。選挙ですから、多数派形成のために都市部の中小企業と、農村部における農民と、そこで票を取るためにいろいろと政策を打ち、「バラマキ」などもやってきた歴史があります。
 それが、八〇年代から、牛肉・オレンジの自由化とか、大規模小売店舗法(大店法)の規制緩和とか、中小企業や農民を犠牲にする政策をやらざるを得なくなって、九三年の自民党長期単独政権の崩壊につながっていきます。以降、わが国支配層は保守二大政党制の構築を図りますが、これもうまくいかなかった。
 今回の選挙の結果を見ると、自民党は引き続きバラマキをやってもいますが、財政危機も深刻化して、なかなかうまくいかない。そういうなか、自民党は都市部で党の再構築を図っているというか、支持基盤を都市部の労働者上層や、中小企業の儲かっているところとか、金融資産家、そういうところでの基盤形成を図っているようなことが見て取れると思うんです。
 安倍政権はアベノミクスを展開したわけですが、これは都市部の人びとをボロ儲けさせ、地方と中小企業、それから上層以外の大多数の労働者を窮乏化に陥れてきた。こうしたことの結果、今回の選挙でも、与党が都市部で多くの票を取ったのではないかと思います。
 そうしますと、安倍は今後、困難にぶち当たることになるということです。「地方創生」と言わざるを得ないほどに、地方の衰退は深刻化しています。安倍は「成長戦略」として、イノベーションとか、生産性の向上で「強い経済」をつくるということだと思いますが、そのためには労働力の問題があります。優秀な労働力を安く確保するため、東京一極集中の若干の是正と地方の再編を進めていくのではないかと思われます。そうすると、地方での矛盾がいっそう深刻化する。それが自民党内に反映して党内闘争が激化する。
 労働者階級は独立の旗を掲げ、農民や中小企業を率いて闘っていく。それこそが、国民経済、国民生活にとっても、アジアとの共生や平和という点からみても重要です。わが党の政治路線の真価が問われることになります。
 最後に沖縄です。全国的にいえば日米関係は争点にならなかったが、沖縄ではならざるを得なかった。四つの小選挙区で米軍基地建設の問題で争って自民党に勝利した。県民のこの間の闘いが選挙にも反映されたのではないかと思います。県民は沖縄の尊厳をかけて闘ってきたが、その成果ですね。

わが党はどのように闘うか

大嶋 昨年末に総選挙と首班指名があり、第三次安倍政権が成立しました。
 今年は、戦後七十年です。第二次大戦後、対米従属政治を続けてきたわが国とっても、大きな節目の年です。
 安倍政権はアベノミクスや日米同盟強化でいちだんと踏み込んでくるでしょう。
 日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定、集団的自衛権に絡んだ関連法、安倍は憲法改悪にも踏み込んでくるでしょう。当面の予算措置だけでなく、「成長戦略」も実行し、労働法制などいわゆる「岩盤規制」の緩和、農協改革、社会保障制度の改悪による負担増、先ほどあった「地方創生」もある。
 年前半の政治闘争としては、統一地方選がありますし、わが党も候補を擁立して闘います。こうしたなかでわが党がどのように闘うか、可能なところでお話しください。

秋山 六大会以降のわが党の中心任務は、一般的には労働運動の階級的革命的な形成・発展であり、具体的には労働党の影響力の拡大と党建設であります。
 破局は迫り、それに備えて戦略的に党をつくることを追求して来ています。党建設は待ったなしの緊急の課題であり、今年は是非前進を闘い取りたいと考えます。
 そのためには、情勢と大衆の要請に応えて積極的に闘うことが必要です。また、思想政治面で党派闘争を進めて、帝国主義のイデオロギー攻撃と闘い、またそれに屈した共産党などの有害な見解を暴露して闘い、労働者の自覚を促し、労働者の中で党の評判を高めていかねばなりません。

