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2014年1月1日号 1面 2面〜6面 新春座談会

2014新春座談会

情勢に応え、党建設の前進を

 情勢がますます激動し、世界資本主義は末期症状を呈する中、2014年を迎えた。安倍政権の内外政治も、その破たんはますます不可避となった。「労働新聞」編集部は、新年に際し、労働党中央委員会の4人の同志の参加の下、座談会を開いた。同志たちには、内外情勢の特徴と展望、党の課題などについて、縦横に語ってもらった。以下、掲載する。

参加者
秋山 秀男・総政治部責任者(兼東京都委員会委員長)
山本 正治・神奈川県委員会委員長
長岡 親生・愛知県委員会委員長
中村 哲郎・福岡県委員会委員長
大嶋 和広・「労働新聞」編集長(司会)


大嶋 皆さん、あけましておめでとうございます。

一同 おめでとうございます。

大嶋 本日は、四人の同志にお集まりいただきました。ますます危機を深め、激動する内外情勢をどう見るか、その中でわが党はどう闘うのか、具体的な中心任務である党建設をどう進めるかなど、お話を伺いしたいと思います。
 では早速、国際情勢から入りたいと思います。

末期症状を呈する世界資本主義

昨一年、危機は深まった
大嶋 「百年に一度」と言われたリーマン・ショックから五年以上が経過しましたが、「左派」を含むおおかたの政党・党派の情勢認識は、「危機は緩和している」、あるいは「乗り越えた」といったものです。
 今月中旬に第二十六回大会を開くとしている日本共産党の見解は典型で、かれらの大会決議案では、こんにちの世界が「危機」にあるとは見ていません。世界の現状を「国連憲章に基づく平和の流れが強まっている」とか「対等・平等の資格で、世界政治の主人公になる新しい時代」などと、「平和ボケ」そのものです。末期症状を呈する資本主義の危機を否定しているだけでなく、帝国主義による搾取・収奪、支配や抑圧、これとの闘いもなくなったかのようですね。
 対して、わが党の見解はきわめて特徴的で、「危機はいっそう深まっている」「資本主義は末期症状」と主張しています。各国の、短期的な国内総生産(GDP)成長率の上がり下がりはあるにしても、それは本質ではないということですね。
 わが党は、世界経済はリーマン・ショックで「崖から落ちたけれども、途中の枝に引っかかって谷底までは落ちずに済んだ」と、言ってきました。その要因は、危機対策で膨大な公的資金を投入したことと、二十カ国・地域(G20)会合のような「国際協調」でした。この二つの要因はこの数年間でどう変化したのか。
 まず、世界資本主義の「総本山」である米国について言うと、株高や住宅価格の上昇が個人消費を一定は支えているものの、それは大規模な金融緩和(QE3)に依存したものです。「雇用の改善」が言われますが、雇用増加分の半分は非正規労働者で、賃金は前より減っている。つまり、大多数の労働者の生活は急速に悪化し、貧困化しているのです。
 その金融緩和では、昨年五月にバーナンキ連邦準備理事会(FRB)議長が金融緩和の「出口」(テーパリング)を示唆(しさ)しただけで、世界経済に激震が走った。十二月に資産買い取り額を月額百億ドル分減らしましたが、まだ月に七百五十億ドルも買っており、マネーの「たれ流し」は続いています。やめたいのだろうが、深刻な経済状況からすると続けざるを得ない。
 もう一つは財政赤字問題。昨年末、超党派委員会が予算案で合意しましたが、二月になれば国債発行の上限問題がまた浮上する。そうすると、債務不履行(デフォルト)問題に再度直面する。政治は「内向き」にならざるを得ないでしょう。
 オバマ大統領は国内の難題に縛られて、昨年はシリア問題でこぶしを振り上げても下ろせず、ロシアに主導権を譲った。環太平洋経済連携協定(TPP)のためのアジア太平洋経済協議体(APEC)の首脳会議も欠席して恥をさらし、イラン問題でも成果を焦って妥協した。国内情勢のところで議論になるでしょうが、年末には防空識別権問題でも中国に譲歩した。
 米国の衰退はますます顕著で、内外の危機の中であえいでいる。米国の国際政治での指導権は急速に低下し、中国などはもちろん、諸国はその足元を見ている。日本もある意味で、それを織り込んで動いている。そうしたことが、昨年を通じても非常に鮮明ですね。

長岡 欧州では昨年はキプロス問題があり、南欧諸国の債務問題も片付いていません。若者のうち、失業者が約半数という国もある。各国は財政再建を進めなければならないが、実体経済は停滞しており、労働者をはじめとする国民の反発もあって「成長重視」と言わざるを得ない。労働運動の闘いは続いているし、「反EU(欧州連合)」を掲げた極右も台頭し、階級矛盾が激化している。
 欧州中央銀行(ECB)は秋に利下げしましたが、危機の打開は容易ではない。ドイツやイタリアでの大連立政権の成立は、こうした危機に対応するための支配層の意思の反映でしょう。
 それと、昨年の特徴はフランスの突出ですね。アフリカのマリとかに軍事介入し、シリアやイランに対しても強硬な姿勢を示しており、ちょっと前の中東における米国のような役回りです。旧宗主国としての権益を守るというだけでなく、ある意味、死活をかけた争奪戦への参戦とも言えます。
 アフリカ諸国・人民からすれば、共産党の言う「対等・平等」など、「どこの話?」となるのではないでしょうか。こうした帝国主義的侵略を行っているのが、社会党政権であるということも忘れるべきではないですね。危機の時代、社会民主主義者が支配層を助け、犯罪的役割を演じてきていることは、これまでも繰り返されてきたことですが。

