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2015年1月1日号 1面〜3面

第47回総選挙の結果について

 第四十七回総選挙(二〇一四年十二月十四日投開票)の結果、自民党は議席数を四減らした。公明党を加えた連立与党では、辛うじて公示前と同数の三百二十六議席を維持して、第三次安倍政権が発足した。
 内外の危機が深まり、安倍政権の「アベノミクス」など財界中心の対米従属政治が国民生活を破たんの縁に追い込み、生活危機と国の進路の打開が喫緊の課題となっている。だが総選挙では、そのためのわが国の独立を中心課題とする国民大多数のための政権樹立という「真の争点」は争われなかった。有権者の多くが投票所に足を運ばず、投票率は五〇%を辛うじて超えたにすぎなかった。自民党への支持は、有権者全体のわずか一六・九九%にすぎない。
 労働者、国民各層が、高まる不満を自民党にはもちろん議会政治に託すことができないのである。他の道、国民運動の高揚、直接民主主義に託す時代の接近を予感できる選挙であった。
 安倍政権、与党は、日米同盟強化に代わる対抗軸や、アベノミクスに代わる政策も持たない野党の弱点と準備不足を突いて選挙戦を闘った。選挙制度、とりわけ小選挙区制の欺まん性も最大限に利用し、さまざまな術策も弄(ろう)したが、それでも議席数も得票数(小選挙区)も減らした。
 ところが支配層は、マスコミを使って「自公圧勝」という評価を誘導した。安倍はここで最後に「勝利」した。民主党など野党各党は、なすすべなく術策にはまって意気消沈している。「躍進」した共産党にも情勢を揺さぶる力はまったくない。
 自民党内は、とにもかくにもの「敗北」回避で胸をなでおろしている。安倍は、当面する政局で主導権の再確立に成功した。財界は「大いに歓迎」(榊原経団連会長)している。米国も同様である。
 選挙は有権者の支持を争うだけでなく、結果についての評価も、このように党派的でそれ自身が闘争である。だから、労働者階級は自身の結果評価と見通しを持たなくては、敵の術策にはまって闘うことができない。
 安倍政権が悪政にさらに踏み込もうとした解散断行の狙いは、成功しなかった。改憲のための議席数は大幅に後退した。これは、安倍の大きな誤算だろう。「勝利」を狙って消費税再増税を延期した結果、二〇一七年四月に向けてほぼ解決不能な難題を抱え込んだ。
 農民や商工業者などの不満を代弁する議員も議席を得るなど、自民党内にもマグマがたまっている。わが国のアジアでの孤立は、国内矛盾を激化させる。タカタのリコール問題に見られるように、米国は生き延びるために「日本たたき」に乗り出している。内外ともに先行きは困難だらけで、安倍政権が地雷原を突破するのはほぼ不可能である。
 沖縄県民は、知事選に続いて総選挙でも自民党勢力に圧勝し、意気軒昂(けんこう)である。犠牲を押し付けられて貧困化が著しい労働者、とりわけ非正規など労働者の下層や農民、中小商工業者などは、全国で闘いの機会をうかがっている。目前の原子力発電所の再稼働や環太平洋経済連携協定(TPP)での突破、集団的自衛権関連法、法人税減税のための中小企業への外形標準課税拡大でも、闘いの狼煙(のろし)が上がっている。労働者には、生活がかかった一五春闘が目前である。統一地方選もある。広範な勢力が力を合わせて、闘いを前進させるチャンスである。
 選挙結果のなかにも有権者の政治意識や政治行動の変化をを読み取り、労働運動と国民運動の前進にとっての手がかりとしなくてはならない。
 労働者階級は条件を最大限に生かして、安倍政権との闘いを強化しなければならない。

