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2013年7月5日号 1面〜2面・社説

第23回参議院選挙に際して訴える

2013年7月4日

 第二十三回参議院選挙が公示され、七月二十一日の投票日に向けた選挙戦が始まった。安倍・自公連立政権の成立後、初めての本格的な国政選挙である。
 選挙戦は、リーマン・ショック後の世界資本主義の危機がいちだんと深まった下で行われる。衰退する米国を筆頭とする帝国主義は、戦争以外での危機打開の方法を見出せなくなりつつある。
 安倍政権は誕生後、冒険的政策を推し進めている。安倍政権は「日米同盟強化」の外交政策と経済政策である「アベノミクス」で、わが国の進路はいちだんと危ういものとなった。
 安倍政権の進める亡国の道か、完全な独立とアジアとの共生の道か、一億二千万人余の民族の前途、国の将来が問われている。
 だが、野党各党は危機への認識もなく、従って展望を描けず、原子力発電所や消費税など、安倍政権に対する部分的な政策対置にとどまっている。それは、貧困にあえぐ国民諸階層から遊離した階級的限界と、対米従属から一歩もはみ出さぬ政治的限界がゆえである。
 わが党は長期的戦略もあって候補者を擁立せず、原則としてどの党も支持しない。
 今回の参院選の結果、仮に自公与党が議会内での「安定政権」となり得たとしても、深まる危機と内外の難題の中で、行き詰まりは避けられない。悪政と断固として闘おうとすれば、前進できる情勢である。広範で強力な国民運動こそが、事態を打開できる。そのための戦略的準備こそが、決定的に重要である。
 労働者階級は迫り来る破局に備え、戦略的展望に立ち革命政党に結集するとともに、幅広い国民的戦線の発展に力を尽くさなければならない。

世界の危機はいちだんと深まった
 今回の参院選は、どのような情勢の下で行われるのか。
 二〇〇八年秋のリーマン・ショックに始まる、「百年の一度」と言われる世界資本主義の危機はいちだんと深い。
 諸国は、二十カ国・地域(G20)会合などによる「国際協調」、中央銀行による膨大な資金供給・金融緩和と財政出動で、破局に至ることを押しとどめてきた。
 そのひずみは各所で吹き出し、世界は安定せず、いよいよ不安定化している。世界的需要不足、過剰生産はまったく解決していないからである。「非伝統的政策」と言われる中央銀行の資金垂れ流しは、限界に達している。
 世界の金融市場は、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が金融緩和の「出口」に言及した五月末以来、いちだんと不安定さを増した。新興国、中小国は投機マネーに揺さぶられ、資金流出も始まった。中国人民銀行による事実上の金融引き締めも、混乱に拍車をかけている。破局を招く「爆薬」は世界のいたるところにある。
 各国政府が抱える膨大な財政赤字も解決のあてはない。
 日本も「アベノミクス」によって、世界的危機の一部、発火点ともなり得る状況である。
 全世界の人民は財政再建などを口実に犠牲を押しつけられ、欧州諸国などでは労働組合のストライキ、中東・北アフリカでの決起、ブラジルでの大デモなど、闘いに立ち上がっている。政治は揺さぶられ、不安定化している。トルコ、ブラジル、エジプトなどでの動乱は「序章」にすぎない。
 各国とも内政に余裕はなく、先進諸国は金融緩和による通貨安を「武器」に、輸出拡大などで他国に危機を押し付けようとしている。その激しさは「通貨戦争」と言われるほどである。資源や市場の争奪、とくにアジア市場をめぐる争いが激化している。
 G20会合などの国際協調は崩れ、実効ある合意などできるはずもない。米国を中心とする帝国主義諸国とその他の国々の矛盾はいちだんと激しい。
 危機の「震源地」となった米国は、雇用問題が依然深刻である。早晩、金融緩和の「出口」をめざさざるを得ないが、容易ではない。膨大な財政赤字も解決のメドはない。戦後のドル体制は末期にある。
 米国は、アジアでの「再均衡」政策で危機の打開を狙っている。この狙いは、成長するアジアを収奪して危機を打開することと併せ、強大化する中国へのけん制を強め、自らが主導する国際秩序に取り込んで「無害化」し、米国による世界支配を維持することである。
 だが、中国とは依存関係も深く、米国のジレンマは深い。「アジアシフト」を強めようにも、アフガニスタン和平の停滞、イランの「核問題」、シリア情勢など難題だらけで思うに任せない。
 それだけに、米国は軍事面も含め、日本に負担増を求めている。アジアでの緊張が高まっている。
 中国の習近平新体制は、米国との間で「新しい大国関係の構築」を打ち出している。だが、国内はリーマン・ショック後の過剰投資が顕在化、不動産バブルの崩壊も言われ、格差など諸矛盾も激化している。
 欧州も南欧諸国を中心に依然として危機を抱えているが、その中でも結束を強め、米国とは金融規制などで対立を抱えている。
 ロシアも、米国を「パートナー」としつつミサイル防衛(MD)問題などでは対抗、インドも米国の「対中けん制」に加担しているばかりではない。東南アジア諸国連合(ASEAN)も中国との懸案は抱えつつも、対米関係では慎重である。
 各国とも、自国の利益を守って危機に対処しようとしている。
 わが国を取り巻く国際環境はきわめて厳しい。わが国がアジアでどう生きていくのか、戦略的外交が必要である。現在の「日米同盟強化」、アジア敵視では国益は守れず、独立・自主なしにわが国は存立し得ない。

