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2012年7月5日号 2面・社説 

「労働運動の変革をめざす
全国討論集会」ーー
労働運動の転換をめざし、
初歩的だが重要な一歩

賃金闘争を基礎に、全面的暴露を
強め、階級的革命的な
労働運動を発展させる

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 「労働運動の変革をめざす全国討論集会」が先月、横浜市で開かれた。
 内外の危機が深まり、労働運動の真価が問われている中、全国の活動家の労働運動の転換を望む痛切な気運が反映された集会となった。さらに、打開と転換の方向について最近の若干の新しい活動経験や報告を含む有意義な議論が交わされ、重要な認識の共有が進んだ。「労働運動の変革」をめざして、初歩的だが重要な一歩を踏み出したといえる。
 この方向をいっそう押し進め、労働運動を階級的革命的に前進させることが求められる。

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 資本主義が末期症状を呈し、世界が戦争を含む乱世となることはいよいよ避け難くなった。世界中が大失業時代で、メシを食えぬ労働者、人民の闘いが発展している。先進国労働者階級の歴史的任務が問われる情勢である。
 わが国も例外ではない。大銀行を頂点とする多国籍大企業は国家の支援でばく大な利益を上げつつ、国際展開を強めている。労働者への賃下げと大リストラなど、国民には膨大な犠牲が押しつけられている。財界に忠実な民主党政権は戦略なき対米従属を重ね、中国を敵視する日米同盟「深化」と軍備増強で、亡国の道を早めている。
 ところが、労働運動は連合中央幹部のような労使協調型組合主義が支配的で、財界の党である民主党の最大の支柱となり対米従属の悪政を支えている。これではどうにもならない。
 労働者階級が、国の独立と自らの解放のために、世界とわが国の情勢を理解し、自らの歴史的任務を自覚できるようでなければならない。自らの要求で闘うとともに、何よりも国民諸階層を率いて先頭で闘い、対米従属政治を転換し、独立・自主で国民のための政権を打ち立てなくてはならない。
 この方向、すなわち「階級的で革命的な労働運動」の構築を急がなくてはならない。米国と先頭とする帝国主義の体制立て直しに競り勝たなくてはならない


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 しかし、われわれも、労働運動のこの現状を打破できず、労働者の中に十分な党を組織できずにきた。
 だが、昨年、若干の民間工場や自治体の細胞で、なぜ闘いが起きないか、どうすれば闘いになるか、現状を打開する努力が強められ、初歩的ながら経験をもった。
 わが党の大隈議長は新春講演で、この成果、経験をおおむね次のように概括した。
 われわれは、労働運動あるいは労働者の認識は何に規定されているのか、労働者はどうなったら闘うのだろうか、ということで研究を始めた。労働者の意識と行動を規定している諸条件、具体的にはいくつかの自治体労働者の賃金や身分、労働条件が何によって規定されているかの分析を始めた。民間の中小企業でも若干の研究を進めた。こうやって調べれば、怒りを組織できるし、闘い方も分かってきた。
 さらに理論的に整理し、一般化して提起した。
 一つは、労働者の意識とそれを規定している生存の諸条件、あるいはその相互関係についての唯物論的見解である。労働運動とは、いうまでもなく労働者階級の運動である。だから、その運動の主体である労働者階級の生存条件こそ、その認識、したがって行動を規定している。だから運動を発展させようとすると、その生存条件の分析、暴露が不可欠であり、実践的には、労働者の生存条件の中心をなす賃金問題が重要で、賃金闘争が労働運動の基礎だというマルクス主義の考え方を再確立した。
 もう一つは、弁証法的観点が重要である。その意識を規定している賃金や雇用、労働条件などの生存条件は、何によって規定されているか。企業側、資本側の財務状況などがまず第一義的だが、個別の労使関係だけでなく、政府、銀行や金融資本の支配、さらには対米従属の諸関係や米帝国主義の世界支配の状況など、実にいろいろな方面が関わっている。それらの相互作用を全面的に分析し、労働者と抑圧された諸階級がいかに搾取・収奪され貧困化しているのか、全面的暴露(政治的、経済的、思想や理論的に)を進め、労働者の怒りをかき立て、敵と闘いの方向を明確にする必要がある。こうして階級的で革命的な労働運動の発展をめざすことができるであろう。
 大隈議長は、この経験を「日本の労働運動をどうやって転換していくのか、初歩的だが貴重な経験」だと評価した。その上で、大隈議長は「討論集会でもあれば報告したい」と呼びかけた。
 以降もわが党は、自治体や民間企業での賃金について研究を進めた。成果は「労働新聞」や理論誌「季刊労働党」に発表したが、各方面から大きな反響があった