各党の議席数、得票数などに見る政党の消長と政党間関係の変化

 総選挙の結果、各党の消長、与野党間関係など政党関係はどう変化したか。

(1)自公与党、その相互関係
・自民党
 当選は二百八十九議席、追加公認を加えても公示前から二議席減の二百九十一議席であった(内訳は小選挙区二百二十三議席、比例区六十八議席、以下同)。得票数も、主戦場である小選挙区で、公明党の大きな支持があったものの減らした。比例区では前回は上回ったが、〇五年「郵政選挙」での約二千五百八十万票に比べると、約千七百六十万票と約八百万票の大幅減である。どこから見ても、この党はほぼ「敗北」した。
 安倍政権と自民党は追い詰められていた。内閣支持率は急激に低下し、滋賀県知事選に続いて沖縄県知事選挙でも大敗した。世論調査によれば、集団的自衛権の行使容認などの安全保障政策や原発再稼働などといった「個別課題」では、安倍政権の政策を「支持しない」人は半数を超えていた。
 安倍は、この劣勢をはね返すために解散・総選挙に打って出た。劣勢のなかで優位を見つけ、突破する作戦だった。暴露が進んでいたアベノミクスだったが、安倍は、「この道しかない」などと叫び、対案のない野党を逆に守勢に追い込んだ。来年度の予算措置を小出しにして幻想をあおったり、報道機関に「公平な取り扱い」を求めるという形で圧力をかけるなど、さまざまな術策も弄した。劣勢を伝えられた海江田・民主党代表や小沢・生活の党代表らに攻撃を集中して、動きを封じた。
 安倍の「作戦勝ち」である。自民党への支持は、議席数ほど「根強い」ものではない。有権者全体の中での支持率(比例代表)は、一九九〇年代の二〇%からじりじりと下がって、いまやわずか一七%弱にすぎない。小選挙区でも、公明党の七百万人近い支持を入れても二五%に届かない。それにもかかわらず、六〇数%の議席を獲得している。選挙制度、とりわけ小選挙区制度のなせる業である。しかも、選挙結果を受けて敗北を認めるどころか、「圧勝」を宣伝した。意気消沈の野党はなすすべなく、それを受け入れて屈した。これで「勝負あった」のである。
 しかし、客観状況は違う。典型は沖縄で、自民党候補が四つの小選挙区で全敗し、厳しい審判を受けた。この状況が、議会制度、小選挙区制度という制約された中にもあらわれる、こんにちの与野党への有権者の支持具合であろう。後でも触れるが、安倍政権ないし自民党は決して強くはない。

・公明党
 三十五議席で四議席増(小選挙区九議席、比例区二十六議席)。しかし、得票数では減らした(比例区では増やした)。
 低投票率と組織力を生かした手堅い選挙で、しかも、生活苦にあえぐ有権者に消費税再増税の際の「軽減税率導入」を力説して幻想あおり、現行制度下で最多の議席数となった。集団的自衛権問題などでも「歯止めをかけた」などと、厚顔無恥な言動で有権者を欺いた。
 しかし、狭く危うい道を走ろうという安倍政権を、どこまで支え続けられるか。
 選挙区あたり平均約三万とされる公明票が、多くの自民党候補者の当選に貢献した。その「重み」は、自公両党が知っているであろうが、安倍の選択いかんでは決定的な意味を持つことになる。
 今後は、公明党が「歯止めをかけた」などとは言えない状況も予想される。この党は、今後の安倍政権、その政局にこれまで以上に交渉力も持つことになったが、それだけに揺さぶられることにもなる。
 自公の与党関係は、公明党中央幹部が裏切っているので容易に崩れないが、ますますの不安定化が避けられないであろう。

 (2)野党各党の状況、その相互関係
・民主党
 議席は、十一議席増の七十三議席であった(小選挙区三十八議席、比例区三十五議席)。議席数はやや回復し、比例区の得票数も増やした。「勝ったか負けたか」といえば「勝利」である。海江田代表が落選していなければ、党内はもう少し「元気」だったかもしれない。
 民主党がどの程度議席を回復できるかは、今回の選挙のポイントの一つであった。しかし、安倍に「作戦負け」した。海江田代表、枝野幹事長などが狙い撃ちされて動きを封じられ、海江田は落選・辞任に追い込まれた。
 そもそも、民主党が擁立した候補者数は定数に満たないものであった。民主党は、最初から「政権交代」を争点化できず、この意味で、より本質上は「不戦敗」であった。
 何より、自民党政権への基本的対立軸を提起することはなかった。日米基軸についてはほとんど同じで、アベノミクスでは対抗政策を提起できず、国民生活困難の一つの大きな原因である消費税増税はいわば「主犯」であるなど、批判票の受け皿にほとんどなれなかった。集団的自衛権問題ですら、党内が一致しないのだからどうにもならない。政権を握った三年余の総括もなく、政党の体をなしているとは言い難いこの党に対する有権者の不信が根強いことも示された。
 自民党に対抗するには、「野党第一党」の党の役割は本来は大きい。だが、民主党にはそれを託すことができないということを、今回の選挙結果は示している。基地推進に反対する勢力の結集が進んだ沖縄で、態度を打ち出せなかったことがそれを如実に示している。
 海江田後任の代表選挙を通じて、野党再編に向けての路線選択ということになろう。しかし、どちらにしろ前途は見えている。