・理論政策面での闘いを進める
 一つは情勢評価に関わることですが、もっとリアルに分析し、内外の危機がどのような経路をたどって、どこでどのようにして爆発するのか、この問題は十中総でも提起されましたが、まだ途上です。さらに研究を深め、一定の見通しを描きたいです。
 特に、国内情勢評価が重要です。安倍政権がいつまでもつのか、この二年程度で何が起こるのか、見通して備えることが大事です。そのためには外部環境としての日本を取り巻く国際情勢が経済でも地政学的なリスクでもわが国にどう響くか、また諸階級の経済的生存条件の変動と諸階級の相互関係がどう動くか、それが上部構造・政治の領域でどんなふうに反映し、党派間の政治闘争を激化させるのか、これが描けるようにならなければ党は主導的に闘えないと思います。とにかく、真剣に取り組み、問題解決に努力しなければなりません。
 もう一つは、安倍のニセ「独立」の道を暴露し、独立・自主の政権樹立をめざして戦略的に闘うためには、国の進路問題を中心に政策的な対抗軸を打ち立てることがまず肝心で優先すべきことです。知識人、有識者、政治家、労組活動家など国の前途を憂い、また安倍の内外政治に危機感を強めている各界の皆さんに問題提起をして、ご意見を聞き、討議して、闘いに役に立つものをつくらねばと思います。この課題は十一中総で提起しましたので継続して、内容的に豊富化していければと思います。

・外交、安全保障の課題、また国民生活の課題でも独立の旗を掲げて闘う
 安倍は「強い日本を取り戻す」ことを狙って、経済再生を優先させながら、外交では「地球儀俯瞰(ふかん)外交」、安全保障では「積極的平和主義」を唱え、積極的に動いています。
 これは誰のための政治でしょうか? 米国の「アジア・リバランス戦略」を支え、日米安保同盟で中国に対峙(たいじ)するものであります。落ち目の米帝国主義に奉仕するものであり、また海外に進出して、厳しい大競争、争奪の争いにさらされるわが国多国籍大企業の要請に応えるものです。
 これでは日本はいつまでも米国の属国から抜け出せず、むしろいっそう深く米国の戦略に組み込まれ、戦略的なコマとして使い捨てにされるだけです。
 巧妙なことに、安倍は、「独立」「自分の国は自分たちで守る」とか言う。そう言い、国内にある独立を求める国民の気持ちや排外主義もうまく動員し、幅広い政治的支持を得ながら進めている。
 諸政治勢力の中で、安倍政権に対して「暴走」とか「戦争をする国づくり」という批判はありますが、誰も対米従属政治を打破しようと言わない。安倍の「ニセ独立」の道を暴露せずに、どうして勝てるのか。
 安倍政権は当面経済再建に力を入れながら、日米ガイドラインの再改定、集団的自衛権の行使容認(最終的には憲法改悪)などを進めることになります。また、今年戦後七十周年を機に、安倍がどんな談話を出すのか、これは見物ですね。
 安倍はジレンマにあるのではないでしょうか。一方では、中国とも「うまく」やっていかないといけないし、それに米国も注目しています。何しろ、靖国神社に行ったら「失望した」という話になっているわけですから。安倍は河野談話や村山談話を「内閣としては受け継ぐ」と言っていますが、七十年談話で「安倍カラー」を出すのかどうか。安倍の支持基盤は右派勢力が大きな柱の一つですから、そういう連中を満足させないといけないですからね。労働党はこの問題で党の見解をきちんとしておく必要があると思います。
 言いたいことは、外交・安全保障だけでなく、経済的にも対米従属の諸関係が日本をいびつなものにしており、それが限界に来ているということです。金融面での従属関係も、八五年の「プラザ合意」あたりから強まってきたわけです。ドルを支えるために日銀が金利を下げたり、米国債を買ったりしました。小泉政権時代には、三十兆円も四十兆円も買ったわけです。それは、米国がイラク戦争に突入するなかで、米国の財政を支えるためという面もある。米国は、世界から資金が還流する仕組みをつくって生き延びてきましたが、それをもっとも支えているのが日本です。
 中国も米国債を買い、米中は「持ちつ持たれつ」の関係にある。中国には米国の市場や技術力が必要だし、力を蓄えるまでは、基軸通貨ドルも活用する。他方でドルが暴落したりすることを、またいずれ基軸通貨の座を追われることも想定し、備えてもいる。そういう点で、中国は戦略的です。日本は歴代の従属政治の結果として、ドル、米国債を買わされているわけで、本当にじり貧です。展望、戦略をもってやっているわけではない。
 今回の黒田日銀の量的・質的緩和にしても、米国の「出口戦略」を容易にし、米国や世界経済のダメージを少なくするという狙いもあります。
 金融緩和政策では経済再生はできないことは今や明らかです。いつまで続けるのか、国民に問わなければならない。
 地方創生の問題に関連してです。
 統一地方選を目の前にして、安倍は予算を組んだり、ばら撒いたりするでしょう。しかし、こんにちの深刻化する地方の疲弊(人口減少、地域経済の弱体化)は誰の責任でしょうか? 戦後の従属的な日米関係が、農業・農村、資源・エネルギー、地域の中小商工業、人口の社会的な流出などをつくり出してきたのです。米国と大企業のための対米従属政治を転換しない限り、「地方創生」はあり得ません。
 わが党はアベノミクスの下での県政、自治体政治で政治を牛耳る「一握りの敵」を具体的に暴露して闘いを進めます。統一地方選挙でも党の同志を立てて争います。
 安倍政権と闘う点では、これを支える公明党を暴露・批判することが重要です。公明党中央は「政治の安定」とか言って自民党政治を支え、集団的自衛権の行使容認も、結局は認めた。いろいろ言い訳をしていますが、創価学会員をはじめとする支持者、下部党員を欺いている。選挙にしても、公明党の支持がなければ、自民党議員のかなりの部分は、小選挙区で当選できません。下部の公明党員は、連立政権からの離脱を求めるべきですし、中央がそうしないなら、党をつくり変えるために闘うべきです。そうしてこそ、支持者の願いも実現できるのではないでしょうか。

