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2014年1月1日号 1面 社説

独立をめぐる「2つの路線」が
争われている

労働者は独立の課題で鮮明な
態度をとり、安倍政権の欺まんを
打ち破って闘おう

 安倍政権は二〇一三年十二月十七日、「国家安全保障戦略」(NSS)を決定、同時に、これに基づく新たな「防衛計画の大綱」(大綱)、さらに「中期防衛力整備計画」(中期防)も決めた。
 安倍政権は、とくに昨秋の臨時国会以来、危険な外交・安全保障政策を矢継ぎ早に推し進めている。さらに今春、集団的自衛権の行使容認に踏み込もうと策動している。
 これは、衰退する米国のアジア戦略に追随、補完すると同時に、台頭する中国に対抗して、日本の政治軍事大国化を狙う危険な道である。
 安倍政権は「対等な日米関係」と言い、対米従属政治に苦しむ国民の願いに応え、わが国の「独立」をめざすかのような言動を弄(ろう)して政治的支持を広げようとしている。だが、しょせんは対米従属政治の枠内から一歩も出られない。
 安倍政権に反対する一大国民運動を巻き起こし、政権を打ち倒し、さらに日米安保条約を破棄して、独立・自主の国の進路を切り開かなければならない。

中国に対抗し大軍拡に踏み込む
 NSSは戦後初めて策定する、十年程度をメドとした外交・安保政策の指針である。一九五七年に策定された「国防の基本方針」に代わるものである。
 「基本理念」として、従来、建て前ではあれ維持されてきた「専守防衛」に代わり、集団的自衛権の行使を前提とした「積極的平和主義」が明記された。新設された国家安全保障会議(日本版NSC)の下、「国際政治・経済の主なプレイヤー」として、世界中で軍事的役割を果たそうというのである。また、野田政権以降、大幅緩和された武器輸出三原則を最終的に撤廃、「新たな原則」を定めるとした。「国と郷土を愛する心を養う」などと、「愛国心」を強制することも明記した。
 中国に対しては「国際社会の懸念事項」「国際法秩序とは相いれない」などと、対抗姿勢をあらわにさせている。
 安倍首相は、このNSSを「歴史的文書」として自賛している。
 これに基づく「大綱」は、基本概念として、民主党政権による「動的防衛力」に代わり、陸海空三自衛隊を一体的に運用する「統合機動防衛力」を掲げた。
 装備では、海兵隊機能をもつ「水陸機動団」の新設、イージス艦や潜水艦の増強、米軍と同じ垂直離着陸機オスプレイ、無人偵察機、機動戦闘車などの新兵器を含む大幅な軍備拡張と、敵基地攻撃能力の検討、海外派兵の拡大などを打ち出した。
 中期防では、二〇一四年から五年間で、前期間より一兆円以上も多い、総額二十四兆六千七百億円の防衛費をつぎ込むとした。
 今回のNSSや「大綱」を先取りするかのように、安倍政権はその登場以来、とくに昨秋の臨時国会で矢継ぎ早の策動を進めてきた。
 日本版NSCの新設、特定秘密保護法、集団的自衛権容認のための有識者懇談会の再開、普天間基地(沖縄県宜野湾市)の県内移設で仲井真県知事を屈服させたことなどである。十月の日米安全保障協議委員会(2+2)では、日米防衛協力の指針(ガイドライン)の改定でも合意した。憲法改悪策動や政治反動も強めている。靖国神社にも参拝した。
 外交でも、東南アジア諸国連合(ASEAN)やトルコなどと関係を強化する「地球儀俯瞰(ふかん)外交」、環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加などを進めた。
 安倍政権は、歴代自民党政権が変えられなかった、さまざまな制約を一気に取り払い、中国への対抗強化のための政治軍事大国化に突き進んでいる。

苦境の米国助け、戦略支える
 安倍政権の策動は、衰退する米国の世界戦略を支えるものである。
 リーマン・ショック後の米国の危機は、いちだんと深い。膨大な金融緩和でも経済は自律的回復には遠く、労働者は長期失業と低賃金に苦しんでいる。累積財政赤字も解決のあてはない。
 国際政治への影響力も失墜、シリア問題に続き、イラン問題でも妥協を強いられた。危機打開のための「アジアシフト」も容易ではない。
 米国はアジアで危険な策動を強めるとともに、日本のさらなる負担を求めている。
 他方、中国は、二〇年頃には経済規模で米国を追い抜くと言われるほどになった。国際政治面でも台頭し、軍備拡大や海洋進出を進めている。だが、国内の階級矛盾は深刻さを増し、先行きは予断を許さない。政府・共産党は対外強硬策で国民の不満をそらそうともしている。
 米国は、この中国に対し、経済的利益を求めての関係強化と併せ、「アジアリバランス」戦略でけん制するコンゲージメント(関与と封じ込め)政策をとっている。中国も、米国をけん制している。両国とも、冒険的政策に出る可能性がある。
 一方で両国は、昨年六月の米中首脳会談で中国が「新しい大国間関係」に言及、十一月にはオバマ政権がこれを受け入れるかのような態度をとったことに示される通り、大国同士として特権を分け合うような動きも見せている。米国家財政の一定部分は、中国による国債購入に依存してもいる。
 安倍政権はこの米戦略に積極的に追随し、中国に対抗して矢面に立つ、危険な役割を買って出ている。軍備増強は、財政危機にあえぎ、国際政治もままならない米国にとって大きな助けとなる。米国製武器の購入は、軍産複合体への支援となる。