・維新の党
 一議席減の四十一議席(小選挙区十一議席、比例区三十議席)で、公示前議席数をほぼ維持した。しかし、橋下共同代表(大阪市長)の「地元」である大阪府下十四の小選挙区での勝利は五選挙区にとどまった(前回は十二選挙区)。
 党内紛争と準備不足で候補者を満足に擁立できなかったことも響いたのだろうが、基本的には自民党を補完する正体が暴露されたということだろう。
 橋下共同代表は一時的にしろ辞任して「大阪都構想」に力を集中するとし、追い込まれている。しばらくは江田氏が単独で代表を務めることになる。野党再編路線が強まるのだろうが、次世代の党がほぼ消滅したいま、その選択肢は限られている。

・次世代の党
 十七議席減の二議席にとどまった(小選挙区二議席、比例区〇議席)。ベテラン候補以外は全滅し、公示前の十九議席から激減して解党の危機に陥った。改憲などを公然と掲げるこの党は、ほぼ消滅した。
 ここで触れると、公然たる改憲勢力で、もう一つの安倍の別動隊であった渡辺元規制改革担当相らみんなの党は、選挙前に消滅した。
 かくして、安倍は改憲への「友人」を国会内では失った。これは今回の総選挙の議席配分で見る大きな「変化」である。

・生活の党
 二議席(三議席減)で、小選挙区二議席、比例区は〇議席だった。
 生き残りはしたが、政党助成法上の政党要件を失い、小沢氏は影響力をいっそうなくした。もしまだ、この人物への幻想があるとしたら、「悲劇」以外の何ものでもない。

・共産党
 十三議席増の二十一議席で(小選挙区一議席、比例区二十議席)、得票も、小選挙区、比例区とも大きく伸ばした。
 「自共対決」をうたい、盛んに宣伝して、ほぼ全小選挙区に候補者を擁立し、アベノミクスや集団的自衛権行使容認などの安倍政権に反発する有権者に印象づけ、比例票の上積みを図ったことが功を奏した。
 共産党の掲げた政策は、日米安保条約に事実上触れないなど悪政の根本原因を暴露しないもので、かれらの従来の見解からさえ後退したものであった。それでも、他の野党と比べれば「安倍政権との違い」が見えやすかった面があり、今回は「政権批判」の一定の受け皿になった。支配層の思惑に沿ってだろうが、マスコミも、ある程度、共産党を好意的に扱った。そうしたなかでの「躍進」だった。
 共産党は、これまでも社民党の支持層をひきはがしたし、今回は民主党支持層からも流れ込んだ。今後の危機の進み具合や支配層の意思、政党関係にもよるが、そろそろ限界に近いだろう。
 この党の、この先の前進は容易でない。

・社民党
 合計二議席で、小選挙区一議席、比例区一議席。現有勢力を維持した。得票数は、比例区で約百三十一万票、前々回は約三百万票、前回は半分以下に減って約百四十二万票だったが、そこからさらに減らすことになった。
 政党要件は何とか維持したが、先々の展望は描けない。
 小選挙区の候補者が選挙のたびに減り、〇五年は三十八人だった候補は、三十一人(〇九年)、二十三人(一二年)となり、今回は十八人であった。今回は四月の統一地方選挙での再選を念頭にか、地方議員を擁立した例すら目立った。
 現行制度の下では比例区得票も、小選挙区に候補者を擁立しない限り増えない。実際、今回は東北、北陸信越、四国の各ブロックで比例区票を一五%以上減らしている。東北、北陸信越は、小選挙区の候補者数を前回比で減らしたところである(四国は同数だが一人のみ)。なかでも、比較的組織があるとされる山形、石川の両県で候補を擁立しなかったことが響いた。逆に、前回候補を立てず、今回は擁立した鳥取、鹿児島では大きく得票を増やしている。山形、石川は、候補を擁立した民主党に「配慮」して出馬を見送ったものである。
 社民勢力が再生し、何らかの役割を国民に果たそうとするならば(われわれはそれを望んでいる)、労働運動、国民運動を全国で強化するために闘える勢力形成に力を注がなくてはならないし、国政選挙で全国に大量に候補者を擁立できる大きな陣形づくりを真剣に考えるべきである。小さく「生き延びる」ことではなく、政権を取る「構え」がなければならない。

