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2011年9月25日号 2面・社説 

日米首脳会談、窮地の米国に
忠誠誓った野田政権

従属的日米関係を清算する以外、
国の進路は切り開けない

 訪米中の野田首相は九月二十一日オバマ米大統領と初めての会談を行った。
 米国の衰退がいちだんと早まり、各国は独自の動きを強めている。わが国労働者階級、国民諸階層の苦難はますます深く、戦後の従属的日米関係の限界は明らかである。
 だが、野田政権は普天間基地(沖縄県宜野湾市)移設問題など、米国の要求をほとんどそのまま受け入れ、いっそうの同盟「深化」で合意した。まさに、世界のすう勢に逆らう亡国の道である。
 野田・民主党政権を打ち破り、独立・自主の政権を樹立する以外に打開の道はない。

内外の危機に「打つ手なし」の米国
 米帝国主義の危機はいよいよ深く、世界支配は崖っぷちである。
 リーマン・ショック後、米国は、八千億ドル近い膨大な景気対策や大企業救済、金融緩和などを行った。さらに、昨秋からは六千億ドル規模の量的緩和(QE2)に踏み込んだ。それでも経済は回復せず、インフレと「二番底」に脅えている。七月末には、財政支出のツケが回った「デフォルト(債務不履行)危機」に陥り、与野党の妥協で辛くも切り抜けた。
 その後も、オバマ政権は新たな雇用政策を打ち出すなど、大わらわである。だが、法案が成立するあてはないし、効果を信じる者もいない。連邦準備理事会(FRB)は九月二十一日、長期金利の低下による景気浮揚を狙って四千億ドル規模の「ツイストオペ」に踏み切ったが、これも効果はない。
 米国は第二次世界大戦後の絶頂期から、一九七〇年代の「金・ドル交換停止」やベトナム戦争、八〇年代の債務国への転落など、すう勢としては衰退していたが、リーマン・ショックで基軸通貨・ドルの信認は大きく揺らぎ、こんにちの危機はさらに深い。米国には、危機打開の手立てがなくなりつつある。
 政治・軍事面でも米国の衰退は明らかで、世界の多極化は定着した。危機下の欧州諸国は「経済政府」による結束を強め、BRICSは常設機関を設置、ドルの相対化を進めている。中東・北アフリカでは人民の決起で政変が相次ぎ、イランなどの抑え込みは功を奏さず、パレスチナは米国の妨害に屈せず国連加盟を申請した。
 二十カ国・地域首脳会議(G20)による「国際協調」も求心力を失っている。各国とも自国経済の再建に手いっぱいで、「通貨戦争」による市場争奪、資源争奪などが激化している。
 世界支配が瀬戸際となりつつある米国は、アジア市場への参入を強め、ここでのプレゼンスを維持することで支配の再構築を狙っている。台頭する中国へのけん制を強めているのはそのためである。
 米国は、中国の隣国で、アジアの経済大国であるわが国にいっそうの役割を押しつけざるを得なくなっている。