大嶋 中国はどうでしょうね。

中村 中国のこの一年も、世界の危機の中で困難さが明白になったといえますね。
 リーマン・ショックのときの四兆元の財政支出は世界経済の「救世主」でしたが、そのツケで、シャドーバンキング問題や住宅バブル、一方では格差が深刻に拡大して、労働者・農民は貧困化しています。これを背景に、天安門で車両が突っ込んだとか、新疆ウイグル自治区などでの民族問題など、矛盾があらわになっている。
 昨秋の中国共産党第三回中央委員会全体会議(三中全会)では、金融自由化などの「改革」を打ち出しましたが、そのまま実行すればいちだんと国民に「痛み」を強いるわけで、容易ではないでしょう。
 軍備拡大や海洋進出、防空識別圏の設定のようなことは、資源や商品の輸送路の確保、抑圧された歴史も含めて帝国主義の支配を跳ね返し、世界が変化する中で大国として登場したいという「夢」などからのものでしょう。
 併せて、国内矛盾をそらすためでもあると思いますね。それだけ中国は内部に階級矛盾など「爆発物」を蓄積しており、中国経済が順調に発展する保証はないと思います。そうなると中国共産党の政治支配がどうなるか、予断を許しませんね。
 中国以外の新興国では、とくにバーナンキ発言以降、インドやインドネシアなどの経常収支赤字国からの資金流出という問題がある。これらの国は通貨安、さらにインフレとなって、不景気なのに金利を引き上げざるを得ない。一種のスタグフレーション(景気悪化とインフレの同時進行)状態で、経済政策のかじ取りはきわめて困難です。

秋山 各国の階級闘争ということでは、ブラジルの反政府デモ、インドネシアのゼネストなどが目新しいところでしょうか。欧州などでの労働運動も、ポルトガルやスペインのゼネストなど、引き続き闘われています。米国でも、低賃金で不安定な非正規労働者の増大など労働者の不満も強まっています。没落する中間層の危機意識の反映とされる、「茶会」の再活性化が見られます。
 いずれにしても、資本主義が末期現象を呈する中で、先進諸国での労働運動が政治に登場できるかどうか、これが決定的ですね。労働者の要求を支持しながら、労働運動が政治権力の樹立をめざして階級的革命的に闘うよう、その発展を促すことがますます重要になると思います。日本では、労働運動の中に労働党を全国的に建設することが何よりも求められているのです。大局的にはそういう偉大な情勢が近づいてきているということです。
 諸国間の関係ということでは、これはわが党は前から言っていますが、各国の国内矛盾の激化を背景に、この一年のG20会合などでも、この危機に対する対処案はまったく打ち出せなかった。「国際協調」は崩れ、国家間の対立が強まっています。新興国が金融緩和を批判したり、一時は日本の円安も批判の対象になった。これはほんの一例です。
 こんにちの世界は、わが党が六大会後から主張してきた通り、「特殊な多極化」であることがますます明白になっています。また、リーマン・ショック以降資本主義が歴史的な限界を露呈する中で「戦争を含む乱世」であることが、次第に人びとの頭脳をつかみつつあると思います。

山本 中でも、米中関係では特徴的な変化があったと思います。
 米国は従来、中国に対するコンゲージメント(関与と封じ込め)という、巨大市場を狙って関係を深めつつ、米国に対抗する「挑戦者」になることは認めないという政策を進めてきました。それが昨年六月の米中首脳会談では、中国の側から「新しい大国間関係」という提案がなされ、オバマ政権は十一月のライス発言でそれを事実上受け入れたように見えます。直後の、中国による防空識別圏設定に対して、米国は譲歩した。
 一連の経過を見ても、米国の衰退と中国の台頭は明らかです。二〇年〜二五年にはGDPが逆転するのはほぼ確実だとされている。ただ、そうした二国間の問題だけでなく、シリア問題、イランの核問題など、中東での米国の力の限界は劇的となった、そうした国際政治の中です。さらに「戦後レジームからの脱却」をめざす安倍政権の登場とその軍事大国化路線も、一つのインパクトでしょう。その結果でもある日韓関係の悪化、朝鮮民主主義人民共和国の新体制の先行き、ロシアのアジア市場への参入といった、米中二国以外のことも影響していると思いますが。
 米国が中国の「平和的な台頭」を認めるというような、米中による大国間関係の具体的な姿が、見えてきたように思えます。
 もちろん米国は帝国主義ですから、妥協して中国に譲ってばかりではない。一本調子で進むことはないでしょう。双方が、いっそう冒険的なことを行う可能性があり、軍事的な緊張もあるでしょう。
 中東についても補足すると、米国のシリアとイランへの対応を通じて、サウジアラビアやエジプト、さらにイスラエルまでもが米国の支配力に限界を感じ、独自の動きを見せている。戦後の、米国の中東地域への支配は転換点を迎えたと言ってもいいと思います。アジアでの韓国の動きなども、これに似ていますね。
 全体をまとめると、こんにちが「特殊な多極化」がいちだんと進んだ、「戦争を含む乱世」であることがいっそう鮮明になった一年だったのではないでしょうか。