 総じて野党は、国民の期待に応えられなかった。

 (3)各政党とその相互関係、見通し
 自民党は議席と小選挙区の得票数を減らした。公明党が増えた結果、自公与党としての選挙結果は同数となったが、与党は「勝った」わけではない。国会内での与野党の議席数の割合は、定数が五議席減ったので与党がコンマ以下の数値で有利になったにすぎない。
 基本的に、与野党の議会内での力関係は変わっていない。
 ところが、マスコミは「自公圧勝」と宣伝している。事実ではなく、支配層の政治的術策にすぎない。安倍首相は「政権への信任」と開き直り、党内政治を含む、当面する政局で主導権を確保した。中には「黄金の四年間」などという見方もある。
 選挙戦も与野党、各政党間の闘争だったが、結果の評価もまた闘争である。安倍は、この闘争でも攻勢の姿勢をとった。
 野党は、この安倍の攻勢をなすすべなく受け入れている。マスコミは「民主主義の危機」もあおって野党再編を呼びかけ、野党各党は受け身に立たされている。だから、短期的には安倍の狙いは功を奏したのかもしれない。
 だが、狭い政局、国会運営だけを見ても、安倍政権はそう容易ではない。自民党と連携の姿勢を見せていたみんなの党が解党し、選挙の結果として次世代がほぼ壊滅したことで、自民党は公明党をけん制する「道具」の一つを失った。安倍政権は従来以上に、公明党への「配慮」が必要になった。憲法改悪も大きな困難を抱えた。
 安保問題も含めて、自公関係もより不安定化するのは避けられない。
 マスコミと財界はチャンスとばかり、改革を迫っている。しかし、安倍はその条件を獲得していない。攻撃にさらされている中小商工業者や農民は、選挙でも棄権に回るなど批判の意思を示したが、黙っていられないだろう。野党がどの程度その不満と怒りを組織できるかはあるが、少なくとも自民党の党内闘争は激化する。
 自公民三党と維新なども、消費税増税を当然としていた。批判を恐れ、安倍の「延期」を喜々として受け入れたが、その時はすぐにやってくる。安倍政権は、安倍の強がり、マスコミの論調、野党各党の指導者たちの落胆や無策とは異なり、きわめて不安定になる。
 問題は、労働運動がその組織者となれるか、壮大な戦線形成の路線と組織者が大きく登場できるかである。
 そのためにも、われわれは国民諸階級の意識とその変化に注目しなければならない。

選挙結果から読み取ることがある程度可能な国民諸階層の意識や動向

・有権者の約半数が棄権した
 投票率は、戦後最低の五二・六六%(小選挙区)となり、東京都以外の四十六道府県で過去最低を更新した。投票に行かなかった人は、前回に比べて七百万人以上増え、全有権者の約半分に達したことになる。
 投票率が全国平均を上回ったのは東京だけで、五〇%を割り込んだのは青森、宮城、富山、石川、徳島、愛媛、福岡、宮崎の八県もあった。
 減り方の大きかった県は、石川のマイナス一二・七六ポイントを筆頭に、福井、徳島、和歌山、愛媛、富山、岐阜などと続く。しかも、減り方の多い十県中、十位の福岡以外は、自民党の比例区の得票数が減った県である。
 「自民党から離れた有権者の多くが棄権した」ことが、ここでも裏付けられる。
 すでに述べたように、野党が自民党への対抗軸を立てられなかったことで、有権者は選択肢のない状況におかれ、シラケていた。自民党に投票した有権者でさえ、その六五%が「ほかの政党よりまし」という、消極的な理由をあげている(読売新聞)。「これまでの選挙と比べても有権者が冷ややか」という自民党議員の言葉は、こうした一面を突いている。
 政治・政党不信はいちだんと強まった。