わが国の独立、外交・安全保障問題
 「日本を取り戻す」などと、経済対策と併せて中国や朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への敵視をあおって再登場した安倍政権は、中国への対抗を強める「日米同盟強化」、対米従属下の政治軍事大国化に突き進んでいる。
 集団的自衛権の行使に向けた検討、日米共同演習の強化、普天間基地の移設策動、米海兵隊の垂直離着陸輸送機オスプレイの配備容認、「動的防衛力」による軍備拡大と南西諸島への重点配備、海外派兵の拡大と武器使用基準の緩和策動、外務・防衛閣僚会議(2プラス2)のロシアなどへの拡大、武器輸出三原則の実質上の撤廃、原発再稼働、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加、第九六条からの憲法改悪、中国をけん制する外交など矢継ぎ早である。
 結果、中国との関係は国交回復以来最悪ともいえる状況が続き、韓国との関係も停滞している。
 安倍政権の掲げる「自主」はニセもので、反動的なものである。
 この危険な策動を支え、また内政に対する国民の不満をそらすため、靖国神社参拝や従軍慰安婦問題などでの侵略戦争の美化、朝鮮などへの排外主義もあおっている。
 その外交政策はわが国を従来以上に米国の世界戦略に縛り付け、TPPに見られるようにわが国国民経済・国民生活を損ない、経済危機をいっそう深め、ますます米国に支配・収奪されるものである。この道は本質上、わが国をアジアで孤立させ、戦争に引き込みかねない危険な亡国の道でもある。
 こうした政策は、米国の要求に加え、大銀行をはじめとするわが国多国籍大企業がアジアへの展開を強め、ここに膨大な権益を有するようになったことが背景である。
 安倍政権の外交政策に対し、独立・自主の国の進路を対置しなければならない。