行き詰まった戦後の日米関係
 わが国はいまだに日米安保条約に縛られ、対米従属政治の下にある。
 冷戦下、わが国は米国市場に依存して経済大国化し、米国の前線基地、「反共防波堤」として機能した。
 八〇年代にわが国が世界最大の債権国となって日米関係が変化し、九〇年代にはソ連が崩壊、「日米同盟の漂流」と言われた時期もあった。だが、米国は九五年、中国、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への敵視とけん制を狙う「東アジア戦略構想」を策定。これに沿い、日米安保共同宣言(安保再定義)などが進んだ。二〇〇三年のイラク戦争でも、欧州諸国などの反対にもかかわらず、小泉政権は真っ先に米国に追随。経済面でも、米国市場への依存だけでなく、米国債の大量購入などで衰退するドル体制を支え続けた。
 リーマン・ショックで明らかになったのは、こうした戦後の従属的日米関係の限界である。国民の生活と営業は、厳しさを増した。
 危機の下、「国民生活が第一」「対等な日米関係」という欺まんを演じた民主党が対米従属政治に対する国民の不満と怒りをひきつけ、鳩山政権が成立した。「東アジア共同体」などを掲げた鳩山政権の動きは、米国の急速な衰退を横目に見た、わが国支配層の「模索」という面もあった。
 だが鳩山政権には、わが国の「自主」を闘い取る覚悟も戦略もなかった。そのあげく、票目当てに公約した、普天間基地の「国外・県外」移設で右往左往し、旧自公政権と同じ「県内移設」に戻って崩壊した。これを継いだ菅政権は、対米関係の「修復」を図った。東日本大震災に際しては空前の日米合同演習「トモダチ作戦」を強行、六月の日米安全保障協議委員会(2+2)では、日米一体で台頭する中国へのけん制をこれまで以上に強めることを約束した。だが、求心力のない菅政権には、日米間の懸案実行は限られていた。
 八月、米国初の新たな危機がわが国を襲い、米国のドル安政策で必然的に「超円高」となった。政府は大規模な為替介入で得た膨大なドルを、再度米国に貢いだ。国民の生活苦はいちだんと深まり、政府への反発はいっそう強まった。菅政権は政権を投げ出さざるを得なくなった。
 野田新政権の「外交デビュー」となった日米首脳会談は、このように、米国が衰退し、従属的日米関係が完全に行き詰まる中で開かれた。

米国の要求を受け入れた野田政権
 野田政権は、窮地の米国、オバマ政権の要求のほぼすべてを受け入れた。
 野田首相は、日米同盟が「外交の基軸」という「揺るぎのない信念となった」などと、会談の冒頭から米国への忠誠を表明した。
 焦りに駆られたオバマが「結果が必要だ」と実行を迫った普天間基地問題で、野田首相は「全力を尽くしていく」と、県内移設に反対する沖縄県民の意思を踏みにじることを約束した。
 環太平洋連携協定(TPP)への日本の参加については、野田首相は「早期に結論を出す」と、参加へ向けて踏み込んだ。
 危険な牛海綿状脳症(BSE)を理由に輸入が制限されている米国産牛肉についても、緩和を要求する米側の要求を拒否できなかった。
 朝鮮の核問題では、日米韓三カ国による包囲強化で合意した。
 両首脳は、中国への対抗とけん制のため、日米同盟をさらに「深化」させることで一致した。
 会談後、オバマ大統領が「彼(野田首相)となら仕事ができる」と述べた通り、野田政権が選択したのは、米国をさらに支える道である


独立・自主の政権樹立へ向け闘おう
 戦後の従属的日米関係は、もはや限界で、世界のすう勢に逆らっている。さらなる対米従属でアジア諸国・人民と敵対し、地域の緊張を高める亡国の道で、わが国の進路を誤らせ、国民諸階層の生活と営業をいっそうの苦難に追いやるものだ。
 対米従属政治に対する国民の憤激は高まらざるを得ず、闘いは始まっている。
 被災地住民は、政府、東京電力に対する怒りを強め、断固たる大衆行動に立ち上がっている。沖縄県民は基地の県内移設を許さない。TPPに対する異論は、農業団体、医師会など各層に広がっている。牛肉輸入再開にも、消費者団体などが反対している。民主党政権への幻想をあおる連合中央幹部の欺まんも、いつまで続くか。
 売国政治を打ち破り、独立・自主、国民大多数のための新たな政権を打ち立てなければならない。
 問題は組織者である。民主党を支え続ける連合中央は、わが国労働者階級を裏切る反動的なものである。独立・自主の政権樹立を問題にせず、労働者、国民諸階層をあてのない「改良の道」に引きずり込む共産党の犯罪性は言うまでもない。「脱原発」だけの社民党中央の方針でも闘えない。
 労働者階級は対米従属の野田政権の正体を見抜き、闘いの準備を急がなければならない。


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