・自民党は都市部の支持に支えられた
 自民党は、政党への支持をあらわす比例区の得票総数を約百三万票増やした。前回比で得票数が一〇%以上増えたのは、東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、福岡など都市部とその周辺の十二都県である。相対得票率も、これに群馬を加えた十三都県で五ポイント以上上がった。
 一方、相対得票率は上がったものの、得票数を減らした県は十八県ある。もっとも減ったのは鳥取のマイナス一三・七六ポイントで、愛媛、長崎、青森、徳島、山口などと続く。
 アベノミクス、とくに日銀の量的・質的金融緩和の結果、株式や都市部の地価などの資産価格が上昇し、大企業・同役員や投資家らは膨大な恩恵を受けた。さらに、財界は「(与党の勝利で)株価二万円超え」などとあおった。他方、地方には「恩恵が及んでいない」どころではない。
 自治体ごとに見ればより詳細に分かるだろうが、都道府県別に見るだけでも、都市部の支持が自民党の「勝利」を支えたことがうかがえる(岩手や沖縄での上昇は、小選挙区選挙が激戦となったためであろう)。
 実際、選挙直前の世論調査によれば、アベノミクスを「評価する」が過半数を超えた比例代表ブロックは東京だけで、他の十ブロックでは「評価しない」が多く、しかもうち八ブロックでは「評価しない」が五〇%を超えている。地域別でも、郡部では六〇・七%が「評価しない」と答えている(共同通信)。
 また、アベノミクスの二年で、勤労世帯の貯蓄は大都市で百三十二万円、中都市で三十九万円増加しているのに対し、小都市では二十二万円減り、郡部では何と百五十三万円も減っている(総務省「家計調査」)。大都市部が恩恵を受ける一方、地方経済の疲弊と住民の貧困化、ここへの過酷な収奪がさらに進んだのである。
 安倍政権は富裕層が多く、人口の多い都市部の支持に支えられている。

・いくつかの選挙区について
 自民党候補が敗れた小選挙区には、注目できるところがいくつかある。
 沖縄では、四つの小選挙区で「自民対『オール沖縄』」という構図になった。「普天間代替基地の名護市辺野古への新設を認めるかどうか」というきわめて鮮明な争点、客観的には日米関係が争われ、基地建設を推進する自民党は全敗(比例で復活)、県民は新基地への断固たる拒否の意思を示した。
 また、農協の政治組織である農政連は、生き残りのために全体として自民党を支持したが、現場農民の意識は必ずしもそうではなかった。
 栃木二区と岡山三区では、TPPを推進してきた、西川農相、阿部農水副大臣が小選挙区で敗北(比例で復活)した。農相を破った候補は「自民の農村票を奪い取る」ことを焦点に選挙戦を闘ったという。北海道六区でも、北海道農民連盟出身の候補(民主党)が「TPP反対」を鮮明にさせて当選した。
 現場農民の、安倍政権への不満・批判があらわれたのである。
 商工業者の不満・批判も高まっていた。
 中小企業がほとんどを占める日本商工会議所の政治団体である日本商工連盟は、全二百九十五の自公与党の小選挙区候補のうち、推薦したのは約百七十人にとどまった。
 この推薦は、各都市の商工連盟支部(商工会議所)がそれぞれ行っている。推薦候補がこの程度であったことには、円安による原材料高騰や消費税増税などに苦しみ、外形標準課税を拡大する策動に不満を募らせる、中小企業の意識が反映している。「円安」への対応一つでも、為替差益に潤う多国籍大企業が完全に牛耳る経団連と、コスト増・負担増に苦しむ全国の中小企業、地方都市の商工会議所を含む日商とは見解が違った。利害が違い、対立するのだから、同じ保守層とはいえ、政治意識、政治行動に違いが生じて当然である。これからはますます、こうした事態に直面するであろう。沖縄での保守層の分裂の基礎も、地域経済界の基地経済への依存問題、その打開策をめぐる違いにある。
 これらの結果は、自民党との対抗軸を立てさえすれば闘う条件があり、争いようがあることを示している。