安倍政権の「愛国」はニセもの
 安倍政権の進める道は、単純な対米従属というだけではない。
 安倍政権は世界資本主義の危機が深刻化する中、米国の衰退ぶりを横目に見つつ、アジアで政治軍事大国として登場することを夢見ている。
 背景には、世界中に膨大な権益を有する、メガバンクを頂点とするわが国の多国籍独占体が、小泉政権以来の「覇権的利潤追求の内外政治」を求めていることである。
 安倍政権はこの策動を合理化するため、「日本を取り戻す」とか「対等な日米関係」などと言い、TPP交渉では「米国にひざを屈しない」とまで言う。「愛国者」づらし、従来の対米従属とは異なる「独自」姿勢をとるかのようである。
 これは、歴代の対米従属政治で苦しむ国民諸階層をひきつけることが狙いだが、欺まんである。安倍政権の「対等」や「愛国」は、しょせんは対米従属の枠内である。安倍政権は、「日米同盟強化」で米軍に頼る以外に選択肢を持っていない。
 それは、昨年末に中国が防空識別圏を設定した際にも露呈した。中国敵視で粋がる安倍政権だが、米軍が爆撃機を飛ばすまで何もできなかったし、米国が中国に譲歩するや、あわてふためいて醜態をさらした。
 安倍は「対等な日米関係」などというが、結局は米国に依存し、米国の国益に翻弄(ほんろう)されるものである。わが国の独立はもちろん、主権を守ることさえできない。安倍の掲げる「愛国」はニセものである。

独立・自主の広範な戦線が急務
 わが国の独立をめぐって、「二つの路線」が争われている。
 安倍政権による「戦後レジームの脱却」という、対米従属の枠内で中国に対して身構える道か、独立・自主で日米安保条約を破棄し、アジアと共生する道か、である。
 安倍政権の道では、わが国はアジア諸国でさらに孤立する。戦争さえ招きかねない亡国の道である。
 これは、米国との間の矛盾さえ拡大させることになる。米国は日本の助けを必要としつつ、衰退ゆえに、中国と「新しい大国間関係」を模索する動きも強めている。安倍政権への警戒感も隠していない。「フォーリン・アフェアーズ」を発行する有力シンクタンク「外交問題評議会」のリチャード・ハース会長は、米国抜きで「自力で事に当たるアジア」を警戒するという形で、安倍政権の「独自」姿勢をけん制している。
 矛盾をはらみつつ、安倍政権は集団的自衛権の行使容認などに踏み込もうとしている。遠からず、核武装の問題も浮上しかねない。
 アジア諸国の批判はもちろん、国民の批判と反撃は不可避である。
 独立・自主、アジアと共生し、平和で繁栄する進路を切り開かなければならない。国民大多数のための政権を樹立するため、闘いを発展させなければならない。
 議会内野党のほとんどは安倍政権に追随している。日本維新の会とみんなの党、民主党の一部も、外交・安保政策で安倍政権を支える構えである。
 「左」の勢力は民族課題、国家主権を守ることに関心を払わず、むしろ拒否して右の勢力に任せきりである。安倍らはそこを突いて、幅広い中間層、あるいは労働者さえひきつけている。結果、「左」は孤立させられている。労働運動と先進的勢力は、国家主権の問題に関心を払わなければならない。安倍らに打ち勝って主導権を握るようでなければ、勝利はおぼつかない。わが党が指摘したように、一昨年の総選挙での敗北の一つの大きな要因である。
 共産党は安倍政権に「反対」しているかのようだが、その実、客観的には「左」から支える役割を果たしている。かれらの第二十六回党大会決議案は、安倍政権への批判は「復古的な政治姿勢」などとするのみで、国家主権の問題ではあいまいでき然とした態度をとらず、安倍政権が「愛国」づらして戦線を広げようとしていることへの暴露もまったくない。これは、客観的には安倍の策動を許し、中間層を安倍の側に追いやる役割を果たすことになる。
 独立・自主の政権をめざし、与党・財界の一部を含め、国民的な戦線をつくって闘わなければならない。安倍政権の支持率は低下傾向で、闘いようはある。その際、粘り強く闘う沖縄県民との連帯は、きわめて重要な課題である。
 労働者階級は、国民運動の先頭で指導的役割を果たすことが求められている。


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