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2014年12月5日号 1面・社説

第47回総選挙に際して訴える

  第四十七回総選挙が十二月二日に公示され、十四日の投票日に向けて選挙戦に突入している。
 安倍首相は「アベノミクス選挙」などと言い、第二次政権の成立から約二年間の内外政治の「信認」を得、選挙後も悪政を継続、さらに強力に推進しようとしている。
 世界資本主義が末期症状を呈し、最近のアジア太平洋経済協議体(APEC)などの諸会議にあらわれた国際政治の構造的変化を背景に、わが国の内外の危機がいちだんと深まるなかでの総選挙である。破局が迫るなか、深刻な国民生活と国民経済の危機を打開するための政策、日米関係、中国を中心とする対アジア外交が争われなければならない。とりわけ、独立をめぐる国の進路を打開することが深刻に問われている。
 だが、野党各党は内外に対しての確たる見通しがないばかりか、対米従属政治の安倍政権との対抗軸を示せず、その「弱さ」も見抜けず、安倍の主導権を許している。
 総選挙に賭けた安倍首相の策謀が成功しようとも、わが国の危機は深く、労働者・国民の怒りと抵抗の高まりは必至で、政権にその先の展望はない。
 わが党は、長期的戦略から、今回の総選挙に候補者を擁立せず、原則としてどの党派も支持しない。現実の階級闘争の発展のため、戦略的展望に立ち、安倍政権による内外政治との闘いに全力を挙げる。

与野党の状況と政策
 安倍政権がこの二年間行ってきた内外政策は、いちだんの対米従属の強化でわが国をアジアで孤立させ、アジアとともに平和に繁栄する道に背を向け、国民の生活と営業をさらなる困難に陥れるものである。
 安倍政権による解散は、本質的には悪政の結果として「追い込まれた」もので、その行き詰まりをおおい隠し、政権の延命を意図してのものである。
 安倍政権に対する国民の不満・批判は高まり、支持率はおおむね低下傾向であった。七月の滋賀県知事選挙、さらに十一月の沖縄県知事選挙では、自民党が支持する候補に厳しい審判が下った。内閣改造も「政治とカネ」問題が噴出し、事実上、失敗した。わが国経済の成長率も、消費税増税を機に大きく落ち込んだ。
 安倍政権は今回の総選挙に際しても、「勝敗ライン」を「与党での過半数維持」へと大きく下げ、さらにマスコミ各社に「公平な取り扱い」を求めて圧力をかけるなど焦っている。
 それでも今回の解散は、「政局」という狭い範囲では、安倍首相が「勝機」と見て主導的に断行したものである。選挙準備が遅れていた野党は不意を突かれ、解党した党もある。野党は「大義なき解散」などと安倍政権を「批判」する。それは事実だが、権力闘争とはそもそもそうしたもので、議会政治はそれをおおい隠しているにすぎない。弱々しい「批判」は、議会主義野党の無力さを示している。
 では、主要政党の掲げる政策、選挙戦術はどのようなものか。

・自民党
 アベノミクスで「雇用が改善し賃金が上がった」などと「成果」を最大限喧伝(けんでん)し、「この道しかない」と「三本の矢」の強力な推進に国民の「信認」を取り付けようとしている。「経済再生と財政再建の両立」を掲げ、二〇一七年四月に消費税を一〇%に引き上げることのほか、法人税率引き下げ、インフラ輸出など政府によるトップセールス、国家戦略特区などによる規制緩和、農協改革など農業、雇用、医療などの「岩盤規制を打ち砕く」などで「成長戦略」を具体化するとしている。来年春の統一地方選挙もにらみ、「地方創生」をうたい、交付金創設や「特区」の早期指定などの政策を掲げているが、これが地方間競争をあおる「選択と集中」の政策であり、「地方消滅」を加速させることは明らかである。
 外交・安全保障では、中国に対抗する「地球儀俯瞰(ふかん)外交」の継続、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」見直しや普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設、憲法改悪など、対米従属で多国籍大企業のための日米同盟強化を掲げている。