展望

 安倍政権は、引き続き「経済最優先」を掲げ、アベノミクスと日米同盟強化にさらに踏み込むだろう。選挙後の記者会見では、憲法改悪に向けて「国民的な支持と理解を深めるため党総裁として努力」することも宣言している。
 経済政策では、量的・質的緩和の継続、法人税減税や労働・医療・農業といったいわゆる「岩盤規制」の改革で大企業に奉仕する。一方、国民には円安による物価高、消費税再増税、社会保障制度の改悪による負担増、非正規化による賃金低下と「解雇自由」化、中小企業への外形標準課税拡大、いちだんの農産物の市場開放、農協改革、「地方創生」の名による地方切り捨てなど、犠牲のしわ寄せには際限がない。
 外交・安全保障では、米国のアジア戦略に追随して中国に対抗する「地球儀俯瞰(ふかん)外交」、日米防衛協力の指針(ガイドライン)合意、集団的自衛権関連法の制定、辺野古への新基地建設、武器輸出の拡大、さらに憲法改悪も日程に乗せようとするだろう。
 しかし、沖縄県民をはじめ福島県民も、全国で農民も、商工業者も、何よりも労働者が不満を高め、安倍政権への怒りを高めている。そのますますの発展は疑いない。

・安倍政権を待ち受ける内外の困難
 だが、政権の先行きは難題山積で、「黄金の四年間」どころか、政権運営はますます困難になることは必至である。
 わが国を取り巻く国際環境はさらに厳しい。
 リーマン・ショック後の世界の危機はいちだんと深い。原油安に端を発したロシアなどの通貨安は予断を許さず、欧州や中国の景気低迷など、世界経済は安定どころではない。米国の衰退は著しく、中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)などで、米国中心の戦後秩序への挑戦を強めている。
 米国は「アジア・リバランス戦略」のため、わが国にいちだんと負担を押し付けようとしている。
 わが国多国籍大企業は、激化する国際競争に対応して海外で稼ぎ、国内の設備投資は増やさず、雇用は増やしても非正規で、賃金を上げるのはごく一部である。原油安も輸出大企業のための円安によって、その「恩恵」はかなり相殺される。この間の成長を支える大きな要因であった輸出が増える条件はなく、国内経済は上向かず、「好循環」は春以降も実現できない。
 何より、政府の財政危機はいちだんと深刻化している。安倍首相は消費税再増税を一七年四月に延期して「退路を断った」が、安倍には国際環境は変えようがないし、国内も、再増税ができるだけの環境を整えることは、ほとんど不可能である。日ごとに国民の生活苦は増大し、政治不満がさらに高まるのは必定である。安倍政権が「株価連動内閣」と言われる通り、官制相場で株価をつり上げ、一定存在する富裕層の支持を当て込んで突破をもくろんでいるのだろうが、いつまで可能か。
 一〇%への再増税は、政権の存亡が問われるところとなろう。
 再延期を決断すれば、自民党内でも与野党間でも、さらには財界との間でも政治問題となり、政権はもたないだろう。それだけでなく、日銀の買い取りをもってしても日本国債への「信認」は長期には続かない。日銀、すなわち円の信認も問題となり、少なくとも「悪い円安」は避けられず、資金は国外に流出するだろう。日本発のソブリン(国家債務)危機、まさに破局である。むろん、再増税すれば景気はさらに冷え込むだけでなく、国民の生活苦と怒りがさらに頂点に近づく。
 自公政権は大きく揺さぶられる。まさに「前門の虎、後門の狼(おおかみ)」である。むろん、安倍政権が何らかの危険な「強行突破」を図る可能性もある。
 再増税延期で総選挙に打って出た安倍政権は、「勝利」を収められなかった。それだけでなく、そのツケは、これから安倍政権を決定的に揺さぶることになる。

・国民の不満は自民党内にも反映する
 破局が迫るなか、安倍政権はさまざまな欺まんを弄するだろうが、国民をいつまでも欺き続けることはできない。総選挙直後に内閣支持率が低下したが、国民の不満と怒りが蓄積することは不可避である。
 前述したように、安倍政権への支持を中心的に支えているのは都市部の富裕層で、株式などの資産価格の上昇、配当増などが大きな根拠である。
 だが、リスクは国内外の各所にあり、しかも深刻化している。国民の不満や批判も、さまざまな形で与野党に反映する。だが、野党は総じて無力で、与党、とくに自民党内に反映するだろう。自民党内には、「岩盤規制」問題や財政出動などで、安倍政権と異なる立場を取る「族議員」が多数いる。官僚の抵抗もある。春の統一地方選挙は乗り切ったとしても、秋の総裁選挙、一六年夏の参議院選挙に向け、「後継」も絡んで党内での権力闘争が激化する。
 公明党の中央と地方、公明党と支持団体である創価学会、さらに創価学会内などの矛盾も激化するが、公明党中央の国会議員は「大臣のイス」にしがみつき、自民党を支えようとするだろう。
 公明党が与党を離脱すれば、安倍政権は参議院での過半数を維持できないし、次の総選挙ではさらに危うい。自民党の一派閥のごとく、悪政を支え続ける公明党の反動的役割を徹底的に暴露しなければならない。
 自公与党は大きく揺さぶられ、安倍政権は不安定となり、闘おうとする者に情勢は有利に展開する。