・沖縄の闘争を支持し、本土で沖縄連帯の闘いに本腰を入れる
 いま焦点化している辺野古での米軍新基地建設反対の闘争を支援します。安倍政権はいろいろ策動し、沖縄県内の戦線を分断して、また沖縄の孤立化を図ることは明らかです。全国で新基地建設反対の世論を盛り上げて、安倍政権を政治的に包囲し、孤立化させることが必要だと思います。われわれは本土で引き続き沖縄と連帯して闘います。
 辺野古基地建設への反対闘争がどうなるかは大事なことですが、いずれにしろ、沖縄の闘争は長期に続くことになります。ですから、われわれは戦略的に構えて闘うことが必要だと思います。
 沖縄県民は何を求めているのか?平和に、そして「豊かに」、何よりも尊厳を持って生きることだと思います。安保条約を破棄し、米軍基地を沖縄から一掃し、独立を闘いとる、そして、経済、産業を興こし、アジアと平和な関係をつくっていく、そのために県民は団結して闘っているのだと思います。
 われわれはますます本腰を入れて、本土の労働者階級が、独立・自主の旗を掲げて、沖縄に連帯して闘うことが自己の根本的利益にかなうことだと訴えて、戦線の再構築を図っていきたいと思っています。
 併せて、沖縄の労働運動が独立の旗を掲げ、主導権を握って闘うことに期待したい。労働運動の発展、それを保証する統一戦線と党建設の発展をめざし、いっそう奮闘しなければとならないと思います。

・統一戦線、国民連合
 三番目は、国民連合の問題です。
 昨年、総選挙への提言集会に取り組んだことは述べましたが、国民連合の日米安保条約破棄、自主・平和・民主という方向が、情勢を切り開く上で力になることが萌芽的に示されていると思います。
 今年は、国民生活危機突破の課題で、また国の進路の課題でも、安倍政権に対抗して政策的な対抗軸を立てて、より幅広い独立・自主の戦線構築をめざして、戦略的に闘うことを期待したいと思います。
 今年は戦後七十周年を迎え、歴史認識問題を含む国の進路の課題、つまり日本は世界で、アジアでどう生きるのかという問題はますます大きな政治的争点になると思います。日中関係の打開、アジアの平和と共生の重要な課題でどのように闘うのか鋭く問われると思います。
 今年は、国民連合が訪中団を派遣する予定であるということも聞いています。実り豊かな訪中の旅となることを期待します。世界を、天下国家を語れる国民連合に大きく成長する機会になればと思います。そうすることで、国民連合がより大きくなっていく力をつくれるんじゃないかと思います。それを応援していきたい。