「資本主義の末期症状」とは
大嶋 皆さんが発言された、一つ一つの問題について深める時間はありません。そこで、論点を絞りたいと思います。
 大きな問題は、わが党は「危機が深まっている」というけれども、それはどの程度に切迫しているのか。わが党は「資本主義の末期症状」と特徴付けていますが、それを示す客観的事実や指標についてはどうでしょうか。これは、今後の国際情勢の推移を考える上できわめて重要だと思いますので。

中村 一つに、昨年の新春インタビューで大隈議長がふれている点です。
 つまり、現在は世界に資本主義に取り込まれていない広い未発達の国、市場があるような状況ではなく、資本がアフリカなど世界の隅々にまで行っている。資本がどっと入れば、その国は支配勢力にとって「天国」になる。そうだけれども、引き上げれば、賃金でしか生きられない人びとはメシも食えず、地獄になる。もうしばらくは「市場開拓」の余地があるとしても、限界は見えていて、世界で百兆円以上とされている需給ギャップは埋めようがない。
 資本家たちは、生産に投資できず、別の投資先・投機先を探さざるを得ない。各国中央銀行は、その必要さに応えて金融を大胆に緩め、投機先としてバブルをあおった。

長岡 そうして、「カネ余り」もいちだんと進んでいます。
 金融緩和の結果、ワールドダラー(米国のマネタリーベースと外国保有の米国債の合計)は九兆ドルを超え、リーマン・ショックから五年で二倍以上にも急拡大し、さらに増え続けている。FRBのバランスシート(貸借対照表)は約四倍に膨らんだ。米国だけではなく、欧州や日本も似たようなもので、世界は「カネ余りの極地にある」とも言うべき状況です。
 グリーンスパン前FRB議長はカネ余りが危機の根源だと言いましたが、金融緩和の結果、そのカネをさらに増やして危機を乗り切るというか、緩和させようとしている。だから当然にも、もっと大きな危機が準備されることになる。かといって、五年で急拡大したものを同じ五年では減らせない。「カネ余りは資本主義の必然」というだけでなく、現実の「カネ余り」は長期に続きますね。
 加えて、コンピュータの発達で、投資家は一秒間に数千回という取引を行ったりして荒稼ぎ、つまり収奪している。金融はいちだんと不安定化して、「相対的な安定期」などあり得ない。どの国から始まるかは分からないとしても、遠からず危機が爆発することは間違いないでしょう。
 FRBが「出口」と言うのも、バブルとその破裂を恐れているからですね。人間にたとえれば、麻薬を打ちすぎて「これ以上打ったら死ぬ」ような状況。それでも、打ち続けざるを得ないわけですね。
 こんにちの世界資本主義が生き延びていくには、金融バブルは不可避だということです。このことをよく分かっているグリーンスパンは、利潤をあげられなくなった資本家、金融独占資本、投機家たちを前にして、金融緩和を行って住宅バブルをつくりだし、金融独占資本や投資家たちに儲(もう)け口を提供した。ただ、グリーンスパンは深刻な危機に陥った根本的な原因が、資本主義の「私的所有」にあることを理解できなかった。彼の階級的な限界です。

秋山 国家の累積赤字も深刻です。国際通貨基金(IMF)によれば、主要十五カ国の危機前の平均債務残高は対GDP比で約六七%でしたが、昨年は約一〇八%に急増しています。一〇〇%を超える国だけでも、ダントツの日本をはじめ、イタリア、米国、ベルギー、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルの八カ国。九〇%を超える国となると、フランス、英国、スペインとさらに三カ国増えます。
 「国家は破たんする」という本によれば、九〇%を超えると、歴史的にはほぼ「返済不可能」らしいのです。これから考えれば、ほとんどの先進国が中長期的にデフォルトの危機にあるということになります。いつ何時、投資家の攻撃を受け、国債価格の急落(金利高騰)で破たんの淵(ふち)に立たされてもおかしくない。
 もちろん、経済力の弱い新興国では、「一〇〇%以下」だからといって安心できないことは、長岡同志が指摘した通りでしょう。
 見なければならないのは、こうした債務は、大銀行や大企業を救済し、その膨大な債務を国家に移したことによるものだということです。こんにち、そのツケは、あげて人民に押しつけられています。

