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2011年10月5日号 2面・社説 

大企業に減税、国民に増税
押しつける野田政権

「復興」口実とする
大増税攻撃を打ち破れ

 政府・与党は九月二十七日、東日本大震災からの「復興」を口実とした大増税を行うことを決めた。
 野田政権は、今月召集する臨時国会に、二〇一一年度第三次補正予算案とともにこの増税法案を提出、与野党協議を経て成立を図ろうとしている。
 議会の与野党合作による、「復興」口実の増税案の実態は、国民には長期・大規模な増税を強いる一方、大企業には実質減税という、きわめて不平等なものである。
 それは、「少子高齢化社会への対応」「社会保障の継続性維持」のためなどを口実とする「税と社会保障の一体改革」の大キャンペーンと連動し、大企業のための国家「財政再建」に向けて、勤労国民への大増税を実現しようという意図に貫かれた、一連の世論操作の一部でもある。
 「財政危機下での復興には増税が不可避」などという宣伝もデタラメで、復興のための財源は十分にある。これまで、政府によるさまざまな支援策で肥え太った大企業に、応分な負担をさせればよい。
 あるいは、膨大に積み上がった外貨準備、それも米国債に投資されて米国財政を支えながら円高の下で日に日に減価する、この資産を売り払い、手当てすればよい。
 労働者階級、国民は、国民に犠牲を押しつける、民主党・野田政権の策動を見抜き、打ち破らなければならない。

「復興」のための「応分の負担」はペテン
 政府やマスコミは、「復興」増税は「国民が負担を分かち合う」ためのものであるかのように宣伝している。これは、まったくのデタラメである。
 先の大震災で明らかになった通り、「被災者」といっても労働者もおり、経営者、資産家もいて、その社会、経済的立場は一様ではない。したがって同じ被災に直面しても、その痛みの大小、対応や以降の展望の描き方も異なるもので、政治への要求も異なる。
 すべての社会層に対して平等な政治はこれまでもなかったし、大震災からの「復興」に関してもあり得ないのは当然である。
 事実、大震災直後、政府・日銀は大銀行に百二十兆円もの資金を融通したのをはじめ、大企業の資金需要も社債購入などで最大限に支えた。一方、多くの被災者、とりわけ勤労国民への救援は後回しにされた。がれき処理すら半分程度しか進んでおらず、福島第一原子力発電所事故の被害者へのわずかな賠償金さえ「これから」である。
 全国的にも膨大な労働者が震災被害を「根拠」に解雇、賃下げなどに遭い、政府は、労働者への賃下げを容認することまで行った。農林漁民や中小企業の経営はいまだ青息吐息で、経営は成り立たない。
 これらと同様、今回の「復興」の財源対策もまったく不平等である。
 勤労国民には、最低でも九・二兆円、最大十年間という大規模・長期の増税である。所得税は税額の四%の付加税が課され、個人住民税の均等割分は年五百円引き上げ、たばこ税は一箱あたり四十円の増税。所得控除も見直しで増税となる。
 政府は日本たばこ産業(JT)、日本郵政など株売却も加え、計七兆円分の税外収入をもくろむが、この動向次第では、増税規模と期間は拡大・延長される可能性さえある。
 さらに「税と社会保障の一体改革」と称した、消費税大増税がたくらまれている。
 一方、大企業には減税である。政府は「法人税も増税」などと言うが、実態は、法人実効税率を五%減税した上で一〇%分の付加税(税率換算で約二・五%)を課すもので、差し引き二・五%の減税となる。
 しかも、国民への所得税増税などが十年間と長期に及ぶのに対し、法人税は三年が過ぎればまるまる五%分の恒久減税となる。これにより、大企業は少なくても十兆円、業績次第ではそれ以上の減税となる。
 何という恩恵か。「復興」目的どころか、大企業減税のための大衆増税と言わねばならない。
 しかも、これらを財源とする第三次補正予算には、「復興」目的もあるが、「円高対策」と称し、多国籍大企業が海外で稼ぐことを支援するための措置が目白押しである。政府はまたしても、国民から搾り取った膨大な財政を大企業に注ぎ込もうとしている。
 リーマン・ショック、大震災と原発事故、超円高と打ち続く危機で苦しむ国民の生活と営業は、いちだんと崖っぷちに追い込まれる。他方、大企業だけはますます栄える。「負担を分かち合う」などの宣伝にダマされてはならない。

復興のための財源は十分にある
 支配層は、「財政難」を理由とする「増税やむなし」の世論誘導を強めている。だが、国民への増税など行う必要はない。
 財源は十分にあるからである。
 まず、二百兆円以上とされる大企業の内部留保を応分に供出させることである。そもそも、大企業がこれほど肥え太ったのは、たとえば、米国発のリーマン危機の波及に際しても大量の労働者を街頭に放り出し、中小下請け企業に犠牲を押しつけ、歴代政府から膨大な支援を受け続けた結果である。さんざんもうけたのであるから、いくらかでも負担するのは当然であろう。
 さらに、現在四〇%程度である法人実効税率を、消費税導入前、一九八〇年代の水準に戻すだけで年間三兆〜五兆円が確保できる。その他、子会社からの配当金の相当部分を利益に算入しないなどの大企業優遇税制、資産家優遇の証券課税軽減措置なども廃止すべきである。
 さらに、約八十兆円もの外貨準備(ほとんどが米財務省債)の一定部分を売り払うべきである。
 外貨準備は、戦後、国民諸階層が血と汗で稼いだ国富の一部である。歴代政府も「円高対策」「輸出企業支援」などと称して「円売り・ドル買い」介入を繰り返し、外貨準備を積み上げた。だが、売国政府は国民が稼ぎ出した膨大なドル資産を日本国民のためには使わず、大部分を米財務省債の購入にあてることで、財政難の米国に貢いできた。わが国の富は、米国に収奪され続けた。
 現在は、大震災と原発事故という未曽有の国難である。もともと国民が生みだした富である。復興のために使うことに何ら問題はない。
 しかも、ドル資産は持っているだけで日に日に減価している。米国がドル安を容認しているからで、それは米連邦準備理事会(FRB)関係者も認める通りである。ドル安によって米国産品の輸出競争力を強めて経済再生をもくろむとともに、日本などが保有するドル資産を減価させて「借金減免」を進めるためだ。
 なぜこれを手放すことを躊躇(ちゅうちょ)する必要があるのか。

増税に反対する戦線形成が急務
 「復興」増税案を見ても、野田政権が自公政権以上に国民を犠牲にし、大企業に徹底して奉仕する政権であることは明白である。
 大増税への国民の反発は避けがたい。マスコミの世論調査でさえ、「復興」増税には「反対」が過半数を超えている。
 増税反対の断固たる大衆行動が求められている。
 問題は組織者である。労働組合、政党、諸団体は、「復興」などを口実とした支配層のキャンペーン、世論操作に惑わされてはならない。
 とくに、労働組合の連合中央幹部が野田政権を支え続け、増税を容認していることは大問題である。労働者は、裏切り者どもの策動を打ち破らなければならない。
 繰り返すが、財源は十分にある。
 予想される米国や大企業の妨害・抵抗を打ち破り、国民の生活と営業を再建するための財源を確保するには、独立・自主で国民大多数のための政権を樹立することが必要である。広範な国民的力に支えられた、実力、そして戦略と覚悟ある政権にこそ、それが可能だからである。
 広範な闘いが求められている。労働者は、国民諸階層の先頭で闘わなければならない


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