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2012年7月15日号 1面〜2面・社説 

小沢新党の欺まんに
惑わされてはならない

労働者階級は、広範で戦略ある
戦線の形成へ力を尽くそう

 衆議院本会議で六月二十六日、「税と社会保障の一体改革」関連八法案が、民主、自民、公明などの賛成で可決、参議院に送られた。「造反」して離党した小沢元代表ら四十九人は、七月十一日、新党「国民の生活が第一」を結成した。
 だが、「国民の主権」「地域主権」「国家としての主権」を掲げた小沢の策動は選挙目当てのもので、国民をあざむく欺まんにすぎない。小沢が狙っているのは、自派の延命である。
 重大なことは、社民党や労働組合などの中に、小沢の動きに幻想を抱き、一部に「連携」をめざす動きがあることである。
 歴史の教訓に学ばなければならない。
 小沢の前途に展望はなく、社会民主主義勢力、労働組合がこの道に追随することは自殺行為である。まして、世界的な危機が深まり労働者階級の政治的前進が焦眉の課題となる中、労働者の政治意識の発展、闘いの前進を妨げることになる。
 労働者階級は、長期的な展望に立って闘い、実力ある戦線の形成をめざさなければならない。

選挙目当ての新党綱領
 小沢新党は結成当日、「三つの前提」と題する綱領を発表した。
 その中身はどうか、何を狙ったものなのか。
 綱領は、「日本の政治、行政、経済、社会の仕組みを一新する」などとして、「国民の主権」「地域主権」「国家としての主権」の三つを掲げた。
 「国民の主権」では「真の政治主導を確立する」などとしている。だが、これは鳩山政権が掲げてできなかったことである。しかも、「政治主導」でどのような政治を行うのか。旧自公政権や民主党政権と同じ、対米従属で多国籍大企業のための政治なのか、あるいはそれの根本的転換なのか、あいまいである。
 「地域主権」では「統治機構の抜本改革」という。これは事実上、橋下・大阪市長らが推進している道州制のことで、自らの国際競争力を強化するための行財政改革を求める、財界、多国籍大企業の要求にそったものである。結果、住民への犠牲の押しつけを強め、地方自治をますます空洞化させるものである。
 「国家としての主権」では「真の主権国家を確立する」という。だが、戦後の日本を縛り付けている日米安保条約への言及はない。日中関係にしても、「互いに尊重し対等の付き合い」(小沢)と、ばく然と語るのみである。二〇〇九年の民主党マニフェスト(政権公約)にあった「東アジア共同体」は、言及さえない。
 そのほか「消費増税法案を撤回させる」と言う。だが、小沢は細川政権で「国民福祉税」を策動するなど、消費税増税を推進してきた人物である。「増税の前にやるべきことがある」などと言うが、野田政権との違いは「(増税する)時期の問題」にすぎない。このことは、小沢自身が野田首相との会見で述べた通りである。
 原発問題では「脱原発の方向」だという。だが、「できるだけ早く新しいエネルギーへ転換する」だけで、民主党を含む他党と大差はない。
 以上、小沢新党の綱領は、その党名も含めて欺まんである。当然ながら、対米従属で多国籍大企業のための政治を続ける、民主党、自民党などとの対抗軸になり得るものではない。
 野田・民主党政権への国民の不満と怒りは、ますます高まっている。だが、選挙区に足場がなく、経験も乏しく、連合の支持も得られない小沢新党の議員は、解散・総選挙となれば当選はおぼつかない。当選できるのは、現職の半数程度という予想もある。
 綱領や「反増税」を装うスローガンは、こうした事情に規定された選挙目当てのもので、有権者の支持をかすめ取ろうという狙いからのものにすぎない。小沢は、かつてのイタリアの政党連合を語らい、橋下や河村・名古屋市長らとの「オリーブの木」などと言っている。これも同様の選挙目当てで、さも展望があるかのように見せかけるためのものであることは、志位・共産党委員長との会談で小沢が自白している通りである。
 要するに、小沢に確固たる戦略があるわけではない。政界・政党再編が避けられない中、自派を生き残らせ、米国と財界に尽くす「次の出番」を待つ程度のことである。
 このような小沢の術策に、一切の幻想を抱くことはできない