山本 経済危機だけでなく、各国間の対立激化で、安全保障面の危機も進んでいます。主要国は軍拡競争をしていますし、武器の輸出入も拡大しています。
 軍事費で最大なのは米国(約七千億ドル)で、この対GDP比はベトナム戦争当時よりも高くなっています。米国に比べれば額は小さいですが、中国をはじめとするアジア地域の軍拡が目立っています。
 武器を持てば、使いたくなるというものです。
 わが国も、安倍政権で軍拡競争に「参戦」です。これは各国同じですが、経済危機対策でもあるわけです。日本などは典型的ですが、経済を押し上げているのは、震災対策――これは必要ですが――それに「国土強靱(きょうじん)化」などといった公共事業関係しかない。それに軍需が加われば、資本家たちには「誠に結構」となる。
 町を回ってみると、中小企業の社長さんが「大きな声では言えないが、相模原市の三菱重工がタイヤで高速に移動でき、軽くて飛行機で運べる戦車をつくった。あれを政府に買わせたいのでしょう」と。どうも、この社長のところにも仕事が少し出たみたい。「中期防」では、この機動戦闘車を九十九両買うことになっていた。一日何十軒も回ってみて「仕事がある」と言った社長は、震災復興関連、耐震構造強化関連、防衛関係、それにオリンピックスタジアム関連だけだった。本当に、こんな感じですよ。
 イラン問題の先行きはともかく、核保有国も増えることはあっても減らないことは確実です。安倍政権も、エネルギー需給の点からだけではなく、こうした世界の動きを見た上で、原発再稼働に対処しているのだと思いますよ。安倍のめざす軍事大国化には、当然、核武装が含まれているのでしょうから。

大嶋 今、皆さんが言われたこと、またそれ以外も、もっと研究を深める必要があると思います。
 ただ、まさに、世界は「出口」どころではなく、より巨大な危機が準備されているということですね。世界がうまくいっているかのような「繁栄」というか「安定」は長く続かず、破局は避けがたく、しかも迫っている。
 全国の労働者に対し、こうした世界観をきちんと説明していくということが、党派闘争に勝ち抜いて党建設を前進させる前提として、重要さを増しているということではないかと思います。

破局が迫った国内情勢

安倍政権下の1年間
大嶋 先ほどのような危機的な国際情勢ですから、日本は労働者階級と国民大多数が政権を握り、明確に独立し、自国の運命を握って自らのための政治を実現しない限り対処できません。
 その話の前に、国際情勢と同じように、昨一年の国内情勢についても簡単に振り返ってみましょう。

中村 一昨年の総選挙で成立した安倍政権ですが、最初は「経済優先」を掲げ、「三本の矢」(大胆な金融緩和、機動的財政政策、民間の設備投資を促す成長戦略)を打ち出しました。通称、「アベノミクス」です。
 最初に、日銀の白川総裁(当時)に迫って、金融緩和を進めさせた。次に財政政策で、二〇一二年度の補正予算案と一三年度予算案を決定。公共事業と防衛費を積み増したのが特徴です。三月には日銀総裁を黒田氏に入れ替え、四月の日銀会合で「異次元の質的・量的金融緩和」に踏み込ませた。六月には「日本再興戦略」を策定、インフラ輸出の促進や産業再編などを打ち出しました。
 外交・安全保障では、二月の日米首脳会談で「同盟復活」をうたい、TPPへの参加も表明しました。東南アジア諸国連合(ASEAN)やインド、トルコ、ロシアなど、インフラ輸出と中国をけん制する活発な外交にも乗り出した。

秋山 こうした安倍政権の内外政治は米国の「アジアリバランス戦略」をいちだんと支えるものですが、それだけではありません。
 安倍なりに、長期デフレ不況で地盤沈下した日本を強国として取り戻す戦略を立て、激変した国際情勢を見ながら手を打っているといえます。しかも、不満を持つ国民の気分も推し量りながら、「愛国心」を鼓舞して幅広い支持を獲得し、戦線を広げようとしている。
 背景は、アジアを中心に膨大な権益を持つ、金融独占資本を頂点とするわが国多国籍大企業が、日本が大国として存立することを欲していることです。安倍の「強い日本を取り戻す」というのはそのためのスローガンですね。
 ただし、安倍はしょせん対米従属の枠内で、わが国の主権を守るものではありません。それは「中国の台頭」や「日米同盟強化」を明記した新防衛計画大綱などを見ても明白です。かれが掲げるのは「ニセの愛国」です。
 ですが、こうした内外政治に、議会内野党は明確な包括的な政策的対置ができず、七月の参議院選挙では自民党が大勝、衆参の「ねじれ」は解消しました。安倍は議会内では「安定」を手に入れたかのようですが、最低水準の投票率は、国民の政治・政党不信の強さも印象づけました。

長岡 参院選後では、十月の消費税増税決定。これにともなう五兆円規模の経済対策の策定、「デフレ脱却」のためとして政労使会議などがありました。
 当初、安倍は秋の臨時国会を「成長戦略実現国会」と言っていましたが、フタを開ければこれは後景に退いて、安全保障関連の踏み込みが目立ちましたね。国家安全保障会議(日本版NSC)設置法、特定秘密保護法の成立、集団的自衛権容認のための有識者懇談会の再開、年末には初の「国家安全保障戦略」と新たな「防衛計画大綱」の策定と、矢継ぎ早です。
 米国の急速な衰退を見て、安倍政権なりに対処を早めたということかもしれません。
 他方、日韓、日中関係は「最悪」といってよい状況です。

山本 若干補足すると、安倍政権には官僚への統制強化による支配機構の改革というか、「強い国家」をつくるための措置も目立ちます。
 内閣法制局人事の変更、国家公務員の人事を官邸直結にしたこともあります。特定秘密保護法にも、同じような狙いもあると思いますね。