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 こうした中での「労働運動の変革をめざす全国討論集会」の呼びかけを、わが党は断固として支持し、成功のために奮闘した。
 呼びかけが現状打開を求める活動家たちに受け入れられ、賛同者が北海道から沖縄まで広がったのは当然だった。集会は、こうした活動家たちの期待、必要さに応え、時宜を得たものであった。全国の賛同者は、労働運動の転換への新しい動きの始まりを、程度の差はあれ実感し、その前進が避けがたいことを感じたのではないか。
 だから、集会の提唱と組織化には激しい党派闘争が伴った。「趣旨には賛成だが時期尚早」という消極的反対も随所で見られ、連合路線を推進する勢力からの妨害も強かった。「連合の民主党政権支持がギリギリの状況」となった下での政治闘争として、党派闘争もし烈になったのは当然だった。さまざまな困難の中、集会成功のために奮闘された全国の活動家の皆さんに、われわれは心からの敬意を表したい。
 集会では、東京の中小民間労組活動家、東京、神奈川、香川の公務員労組活動家、福岡の教組活動家など、八人が問題提起を行った。多くの会場からの発言もあり、真剣な討議となった。どの発言も経験を踏まえた貴重な内容を含んでおり、われわれも学ぶことが多かった。
 とくに、東京の民間労組活動家の報告は、非常に有意義であった。企業の財務諸表の分析に挑戦することで経営側の「賃上げ要求したら企業はつぶれる」という宣伝のウソと、いかに経営側が労働者を搾り取り利益をため込んでいるかを暴露し、労働者の怒りを呼び起こしながら新たな賃金闘争に踏み出した経験を報告、参加者に感動を呼び起こした。さらに、賃金闘争は労働組合運動の基本であり、「中小企業では賃上げは難しい」などという口実で「外部の課題」に逃げずに、労使間で賃金闘争を断固として闘うことを提起した。
 また、神奈川の自治体労組活動家は、賃金や人員削減攻撃との闘いの総括から自治体財政の分析を通して市政暴露を進めた経験を報告した。「財政赤字が膨大」「夕張市のように破たんする」という当局の宣伝はデタラメで、膨大な借金は地域支配層のために使われたツケで、巨額の市債利払いを通じて銀行など金融独占体に奉仕している実態が鋭く暴露された。しかも、対米従属の政府がそれを財政的・法的・行政的に推進しているとして、国家金融独占体の支配と収奪との闘いの方向をさし示した。
 討議の中でも、大企業の内部留保急増を明らかにして、国家金融独占体の支配と搾取・収奪、他方での労働者、国民への犠牲押しつけと貧困化を暴露しながら、労働者階級の認識と実践を促進することの重要さを指摘した発言をはじめ、財界が主導する対米従属政治を暴露し、独立の課題を中心に統一戦線を形成する課題、情勢をきちんと把握し労働者階級が歴史的任務を自覚し、必要とあらば選挙や議会に頼らず実力で闘う準備を進めること、民主党の基本的階級的性格をきちんと捉え、財界に奉仕していることを明確にすることが重要、等々が提起された。
 一連の提起と討議を通じて、賃金闘争を重視し運動の基礎にしながら、金融を頂点とする国家独占資本の支配と搾取・収奪を暴露し、階級的で革命的な労働運動をめざす方向が、おおよそ明確になったのではないだろうか。

 労使協調型組合主義の連合路線を打ち破る闘いで、この集会の投じた「一石」が今後の運動の中で大きな影響を持つことを確信できる。初歩的だが重要な一歩を踏み出したと評価する。
 この成果と到達点を確認し、労働運動の転換のための闘いをさらに前進させなくてはならない。全国の活動家たちのいっそうの奮闘と連携の発展に期待する。わが党も、必要な責務を果たすため奮闘することを誓う。


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