・財界の危機感は議会制民主主義での支配の危機感
 危機のなか、支配層、財界は安倍政権に先行きを託さざるを得ない。
 それでも、投票率が約半分にまで低下したことに対し、支配層は「民主主義を脅かす」(日経新聞)と危機感をあらわにしている。選挙、議会制民主主義は財界による支配のための道具でしかないが、投票率の低下はその根幹、「正当性」を揺さぶるものだからである。
 投票率は、一九九〇年代入って以降、七〇%台から六〇%前後へと、目立って低下した。支配層は、投票時間の延長や期日前投票制度など、「あの手この手」で投票率を引き上げようとしてきた。各地で「投票済証明でプレミアム」という茶番まで演じられた。それでも、今回は五〇%そこそこまで低下した。
 多くの有権者にとって、与野党の違いも不鮮明で、与党が「信任を問う」などという選挙にどれほどの意義を感じるだろうか。
 自民党の「一強」という議会内の状況とは別に、支配層のジレンマは深い。
 だから、財界はかつて自らが推し進めた保守二大政党制とはいかないまでも、一定の勢力を有する野党の存在を望んでもいる。共産党をも「温存」しようとしている節がある。
 当面、民主党の代表選の結果を経てだが、民主党と維新の党を中心に野党再編が進むことになるだろう。
 それでも、この勢力は、対米従属で多国籍大企業のための政治を掲げる点で、相変わらず自民党と同じである。わが国の危機を打開できないことはもちろん、中長期に国民を欺き続けることはできない。
 国民の多く、とりわけ労働者が直接民主主義に望みを託すことは、大いにあり得ることである。ほかに道がないとすれば、誰がそれを非難できようか。労働運動、活動家たちは、もういつまでも「選挙」ではあるまい。そもそも、熱心に運動できるような候補者もおらず、投票する先のない活動家が多かったのではないか。選挙運動から卒業し、本来の労働運動の大道に戻る時が来たのである。

・国民運動と結びつくことが肝心
 共産党は、予算を伴わない議案提出権を得たことで有頂天になり、またも「自共対決」などと騒いでいる。
 だが、この程度の前進で「躍進」などと言い、満足するようではどうにもならない。基準は、国民の期待、生活危機の打開、国の進路の転換に役立つかどうかだからである。
 大多数の有権者の不満を結集する力が求められている。だが、議会で多数を獲得して政権をめざすという共産党が、その真の「力」となり得ないことは、歴史的経験からも明瞭である。議会選挙は、票を取るか取られるかの「ゼロサムゲーム」で、争うことが宿命だからである。
 それが可能な、戦線形成の路線と組織者が求められている。
 そもそも、この程度の共産党の前進はこれまでもあった。共産党はいくらか前進すると、より多くの支持を得て政権に近づこうとして裏切りを重ねてきた。七〇年代には「スト万能論批判」などで労働運動の発展に悪罵(あくば)を投げつけて妨害したし、九〇年代末には「保守政党との連立」を打ち出し、こんにちに続く米帝国主義を美化する立場に踏み出した。こうした、米国と支配層にすり寄る策動は労働者に見透かされ、得票増加はすぐ頭打ちになり、後退することの繰り返しである。まさに「賽(さい)の河原」で、労働者階級をあてのない「議会の道」に連れ込む反動的なものである。
 選挙、議会内での闘いは、大衆行動と結びついてこそ効果を発揮できる。これは、一連の沖縄県民の闘いと、今回の沖縄での選挙結果を見るだけでも明らかである。
 対米従属の安倍政権と闘おうとするならば、労働者階級は自らの要求で闘うとともに、農民や自営業者、中小商工業者などをひきつけ、労働運動を中心とする国民的戦線を構築し、国の独立をめざしてその先頭で闘わなければならない。
 そのためにも、労働者階級自身の政党を持たなくてはならない。わが党とともに労働者階級の革命党の建設を進め、安倍政権と闘う国民運動の先頭で奮闘することを呼びかける。


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