アベノミクスの現状と先行き
大嶋 特定秘密保護法をめぐる問題で大きく下がりましたが、それでも、安倍政権の支持率は結構高い。
 この最大の要因は、アベノミクスでデフレ脱却が図れるかのような雰囲気が出ていることでしょうね。それに、安倍の外交安保政策も一時的にしろ、功を奏しているようです。ただ、マスコミによって操作されているところを除いた、国民生活の実態はどうか。以降の安倍政権も、この経済というか、国民生活の先行きにもっとも大きく左右されるということだと思います。
 この点に絞って、現状と先行きについて伺いたいと思います。

中村 企業アンケート、マスコミが行ったものですから大企業、とくに上場企業でしょうが、それによれば、九割が「景気が拡大している」と見ている。ただ、懸念材料でもっとも多いのは海外経済の先行きで、とくに米国と中国に不透明感があるという。むろん、消費税増税や原材料価格の動向、少子高齢化への不安も高いようです。
 安倍は企業減税などでこれに応えようとしているのでしょうが、財政はいちだんと厳しくなるし、これへの財界の危ぐも強いということですね。
 利益配分先でも、賃上げとしている企業は一〇%未満です。その中身も、一時金での対応が多いようです。

大嶋 別の企業調査によると、企業が重視している戦略(複数回答)は、新商品や新事業がもっとも多いのですが、これに事業の取捨選択やコスト削減が続いており、しかも昨年よりも増えている。要するにリストラです。
 JTが最高益を上げながら千六百人もの首切りを決めたようなことは、これからも続くということでしょう。「景気拡大」とかいっても、それで労働者の生活がよくなるということではないですね。

秋山 七〜九月期のGDP成長率を見ると、公共事業と民間住宅投資が支えている。住宅は、消費税増税前の駆け込み需要でしょう。ほかは、株価などの資産効果もたいしたことはなく、アベノミクスの効果ははく落してきているということですね。
 最近の法人企業統計を見ても、民間設備投資はほとんど伸びていない。面白いことに、円安にもかかわらず輸出がほとんど伸びていないのです。

山本 その公共事業の伸びにも、実は「落とし穴」があります。成長率の計算(速報値)は予算段階で行っているのですが、実際に予算執行できたのはその半分程度とか。だから、確定値の段階では効果はかなり薄れる。以降の経済対策でも消化しきれない。すると税収も減って、一五年度の赤字の対GDP比半減という「公約」も、難しくなる可能性が高い。

中村 金融緩和も、日銀当座預金の金額はうなぎ登りに増えていますが、銀行による貸し出しはわずかな伸び。要するに、たれ流された資金は「ほとんど使われていない」ということです。設備投資など実体経済への影響はごく限定的ですね。

長岡 消費税対策での低所得者層への給付は一回限りで、ほとんど恩恵はない。安倍政権による「賃上げ」要請も、応じる企業はごくわずかでしょう。上がっても、消費税増税分を取り返すのがせいぜいのところ。
 企業間競争は厳しいですから、ほとんどの企業は上げないでしょう。
 先日、パナソニックの工場がある兵庫県尼崎市に行ったのですが、先ほど大嶋さんが言ったように、大企業は労働者への還元どころか、この時期にリストラを進めている。ここの商店街は、八割が「シャッター化」しているとか。「アベノミクスの恩恵」どころではないですね。
 ごく一部の大企業が、為替差益と資産効果で喜んでいるだけでしょう。

大嶋 そこへ、四月の消費税増税です。
  安倍政権は、増税後の七〜九月の経済状況を見て、来年中に一五年秋の消費税再増税を行うかどうか決めるとしている。ところが、四月以降の消費のいちだんの冷え込みは間違いない。安倍政権は五兆円の経済対策を決めていますが、山本さんが指摘したように、公共事業の効果もきわめて疑わしい。そうすると、仮にもう一回、経済対策を行ったり、日銀に金融緩和の追加策を行わせたとしても、効果は限られる。
 成長戦略で掲げた規制緩和などは、財界からすればきわめて不十分ですが、それでも行えば、大企業の一部も含めた淘汰(とうた)が進んで「痛み」は果てしない。財界の望む「効果」があっても、時間がかかります。
 「デフレ脱却」はできず、財政はいちだんと悪化し、金融緩和はますます「財政ファイナンス」の色彩が明白になる。
 国民の可処分所得は減り、雇用状況も改善しない。社会保障制度も、どんどん改悪される。国民生活はさらに厳しくなり、「話が違う」という批判が政権に集まる。
 議論の流れではないので簡単にしますが、日中・日韓関係も、大きく改善することは見込めない。米軍基地問題、垂直離着陸機オスプレイ訓練の全国化、TPPなどもある。内外とも、難題が山積みです。
 今年中に政権が崩壊するとまでは言い切れませんが、現状の支持率が続くことはあり得ないと思いますね。