いちだんと悪化する国民生活を打開する問題
 安倍政権は登場以来、「三本の矢」(大胆な金融緩和、機動的財政政策、成長戦略)による「アベノミクス」を進めてきた。
 金融緩和では、日銀のトップを黒田総裁へとすげ替え、「二%の物価目標」を達成するためとして、ベースマネーを倍増させる「量的・質的緩和」に踏み込んだ。財政政策では、十兆円の公共事業を中心とする一二年度補正予算と一三年度予算を成立させた。成長戦略は、設備投資や「過剰設備」廃棄の際の企業減税、「戦略特区」などの規制緩和などを含む「日本復興戦略」を策定、十月の国会に関連法案を提出しようとしている。
 これは、世界の危機がいちだんと深まる下、支配層が「失敗すれば日本がつぶれる」との危機感にあふれて打ち出したバクチ的な危機打開策である。
 政府は日本経済が「緩やかな回復軌道」(日銀短観)にあるなどといい、御用マスコミは「アベノミクス効果」などと宣伝している。
 だが、「恩恵」はごく一部の社会層が享受しているにすぎず、大多数の国民との間の格差はいちだんと拡大している。
 金融緩和による円安で大銀行や自動車などの輸出大企業はボロ儲(もう)けし、財政出動ではゼネコンなどが潤った。株式など資産価格の上昇で投資家は笑いが止まらない。
 一方、円安によって国富は米国に還流し、巨大金融資本の資金源となっている。米英が「アベノミクス」を絶賛するのは、日本を収奪することと、日本の「経済再生」が自国にとって一定有利だからである。日本国内の需給ギャップは依然として十兆円を超える。製造業をはじめ、あらゆる産業・業種が中小資本まで含めて海外展開を強めている。地方経済の疲弊(ひへい)は止まらない。
 円安で食料品の値上げ、ガソリンの高止まりが続いている。電力各社による電気代値上げも続き、国民の生活と営業はますます圧迫されている。
 労働者の生活はいちだんと厳しい。職探しをあきらめた人を含む実際の失業率は一二%以上といわれる。とくに若者の失業は深刻で、職に就けても多くは派遣などの非正規職である。海外移転と電機などの大リストラは、雇用情勢をさらに深刻化させている。この春闘でも、ボーナスを含めてさえ賃上げはごく一部の大企業だけであった。中小企業の労働者、パートなど非正規労働者は生活保護受給水準以下の賃金しか受け取れず、ダブルワークを強いられている者も多い。公務員労働者も、急速な人員削減と非正規化の攻撃にさらされている。
 安倍政権は、地方交付税の削減をテコに地方公務員の賃金を強制的に引き下げさせた。「日本再興戦略」では正社員の非正規化を進める「限定正社員」制度を盛り込んだほか、秋に予定する「第二弾」では解雇規制の緩和などを打ち出そうとしている。
 農産物価格の低迷や農業資材の高止まりなどで、農民の経営も悪化した。安倍政権は総選挙の公約さえ投げ捨て、日本農業を壊滅に追い込むTPP交渉参加に踏み込んだ。安倍政権の掲げる「農業の所得倍増」など何の保証もない。企業による農業参入の拡大もたくらまれ、農民が将来に希望をもてるはずもない。
 中小企業の経営も容易ではない。三月末に中小企業金融円滑化法が期限切れとなり、多くが資金繰りの悪化で倒産に追い込まれている。廃業する企業はさらに多い。安倍政権は経営者による連帯保証制度の改正を打ち出したが、銀行が融資条件を緩和する保証はない。大企業からのコスト削減要求には際限がない。
 東日本大震災、福島第一原子力発電所事故による被災者への対策は、依然として遅れている。安倍政権は生活保護の受給額を引き下げ、さらに法改悪も策動。消費税増税などで国民生活に追い打ちをかけようとしている。
 半年間の安倍政権の下、国民経済・国民生活は深刻さを増した。アベノミクスに対する態度も、参院選における重大な争点である。

 この安倍政権に何を対置して闘うべきか。
 内政と外交は関連し、安倍政権の政治全体をつくっている。いくつかの野党が主張する「脱原発」「反TPP」「改憲反対」といった要求は正しいとしても、それだけでは「各論反対」にすぎない。現状は、「各論」で脱出できる簡単な危機ではない。
 諸政党は長期の戦略的視点に基づき、内外政治について首尾一貫した、国民大多数の利益を考慮した政策を持たなければならない。
 わが党は、改めて、国の完全な独立を喫緊の課題として主張する。
 国の独立、日米安保条約の破棄と米軍基地の全面撤去なしには、米国にいいように使われ、収奪される。平和や外交ではもちろんだが、経済でも自由にならず危機打開どころではない。独立がなければ、中国などの諸国がわが国を「まともな交渉相手」と見なさないのも当然である。これでは領土問題の解決はもちろん、長期の安定的な国家関係などおぼつかない。
 諸政党は、安倍政権の進める内外政治、とりわけ「日米同盟強化」に賛成なのか反対なのか、鮮明な態度を示すべきである。
 日本維新の会、みんなの党など、自民党とほとんど同じことを自認する党は論外としても、安倍政権と「闘う」としている諸党が、独立の問題であいまいであってはならない。

