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2014年10月25日号 2面・社説

沖縄県知事選挙に際して訴える

 沖縄県知事選挙が十月三十日告示、十一月十六日に投開票される。
 知事選挙には、現職の仲井真弘多氏、前那覇市長の翁長雄志氏などが立候補を表明している。自民党の推薦を受け、名護市辺野古への新基地建設を進める仲井真氏に対し、翁長氏は「移設阻止」を掲げ、社民党、沖縄社会大衆党、共産党、連合や保守層の一定の人びとの支持を受け、激戦となっている。
 わが党はこの選挙において翁長氏を支持する。
 それは、沖縄県民の当面する闘いの勝利・前進に貢献し、その発展を促すとともに、米帝国主義の世界戦略と闘い、対米従属で多国籍大企業のための安倍政権を打ち破って、労働者を中心とした国民大多数による独立・自主の政権を樹立するという戦略的見地からの判断である。
 全国の労働者、労働組合をはじめ、各界の心ある人びとに対して翁長氏への支持を訴えるとともに、沖縄県民と連帯した闘いを全国で繰り広げることを呼びかける。

米中の争奪が激化するアジア情勢
 今回の沖縄県知事選挙は、衰退する米国、台頭する中国によるアジア争奪が激化し、安倍政権が日米同盟強化の亡国の道を進めるなかで行われる。
 リーマン・ショック後、衰退を早めた米国は、内外の危機を打開するために「アジア・リバランス戦略」を進めている。だが、中東などで困難を抱え、それさえも容易ではない。第二次世界大戦の結果として確立した世界支配は末期を迎えている。
 一方、中国は大国化し、経済・政治・軍事のいずれでも台頭を強めている。だが、国内矛盾に加え、東南アジア諸国などとの領土問題も抱えている。
 米中は、互いに戦争を望んではいない。それでも、米国はすすんで覇権を手放すことはなく、中国が経済力にふさわしい地位を中長期に求めることも必定である。
 曲折はあれ、米中間の争奪、矛盾は周辺国を巻き込んで激化せざるを得ない。

日米同盟強化で緊張あおる安倍政権
 「強い日本」を掲げる安倍政権は、外交・安全保障面では米国を支えて中国に対抗する、日米同盟強化に突き進んでいる。集団的自衛権の行使容認、特定秘密保護法、武器輸出三原則の撤廃、さらに「日米防衛協力の指針(ガイドライン)」改定など矢継ぎ早である。わが国はアジアで孤立し、戦争に巻き込まれかねない。沖縄県民が「再び戦場にされかねない」との危機感を抱くのは当然である。
 経済政策では「アベノミクス」を掲げ、金融緩和や財政出動で巨大金融機関を頂点とする財界に多大な恩恵を与える一方、労働者をはじめとする国民には物価高、消費税増税、社会保障制度改悪などの犠牲を押しつけている。国民の生活と営業は急速に悪化し、貧富の格差は開いている。
 わが国の「独立」さえ言う安倍政権だが、その内外政治は、対米従属であるとともに、世界中に権益を有するわが国多国籍大企業の要求に従ったものである。
 国民の間にあった安倍政権に対する幻想は、次第にはがれつつある。
 わが国の独立をめぐり、安倍政権が進める欺まん的で、実際には対米従属の枠内で一握りの多国籍大企業のための道か、独立・自主でアジアと共生する国民大多数のための道か、「二つの道」の闘いはますます差し迫った重要課題となっている。
 こうしたアジア情勢、日米関係の下、沖縄には新たな基地負担が押しつけられる。全国最悪の失業率など深刻な雇用問題、地域経済の衰退など、県民の生活と営業は危機的状況にある。
 今回の沖縄県知事選挙の結果は、主な争点である辺野古への新基地建設と県民生活の困難を打開するための、労働者・県民の闘いの発展に大きく影響するものである。

米日支配層を追い詰める沖縄県民
 戦後七十年近くにわたり、沖縄県民は米軍の軍事植民地の下で命と生活を脅かされてきた。県民は米軍と歴代売国政府に対峙(たいじ)し、闘いは紆余(うよ)曲折を経て粘り強く継続されてきた。
 こんにち、革新陣営に加え、一部の保守政治家や財界人までが「新たな米軍基地はつくらせない」という戦線に加わり、「オール沖縄」の県民運動が形成されている。
 この県民運動は、二〇一二年九月に開かれた、米垂直離着陸輸送機オスプレイの配備撤回と普天間基地(宜野湾市)の閉鎖・撤去、県内移設断念を訴える十二万人規模の県民大会を成功させ、翌年の上京団で政府に「建白書」を突きつけた。今年一月には、辺野古への移設に反対する、稲嶺・名護市長が大差で再選され、七月には「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」が結成された。
 前回の一〇年と比べると、今回の知事選挙は、内外情勢の激変と併せ、県民運動が新たな前進を開始した下で闘われる。しかも、前回は、自民党・公明党推薦の仲井真氏も「県外移設」を掲げたため基地問題は十分な争点とはならなかった。これに対し、今回は「県内移設の是非」が正面から争われる。
 今回の県知事選挙は、基地の移設に反対する意思を示すことはもちろん、安倍政権の進める日米同盟強化を打ち破り、国の独立・自主とアジアの平和、わが国の新たな進路を切り開く上で、重要な意義を持つ闘いとなっている。
 安倍政権の策動を打ち破って、県民の意思を示すことを期待する。


知事選勝利、沖縄連帯で闘おう
 翁長氏は「建白書」の実現のために奮闘するとし、公約に「あらゆる手法を駆使して、辺野古に新基地はつくらせない」「オスプレイの配備撤回」「環太平洋経済連携協定(TPP)反対」「カジノ誘致反対」などを掲げている。
 わが党は、翁長氏を支持し、その当選に力を尽くす。
 県知事選で翁長氏が勝利することは、米国のアジア戦略とそれに追随する安倍政権を打ち破る上で、重要な意義を持つものとなろう。安倍政権を取り巻く内外の困難は増大している。沖縄での勝利は、全国の安倍政権打倒の闘いを大きく激励することになる。
 「オール沖縄」の陣形に保守勢力が加わっていることに疑問を感じる人びとも、大局から、翁長氏の勝利に積極的役割を果たされることを期待する。
 むろん、県知事選に勝利したとしても、それは新たな闘いの始まりにすぎない。
 労働運動、革新勢力は、闘い取った有利な陣地を生かして、米軍基地撤去、日米安保破棄へと前進しなければならない。米日両政府の圧迫はいちだんと強まるだろうが、それを打ち破るには、粘り強い闘い、とりわけ大衆行動と安保破棄の勢力の前進が不可欠である。
 沖縄の労働組合は、古くは復帰闘争をゼネストを含む体を張った闘いでけん引し、さらには一九九五年の少女暴行事件を契機とする県民運動でも、県民投票を提唱・推進するなど、主導的役割を果たしてきた。その経験を思い起こし、県民運動の中心的組織者として闘わなければならない。
 また、本土の闘おうとしている政党、グループ、心ある政治家、労働組合をはじめ各界の人びとが広く団結して沖縄に連帯し、日米同盟の強化反対、米軍基地撤去の強力な国民運動を全国で繰り広げることを呼びかける。労働組合は闘いの先頭に立ち、その組織者とならなければならない。
 労働組合を中心とする強力な国民運動を構築することが、沖縄県民の悲願である米軍基地の撤去を実現する、独立・自主で国民大多数のための政権を樹立するという戦略的勝利に向けた、もっとも確かな道である。


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