中村 県内で地域学習会を行ったときに言っているのですが、とくに財政問題は深刻だと思いますね。
 今、十年物国債の金利は一%弱くらい。国の一般会計の国債利払いは、十兆円弱です。仮にこの金利が四%になれば、利払いだけで約四十兆円。現在の税収がほとんど吹き飛ぶ形になる。
 金利が上がれば、ただでさえ乏しい設備投資がさらに足を引っ張られ、実体経済にマイナスに働くということもあります。
 一時のギリシャのように、七%を超えたらさらに絶望的で、国の運営ができなくなるということでしょう。要するに、デフォルトです。
 問題を単純化しましたが、これに海外の危機も加わる。たででさえ、日本の政府累積債務は先進国随一です。問題を国内に限っても、財政問題が最大のポイントだと思います。

秋山 デフォルトまでいかなくても、その「印象」を与えただけで、内外の投機家の攻撃は不可避でしょう。
 国家財政だけではありません。国債の金利が一%上がるだけで、これは国債価格の下落と同義ですから、国債を大量に保有する都市・地方の金融機関は六兆円もの損失を受ける。二%だとその倍。メガバンクの純利益の合計は約三兆円ですから、これがすべて吹き飛ぶ計算です。こうなれば「日本発の金融危機」ですよ。
 こうした破局的事態がいつ来るかということですが、日本政府は「一五年度の赤字の対GDP比半減」と「二〇年度のプライマリーバランス黒字化」を「公約」しているわけで、これが達成できないことが明白になった時点が、一つの目安でしょう。
 そうすると、今年から三〜五年の間に、それがやってくるということになる。きわめて切迫した情勢だといえますね。

大嶋 政治暴露、考え方の面での党派闘争を大胆に推進して、党の建設を急がなければなりませんね。

共産党への暴露が重要に
大嶋 参議院選挙後の政党状況も、年末にいくらか動きました。どうでしょうか。

山本 年末の出来事というと、みんなの党の分裂です。その前には、臨時国会での特定秘密保護法をめぐり、みんなの党は自民党にすり寄って動こうとして分裂した。日本維新の会も、とくに大阪と東京の違いは明白で、石原共同代表は特定秘密保護法で安倍に協力する態度をとったし、憲法改悪で自民党に協力することを隠そうともしていない。今後の政界再編の先々も含めて、分化が進んだと思います。
 「結いの党」を結成した江田代表と維新の会の松野・国会議員団幹事長、さらに民主党の細野前幹事長らで、勉強会などいろいろ動いています。一方、維新の大阪府議から四人が造反し、維新は府議会で過半数を割りました。
 これらの動きが階級情勢と結びついていることはもちろんです。大阪と東京の分化は、イデオロギー的なものも含むのでしょう。今後の動向は注目に値します。
 いずれにしても、片方は安倍の側に付くような形になり、日中関係、東京都知事選、集団的自衛権、改憲という流れの中で結集を進めるかのような動きです。安倍の基盤は弱いのですが、中国との関係を利用し、これらの党だけでない勢力をひきつけて戦線を広げている。当面は、来年の統一地方選をめざした態勢づくりです。

中村 江田氏は「政権交代可能な野党勢力の結集をめざす」と言っていますが、以前の自民党と民主党のような、保守二大政党制的な状況さえ難しいでしょう。現在の危機は、それを許さないと思いますね。各党の内部にある政策面の「ねじれ」を解消するための再編は進むとしても、相当に時間がかかると思います。

長岡 安倍の、対米従属だけれども「戦後レジームの脱却」というような道に対する「対抗軸」を出せるかというと、無理でしょう。江田氏らだけでなく、どの議会政党も難しいと思います。
 われわれのような、独立を正面から掲げる党以外に展望はないと思います。

秋山 共産党は「自共対決」を打ち出していますね。「対決」の実態はないとしても、労働組合の「左」の一部を中心に、共産党への幻想が広がっているという実際があります。安倍への対抗勢力がほかには見えないという事情もあります。
 共産党も、二十六回大会議案では「修正資本主義の党」が近い将来登場するだろうと見て、それと連携する方向を打ち出しています。事実上、保守政党との連携で連合政権への参加も視野に入れているのです。階級闘争が激化する見通しの下で、その時、怒りを持って立ち上がろうとする労働者を思想政治面から武装解除して、真の敵を隠し、議会的闘争、選挙闘争と改良の泥沼に引きずり込もうとしているのです。大衆闘争の革命的な高揚を妨害する、犯罪的なものでしょう。
 共産党への暴露は重要で、「議会主義だ」という暴露は非常に重要ですが、具体的に分かりやすくやらないと難しい。また「分裂主義」という批判も、労働戦線の統一をめぐって共産党が策動を繰り返した時期からも、すでに三十年も経過している。
 それでも、共産党が決定的な状況になったときにどんな役割を果たすか。独立の問題であいまいで、安倍の「ニセの愛国」を暴露しないことと併せ、米帝国主義を美化していることにも、きちんとした暴露が重要ですね。