・公明党
 消費税再増税時の「軽減税率の導入」を目玉政策として選挙戦を展開している。自民党と共通する政策が多いのは当然だが、自民党の公約と異なる「原発ゼロ」を掲げてもいる。
 自公政権成立以来、何度も繰り返され、集団的自衛権の行使容認をめぐっても演じられた、支持者をダマして自民党政治を支える欺まんを、またも繰り返している。

・民主党
 「アベノミクスは期待はずれ」と批判し、「厚い中間層を復活させる」と訴え、たとえば、黒田・日銀の「量的・質的緩和」に対して「柔軟な金融政策」を対置するが、具体的内容はない。安倍政権に対する全面的な対抗軸は打ち出せていない。
 安全保障政策でも、安倍政権の集団的自衛権の行使容認を「批判」するが、「国民と国会を無視」と言うだけである。「日米同盟の深化」「動的防衛力の強化」などは、自民党とまるで同じである。

・維新の党
 混合診療の解禁、カジノ創設などの成長戦略では自民党とほぼ同じで、公務員給与の二割削減など、行政サービスを切り捨てる改革政治を売り物としている。
 安全保障政策でも、集団的自衛権行使容認と関連法の整備を推進、環太平洋連携協定(TPP)も「積極的に関与」するとしている。自民党を補完する姿勢が鮮明である。

・次世代の党
 アベノミクスについて「基本的な方向性は是」とし、「生活保護の支給を日本人に限定する」などの極端な排外主義を振りまいている。安全保障政策では「自立した国家」をめざすなどと言うが、日米同盟強化で、これまた安倍政権と同じである。
 旧日本維新の会と比べても、安倍政権の対米従属政治を右から支える存在へといちだんと純化した。

・共産党
 「安倍政権の暴走ストップ」「自共対決」などと言い、消費税増税の中止、TPP反対、集団的自衛権行使の閣議決定の撤回などを掲げている。
 だが、わが国を対米従属下に縛りつけて国民生活を危機に陥れ、戦争の危機を高めている日米安保条約については、党綱領の引用部分で触れられているだけである。個別項目としてではあれ掲げられていた二年前の公約と比べても後退しており、わが国の進路をめぐって安倍政権と正面から争えるものではない。

・社民党
 消費税率の五%への引き下げ、最低賃金の時給千円への引き上げ、ガイドライン改定反対など、前回と比べてもさまざま公約が列挙されてはいる。
 だが、日本をどの方向に導くのか、包括的で長期的な戦略、政策がないという弱点を抱えたままである。「平和」に熱心なのはよいとしても、対米・対中国外交にはまったくといってよいほど言及がない。これでは、安倍政権とは闘えない。

・生活の党
 「脱原発」、消費税増税凍結、集団的自衛権の行使容認反対など、「リベラル色」を強調している。だが、小沢代表がその政治生活において行ってきたことを鑑みれば、票目当ての欺まんにすぎないことは明白である。
 政治的影響力はすっかり小さくなり、議員も次々と逃げ出して党の存続さえ危うい。

 野党各党は、主観的には安倍政権、自民党との違いを明確にしようとしているのであろう。だが、表面的、現象的な「違い」を強調するにとどまり、政権への批判は本質的なものでない。維新の党や次世代の党に至っては、まさに安倍政権の別動隊、補完政党である。政党は、その依拠する階級、立場によって違うのは当然であるにもかかわらず、そこをあいまいにし、票目当てに「八方美人」をやろうとしているのだから限界がある。争点はあいまいで、各党はまたも有権者を欺いて票をかすめ取ろうとしている。
 先進的労働者は数々の欺まんに惑わされず、真の争点を見抜かなければならない。