独立のための闘いが求められる
 わが党は、今回の参院選に候補者を擁立せず、原則としてどの党も支持しない。それは長期的戦略からだが、心ある政治家、勢力の努力には注目している。国の未来にとって有益である限り、われわれなりの支援を行う。
 各種世論調査によると、自民・公明の連立与党が過半数を制し、衆参の「ねじれ」を解消する可能性が高い。そうなれば、安倍政権はいちだんの「日米同盟強化」に踏み込むだろう。前述したように、それは中国への対抗を強め、わが国をアジアでの孤立と戦争の危機にさらす危険なものである。財界のための経済政策と併せ、増税や社会保障制度の改悪など、国民への犠牲押しつけもますます強まる。
 だが、安倍政権を取り巻く内外の危機は深く、政権は「安定」どころではない。
 すでに、アベノミクスは五月末からの金融市場の混乱で揺さぶられている。日銀の大量の国債買取は事実上の財政ファイナンスで、世界の投機家につけ込まれれば、新たな金融危機を引き起こしかねない。ドイツや韓国など諸外国からの批判も強まる。
 安倍政権は財政再建の「旗」を降ろせないが、先進国中最悪な、国内総生産(GDP)の二倍もの財政赤字を解決するメドはない。法人税減税など財界の要求にも応えねばならない。
 現状はまだ安倍政権に対する「期待値」があるとしても、国民の怒りと反発が広がることは避けられない。
 沖縄県民は、保革を超えた戦線と闘いを堅持している。TPPを理由に、数区で自民党への推薦を見送ったJAだが、農民が怒りを高めることは必定である。円安による原燃料値上げなどへの抗議は、すでに立ち上がっている漁業者、トラック業者、豆腐業者以外にも広がり、自民党の支持基盤は大いに揺さぶられる。対米従属のアジア外交には財界や官僚の中にさえ不満が高まり、分化が進もう。
 自民党内でさえ、今回、いくつかの県連が中央と相反する政策を掲げて選挙に臨んでいる。これは欺まんというだけでなく、支持者の声が反映しての党内矛盾でもある。
 こうした傾向は発展し、安倍政権を揺さぶる。
 高支持率などつかの間のことである。期待の高さは、失敗すれば幻滅の深さにもつながる。安倍政権が立ち往生することは必至である。
 闘う勢力にとっては正念場である。独立のための旗を掲げ、労働者・労働組合、農民、中小商工業者、心ある政党・政治家・官僚、一部の財界人、学者・文化人、青年学生が連合すべきときである。
 われわれは連合を呼びかけ、その発展のために奮闘する。


長期的展望に立って闘うべきである
 中でも、労働者が国民運動の組織者となり、政治権力をめざさなければならない。職場で労働者の要求を取り上げ、敵を暴露し、怒りを闘争へと組織しなければならない。併せて独立の旗を断固として掲げ、国民諸階層の闘いを支持し、広範な戦線をつくって闘うことである。
 こうすれば労働運動は広い世論の支持を獲得し、影響力を広げ、強めることができる。社会の指導勢力となり、労働運動は再生する。ひいては、政権に近づくのである。


 その際、議会主義の限界について、改めて指摘しなければならない。
 先の都議選では、四三・五%と過去二番目の低投票率となった。投票時間延長、期日前投票の導入後では最低である。「選挙では何も変わらない。どの党に票を投じても同じ」と、投票所に行かない有権者が増えていることを示してはいないだろうか。
 議会での闘争は人民の闘争手段の一部でしかない。それは、国民運動と結合して初めて効果を発揮する。労働運動に基盤を置き、国民諸階層の要求と結びついた、広範で強力な国民運動が必要なのである。
 連合中央の一部幹部は、相も変わらず民主党への支持を合理化し、労働者を選挙運動に駆り立てている。連合中央の振りまく欺まんを打ち破らなければならない。
 共産党指導部は粋がっているが、「自共対決」など、信じる下部党員はほとんどいまい。議会内の闘争にとどまる限り、限界は歴然としている。


 社会民主主義勢力などの「左派」についても若干述べる。
 社民党が「政党要件」を維持しようと懸命になっていることは理解できる。問題は、その先の展望である。
 ここまでくれば、社民党、社会民主主義者の皆さんも、長期的展望に立って闘うべきではないだろうか。この期に及んで小沢らと協力することは、「座して死を待つ」ことと同義である。社民党、社会民主主義勢力が国の独立という長期的展望で闘う方向に踏み出すことは、国民運動の発展のためであると同時に、皆さん自身にとっても有益であると信じる。

 わが党は、階級的で革命的な労働運動の発展のために力を尽くす。それを基礎に、自らの党建設と併せ、独立のための広範で強力な国民的戦線、国民運動の発展に力を尽くす決意である。


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