大嶋 「労働新聞」の今年の課題の一つにしておきます。

労働党はどう闘うか

大嶋 続いて、わが党が闘う課題についてです。
 少し振り返ると、わが党は〇五年に開催した第六回大会で、改めて、党建設を当面の具体的な中心任務として決定しました。以降、重要な前進もあったわけですが、破局が切迫する情勢に備えるにふさわしい隊伍を現在整えているとは、とてもいえない。
 そこで、昨年秋に開かれた第十回中央委員会総会では、この六大会決議を再確認し、党建設に挑むことを決定しました。
 その上で、全国的な闘いの課題として、(1)対中国関係、日朝国交正常化、対アジア外交、(2)沖縄県民の闘いを支持し、全土で米軍基地撤去を掲げ、オスプレイ配備や日米共同演習などに反対して闘う、(3)労働者階級の低賃金に反対し、大幅賃上げ、解雇・リストラ反対など切実な生活課題、(4)自営業者や農民など中間階級や中小企業の課題といったこと。省略しますが、さらに、各戦線対策を決めています。
 これらの方針を前提に、以降の情勢の進展を踏まえて、強調すべきことはどうでしょうか。

「2つの路線の争い」という視点
山本 十中総では、国の進路をめぐる「二つの路線」が争われているとしています。一つは、安倍政権の進める「戦後レジームからの脱却」という路線です。これでは決して対米従属から脱却できず、その枠内での政治軍事大国化、「ニセの愛国」の道です。もう一つは、わが党が主張する、日米安保条約を破棄し、米軍基地を一掃し、自主的に中国などアジア諸国と共存・共生する道です。
 「二つの路線」「ニセの愛国」なのですが、そう紋切り型で片付けず、具体的に暴露する必要があります。
 たとえば昨年末の防空識別圏問題で、安倍は、米軍の爆撃機が中国の設定した識別圏内を飛ぶまで、何もできなかった。つまり、米国頼みです。米軍なしには何もできない。実際は、中国に対して国家主権を守ろうとしていないということです。尖閣諸島問題にしても、歴代政府がわが国の主権をあいまいにしてきた。国交正常化のときも、一九七八年の日中平和友好条約の締結時も、米国に先んじて中国市場を確保したいという財界の要求があったのでしょう。領有権問題をあいまいに処理した。そして実効支配を強めてこなかったことが、今回の事態を招いている。
 「対等な日米関係」とか「自主防衛」とか、いろいろ粋がったことは言いますが、米国に頼るだけで主権を守っていない。この具体的暴露が必要だと思います。

秋山 安倍は大衆の意識状況に着目し、ニセモノではありますが、国益を守るかのようなことを言って一種の統一戦線をつくろうとしています。この暴露が重要ということですね。

大嶋 切迫している沖縄問題ではどうでしょうか。

山本 沖縄問題の重要性は、一月の名護市長選挙や秋に県知事選挙が予定されているということだけでないと思います。日中関係が厳しくなっているこんにち、沖縄はその「最前線」です。
 ところが「読売新聞」によれば、中国に「良い印象」を持つ沖縄県民は九・一%にとどまり、全国の一五・六%を大きく下回っているということです。中国にも責任はありますが、沖縄県民でさえ、安倍政権による中国敵視論の影響を受けている。
 こうした中でわが党は、国の独立をめざす統一戦線に、沖縄県民全体が合流するよう努力しなければなりません。日中関係が緊張し、独立をめぐる「二つの路線」の闘いが先鋭化する中、沖縄県民は、この国の独立で米軍基地を撤去させるために、対中国関係の中でいかに平和を確保するか、その政治路線が問われている。これは当然だと思いますよ。
 沖縄の若手知識人の中で広がっているという「沖縄独立論」への複雑な対応も含め、沖縄がこれから直面する問題で正しい戦略的態度を貫けるのは、わが党以外にはない。沖縄の皆さんとともに、前進したいと思いますね。

14春闘を発展させる
大嶋 もう一つ、生活の課題についてはどうでしょうか。とくに春闘については。

秋山 一四春闘に関してですが、安倍が財界に「賃上げ」を要請するようなことを言っていますから、連合本部が長い間闘わないできた結果、労働者の中にさえ「安倍に頼めば……」という幻想が広がっていると思います。
 もちろん、実際に賃上げされるのは民間大手の一部だけですけどね。
 今春闘では、以前にも増して、政府に期待するのではなく、職場を基礎に自らの力で闘うこと、「一%」などではなく大幅賃上げを要求すること、全労働者の課題として闘うことが必要だと思います。
 不当解雇や工場閉鎖など、リストラ攻撃との闘いも重要です。
 公務員労働者に関しては、今年は賃金切り下げ攻撃が強まるでしょう。〇五年度の「集中改革プラン」に基づく攻撃に続いて、今年は公務員の「給与制度の総合的見直し」が、夏の人事院勧告で提案されます。安倍政権の下、いよいよ公務員への賃金切り下げ攻撃が本格化すると認識すべきです。秋が本盤ですが、春から問題になりますね。公務員労働者のところは、引き続き戦場です。
 党建設という角度からは、民間での闘いをどう促進できるかということが重要になります。その気運をつくるために、まずは党の宣伝・暴露が必要です。

大嶋 「労働新聞」でも、主張はもちろんですが、賃金に関するデータや解説を載せるように努力したいと思います。

長岡 昨年は、国家公務員の七・八%の賃金カット、これの地方への波及に対して、多くはありませんが、自治労のいくつかの単組が四・二六ストライキを闘うということがありました。

中村 県内のある市では、その問題で単産を超えた共同の集会が取り組まれ、さらに、特定秘密保護法問題での街頭行動も行われています。退職金で三百〜四百万円、月々数万円も賃金が減らされるわけで、深刻です。組合員の意識の変化も見られますね。