総選挙の真の争点は何か
 わが党は、以前にも増して、対米従属政治の転換と独立・自主の国の進路を、問われるべき争点の第一として提起する。
 安倍政権が誕生した一二年末の総選挙当時と比べても、わが国を取り巻く環境は激変し、世界資本主義は末期症状を呈している。新興国をはじめ米国など先進国帝国主義によって犠牲を転嫁された国々は、苦しむ人民は国内で闘い、支配層は犠牲押し付けに反発して、米国中心の帝国主義世界秩序への反抗を強めている。中国やロシアを含む大国間の争奪、闘争も激化している。
 こうした中で、十一月のAPECなど一連の首脳会合で明らかになったように、中間選挙の大敗で「死に体」化した米オバマ政権がいちだんと指導力を失う一方、台頭する中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)や「シルクロード経済圏構想」を呼びかけ、存在感を増している。
 中国は、米国主導の戦後秩序に対し、豊かな資金力も使って帝国主義に反発する諸国もひきつけながら、政治・経済・軍事のすべての面での「挑戦」を強めている。米中両国は互いに依存し合い、「新しい大国関係」などともいう両国だが、中長期的には、その争奪はアジアでますます激しくならざるを得ない。米国は、わが国にいっそうの負担を求め、「コマ」として使おうとしている。
 こうしたなかで、わが国はどう生きていくのか。長期的展望を持った独立・自主の政権でない限り、対応できないことは明白である。
 だが、安倍政権は、米国の「アジア・リバランス戦略」に追随する道に大きく踏み込み、この下で日本の軍事大国化をめざし、中国に対抗し、アジア諸国とも対立する道を進めている。
 世界的に中国をけん制する「地球儀俯瞰外交」、TPP交渉参加、特定秘密保護法、国家安全保障会議(日本版NSC)の設置、新「防衛計画大綱」による軍備拡大、武器輸出三原則の廃止、「反テロ」を口実に弾圧を強化する「テロ関連三法」、さらに集団的自衛権の行使容認に踏み切った。
 これらは米国への追随であり、わが国多国籍大企業が世界に有する権益を守るためのもので、わが国の孤立を招く亡国の道である。
 安倍政権は、この外交、安保政策も「この道しかない」と継続、加速させている。         
 安倍政権の説く、対米従属の枠内での「ニセの独立」の道か、日米安保条約を破棄し、米軍基地を一掃してアジアとともに平和と繁栄する道か、国の独立をめぐる「二つの道」の争いは、ますます喫緊のものとなっている。
 もう一つ、わが国経済、国民の生活と営業を打開することは最大の争点である。
 「デフレ脱却」を唱えた安倍政権だが、そのための「アベノミクス」「三本の矢」は、米国と一握りの多国籍大企業、投資家に徹底して奉仕するものである。黒田・日銀による「量的・質的緩和」は、米国の「出口」を支え、巨大銀行をはじめ多国籍大企業を救うものである。
 円安や株高で、大企業は史上最高の利益をあげている。トヨタ自動車の営業利益約二・三兆円のうち、円安による利益は約四割にも達した。日経平均株価が二年で二倍になるなどした結果、資産を百億円以上増やした大金持ちは百人以上もいる。
 他方、勤労者の実質賃金は十六カ月連続で減少し、平均年収はこの一年で八万四千円以上も減った。安倍政権が騒いだ「賃上げ」は、ごく一部の大企業だけであった。生活が不安定な非正規労働者の割合はさらに増えた。年収二百万円以下のワーキングプアも、一年間で三十万人も増えて千百万人を超えた。貯蓄が皆無の世帯は約三割にも達する。
 国民年金と厚生年金支給額、さらに生活保護費も減額され、需給要件はさらに厳しくなった。七十〜七十四歳の医療費の患者負担も引き上げられた。
 農民は、米価の暴落と円安による飼料、資材価格の高騰で経営が急速に悪化している。
 中小企業も、アベノミクスによる円安で原材料費の高騰、消費税増税後の需要落ち込み、取引価格問題などが重なり、「円安」倒産も急速に増えている。
 大多数の国民はさらに貧困化させられ、地方は衰退に追い込まれた。
 アベノミクスは国民大多数から米国と多国籍大企業、投資家への大規模な「富の移転」であり、大規模な収奪政策である。
 自民党の「この道しかない」というスローガンは、このような収奪政策を加速させ、米国と一握りの多国籍企業を支え、国民生活を困窮化させ、地方経済を疲弊させ、国民経済をさらなる危機に追い込むものである。
 日本経済の再建、国民生活の危機打開の道は、労働者の大幅賃上げ、中小自営業者が長期に経営できる環境の整備、農林水産業の振興などで内需を拡大することである。
 何よりも、労働者・国民の産み出した富が、米国経済とドルを支えるために奪い取られる「グローバル化」という名の従属国経済、ドル依存を脱却し、自立した経済を確立しなくてはならない。発展するアジア諸国との、平等互恵の経済関係を樹立しなくてはならない。さらに米国経済・金融に組み込まれ、中国などアジアと対立させられる経済圏、TPPなど論外である。
 これを保証するものは、対米従属で多国籍大企業のための政治を根本的に転換することである。