小沢と連携した教訓に学ばなければならない
 綱領が選挙目当てのものであるというだけではない。
 小沢は、自民党時代から、わが国支配層からどのような任務を課せられ、果たしてきた政治家であったのか。責任ある政治家、活動家は、過去の経験から目をそらしてはならない。
 一九八〇年代半ば、米国が世界最大の債務国に転落し、代わって日本が最大の債権国となるなど、先進国間の力関係は大きく変化した。国際的には「プラザ合意」による協調が図られ、米国はわが国に円高、市場開放、規制緩和などの「国際化」を迫った。支配層は「前川レポート」で、これに忠誠を誓った。
 この大きな変化は、大企業の党でありながら、農民や中小商工業者といった「保守基盤」に利益を分配することで長期政権を維持してきた自民党にとって、政治支配の危機であった。「国際化」は、農民などの生活を危機に追いやるものだからである。
 リクルート事件などの腐敗もきわまり、国民の政治・政党不信が高まっていた。
 財界は自らの政治支配を維持するため、「対米追随で大企業のための政治」という基本政策で同じ、「政権交代可能な」保守二大政党制を追求し始めた。二大政党制のもう一方の支持基盤として、連合中央に代表される労働組合の上層が想定され、当時の連合・山岸会長らは財界と歩調を合わせて「改革」を叫んだ。
 小沢は自民党幹事長を務めるほどに政権中枢にあったが、財界の策動に積極的に呼応、自民党を割って新生党を結成した。九三年に成立した「非自民」の細川政権、さらに羽田政権は、明らかに小沢主導のものであった。
 以降、新進党の結成、その解党と自由党結成、小渕政権下での自自公連立、さらに〇三年の民主党への合流と続く。小沢が追求し続けたのは財界のための保守二大政党制であり、彼の著書「日本改造計画」にある通り、国内の徹底した「改革」と日米同盟の強化、「英国並み」に戦争ができる同盟国へとつくり替えることであった。
 この点で戦略的に一貫していたからこそ、小沢は財界から重宝され、温存され続けたのである。
 当時の社会党は、この小沢の策略に乗って手を組み、細川政権に参加した。土井元委員長は衆議院議長に祭り上げられ、山花委員長は小選挙区制導入の責任者とされた。社会党は、与党八会派中の第一党でありながら、徹底的に無力化させられた。その結果、コメ輸入自由化や小選挙区制導入に抵抗できず、社会党は下部党員と支持者の失望を買った。
 その後は逆に、戦略もないまま、村山政権で自民党の復権に手を貸した。
 鳩山・小沢による民主党政権が成立した際も、社民党、労働組合など「左」の人びとの多くが幻想を抱き、政権に参加、あるいは支持した。小沢が「社民化した」などという「評価」まであった。その結果がこんにちである。
 〇九年、リーマン・ショックを機に生活がいちだんと悪化、対米従属政治への不満を高めた有権者は、わらにもすがる思いで民主党を支持した。誰もこのことを責めることはできないが、政党の責任は別である。
 闘う勢力は、こうした経験を忘れるわけにはいかない。まさに、小沢に翻弄(ほんろう)され、戦略もなく利用されたあげく、衰退してきた歴史なのである


深まる世界の危機、問われるわが国の進路
 こんにち、世界はいちだんと危機を深め、資本主義は末期症状を呈している。
 リーマン・ショック後、各国が行った財政投入による危機打開策は、南欧諸国を中心とする国家債務(ソブリン)危機や資源価格高騰などとなって世界を揺さぶっている。米国はいちだんと衰退し、新興国が台頭する特殊な多極化が完全に定着した。
 人民は不満を高め、中東・北アフリカではいくつかの政権が打倒され、欧州では労働運動が発展している。
 対米従属のわが国も長期のデフレ不況から抜け出せず、国家財政はさらに悪化した。
 争奪が激化する世界に対応すべく、わが国財界は、九〇年代後半に橋本政権が手がけて挫折し、〇〇年代に小泉政権が進めたが中途半端となった、改革政治の深化、徹底をますます要求している。
 一方、リーマン・ショックと東日本大震災を経て、労働者をはじめとする国民諸階層の生活はいちだんと危機的で、打開は急務である。
 野田・民主党はもちろん、小沢、橋下や他の議会政党も、このような難問山積のわが国で政治を行わなければならない。対米従属、多国籍大企業のための政治で同じ立場に立つ、与野党の限界は明らかである。
 独立・自主で国民大多数のための強力な政権でない限り、わが国の進路を切り開き、国民の生活と営業を守ることは不可能である。

長期の戦略で闘い、新たな政治勢力の結集を
 保守、革新といった立場の違いを問わず、洞察力がある政治家、活動家は、長期的な戦略を考察するものである。
 だが、国民運動の発展に力を尽くすべき、社民党の現状はどうか。
 報道によれば、社民党の又市副党首は離党後の小沢と真っ先に会談、「連携」で一致したという。
 小沢が、党首で閣僚経験者の福島氏ではなく、又市氏と話し合ったことは興味をひく。又市氏が、小沢らを「『国民の生活が第一』を守ろうとするグループ」(「社会主義」七月号)などと、手放しで持ち上げているからであろう。
 又市氏ら社民党中央は、小沢との連携で、当面する総選挙を「生き残ろう」としているのだろう。だが、この道に展望はない。
 歴史の教訓を忘れ、今また、新たな幻想を抱いて小沢と連携すれば、闘いを望む多くの社民党員、労働組合の活動家はもちろん、悪政への怒りを高める労働者、国民諸階層を、またも裏切ることになる。社民党自身にとっても自殺行為である。
 資本主義の危機が深まる激動の情勢である。先進的労働者は長期的な展望に立たなければならない。労働者階級の党を本格的に建設し、革命的労働運動を発展させなければならない。
 わが党は、この責任に応えるべく奮闘する。
 わが国労働者階級は議会主義の与野党、ましてや小沢新党に頼らず、断固たる闘いを発展させ、広範で実力ある国民的戦線の中心勢力として闘わなければならない。
 先進的な人びと、政党人、活動家は、長期的な闘いで共同の戦線を形成すべく、力強く前進しよう。


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