山本 そうした闘いは、とても重要ですね。
 わが党は、自治体労働者の賃金問題の研究と経験を行い、その成果を、「労働新聞」や政治理論誌「季刊労働党」一二年春号とその別冊などで発表しています。いくつかの単組では、それに基づいた闘いも続けています。こうした成果を基礎に、さらに発展させる。とくに、民間企業の賃金問題での暴露と闘争は重要な課題です。

秋山 労働分野の規制緩和という問題もありますね。

山本 ホワイトカラー・エグゼンプションなど、規制緩和との闘いは重要です。
 ただ、大多数の中小企業労働者、労働者の三分の一以上を占める非正規労働者は、低賃金・無権利状態にとどめられています。こうした労働者の厳しい現実を改善することこそ、より本質的な問題ではないでしょうか。そもそも、非正規労働者は退職金や年金からも排除されているし、中小の正社員も「なきがごとし」です。
 連合も「非正規労働者の待遇改善」を掲げてはいますが、実際の取り組みはきわめて不十分です。公務員では、民営化攻撃が強まっている現業部門。そういう、いわば「下層」の要求を重視しない限り、労働運動は再生できない。そのためにも、わが党の前進は大前提だと思いますね。
 また、自営業者や中小企業、農民といった諸階層も生活は苦しく、政治に不満を持っています。安倍政権がダマし続けることも困難でしょう。これらの人びとの要求や闘いを支持・激励し、ともに闘うすることも大切ですね。

党建設の前進を勝ち取ろう

大嶋 最終的な決め手は、党を大きくすることです。最後に、党建設についての皆さんの抱負を聞かせてください。

長岡 今、ブロック内のある県に入り、現場の同志から党の経過について聞き取りを行なったり、疎遠になっていた同志を訪ねたりしています。
 これまで、労働者階級や貧農出身の青年労働者がおおぜい、革命への情熱を燃やして党に結集してきたこと、いくつかの重要民間大工場で細胞建設がされてきたこと、今でもその痕跡(こんせき)が残っていることなど、四十年の党の歴史の重みを改めて感じています。指導の問題点も、より具体的に自覚できるようになりました。
 今、まさに「情勢がきた」わけで、本格的に党をつくらなければならない。闘いの中で労働者、とくに青年労働者を多く、党に組織しなければならないわけですが、その基礎をつくるための手応えを感じています。

中村 同志の結集もそうですが、地域で何回か学習会を開いたりして、成果があがり始めています。以降も、これを徹底して進めたいですね。
 多少、政治に問題意識がある人であれば、安倍政権に対する危機感ではほぼ共通しています。それを「危機感」に終わらせず、破局が切迫していること、闘いようがあるということについて、どう理解してもらうかという点は重要です。
 また、民間企業の労組も含め、大胆に入っていく必要があると思いますね。

山本 神奈川では、大きな経営を重視して取り組んでいます。危機の時代の決定的力は、大工場の組織され、訓練された労働者、労働運動でしょうから。もちろん、一朝一夕には無理ですが。
 そのためにも、幹部、専従者の「小ブルジョア的体質」の克服がカギになります。労働者階級のおかれている「どうにも浮かばれない」客観的状況と認識を見抜けない、理解できない、信頼できない――これでは問題になりません。まずは、そうした現場の党員同志との相互関係、信頼関係を築くことが出発点でしょう。
 それと、十中総の冒頭で大隈議長が提起した、危機の時代には「原則的な政策だけが唯一の正しい政策である」という問題は、非常に重要だと思いました。先進的な労働者を中心に党と統一戦線の組織をつくる、組織することなしに、急速に移り変わる情勢に対処できないですからね。
 さらに、宣伝のスローガンや行動のスローガンをあらかじめ決めて、社会民主主義や修正主義の思想政治的影響を打ち破って、先進的部分の認識を整とんしておくことが決定的に重要ということですね。とくに議会主義、「選挙で世の中が変わるのか」という問題、国家に対する態度の問題は重要です。

秋山 十中総では、六大会以降の党建設の経験の真剣な総括を踏まえて、今後の方向についても六大会方針を「行動の指針」にして取り組むことを確認しました。特に、中央が戦略指導の水準を闘い取ることが急がれていると認識しているところです。
 都府県での党建設では、十中総決議の具体化で、福岡県委員会のこの期間の経験に注目しているところです。中村さんが言いましたが、福岡県委員会の取り組みはとても示唆的で、いろいろ考えさせられるところがあります。これに学んで、東京都委員会としてももちろんですが、全党的にも推進する必要があると思います。
 山本同志がふれた統一戦線についてです。政治を変える上で、自主・平和・民主のための広範な国民連合の役割は、ますます重要になっていると思います。わが党としても、以前にも増して国民連合を支え、皆さんとともに闘いたいと思います。
 論議してきたように、労働者階級に依拠した革命政党・労働党を全国に建設することが、従来にも増して求められる情勢です。焦りは禁物ですが、団結して闘い、本年は党と統一戦線の建設・強化での大きな前進を勝ち取りましょう。

大嶋 本日は、どうもありがとうございました。

一同 ありがとうございました


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