茶番に明け暮れる与野党
 諸政党には包括的で、内外政策での首尾一貫した政策が問われている。安倍政権は「強い日本を取り戻す」として、かれらなりの「戦略」で政策を掲げているからである。
 だが、野党は危機に対する認識もなく、戦略もない。安倍政権の行き詰まりや「弱さ」も見抜けず、せいぜい部分的な批判、政策のら列にとどまっている。アベノミクスが大規模な収奪政策であることを暴露せず、「正否」を論じたところで意味はない。
 わが国の財政も、小手先の改良ではどうにもならないことはハッキリしている。先進国中最悪での財政赤字は、米国に貢ぎ、多国籍企業にも搾り取られ、他方、大企業や金持ちへの減税、消費税増税で国民負担を増やした結果である。共産党のように「消費税増税の撤回」や「大企業の応分の負担」程度で解決するものではないし、ましてや、野党の議席が多少増えたからといってどうにかなるわけではない。
 繰り返すが、わが党は、国民生活の危機打開、国民経済の再建、そのためにも国の独立・自主が重大な争点であると主張する。これらは、前回の総選挙以上に、切実さを増していると確信する。
 とりわけ、諸政党は、国の独立をめぐる根本問題であいまいであってはならない。これ抜きに、税制や社会保障政策、エネルギー問題を語ることはできない。
 ところが、真の争点はゴマかされている。行われている総選挙は、まさしく茶番である。

選挙と若干の展望
 わが党は長期的戦略から、今回の総選挙に候補者を擁立せず、原則としてどの党派も支持しない。ただ、国の独立で心ある政治家、勢力に対しては、可能な支援を惜しまないし、すでに行っている。
 マスコミなどの予想によれば、自民党・公明党の与党が過半数を維持し、連立政権が続く可能性が高い。前回大勝した与党がどの程度議席を減らすか、民主党がどの程度回復するかは、以降の政局に一定の影響を与えるだろう。
 安倍政権の継続は、従来の内外政策の継続が基本だが、それにとどまらず、さらに踏み込むだろう。国民犠牲の諸政策は強化され、憲法改悪も視野に入れようとている。
 労働者はもちろん、国民生活はいちだんと悪化する。農民・中小商工業者など自民党の支持基盤を含め、反発が高まることは避けられない。他方、多国籍大企業、投資家はますます儲(もう)かる。曲折はあろうが、アジアの緊張は高まる。
 すでに先進国中最悪の政府累積債務は、さらに拡大する。
 こうした状況は、野党にも反映するがほぼ無力で、むしろ与党に反映し、内部での不一致、対立が表面化するだろう。
 闘う勢力、とくに労働運動にとっては、いよいよ正念場である。先進的労働者は戦略的展望に立ち、安倍政権との闘いを準備しなければならない。

労働運動は独立のために闘おう
 労働者が国民諸階層を率いて、直接に政治権力を握らなければならない。まず、国の完全な独立を勝ち取らなければならない。
 そのためには、選挙闘争だけではなく、大衆行動を強めなければならない。議会での闘争は、大衆運動との結合があってこそ効果的になり得る。労働運動を断固として発展させ、それを中心とした広範で強力な国民運動が必要なのである。
 だが、連合中央は「一強にノー、緊張感ある健全な議会制民主主義を」「働くことを軸とする安心社会」などと、政治権力を握る道から労働組合員を遠ざけ、あてのない「改良の道」を説いている。民主党への支持を押しつける、連合中央の振りまく欺まんを打ち破らなければならない。
 社民党には、単に「政党要件の維持」というだけでなく、党の存亡が問われている。われわれは改めて、社会民主主義勢力が国民運動を中心に、長期的展望の道に立って闘うことを希望する。
 わが党は、労働運動を発展させ、革命党建設を本格的に推し進める。
 また国政選挙にも、時期を選んで断固として登場する決意である。
 先進的労働者は労働党に結集して闘おう!


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