・労働運動の前進のために闘う
 われわれは労働組合、組織労働者が一五春闘に際して、「すべての労働者に大幅賃上げを」の要求を掲げて大多数の底辺の労働者、未組織や非正規の労働者とできれば連携して堂々と闘うことを支持します。連合中央は「四%」と言いますが、消費税再増税、物価値上げもあるわけで、もっと大胆な賃上げを要求すべきです。
 わが党は、数年前に官公労での賃金分析を財政分析と結びつけて行い、地域の大企業が地方財政に食らいついてぼろ儲けをしていることを明らかにして、労組活動家に問題提起し、激励しました。これに比べると、民間は難しいところがあるんですが、企業の財務報告などを分析して、賃金問題での矛盾がどこにあるかを突き止めた、民間労組・活動家に問題提起していきたいと思います。
 また、今年は、各都府県で労働者の中に入り、一つでも現実の闘争を支援して、かれらの切実な要求実現のために汗を流します。労働者・労働組合との結びつきを強め、拡大していきます。
 これらの行動を進めるためにも、党中央は労働運動内部の諸潮流を把握し、かれらの見解、路線、政策を比較研究して、進むべき方向を明らかにして、争います。労働党は、労働運動の中で党の考えを広め、影響力を広げるということをやっていきたいと思います。

 ・党建設について
 いろいろ闘っても、党建設で具体的な成果を上げなければすべては空論に終わります。このことを肝に銘じて、今年は闘います。
 われわれは、党の思想政治建設という点でもっと意識的に取り組みます。「資本主義の末期症状」という大局的な認識の問題、世界情勢評価に関する基本矛盾・主要矛盾の問題、党の政治的総路線の具体化に関わる問題、福祉国家論の批判、など党の見解をきちんと打ち立てねばなりません。都府県では県委員長が、中央では指導部が先頭に立って闘うことが思想政治建設にとって必要不可欠です。原則に関わることは恐れず大胆に、真剣に議論してこそ党の思想政治建設は進むと思います。
 それと、これは長く言う必要はないでしょうが、昨年、疎遠になった同志に会いに行く活動のなかで実感したことですが、この社会が階級社会だということ、労働者階級が何を余儀なくされているか、労働者階級が団結すれば大きな力を持っているということなどを、理論でも経験としてもきちんとしていきたい。
 現実に労働者の生きた闘いを支持し、労働者との結びつきを強め、闘っていくということです。まだ労働者との結びつきが弱い点があると思いますので、この弱点を克服していきたいと思います。
 それに、労働者階級と全党の同志たちを信頼し、党の目標や計画を話して、闘いを呼びかけるように努力する。職場や工場で、また地域で大衆とともに闘うようにしようと。
 最後ですが、基本的には六大会路線の具体化、都道府県においては県政奪取を戦略目標として、そのための条件をつくっていくということで、労働運動を闘えるようにしたり、県の統一戦線をつくったり、全県的に党をつくる。闘う火種は蓄積していると思うので、県政や自治体政治と闘いながら、この建党路線の具体化を進めるということに力を入れたいと思います。
 この党建設の点で、ぜひ新局面をつくりたいと思います。
 この場を借りて、全国の読者、仲間の皆さんに、安倍政権と闘うにはどうするのか、いつまでも既成政党に追随してよいのか、労働者階級の役割をハッキリさせて闘おうと訴えたい。
 そのためにきちんとした政治路線を持ち、闘争を組織できる革命政党が必要です。労働党はそういう政党をめざして闘っていますので、ぜひ、労働党に結集して闘うことを訴えたいと思います。特に、青年労働者を党に獲得する問題で切り開いていきたいと思います。
 全党の皆さんと団結してやっていきたいと思います。

大嶋 ありがとうございました。今年も団結してがんばりましょう。


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